埼玉の弁護士による刑事事件の相談

痴漢で逮捕されたら?刑罰や逮捕された場合の注意点について

強制わいせつ罪 6月以上10年以下の懲役(刑法176条)
公然わいせつ罪 6月以上の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料(刑法174条)
迷惑防止条例違反 6月以下の懲役または50万円以下の罰金(東京都の場合)

痴漢は、人が密集する様々な場所で行われることが多い犯罪であるといえます。特に電車通勤をされている方々にとっては、「痴漢被害に遭ってしまうかもしれない」という恐怖に加え、「痴漢の疑いを掛けられるのではないか」という恐怖もあるかもしれません。このように、痴漢という犯罪行為は一番身近な犯罪の1つであり他人事ではありません。
本記事では痴漢に関する知識や、痴漢を疑われた場合の適切な対応等について、弁護士が解説いたします。

そもそも痴漢とは?

「痴漢」という単語の定義をした法令はないようですが、一般的な理解として「痴漢」とは、相手の意思に反して卑猥な言動や行為などの嫌がらせをすることをいうと考えられています。
そのため、痴漢の加害者、被害者に性別は関係ありません。

痴漢が行われる場所・ケース

前述したように、痴漢は、人が密集する様々な場所で多く発生します。具体的には電車等の公共交通機関や駅構内等の場所でしょう。
警視庁が2020年に発表した統計「都内における迷惑防止条例違反の検挙、性犯罪(強制わいせつ・強制性交等)の認知状況(令和4年中)」によれば、迷惑防止条例違反となる痴漢(卑わい行為)の場所別検挙状況は、電車28%、駅構内28%、店舗内6%、路上11%、商業施設8%、バス1%、その他18%となっています。
また、痴漢が最も多く発生する時間帯は、通勤時間帯の午前7時から午前9時までであるということも同統計から分かります。
これらの統計からも、痴漢という犯罪行為は、多くの人にとって身近なものであるといえます。

刑事事件に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
刑事事件ご相談受付 24時間予約受付・年中無休・通話無料

痴漢の刑罰

ここまで本記事をお読みになってお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、「痴漢罪」という犯罪はありません。痴漢はその犯行の態様によって、成立する犯罪が異なります。
以下では、実際に考えられる具体的な犯行態様を例として挙げ、それぞれどの犯罪が成立するのか、その種類や実際の刑罰についてご説明いたします。

迷惑防止条例違反

「迷惑防止条例」とは、各都道府県の定めている条例のことをいいます。痴漢の中でも、比較的軽微な態様であるものについて、この迷惑防止条例違反が成立します。
埼玉県の迷惑防止条例では、相手を羞恥させまたは不安を覚えさせるような態様でする盗撮行為や覗き行為、身体に触れること等が規制の対象となっています(同条例2条の2)。

例えば、公共の場所で、他人の身体に触れた場合には、迷惑防止条例違反となります。

強制わいせつ罪

「強制わいせつ罪」は、暴行又は脅迫を手段としてわいせつな行為をした場合や、十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした場合に成立する犯罪です。
ここでいう「暴行または脅迫」とは、相手の反抗を著しく困難にする程度のものを指し、具体的には相手の手足や顔を押さえつけたりする行為等が挙げられます。
このように、迷惑防止条例と比較して、犯行の態様が甚大であるという特徴があります。

強制わいせつ罪について詳しく見る

公然わいせつ

「公然わいせつ罪」とは、その名の通り、公然とわいせつな行為をした場合に成立する犯罪です。
ここでいう「公然」とは、不特定多数の人が認識できるような状態にあることを指し、具体的には、路上や公共交通機関内で陰部を露出する行為等が挙げられます。
上記2つの犯行と比較すると、相手への身体的な接触がなく、犯行の態様としては比較的軽微であるという特徴があります。

痴漢で逮捕される場合とは

現行犯逮捕

「現行犯逮捕」とは現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者を逮捕することをいいます(刑事訴訟法212条1項)。具体的には、まさに痴漢行為をしている者をその場で逮捕するケース等が挙げられます。
現行犯逮捕とは別に「準現行犯逮捕」というものもあり、これは罪を行い終ってから間がないと明らかに認められる場合で、一定の要件を満たす者を逮捕することをいいます(刑事訴訟法212条2項1号~4号)。
具体的には、犯人による痴漢行為後、被害者がその犯人を追いかけている間に、駅員等が犯人を捕まえるケース等が挙げられます。
これらの逮捕行為は、捜査機関のみならず、私人であっても令状なく行うことができます(刑事訴訟法213条)。

後日逮捕

現行犯逮捕等の痴漢行為を行った当日逮捕ではなく、後日、捜査機関から逮捕令状によって逮捕される場合もあります。
逮捕令状は、請求を受けた裁判官によって、「被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由」があると判断された場合に発行します。その判断の資料としては被害者の供述、防犯カメラの解析等が挙げられます。

逮捕・勾留の流れ

どの事案においても逮捕された場合には、最大72時間の身柄拘束がされます。その間に、警察官や検察官による取り調べが実施され、身体拘束を延長する「勾留」をするかどうかが決定されます。勾留された場合には最大20日身柄が拘束されることになり、その期間の間に、本件を起訴するかどうかが決定されます。
なお、逮捕されている間は、家族であっても会うことができず、被疑者に会うことができるのは、弁護人又は弁護人になろうとする者(弁護士)に限定されています。

逮捕後の流れについてみる

逮捕されない場合

当日逮捕も後日逮捕もされず、身柄を拘束されていない状態で操作が進行する場合もあります。これは、被疑者の身分が安定しており、逃亡のおそれや、罪証隠滅のおそれ等逮捕の必要性がない場合です。
なお、この場合であっても、捜査機関から、取調べや実況見分のために呼び出されることがあります。呼び出しに応じないことが続くと、逃亡のおそれがあると判断され逮捕される場合もあるため、可能な限り取調べ等で呼ばれた場合には応じましょう。

生活への影響

前述のとおり、逮捕されてしまった場合には最大72時間、身柄が拘束されることになり、さらに勾留をされた場合には、最大20日間の身体拘束が続くことになります。
当然、この間は職場にも行けないため、不自然な欠勤が長期間続けば、職場にばれることもあり、最悪のケースとしては解雇される場合もあります。また、その間は収入を得ることもできなくなるため、扶養しているご家族がいる場合には、さらに影響が大きいといえます。
また、痴漢行為であっても、強制わいせつ罪として逮捕や起訴をされた場合、実名報道される可能性もあります。

痴漢で逮捕された場合すべきこと

次に、痴漢で逮捕された場合、捜査機関による取調べに対してどのように答えればよいか、という点についてご説明いたします。

実際行った場合は否認せず認める

実際に痴漢行為をしてしまった場合には、素直に認めることがよい結果につながることが多いでしょう。
現行犯逮捕の場合には、被害者の供述以外の客観的証拠が収集されていることも多くあり、否認を続けたとしても言い逃れできない場合が多いです。

通常逮捕の場合には、請求を受けた裁判官によって、証拠をもとに「被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由」があると判断されているため、この場合においても言い逃れできない場合が多いです。
仮に、身柄が拘束されている状況で否認を続けると、捜査機関において、否認の理由を排斥するための証拠を収集する必要等があるとして、身体拘束を延長される場合があります。
よって、実際に痴漢行為をしてしまった場合には、犯行を認めたうえで、示談によって不起訴や比較的軽い処分を目指すことが合理的でしょう。

不起訴を獲得し前歴で食い止める

「前科」とは、起訴後の裁判によって有罪判決の言い渡しを受け、その刑が確定した履歴のことをいいます。「前歴」とは、捜査機関から逮捕され被疑者として捜査の対象となった履歴のことをいいます。
前科が付いた場合には、履歴書等の賞罰の欄に記載をする必要があり、一定の職業には、そもそも就くこと自体ができなくなります。他方、前歴にはそのような不利益はありません。
このように前歴と前科では大きな差があります。不起訴となった場合には、前科は付かず、前歴だけが残ります。逮捕をされた場合には、可能な限り不起訴処分の獲得を目指し、前科ではなく前歴で食い止めるようにするべきでしょう。

釈放されたいからといって罰金刑にしない

捜査機関によっては、「認めれば罰金刑で済ませられ、すぐに釈放できる」という話をする場合があります。
罰金刑は刑罰の一種であり、罰金刑に処されると前科になるため、安易にこの言葉に乗って犯行を認めるべきではありません。実際に痴漢を行っていても、被害者との示談が成立すれば、罰金刑ではなく不起訴になる可能性もあります。
他方で、実際に痴漢を行っていないにもかかわらず、犯行を認めることは、冤罪による処罰そのものです。この場合においても、犯行を認めず、まずは身柄解放を目指しながら、適切な防御を行いましょう。
このように、犯行を認めるかどうかには弁護士による専門的な判断も必要となります。早期の段階で弁護士に依頼し、判断を仰ぐことをお勧めいたします。

前科についてみる

痴漢に関する裁判例

ここで被告人を無罪と判断した最高裁判例をご紹介いたします。

(最高裁判所第3小法廷平成21年4月14日最高裁判所刑事判例集63巻4号331頁)
同判例は、強制わいせつ罪として起訴された被告人に対し、無罪を言い渡したものです。
同判例の判決文では、➀証拠が被害者の供述があるのみであり、物的証拠等の客観的証拠は存しないこと(客観的証拠の有無)、➁被告人が捜査段階から一貫して犯行を否認していること(被告人の供述の一貫性)、➂被告人に前科、前歴がなく、この種の犯行を行うような性向をうかがわせる事情がないこと(被告人の性向)、➃被害者の供述内容が不合理であること(供述の合理性)等のポイントを指摘し、被告人を無罪としました。
これらのポイントは、被疑者や被告人が痴漢事件で否認している事案で特に着目すべき事情といえるでしょう。

よくある質問

痴漢の被疑者が学生だった場合、刑罰に違いはありますか。

当該被疑者学生に、前科や前歴がなく、更生の余地が認められる場合には、比較的軽い処罰になる可能性はあります。しかし、このように判断されない場合も当然あります。また、学生であっても成人をしている場合には、学生でない一般的な成人と同様の判断になります。 あくまでも、犯罪行為をしたことには変わりはないため、今後二度と同じ犯行に及ばないようどうするかを考えるべきでしょう。

現場から逃げてしまったのですが、後ほど自首した場合刑罰は軽くなりますか。

現場から一度逃走したものの、現場に戻り出頭したような場合には、反省の有無や更生の余地等の情状の面で考慮してもらえる可能性はあります。
また、捜査機関によって犯人が特定される前に、自ら出頭したことで、逮捕になる可能性が減少するということもあります。そのため、身元保証人等を確保してから出頭するのがよいでしょう。

刑事事件に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
刑事事件ご相談受付 24時間予約受付・年中無休・通話無料

痴漢で逮捕されたら弁護士へすぐご連絡ください

痴漢事件に限らず、被疑者・被告人となった場合には、身柄解放や不起訴に向けた適切かつ迅速な弁護活動が不可欠です。特に、被害者との示談や捜査機関による取り調べへの対応等は専門的な知識や技術が必要となります。

そのため、犯罪の被疑者・被告人となった場合には、必ず弁護士にご相談ください。
この点、弊所では再犯防止に向けた活動にも力を入れており、数多くの痴漢事件の刑事弁護を扱っております。弊所所属の弁護士は、迅速に行動するとともに、事件の問題点を適切に把握し、最善の弁護活動をすることを皆様にお約束いたします。

この記事の監修

弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 所長代理 弁護士 辻 正裕
弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長弁護士 辻 正裕
埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。

逮捕されたらすぐにご相談ください

72時間以内の
弁護活動が勝負です!

我々は、ご依頼者様との接見や打合せ、証拠の収集、捜査機関に対する申入れ、裁判所に対する申立て、
法廷における主張・立証、再犯防止に向けた専門機関との連携などを通じて、刑事事件の適正妥当な解決を図ります。

  • 無料
    法律相談
  • 24時間
    予約受付
  • 迅速対応
メールはこちら

※無料法律相談が可能なご家族は、法律上の夫、妻、子、父母、祖父 母、兄弟姉妹です。
※ご相談内容により有料相談となる場合がございますのでご了承ください。 
※無料法律相談の時間は1時間です。
※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。