在宅事件は長期化する可能性も。呼び出しや示談など在宅捜査中の注意事項
目次
在宅事件と身柄事件の違い
在宅事件と身柄事件の違いは身体拘束があるか否かです。
在宅事件であっても、後に逮捕されてしまうことはあり得ます。
在宅事件となる条件
犯罪の嫌疑があったとしても、そのすべての事件において逮捕・勾留がされるわけではありません。
逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれが小さい等の事情がある場合には、身体拘束がされずに在宅事件となることがあります。
在宅事件となるケース(具体例)
例えば、痴漢をしたが、被疑者と被害者に面識がなく、被疑者の社会的地位が高いような場合には、逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれが小さいことから、在宅事件となることがあるでしょう。
在宅事件と起訴(略式起訴)
在宅事件では逮捕がされないことから前科がつかないのかと疑問に思われるかもしれませんが、在宅事件であっても起訴されることは珍しくありません。
したがって、逮捕がされないからといって前科がつかないとは言えません。
検察官のする起訴処分には、公判請求と略式請求があり、在宅事件であっても、起訴処分がされることはあります。
在宅事件の起訴率は?
在宅事件のうちどの程度の割合の事件が起訴されたのかということはわかりませんが、在宅事件が身柄事件に比して、軽微な事件であることが多いため、身柄事件に比して起訴されるおそれは小さいです。
在宅事件で実刑となることはあるの?
前述のとおり、在宅事件は、軽微な事件であることが多いので、身柄事件に比して実刑となるおそれは小さいです。
しかし、在宅事件であっても、行為内容や前科の有無、示談の有無によっては、起訴され、実刑となることは十分に考えられます。
在宅事件の流れ
在宅事件の場合は、立件された後も、身柄拘束がありませんから従前と同様の生活を送りながら警察官の捜査を受けることになります。警察官の捜査が終了すると、検察官に捜査書類が送致され、検察官が起訴するか否かを決めます。
検察から呼び出しがかかることがあります
書類送検とは?
書類送検とは、被疑者のうち、身体拘束されていない者の捜査書類等を検察官に送ることの通称です。法律用語ではなく、マスメディアが慣習的に用いています。
警察官が犯罪の捜査をしたときには、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなればなりません(刑訴法246条)
在宅事件の場合、被疑者が逮捕されていないので、捜査書類だけが検察官に送ることになります。このことから、警察官による書類、証拠物、事件の検察官に対する送致のうち、身柄拘束されていない被疑者について行われるものが書類送検と呼ばれています。
どのように検察から呼び出しがかかるの?
検察官に送致された後、電話等による方法で呼び出しの連絡が来ることがあります。
軽微な事件で、犯行を認めている場合には、検察官の取り調べは1、2回程度で終了することが多いです。
在宅事件のメリットは普通の生活ができること
前述のとおり、在宅事件の場合には身柄拘束がされません。
このことから従前と同様の生活を送りながら捜査を受けることになります。
身柄事件と比較すると、生活に大きな影響がないことが在宅事件のメリットであるといえます。
在宅事件のデメリットは長期化する可能性があること
身柄事件の場合には、事件終結までの時間的制約がありますが、在宅事件の場合にはこれが公訴時効しかないため、事件が長期化する傾向があります。
このことが在宅事件のデメリットであるといえます。
公訴時効まで捜査が続く可能性も
公訴時効とは、犯罪が行われたとしても、法律の定める期間が経過すれば、犯人を処罰することができなくなる定めのことをいいます。
比較的在宅事件となりやすい犯罪の公訴時効は以下のとおりです。
公訴時効1年 | 侮辱罪、軽犯罪法違反など、拘留または科料にあたるもの |
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公訴時効3年 | 暴行罪、名誉棄損罪、過失傷害罪、威力業務妨害、器物損壊罪など、人は死亡させていないが、長期5年未満の懲役または禁錮、罰金刑にあたるもの |
在宅捜査中にできること
在宅事件のメリットでも述べましたが、在宅事件の場合には、身柄拘束がされていないので、基本的には普段通りの生活を送ることができます。
また、身柄事件に比べて時間的に余裕をもって示談交渉を行うこともできます。
在宅捜査中に注意すること
身体拘束がされていないことから基本的には普段通りの生活を送ることができますが、捜査の展開によっては、後に身柄拘束がされることがあります。以下の点には注意が必要です。
検察の呼び出しにはきちんと応じましょう
察官の呼び出しは、任意の出頭を求めるものに過ぎないことから、これに従って呼び出しに応じる義務はありません。しかし呼び出しにはきちんと応じたほうがいいでしょう。
これは、任意出頭に応じないことを繰り返した場合には、逮捕状が請求され、身柄事件に切り替えられる可能性があるからです。身柄拘束がされてしまえば、日常生活に大きな影響が出ることは必至ですから、これを避けるためには、検察の呼び出しには応じたほうがいいでしょう。
在宅捜査中の行動に気を付けましょう
在宅捜査中に証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断されれば、この場合にも身柄事件に切り替えられる可能性があります。したがって、証拠隠滅や逃亡のおそれがあるとみられるような行動はさけるべきでしょう。例えば被害者との過度な接触や警察又は検察からの呼び出しに応じないということは避けるべきです。
在宅事件でも逮捕される可能性があります
これまで述べてきたとおり、在宅事件であっても、逃亡または罪証隠滅のおそれがあると判断されれば、逮捕されることもあります。
在宅事件は弁護士に相談を
在宅事件であっても、捜査の途中で身柄拘束がされることもありますし、前科がついてしまうこともあります。
不起訴処分等、有利な結果を得るためにも、弁護士に相談されることをおすすめします。
この記事の監修
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埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。