前科とは?生活への影響など
前科がついてしまうと、周囲の人に自分の前科がばれ、生活に大きな影響が出てしまうのではないかと心配される方が多くいます。
そこで、今回は、前科がつくと生活にどのような影響が出るのか、また前科を回避するにはどうすれば良いかという点を中心に解説をします。
目次
前科とは
前科とは、有罪の確定判決を受けた経歴のことをいいます。
有罪の確定判決には、懲役刑や禁固刑のみならず、罰金刑など身体の拘束を伴わない刑罰も含まれます。
他方で、軽微な交通違反により反則金を支払った場合や少年事件において審判が下された場合(少年院送致など)は、前科にはなりません。
ただし、重大な交通違反(無免許運転、飲酒運転など)の場合は、反則金を支払ったとしても刑事責任が免責されない場合もあり、前科がつくことがあります。
また、少年事件であっても、刑事処分が相当であると判断され、事件が家庭裁判所から検察官に送致された場合には、成人と同様に前科がつくことがあります。
前科と前歴の違い
前科と前歴は、混同されがちですが、大きく異なるものです。
前科は、有罪の確定判決を受けた経歴のことをいいますが、前歴は、逮捕された経歴のことをいうため、有罪判決の有無にかかわらず(不起訴処分であっても)記録されることになります。
他方で、前歴は、あくまでも捜査機関の記録として残るものでるため、再度何かしらの犯罪をした場合に、処分を判断する資料として使用されることはありますが、そうでなければ特に生活に影響を与えることはありません。
前歴とは?前科の記録は残るか
一定期間を経たとしても、前科そのもの(過去に有罪判決を受けた事実そのもの)が消えることはありません。
他方で、前科がついてから、罰金刑以上の刑を受けないまま一定期間を経ると犯罪者名簿からは削除されることになります。
犯罪者名簿とは
前科のある人は、各種資格が制限される場合があります。
そこで、前科の有無を把握するために市区町村で保管される帳簿を犯罪人名簿といいます。
また、犯罪人名簿は、選挙権・被選挙権の調査のために用いられることもあります。
犯罪人名簿から削除されるとき
刑の言い渡しの効力がなくなった場合には、犯罪人名簿から削除がされます。
執行猶予の場合には、猶予期間を経過した場合に、刑の言い渡しの効力がなくなります(刑法27条)。
懲役・禁固の場合には、原則として、刑の執行を終えてから10年を経過したときに、刑の言い渡しの効力がなくなります(刑法34条の2前段)。
罰金の場合には、原則として、刑の執行を終えてから5年経過したときに、刑の言い渡しの効力がなくなります(刑法34条の2後段)。
インターネット上に情報は残る可能性はある
インターネットが発達した現代社会においては、逮捕された記録や有罪判決が下された記録は、インターネット上で削除されないまま、何年も残ってしまうケースがあります。
このような情報については、裁判によって削除請求が認められる場合や、サイトの運営側に弁護士が交渉することにより削除されることもあるため、お悩みの方は、弁護士に相談されることをおすすめします。
前科がつくことによる生活への影響
就職に不利になることがある
就職の際に、積極的に前科を申告する必要はありません。
しかし、履歴書に「賞罰」の記載があるにもかかわらず、虚偽の記載をした場合や、面接で前科の有無を尋ねられたにもかかわらず、虚偽の申告をした場合には、経歴を詐称したものとして、後日不利益を被る可能性があります。
また、前科があると、原則として国家公務員や地方公務員になることはできません。
その他、弁護士、医師、弁理士、司法書士、税理士、保育士、警備員など、前科があることにより、一定期間就くことができない職業もあります。
前科は離婚の理由になるか
離婚は、原則として当事者の合意によりすることができます。
当事者の同意なく離婚を成立させるには、離婚の理由として法律上定められた要件を満たす必要があります(民法770条1項各号)。
そして、前科そのものが直ちに離婚の理由になるとは考えられていませんが、前科を伏せていたことなどが「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたると判断される場合には、離婚が成立する可能性があります。
ローンは組めるか
ローンを組む場合は、金融機関が、個人信用情報機関に問い合わせを行うなどして、債務者の情報を総合的に判断することになります。
他方で、前科・前歴は、個人信用情報機関に記録されることはないため、前科・前歴があったとしてもローンを組むことは可能です。
生活保護や年金はもらえるか
生活保護や年金の受給要件に前科・前歴の有無は含まれていません。
したがって、前科・前歴があったとしても、生活保護や年金は受給することが可能です。
海外旅行はできるか
前科がある場合、「禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者」(旅券法13条1項3号)にあたり、パスポートの発給が制限されることがあります。
また、パスポートの発給が認められても、前科・前歴があることで、渡航先の入国審査によっては入国できない場合もあります。
前科は回避できるのか
不起訴処分となれば前科はつかない
刑事事件について、検察官が裁判所に対し訴えを起こさないと決定することを不起訴処分といいます。
もっとも、起訴するか不起訴とするかは、法律上、検察官の裁量によるとされています(刑事訴訟法248条)。
また、検察統計によると、刑法犯(過失運転致傷、道路交通法違反を除く)の不起訴率は約60%であり、そのうち起訴猶予処分(不起訴処分の一種)は約70%となっています。
したがって、罪を犯したとしても、必ず起訴されるわけではありません。
他方で、起訴された場合の有罪率は、99.9%であり、一度起訴されると、ほぼ確実に有罪となり前科がついてしまいます。
不起訴処分には示談の成立が重要
不起訴処分となるかは、被害者と示談しているか否かが大きな考慮要素となります。
しかし、加害者が被害者と直接示談交渉を行うことは通常ありませんし、検察官が、加害者と被害者の間に入って示談交渉を行うこともありません。
他方で、弁護士が、加害者と被害者の間に入り、示談交渉を行い、示談を成立させることで、不起訴処分となることや、起訴されても刑が軽くなる可能性を高くすることができます。
前科がつくのを回避するには、弁護士へご相談ください
前科がつくと、一定の職業に就けなくなったり、日常生活に影響が出ることもあります。
刑事事件の被疑者となってしまった場合などには、ぜひ一度弁護士へご相談ください。
この記事の監修
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埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。