不起訴とは
刑事事件の被疑者として逮捕されたとしても、不起訴となり、刑事裁判まで進まないことがあります。そこで、今回は、どのような理由で不起訴となるのか、逮捕されてしまった場合に不起訴となるにはどうすればよいのかなどについて解説します。
目次
不起訴とは
不起訴とは、検察官が、被疑者を裁判所に訴えないことをいいます。
これに対し、起訴とは、検察官が、被疑者を裁判所に訴えることをいいます。
不起訴と無罪の違い
不起訴と無罪について、似ているように感じられる方も多くいると思いますが、実際は異なる点が多くあります。
代表的な例としては、裁判所の関与の有無という点が挙げられます。
すなわち、不起訴は、そもそも刑事裁判自体が開かれないため、裁判所が判決を下すということがありません。
これに対し、無罪は、刑事事件において審理を経た結果、そもそも被告人が犯罪行為を行ったという事実がない場合や、検察官の立証では被告人が犯罪行為を行ったと認定できない場合に裁判所が無罪判決を下すという点で大きな違いがあります。
不起訴処分で前科はつくのか
不起訴処分となった場合には、刑事裁判が開かれることはありません。
そのため、刑事裁判で有罪判決を受けた記録である前科がつくことはありません。
しかしながら、不起訴処分となった場合でも、捜査機関の捜査の対象となった記録である前歴は残ることになります。
不起訴と罰金の違い
上記のとおり、刑事裁判で有罪判決を受けなければ、前科がつくことはありません。
そして、罰金も刑罰の一種であり、有罪判決にあたるため、前科として記録されることになります。
これに対し、不起訴は、有罪判決ではないため、前科がつくという点で罰金と大きな違いがあることになります。
不起訴になる理由
嫌疑なし
不起訴の理由の1つとして、「嫌疑なし」と判断される場合が挙げられます。
具体的には、捜査機関による捜査の結果、被疑者が犯罪行為を行っていないことが明らか(犯人ではないことが明らか)である場合に「嫌疑なし」と判断されることになります。
嫌疑不十分
また、不起訴の理由の1つとして、「嫌疑不十分」と判断される場合もあります。
具体的には、捜査機関による捜査の結果、証拠が十分ではなく、被疑者が犯罪行為を行ったと認定できない場合に「嫌疑不十分」と判断されることになります。
起訴猶予
さらに、不起訴の理由として約9割を占めるものとして「起訴猶予」が挙げられます。
「起訴猶予」とは、犯人の性格・年齢・境遇、犯罪の軽重・情状、犯罪後の情況(示談の有無等)により、検察官が被疑者の訴追を必要としないと判断したときに起訴しないことをいいます。
親告罪の告訴取り下げ
その他に、親告罪について告訴が取り下げられた場合にも、不起訴となります。
親告罪とは被害者による告訴(犯人の処罰を求める意思表示)がなければ裁判をすることができない犯罪類型をいいます。
不起訴処分を得るには
統計上、日本の刑事裁判においては、起訴されてしまった場合の有罪率は99.9%と非常に高い割合を示しています。
そのため、まずは、刑事裁判にならないように、言い換えれば不起訴処分を得ることが非常に重要といえます。
そこで、不起訴処分を得るための重要なポイントをいくつか紹介します。
否認事件の場合
否認事件の場合には、否認や黙秘を貫き、自白の供述調書を取られないことが最も重要です。
他方で、厳しい取調べが続くと、なかなか1人で否認や黙秘を貫くことは難しいといえます。
そのため、取調べ対応へのアドバイスや、不当な取調べに対する抗議など、弁護士から協力を得ることをおすすめします。
被害者がいる自白事件の場合
被害者がいる自白事件の場合、被害者との示談が成立すると不起訴の可能性が高まります。被害弁償がなされていたり、被害者が被疑者を許したりすることで、処罰の必要性が低くなるため、検察官が不起訴処分を下す可能性が高まるためです。
他方で、被疑者として拘束されている場合、被疑者自らが被害者と示談交渉を進めることは非常に困難であるといえます。また、被疑者の親族が示談交渉を行おうとしても、捜査機関が被害者の情報を教えてくれる可能性はほとんどありません。そのような場合であっても、弁護士であれば、被害者との示談交渉を行える可能性は非常に高いといえるでしょう。弁護士が被害者と示談交渉を行い、被害者から「示談書」や「嘆願書」を書いてもらうことで、検察官に対し不起訴を促すこともできます。
被害者がいない自白事件の場合
薬物犯罪などの被害者がいない自白事件の場合、被疑者が事件についてしっかり反省していること、再犯の可能性がないといえること、被疑事実が軽微であることなどを主張することが重要です。
不起訴になったことはいつわかるのか
不起訴になったことが分かるまでの期間は事件によって異なります。
身柄事件の場合、勾留期間の満了までに起訴または不起訴の決定がされることが通常であるため、勾留期間の満了時に、被疑者は起訴または不起訴になったことを知ることができます。
これに対し、在宅事件の場合、捜査にかかる期間は検察の裁量によるため、起訴・不起訴の決定まで時間がかかることもあります。起訴された場合には、裁判所から起訴状が届くことで、自らが起訴されたことが分かりますが、不起訴となった場合、被疑者または弁護人から検察に連絡をして確認をしなければ、不起訴となったことを知ることができない場合もあります。
不起訴を証明するには不起訴処分告知書の請求を
不起訴処分となったことを証明したい場合には、検察に対して不起訴処分告知書の交付を請求しましょう。
不起訴処分告知書には、被疑者の氏名、被疑事実の内容、その被疑事実について不起訴処分となったことや不起訴処分が下された日付などが記載されます。
他方で、不起訴となった理由については記載する義務がないため、理由について記載される場合もあれば、記載されない場合もあります。
不起訴処分を得るには、早期の弁護活動が重要です。
不起訴処分となれば、前科がつくことはありません。
他方で、上記のとおり、起訴されてしまうと99.9%有罪となり、前科がついてしまいます。
そのため、被疑者として逮捕された場合や、捜査機関から捜査を受けている場合には、不起訴処分を得ることが非常に重要であるといえます。
また、逮捕されている場合には、一部の犯罪を除き、最長で23日間以内に不起訴処分を得る必要があります。
したがって、身柄事件、在宅事件いずれにしても、被疑者となって捜査機関から捜査を受けている場合には、不起訴処分を得るための活動に制限が課されることがない弁護士に早期に相談されることをおすすめします。
この記事の監修
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埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。