起訴とは?起訴までの流れや行うべきことを解説
刑事裁判手続きにおける起訴とは何か、起訴されるまでの手続きの流れに沿って、起訴前と起訴後で、できることは何かを以下でご説明します。
目次
刑事事件における起訴とその種類
起訴とは、検察官が捜査の対象となった「事件」のうち、不起訴とせずに裁判所に公訴を提起することをいいます。起訴には、身柄を拘束されたまま起訴される通常の起訴、身柄を拘束されていない状態で起訴される在宅起訴があります。また、通常の公判手続きのほかに、公判手続きによらずに書面審理のみで、100万円以下の罰金等を支払うことになる略式起訴があります。
通常の起訴
検察官が、被疑者の身柄を拘束(逮捕とこれに引き続く勾留を意味します。)したまま裁判所に公訴を提起します。
在宅起訴
通常の起訴と異なり、在宅起訴は、検察官が、被疑者の身柄を拘束しないまま裁判所に公訴を提起します。在宅起訴とするかどうかは、犯罪の重大性・悪質性・逃亡のおそれ、証拠隠滅のおそれなどの事情を総合して判断されています。
略式起訴
略式起訴とは、検察官が、簡易裁判所の管轄に属する事件について、公判手続によらないで、書面審理のみで被告人に100万円以下の罰金または科料の裁判を公訴の提起と同時に裁判所に請求することをいいます。
不起訴
検察官は、公訴提起の要件を満たし証拠に基づいて有罪判決を得られる高度の見込みがある場合であっても、必ず起訴しなければならないわけではありません。犯人の性格、年齢、境遇、犯罪の軽重、情状、犯罪後の情況等により訴追を必要としないときには、公訴を提起しない、すなわち、不起訴処分とすることが認められています。
起訴されたらどうなる?
以下では、検察官によって、起訴された場合について、ご説明します。
立場が変わる
事件の犯人であると疑われていた被疑者という立場から、犯罪をしたと確実な嫌疑を有する被告人という立場に変わります。
身柄の拘束が続く
被疑者として身体拘束を受けていた者は、被告人として引き続き身体拘束を受けることになります。ただ、被告人勾留では、被疑者勾留の段階では認められていなかった保釈を請求することができるようになります。
在宅起訴の場合には、被疑者段階と同じように、身体拘束を受けることなく、裁判の日を待つことになります。
生活への影響が大きくなる
起訴されて、有罪判決を受けた場合には、前科がついてしまいます。そのため、前科がつくことにより、解雇される可能性があったり、一定の職業に就くことが制限されたり、履歴書の賞罰欄への記載が求められたりするなどの社会生活への影響が生じます。
起訴までの流れ
起訴されるまでの流れ、起訴された後に何ができるのかをご説明します。
身柄事件の起訴までの流れ
検察官は、身柄送致された被疑者を受け取り、逮捕に引き続き勾留する必要があると判断した場合には、裁判官に勾留の請求をし、裁判官によって勾留がなされます。そして、被疑者勾留の期間内に、検察官が起訴するかしないかを決定します。
逮捕から判決までの流れを詳しく見る起訴・不起訴決定までの期間
司法警察職員によって逮捕された場合を想定すると、最短で、逮捕から72時間以内で、検察官が公訴を提起するかを決定します。逮捕・勾留をともなう身柄事件であれば、当初の勾留の10日間、延長を含め最長20日間で公訴されるか釈放されるかが決定します。
在宅事件の起訴までの流れ
在宅事件では、検察官が被疑者を起訴するか釈放するかの判断のための法定期間は特に定められていません。そのため、捜査が続行され、起訴されるまでに場合によっては半年かかることもあります。
起訴された場合の有罪率
99%を超える有罪率です。これは、検察官が、無実の人が訴訟負担の不利益を被ることを避けるため、的確な証拠によって有罪判決が得られる高度の見込みのある場合に限って起訴するという運用になっているからです。
起訴後の勾留と保釈について
①勾留の理由または必要がなくなった場合、②勾留による拘禁が不当に長くなったときは勾留が取り消されることがあります。
また、勾留の執行を停止して、被告人の身体拘束を解く制度に「保釈」制度があります。保釈は、逃亡や罪証隠滅のおそれの程度、被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上または防御の準備上の不利益の程度その他の事情が考慮された結果、身元引受人が存在すること、一定額の保釈金を納付すること等を条件に勾留の執行が停止され、身体拘束が解かれます。
起訴されたくない場合は?
検察官が、起訴するかまたは不起訴処分とするかを決定します。起訴されると前科がつく可能性があり、前科がつかないようにするために、「罪とならず」、「嫌疑不十分」「起訴猶予」等の不起訴処分を獲得することが重要です。
不起訴処分の獲得
痴漢事件や窃盗事件のような被害者がいる犯罪については、被害者との示談交渉が重要になってきます。被害者との間で示談が成立していることで、不起訴処分になる可能性が高くなるからです。
起訴前・起訴後に弁護士ができること
起訴前にできること
起訴前には、被害者との示談交渉を行うことで不起訴処分を目指すことができます。また、被疑者が無罪を主張している場合には、被疑者の供述の裏付け証拠の収集活動、それらの証拠を基に検察官に嫌疑不十分を理由として不起訴処分を求める意見書を提出することなどができます。
起訴されるまでの初動のタイミングでどれだけ弁護活動ができたのかによって、結果は変わったものになりかねません。
起訴後にできること
起訴後でも、起訴前に実現できなかった被害者との示談交渉を行うことで、示談が成立すれば、情状面で量刑に有利に働かせることができます。 また、執行猶予付きの判決を獲得するための弁護活動をすることができます。
起訴に関するよくある質問
在宅起訴と略式起訴の違いがよくわかりません。
在宅起訴は、身柄が拘束されたままの状態で検察官によって起訴されることを言います。略式起訴は、身柄の拘束とは関係なく、略式手続という簡易な手続きで検察官が起訴するものです。そのため、在宅起訴であり、かつ、略式起訴ということもあり得ます。
被害者と示談出来た場合、起訴を取り消してもらうことはできますか?
起訴された後での被害者との示談が成立した場合には、起訴の取り消し事由になりませんが、量刑で考慮されることになります。
起訴と逮捕は何が違いますか?
起訴は、検察官が、裁判所に提起するものであり、逮捕とは、犯罪の証拠隠滅及び被疑者の逃亡を防ぐための身柄拘束をいい、全くの別物です。
起訴された後、裁判までの期間はどれ位かかるのですか?
起訴後、裁判までの期間は、事件によって異なります。即決裁判では、起訴後14日以内に裁判が行われ、当日中に判決が言い渡されますが、通常の裁判では、約1ヶ月程度で、日程が決まります。
ご家族が起訴されるかもしれない場合、一刻も早く弁護士へご連絡ください
逮捕された場合には、弁護士に一刻も早くご相談ください。そのときそのときにできる弁護活動がありますし、不起訴処分にできる可能性があるからです。前科がつかないようにするためにも、早めのご相談をお勧めします。
この記事の監修
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埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。