不同意わいせつ罪(強制わいせつ罪)とは|対象となる行為や刑罰
以下の記事では、不同意わいせつ罪について詳しく解説していきます。
不同意わいせつ罪は、従来、強制わいせつ罪と呼ばれていた犯罪で、大幅な改正がされ、令和5年(2023年)7月13日からすでに新しい法律が施行されています。
以下の記事では、改正点についても取り上げていきたいと思います。
目次
不同意わいせつ罪とは
不同意わいせつ罪とは、「暴行」「脅迫」「障害」「アルコール」「薬物」「フリーズ」「虐待」「立場による影響力」などが原因となって、被害者が同意しない意思を形成(NOと思うこと)したり、表明(NOと言うこと)したり、全う(NOを貫くこと)することが難しい状態で、わいせつな行為をすると成立する犯罪です。
不同意わいせつ罪の構成要件
被害者が同意しない意思を形成(NOと思うこと)したり、表明(NOと言うこと)したり、全う(NOを貫くこと)することが困難となり得る行為・事由として、8つの類型が例示されています。
8つの類型(下記①から⑧)の事由により、被害者がわいせつな行為に同意しない意思を形成したり、表明したり、全うすることが困難な状態になっていることが必要です。
- 「暴行」「脅迫」
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「心身の障害」
身体障害、知的障害、発達障害及び精神障害のことであり、一時的なものを含みます。 - 「アルコール」「薬物」の影響
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「睡眠その他の意識不明瞭」「その他の意識不明瞭」
例えば意識がもうろうとしているような、睡眠以外の原因で意識がはっきりしない状態をいいます。 -
「同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと」
例えば不意打ちのようなことがこれにあたります。 -
「予想と異なる事態との直面に起因する恐怖又は驚愕」
いわゆるフリーズの状態のことで、予想外の事態に直面し、自分の身に危害が加わると考え、極度に不安になったり、強く動揺して平静を失った状態をいいます。 -
「虐待に起因する心理的反応」
虐待を受け、それを通常の出来事として受け入れたり、抵抗しても無駄だと考える心理状態や、虐待を目の当たりにしたことによる、恐怖心を抱いている状態などをいいます。 -
「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮」
祖父母・孫、上司・部下、教師・生徒などの立場ゆえの影響によって、不利益が生じることを不安に思うことなどがあたります。
改正前「強制わいせつ罪」との違い
従来の強制わいせつ罪では、「暴行」「脅迫」といった要件により、被害者が自由な意思決定をすることが困難な状態であったかといったことを判断していました。
しかし、これに対して、「暴行」「脅迫」といった要件の解釈により犯罪の成否にばらつきが生じ、犯罪の成立範囲が限定的に解釈されるのではないかといった指摘がされていました。
そこで、不同意わいせつ罪では8つの類型を設けて犯罪の成否にばらつきが生じないようにし、犯罪の成立範囲が限定的に解釈されることのないように整備しています。
不同意わいせつ罪の対象となる行為
「わいせつ」という言葉は、法律的には、いたずらに性欲を興奮または刺激せしめ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為をいうとされています。
具体的には、被害者の意思に反して強引にキスをしたり、乳房や陰部を触ったりする行為などがあげられます。また、不意に乳房や陰部を触るような行為もわいせつ行為にあたります。
16歳未満の子どもに対するわいせつ行為
従来の強制わいせつ罪では、13歳未満の人に対してわいせつな行為をした者は被害者の同意に関わらず処罰されていました。
しかしながら、改正された不同意わいせつ罪では、13歳未満の人に対してわいせつな行為をした者に加えて、13歳以上16歳未満の人に対してわいせつな行為をした者が被害者よりも5歳以上年長である場合にも被害者の同意に関わらず処罰されることになります。
配偶者へのわいせつ行為
従来の強制わいせつ罪においても、配偶者間のわいせつ行為であっても成立すると理解されていました。
改正後の不同意わいせつ罪では、「婚姻関係の有無にかかわらず」との文言を加えて、条文上も配偶者間でも成立することを明確化しています。
不同意わいせつ罪の刑罰
不同意わいせつ罪の法定刑は6か月以上10年以下の拘禁刑となっています。
不同意わいせつ罪には罰金刑の定めがないので、起訴されると略式裁判といった簡易な裁判の形式ではなく、公開法廷で審理されることになります。
拘禁刑とは、懲役刑と禁錮刑を統合する形で創設された新しい刑罰です。
拘禁刑に処せられた者には、改善更生のため、必要な作業を行わせ、必要な指導を行うことができるとされています。
不同意わいせつ罪の時効
改正により不同意わいせつ罪の時効期間は7年間から12年間に5年間延長されています。
また、心身ともに未熟な子どもや若年者は、被害者が18歳未満である場合には、犯罪が終わったときから被害者が18歳になる日までの期間を加えることにより、時効期間が更に延長されています。
例えば、12歳の人が不同意わいせつの被害を受けた場合、時効完成は18年後(12年+6年)になります。
不同意わいせつ罪とその他の性犯罪の違い
16歳未満の者に対してはわいせつ目的で面会を要求することも犯罪が成立し得ます。
16歳未満の者に対する面会要求等の罪として改正により新設されました。
具体的には、16歳未満の子どもに対して、以下のいずれかの行為をすると処罰されます。
- わいせつ目的で、うそをついたり金銭を渡すと言うなどして、会うことを要求すること
- ①の要求の結果、わいせつ目的で会う
- 性的な画像を撮影して送信することを要求する
不同意性交等罪とは
従来の強制性交等罪が不同意性交等罪に改正されました。
不同意強制性交等罪の要件は、不同意わいせつ罪と共通部分が多く、「暴行」「脅迫」「障害」「アルコール」「薬物」「フリーズ」「虐待」「立場による影響力」などが原因となって、被害者が同意しない意思を形成(NOと思うこと)したり、表明(NOと言うこと)したり、全う(NOを貫くこと)することが難しい状態で性交に及ぶことで成立します。
従来、「性交等」は、陰茎の膣への挿入(性交)、陰茎の肛門への挿入(肛門性交)又は陰茎の口への挿入(口腔性交)と定義されていました。
不同意性交等罪では、これらに加えて、膣又は肛門に陰茎以外の身体の一部又は物を挿入する行為についても、「性交等」に含むこととされました。
不同意わいせつ罪の弁護活動
近年、性犯罪に関する国民の関心は高く、重大犯罪として重罰化の傾向があるといえます。
他方、被害者に与えた被害が重大とはいえない場合、初めて不同意わいせつ罪を行った場合、深く反省している場合などには、不起訴処分になることもあり得るといえます。
不同意わいせつ罪で逮捕されている場合には、弁護士にいち早く相談して、釈放に向けた活動をしていくべきであるといえます。
また、弁護士に相談して依頼することで最終的に下される処分を軽くすることもできるようになります。
不同意わいせつ罪でご家族が逮捕された場合や不同意わいせつ罪の嫌疑をかけられているような場合には、ぜひ弁護士に相談してみてください。
この記事の監修
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埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。