路上痴漢とは|逮捕される場合と対処法
路上痴漢という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、法律上の言葉ではございません。路上で痴漢が行われたことを指してこのように呼ぶことがあります。
路上痴漢をした場合に、逮捕されることがあるのかまたは、どのような刑罰が科せられるのかをご説明いたします。
路上痴漢について
痴漢とは、相手の意に反してわいせつな言動や行為などの性的嫌がらせをすることをいいます。
典型的には、満員電車などで密着した異性の身体を相手方の意に反して触る行為がこれに当たります。
では、どのような行為が路上痴漢として行われるのでしょうか。以下では、路上痴漢の具体的な行為及び路上痴漢をした場合に逮捕されることがあるのか等について解説していきます。
痴漢で逮捕されたら?刑罰や逮捕された場合の注意点について路上痴漢となる行為
路上で行われる痴漢とは、以下のような行為を指します。
- 夜道などの人通りの少ない場所で突然、抱きつく、胸を触る行為
- 路上で突然、衣類を脱がそうとしてくる
- 夜道を歩いていて、見知らぬ人から突然、体液をかけられる
- 夜道で、通りすがりに卑猥な言葉を投げかける
路上痴漢の刑罰
路上痴漢も満員電車での痴漢と同様に、犯罪行為となります。そのため、刑罰が科せられます。
路上で上記のような痴漢行為を行った場合、どのような刑罰が科せられる可能性があるのでしょうか。以下では、具体的な刑罰について解説していきます。
迷惑防止条例違反
路上痴漢は、各都道府県が制定する迷惑防止条例違反(正式名称は、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」に該当する可能性があります。
迷惑防止条例は、各都道府県が定めるものになりますので、それぞれによって、多少内容が異なります。
東京都の迷惑防止条例を例にとると、「人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であって、公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること」を禁止する旨の規定が設けられています(東京都迷惑防止条例5条1項1号)
これに違反した場合、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
迷惑防止条例違反は、「衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること」を禁止するものであるため、例えば、路上で、すれ違いざまに衣服の上から身体に触れる行為や突然抱きつく行為が路上痴漢のうち、迷惑防止条例違反に該当する行為となります。
迷惑防止条例違反にあたる犯罪や逮捕された場合について不同意わいせつ罪
不同意わいせつ罪との言葉は耳慣れない言葉かもしれません。これは、2023年7月13日から新たに施行されている刑法上の犯罪となります。
以前は、強制わいせつ罪や準強制わいせつ罪と呼ばれていたものがこれに該当します。不同意わいせつ罪とは、相手方の同意がないのに、体を触る、キスをするなどのわいせつな行為をした場合に成立する犯罪行為です。
不同意わいせつ罪は、迷惑防止条例違反に該当する上記の行為よりも悪質性の高い行為について適用されます。具体的には、路上で見つけた相手に対して、被害者の逃げ場を塞いで執拗に触り続けるまたは被害者の帰り道を把握して計画的に痴漢行為に及ぶ行為等が挙げられます。
強制わいせつとなる行動と逮捕された場合の対処法不同意わいせつ致死傷罪
不同意わいせつ致死傷罪は、前提として、不同意わいせつ罪を行った場合または行おうとした場合に成立します。この不同意わいせつ罪の中には、「暴行」を用いてわいせつ行為に及ぶ場合があります。この「暴行」をした際に、被害者に怪我を負わせた場合に、不同意わいせつ致傷罪が成立します。「暴行」を加えて、死亡させた場合には、不同意わいせつ致死罪が成立します。
路上痴漢のうち、不同意わいせつ致死傷罪にあたる行為の具体例は、夜道ですれ違った被害者の同意なく、胸を揉むなど衣服の上からわいせつ行為に及んだ際、被害者から抵抗されたので、腕をつかんで押し倒したことにより、被害者に擦り傷を負わせた場合などです。
路上痴漢の逮捕
路上痴漢をした場合には、逮捕される可能性があります。具体的には、その場で逮捕される現行犯逮捕または後日犯罪行為が行われたことが発覚して逮捕される後日逮捕があります。
以下では、現行犯逮捕及び後日逮捕される場合について解説いたします。
現行犯逮捕
現行犯逮捕とは、現に罪を行い終わってから間がない者を逮捕することをいいます。
路上で被害者に対し、わいせつ行為を行っている最中に取り押さえられる、またはその行為を目撃した人に追いかけられて取り押さえられる等が典型的な現行犯逮捕となります。
現行犯逮捕は、犯罪行為が起きてから間がないときに捕まえることになるため、逮捕者にとって、誤認逮捕のおそれが低いといえます。そのため、私人による逮捕も可能となります。
後日逮捕
後日逮捕とは、犯罪行為が後日明らかになり、逮捕状に基づいて逮捕することをいいます。
具体的には、被害者などから警察に通報があり、犯罪行為が明らかになることで、捜査が開始され、犯人の身元が明らかになり、後日逮捕されることになります。
後日逮捕するためには、現行犯逮捕と異なり、誤認逮捕の可能性があるため、犯罪行為が行われたことを証拠によって明らかにし、裁判官によって発布される逮捕状に基づいて逮捕する必要があります。
後日逮捕の証拠となりやすいもの
後日逮捕の場合には、上記のとおり、証拠に基づいて逮捕状が発布されなければ逮捕ができません。路上痴漢の場合に、犯罪行為があったとする証拠としては、防犯カメラの映像などが考えられます。
現在は、路上に防犯カメラが設置されていることが多く、犯罪行為が発覚する可能性が高いといえます。
路上痴漢で逮捕された・される可能性がある場合弁護士へご相談下さい。
路上痴漢をしてしまった場合、上記のとおり、後日逮捕される可能性があります。
ご自身が捜査されていることは、基本的に逮捕がされるまでわからないことがほとんどです。早期に示談交渉をするなど、対応を迅速に行うことで、逮捕されずに事件を解決するまたは逮捕されたとしても早期に釈放される可能性があります。
弁護士にご相談いただければ、今後の手続の流れをご説明するとともに、示談交渉を早期に進めるお手伝いを行います。
ご自身が逮捕される可能性がある場合には、弁護士に一度ご相談することをご検討ください。
路上痴漢で逮捕されたら
逮捕後に勾留されず在宅事件となる場合
逃亡または罪証隠滅のおそれがあり、捜査に支障が生じる可能性がある場合に逮捕されます。逮捕されて捜査機関による捜査が進み、証拠等の収集が済んでいる場合には、上記のおそれがなくなっているものといえます。痴漢事件の場合、証拠となるのは、被害者の証言や防犯カメラの映像となります。逮捕される際に、防犯カメラは既に捜査機関が収集していることが多く、その他に具体的な証拠がないことが考えられます。そのため、多くの痴漢事件では、逮捕され、捜査機関からの取調べに応じると、釈放され在宅事件に切り替わります。
逮捕後勾留される場合
上記のとおり、逮捕後に釈放されるには、逃亡及び罪証隠滅のおそれがないことが必要となります。
被害者が怪我をして不同意わいせつ致死傷罪に該当する場合には、量刑が重くなることを考えて、被害者を脅迫するなどして証拠隠滅を図るおそれがあると考えられることがあります。また逮捕される際に逃亡を図った場合などは、さらに逃亡するおそれがあると判断される可能性が高くなります。
この場合には、逮捕後も引き続き勾留される可能性があります。
逮捕された時の流れを図で分かりやすく解説します路上痴漢で逮捕された場合に弁護士ができること
逮捕された場合には、被害者と示談交渉をすることで、早期の釈放がされる可能性があります。逮捕中の場合、ご自身で被害者と直接交渉することができなくなります。弁護士にご依頼いただければ、示談交渉を行うとともに、警察に早期釈放を求めます。示談交渉は、当事者同士の話し合いの手続になります。痴漢にあった被害者との交渉は、感情の対立がありますので、ご自身で行われるよりも弁護士に依頼していただく方がスムーズに進むことが多いです。
路上痴漢をした場合、前科が付かないよう弁護士へご相談下さい
路上痴漢をした場合、示談交渉をすることが重要であることは上記のとおりとなります。示談ができず、起訴され判決が出た場合には、前科がつくことになります。前科がつくと、現在就いている仕事を解雇されてしまったり、前科があることで就けない仕事があったりします。私生活においては、妻または夫から離婚を求められる可能性があります。
前科は、起訴された有罪判決が出た場合につくことになります。そのため、逮捕されたとしても、不起訴になった場合には、上記のデメリットを回避することができます。
したがいまして、路上痴漢をしてしまった場合には、弁護士に早期に相談し、被害者との示談交渉を進めることをお勧めします。
前科がつくデメリットについて路上痴漢でよくある質問
路上痴漢をして逃げる際掴まれた腕を振り切るために相手を殴ってしまいました。
暴行を用いて路上痴漢をした場合には、上記のとおり、不同意わいせつ致傷罪が成立する可能性があります。ただ、わいせつ行為をした後、逃亡している最中に腕を振りほどいた場合には、別途暴行罪が成立する可能性があります。不同意わいせつ罪と暴行罪の両方が成立する場合には、不同意わいせつ罪のみの場合に比べ、量刑が重くなる可能性があります。
過去に路上痴漢をして逃げ捕まらなかったのですが、新たに別件で捕まってしまいました。
警察や検察は、あくまで犯罪の嫌疑のかかっている事件単位で捜査をすることになります。そのため、今回の逮捕された犯罪行為についての捜査されるのが中心となります。ただ、前科がある場合には、量刑に影響を及ぼすことになるため、余罪についても捜査される可能性があります。
路上痴漢をしたのですが、被害届を出される前に謝りに行きたいと思います。
被害者との示談交渉は、早期に行うべきことは上記のとおりです。ただ、痴漢を受けた被害者としては、加害者に直接会うことを躊躇う可能性が高いケースが多いです。さらに、被害届を出す前に謝罪をすることは、加害者から被害届を提出することを思いとどまるように精神的に追い詰められたと感じ、示談交渉が難航する可能性が高くなります。
そのため、弁護士のご依頼いただき、弁護人を通じて交渉することで、被害者によっても安心して示談交渉を進めることができるようになります。
路上痴漢をして逃げてしまったのですが、自首したいと考えています。
自首をするということは、犯罪の発覚前に捜査機関に自身が犯人であること及び犯罪行為について明らかにする子ことになります。
ご自身の起こしてしまった事件について、被害者から被害届が出ていないまたは、証拠不十分であるため立件できない場合である可能性があります。その場合に、自首をすると、捜査機関に犯罪行為が発覚することになり、捜査が開始されるリスクがあります。
一方で、自ら犯人として名乗り出て、犯罪行為について明らかにしたことにより、罪証隠滅の恐れがないと判断され、逮捕されず在宅での捜査となる可能性が高まります。また、起訴されたとしても、量刑の点で考慮されて、刑が軽くなる可能性があります。
これらのメリット、デメリットを踏まえて自首するかどうかを専門家に相談の上判断されることをお勧めいたします。
駅からつけて一人になったところを路上痴漢しました。痴漢行為のほかつきまとい行為でも罪になりますか?
つきまとい行為については、ストーカー規制法の対象になる可能性があります。ストーカー規制法の対象は、恋愛感情、好意の感情を抱いていた相手に対する行為が規制対象になります。
路上痴漢した相手が、以前交際している相手や好意を寄せている相手の場合に、駅から後をつけて行って、痴漢行為を働いた場合、上記の迷惑防止条例違反または不同意わいせつ罪に加え、ストーカー規制法違反を問われる可能性があります。
つきまとい行為が繰り返し行われた場合には、悪質な行為であるとして、量刑が重くなる可能性があります。
路上痴漢の相手が中学生でした。
被害者の年齢が16歳未満の場合には、被害者の同意があるか否かに関わらず、不同意わいせつ罪が成立することになります(刑法176条3項参照)また、量刑の判断の際に、被害者の年齢が考慮され、成人に対する行為の場合よりも行為の悪質性が高いと判断され、量刑が重く判断される可能性があります。
路上痴漢で逮捕されたら、すぐに弁護士へご相談下さい
路上痴漢で逮捕されてしまった場合、直ちに弁護士に相談することが極めて重要です。逮捕されると、警察や検察による厳しい取り調べが始まり、精神的に追い詰められた状況で不利な供述をしてしまうリスクがあります。弁護士は、逮捕後すぐに接見(面会)し、取り調べに関するアドバイスや黙秘権の行使など、適切な対応を指導します。
また、弁護士は被害者との示談交渉を代理で行うことで、早期の身柄解放や、不起訴処分の獲得、あるいは刑罰の軽減を目指します。前科がつくことを避けるためにも、逮捕直後からの迅速な弁護活動が不可欠です。ご自身やご家族が路上痴漢で逮捕されてしまったら、一刻も早く刑事弁護の実績豊富な弁護士にご相談ください。
この記事の監修
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埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。