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会社の接待交際費の不正計上は業務上横領罪が成立する可能性。懲戒処分は有効か

会社の接待交際費を私的な飲食代に使う、あるいは架空の接待をでっちあげて経費を不正に請求する行為は、単なる社内規定違反にとどまらず、犯罪に該当しうる違法行為です。

これらの行為が発覚した場合、刑事罰や損害賠償、懲戒解雇など、社会的・経済的に極めて重大な責任を負うことになります。

本稿では、接待交際費の不正利用がどのような犯罪にあたるのか、そして不正が発覚した場合に取るべき対応について、詳しく解説します。

接待交際費の不正計上、不正受給は業務上横領罪や詐欺罪が成立する可能性がある

接待交際費の不正利用は、その手口によって業務上横領罪または詐欺罪が成立する可能性があります。
例えば、会社からあらかじめ預かっていた交際費を私的に使い込んだ場合は、管理を任された金銭を着服したとして業務上横領罪が問われます。

一方で、実際には行っていない接待の領収書を偽造して会社に提出し、経費をだまし取った場合は、会社を欺いて金銭を交付させたとして詐欺罪が成立する可能性があります。

業務上横領罪とは

業務上横領罪とは、業務として自己の管理下にある他人の財産を不法に自分のものにする犯罪です(刑法第253条)。経理担当者や営業担当者が、会社から管理を委託されている現金や預金を私的な目的で費消する行為が典型例です。

この犯罪は、会社からの信頼を裏切る悪質な行為とみなされるため、単純な横領罪よりも重い「10年以下の懲役」という刑罰が定められています。

業務上横領は必ず逮捕される?

詐欺罪とは

詐欺罪とは、人を欺いて財物を交付させたり、財産上不法の利益を得たりする犯罪です(刑法第246条)。
この犯罪の成立には、①人を欺く行為(欺罔行為)、②それによって相手が錯誤に陥ること、③その錯誤に基づいて財物を交付すること、という一連の因果関係が必要です。

接待交際費のケースでは、架空の接待や水増しした領収書を提出して会社を騙し、経費を不正に受け取るといった行為がこれに該当します。

接待交際費の不正計上、不正受給の時効

接待交際費の不正利用には、刑事と民事の両方で時効が存在します。刑事事件として起訴するための公訴時効は、業務上横領罪、詐欺罪ともに7年です。

一方、会社が損害賠償を請求する権利(民事)の消滅時効は、原則として会社が損害および加害者を知った時から3年、または不正行為の時から20年です。
刑事上の時効が完成しても、民事上の賠償責任は残る可能性があるため注意が必要です。

接待交際費の横領の例

接待交際費の横領には、以下のような手口が考えられます。

(1) 空接待の計上
取引先との接待を全く行っていないにもかかわらず、偽の報告書や自分で作成した領収書を用いて、架空の接待があったかのように装い経費を請求する。

(2) 接待費用の水増し請求
実際にかかった接待費用以上の金額を領収書に記載してもらったり、自身で改ざんしたりして、差額を着服する。

(3) 私的な飲食代の付け回し
家族や友人との私的な飲食にかかった費用を、業務上の接待であるかのように偽って会社の経費として精算する。

(4) 商品券等への換金
接待の名目で商品券やギフトカードなどを購入し、それらを金券ショップなどで換金して現金を得る。

領収書の偽造も違法行為

接待交際費を不正に計上する過程で、領収書の金額を書き換えたり、パソコン等で偽の領収書を作成したりする行為は、横領罪や詐欺罪とは別に私文書偽造・同行使罪(刑法第159条、第161条)という犯罪に該当します。

複数の犯罪が成立する場合、より重い刑罰が科される可能性があります。このように、安易な考えで行った不正工作が、自身の刑事責任をさらに重くする結果を招く危険性があります。

領収書の偽造・改ざんは業務上横領罪?

経費や備品の横領、その他のケース

会社における横領は、接待交際費に限りません。従業員が会社の財産を管理・利用する立場にあることを悪用し、様々な手口で不正に利益を得るケースが存在します。

例えば、日々の業務で発生する交通費の請求や出張時の経費精算、さらには会社から貸与されている備品に至るまで、様々な行為が、会社の財産が横領の対象となりうるのです。
以下では、接待交際費以外でよく見られる横領のケースについて解説します。

交通費の横領

通勤手当として支給されている定期券区間内の移動であるにもかかわらず、別途交通費を請求したり、最も安価なルートではなく高額なルートで交通費を申請したりする手口です。

これらの行為は、業務上横領罪や詐欺罪に問われる可能性があります。

会社の交通費を不正受給すると業務上横領になる?

空出張で出張費を横領

実際には出張していないにもかかわらず、出張したかのように装って交通費や宿泊費、日当などを不正に受け取る行為です。「空出張」と呼ばれ、会社を騙す行為であるため詐欺罪が、会社から預かった出張費を流用した場合は業務上横領罪が成立する可能性があります。

空出張で出張費を不正に計上したら業務上横領になる?

会社備品の横領

会社から貸与されているパソコンや社用スマートフォン、事務用品などを無断で売却したり、私物化したりする行為です。自己の管理下にある備品であれば業務上横領罪、管理権限のない倉庫の物品などを盗み出せば窃盗罪に問われる可能性があります。

会社の備品を横領すると業務上横領罪や窃盗罪になる可能性。

接待交際費の不正計上、不正受給した社員の責任

接待交際費を不正に利用した場合、社員は刑事上と民事上の二つの側面から責任を追及されることになります。刑事上の責任とは、国から懲役刑などの刑罰を科されることを意味します。

一方で、民事上の責任とは、被害者である会社に対して、与えた損害を金銭で賠償する責任のことです。
たとえ刑務所に服役したとしても、会社に対する賠償責任がなくなるわけではなく、両方の責任を負わなければなりません。

刑事上の責任

刑事上の責任として、業務上横領罪の場合は10年以下の懲役、詐欺罪の場合は10年以下の懲役が法定刑として定められています。罰金刑の規定はなく、起訴されて有罪となれば懲役刑が科される重い犯罪です。

被害額や手口の悪質性によっては、初犯であっても実刑判決(執行猶予がつかない判決)が下される可能性も十分にあります。また、有罪判決を受ければ「前科」がつくことになります。

民事上の責任

民事上は、会社に対して損害賠償責任を負います。これは、不法行為(民法第709条)または雇用契約上の義務違反(債務不履行)に基づくものです。

賠償すべき範囲は、横領した金額そのものに加え、調査費用や弁護士費用、そして不正発覚日までの遅延損害金などが含まれる場合があります。

会社は、社員の給与を差し押さえるなど、法的な手段を用いて賠償請求を行ってくる可能性があります。

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接待交際費の横領は懲戒解雇の可能性も

横領は、会社の財産を不法に侵害し、企業秩序を著しく乱す重大な背信行為です。そのため、就業規則上の懲戒事由に該当し、最も重い処分である懲戒解雇となる可能性が極めて高いです。

懲戒処分には、軽いものから順に譴責(けんせき)、減給、出勤停止などがありますが、金銭に関する不正行為、特に横領は悪質性が高いため、これらの段階を踏まずに即時懲戒解雇とされるケースが一般的です。

会社の接待交際費を不正計上したり、私的に使ってしまったりしたら

万が一、会社の接待交際費を不正に利用してしまった場合、まず行うべきは、正直に事実を会社に申告し、誠心誠意謝罪することが重要になります。

そして、不正に得た金額を全額返済する意思があることを明確に示さなければなりません。しかし、当事者だけで冷静な話し合いをすることは困難な場合も多く、対応を誤ると事態が悪化しかねません。

そのため、会社に申告する前に、速やかに専門家である弁護士に相談し、今後の対応方針を協議することをおすすめします。

事件化を防ぐためにも弁護士にご相談ください

業務上横領のような会社内部の犯罪は、会社が警察に被害届を提出したり告訴したりすることで初めて事件化するケースがほとんどです。裏を返せば、警察が介入する前に会社との間で示談を成立させることができれば、事件化を防げる可能性があります。

会社側も、評判の低下などを懸念し、内々での解決を望む場合があります。弁護士が代理人として交渉することで、被害弁償と引き換えに事件化しないよう働きかけることが可能です。

会社との示談交渉を弁護士に依頼するメリット

横領事件の示談交渉を弁護士に依頼するメリットは多岐にわたります。
まず、加害者本人が直接交渉すると感情的になりがちですが、弁護士が間に入ることで冷静かつ法的な観点から交渉を進めることができます。

また、横領額の確定や適切な示談金の算定、将来の紛争を防ぐための示談書の作成など、専門的な対応が可能です。
何より、逮捕や処罰への不安を抱えるご本人の精神的負担を大幅に軽減できる点が大きなメリットです。

逮捕されてしまった場合も減刑に向けてサポートします

もし逮捕されてしまった場合でも、弁護士はご本人と速やかに接見(面会)し、取り調べへの対応をアドバイスします。その後は、早期の身柄解放を目指す活動と並行して、会社との示談交渉を継続します。

示談が成立すれば、検察官が不起訴処分(起訴しないこと)と判断する可能性が高まります。

仮に起訴された場合でも、示談の成立やご本人の反省の情などを裁判で主張し、執行猶予付き判決の獲得など、可能な限り軽い処分となるよう働きかける余地があります。

返済する意思はあるが横領額が大きく一括では難しい。分割払いは可能?

被害弁償は一括で行うのが原則ですが、横領額が高額でどうしても一括での返済が困難な場合もあります。その場合、会社との交渉次第では分割払いが認められるケースもあります。

しかし、会社側からすれば分割払いには未回収リスクが伴うため、簡単に応じてくれるわけではありません。実現には、説得力のある返済計画の提示と、誠実な交渉が不可欠です。

このような複雑な交渉については、専門家である弁護士に依頼されることをおすすめします。

横領したお金を返済したら減刑される?

会社の接待交際費を横領してしまったら、お早めに弁護士にご相談ください

会社の接待交際費の不正利用は、発覚すれば職を失うだけでなく、刑事罰という重い責任を負う可能性がある重大な行為です。

しかし、問題が発覚した直後の迅速かつ適切な対応が、その後の人生を大きく左右します。
お1人で悩まれるのではなく、できる限り早期に弁護士にご相談されることをおすすめします。

この記事の監修

弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕
弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長弁護士 辻 正裕
埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。

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