逮捕されるのはどんな時?逮捕の種類について
逮捕とは、逃亡や罪証隠滅(証拠を隠すことをいいます。)を防止するため、被疑者の身体の自由を指定場所にて短期間拘束することを意味します。
逮捕には、①通常逮捕(刑訴法199条)、②現行犯逮捕(刑訴法212条、同法213条)、③緊急逮捕(刑訴法210条)の3種類があります。
逮捕の種類
上述のとおり、逮捕には、①通常逮捕、②現行犯逮捕、③緊急逮捕の3種類があります。
①通常逮捕とは、裁判所が発する逮捕令状によって行う逮捕のことをいいます。
②現行犯逮捕は、令状なく現行犯人を逮捕することをいい、これは私人であっても行うことができます。
③緊急逮捕は、一定の犯罪を犯したと疑うに足りる十分な理由がある場合に、無令状(ただし逮捕後速やかに令状請求が必要)で行う逮捕のことをいいます。
逮捕の種類を知っておく重要性
逮捕は短期間であったとしても、身柄を拘束され外部との連絡も遮断されるため、私人の自由に対する制約は甚大です。そのため、刑事訴訟法は逮捕の要件を明確に定めています。
逮捕の各種類・要件を理解しておくことで、ご自身やご親族が万一逮捕されてしまった場合に、どの種類の逮捕によって身体拘束がなされているか、その要件は何か、この逮捕は要件を満たさず違法ではないか、等を識別できるようになり、捜査機関に対して適切な対応をとることができる場合もあります。
通常逮捕
通常逮捕とは、裁判所が発する逮捕令状による逮捕のことです。一般の方にとっては一番なじみのある逮捕だと思われます。逮捕は令状によってされることが刑事訴訟法の大原則であるため、通常逮捕が一般的な逮捕である、ということができます。
通常逮捕の要件
通常逮捕の要件は、①逮捕の理由、➁逮捕の必要性、③逮捕状の取得になります。
捜査機関が裁判所に逮捕状の発布を請求し、裁判所において、①と➁があると認めた場合に、③逮捕状を発布します。ここでいう➀逮捕の理由とは「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(刑訴法199条1項)を意味します。➁逮捕の必要性とは逃亡もしくは罪証隠滅のおそれを意味します。
なお、通常逮捕の場合には、逮捕をする際に逮捕状を被疑者に提示することが必要です。
逮捕状について
逮捕状とは、検察官または司法警察員の書面による請求によって、裁判官が発行する令状の一種です。
逮捕状の請求は、逮捕の理由・必要性を明らかにする資料を添付して行われ、当該資料に基づき、裁判官が逮捕の各要件を充たしているか否かを判断します。
逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認めるときは、明らかに逮捕の必要がないと認める場合を除き、逮捕状を発付しなければなりません。
通常逮捕の多い犯罪
通常逮捕される犯罪で多いものとしては、贈収賄等の犯行現場を取り押さえることが困難な犯罪があげられますが、万引き等の窃盗罪、痴漢行為等の条例違反であっても通常逮捕がなされることが多いのが実情です。
なお、軽微な犯罪(30万円以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪)については、住居不定又は正当な理由なく任意出頭に応じない場合にのみ通常逮捕することができます(刑訴法199条1項但書)。
現行犯逮捕
現行犯逮捕とは、「現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者」(現行犯人といいます。)を無令状で逮捕することをいいます。現行犯逮捕の特徴としては、通常逮捕と異なり、私人であっても現行犯逮捕をすることができること、無令状で行えることが挙げられます。
これは、令状の発布を受けるまで、また司法警察員でないと逮捕できないとすると、現行犯人が逃亡や罪証隠滅をするおそれがあるためです。
準現行犯逮捕
準現行犯逮捕とは、ある一定の要件に該当する場合に、「現行犯人とみなす」ことで、無令状で逮捕することをいいます。
ある一定の要件とは、被疑者が①犯人として追呼されているとき、②贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき、③身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき、④誰何されて逃走しようとするとき、に該当し、罪を行い終わってから間がないと明らかに認められるときです。
私人逮捕
私人逮捕とは、犯罪の被害者本人や、目撃者がその場で犯人を拘束することをいいます。
現行犯逮捕は誰でも逮捕状無くして行うことが可能であるため、捜査機関以外の一般私人が行うことが認められています。
なお、私人が現行犯人を逮捕した時には、直ちにこれを検察官や司法警察職員に引き渡さなければなりません。
現行犯逮捕の要件
現行犯逮捕の要件は、①その犯人による特定の犯罪であることが、逮捕者にとって明白であること、②その犯罪が現に行われていること、又はその犯罪が現に終わったことが、逮捕者にとって明白であることです。
なお、現行犯逮捕においても、通常逮捕と同様に逮捕の必要性が要求されると考える見解が有力です。
現行犯逮捕が多い罪名
現行犯逮捕は「現に罪を行い、又は現に行い終わった」者に対してしか行うことができません。そのため、その場で犯罪と犯人を現認できるような状況が必要となります。
現行犯逮捕が行われる典型例としては、①所持品検査によって発覚した覚せい剤等の違法薬物所持、②万引きGメンによって覚知された万引きなどがあげられます。
被害者との示談で不起訴となる可能性があります
万が一逮捕された場合であっても、必ずしも起訴されるとは限りません。
そのため、逮捕直後から不起訴に向けた弁護活動を早期に行うことが重要となります。
特に被害者がいる犯罪については、被害者との示談が成立しているかどうかは、検察官が起訴・不起訴を判断する上で極めて重要な事情となります。
逮捕をされてしまった場合には、できる限り早期に弁護士に依頼することをおすすめします。
緊急逮捕
緊急逮捕とは、一定の犯罪を犯したと疑うに足りる十分な理由がある場合で、裁判官の逮捕状の発付を待っていたのでは、その目的を達し得ないときに、逮捕の理由を被疑者に告げて、無令状(ただし逮捕後速やかに令状請求が必要)で行う逮捕のことをいいます。
緊急逮捕の要件
緊急逮捕の要件は、①死刑または無期もしくは長期3年以上の懲役もしくは禁固にあたる罪であること、②犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合であること、③急速を要し、裁判官の令状を求めることができないこと、④逮捕後直ちに裁判官の逮捕状を求める手続きをとることです。
逮捕された場合の流れ
逮捕された場合、逮捕後48時間以内に警察官から検察官に身柄が送致されます。検察官に送致されてから24時間以内に検察官から裁判所に対して勾留(身柄拘束の延長のことです。)請求が行われます。裁判官による面談を経て、勾留の決定がなされた場合、勾留の請求がされた日から10日間、勾留延長決定がなされた場合はさらに最大10日間勾留され、その勾留期間中に検察官にて起訴・不起訴の判断をします。
逮捕後の流れについて詳しく見る逮捕されてしまった場合の対処について
このように、逮捕された場合には身体拘束について厳格な期間が定められているため、検察官による起訴・不起訴の判断が行われるまでに、時間的な猶予は無いと言っていいでしょう。
そのため、逮捕後できる限り速やかに、弁護士に依頼の上、逮捕時の要件(必要性や理由)を争うことや、示談等により逮捕の必要性がないことを主張する等の身柄解放や不起訴に向けた適切な弁護活動を行うことが極めて重要といえるでしょう。
接見・面会について
逮捕期間中は、警察署の留置所に身柄を拘束されることがほとんどであり、弁護士以外の者との接見や面会はできません。弁護人との接見については、逮捕直後から警察官の立ち合いなしで行うことができます。
勾留後には、弁護人以外の一般の方と面会することができますが、警察官も立ち会うことになります。また、面会時間も短時間に制限されることが多いです。
不起訴で釈放されたい場合
逮捕された場合、検察官による起訴・不起訴の判断が出るまでに、時間的な猶予はないため、逮捕直後から不起訴に向けて適切な弁護活動を行うことが重要です。特に被害者がいる犯罪の場合、被害者との示談が成立しているかどうかが検察官による起訴・不起訴の判断で重要な要素となりますので、逮捕後速やかに弁護人を選任し、被害者との間で示談交渉を開始しましょう。
もちろん、告げられた犯罪事実に身に覚えがない場合には、起訴するだけの嫌疑が無いという資料を収集して検察官に説明していく必要があります。
逮捕の種類に関するよくある質問
準現行犯逮捕は、どの程度距離や時間に間がある場合認められるのでしょうか。
準現行犯における「罪を行い終わってから間がない」とは、犯罪の実行行為の終了時点から時間的に近接した時点をいいます。ただ、準現行犯逮捕が無令状で行える根拠は、誤認逮捕のおそれが低い点にありますから、例えば、被害者が犯行後逮捕時まで一貫して被疑者を現認しているという状況であれば、比較的長く現場との距離や時間が開いても準現行犯逮捕は認められるでしょうし、逆に、一度見失うなど現認が途切れた場合等には、準現行犯逮捕は認められにくくなるといえます。
万引きで、後日通常逮捕されることはあり得ますか?
現行犯逮捕でない限り、先ずは任意出頭が求められると思われますが、逮捕の要件を満たす限り、通常逮捕されることもあります。
緊急逮捕の場合、警察が家に上がり込むことはあるのでしょうか?
自宅家宅捜索中に緊急逮捕の必要が生じたような場合には、自宅内で緊急逮捕されることはあり得ます。そもそも緊急逮捕は例外的な手続きであり、緊急逮捕することを前提に捜査機関が自宅を訪れることはあまりないと思われます
再逮捕とはなんですか?
被疑者の逮捕・勾留については「一罪一逮捕一勾留の原則」が妥当しますので、同一の犯罪事実で複数回逮捕・勾留されることは通常ありません。もっとも、同じ被疑者が別の余罪等の犯罪事実で、複数回逮捕・勾留が継続することがあります。
弁護士への依頼が被疑者の命運を分けます
逮捕後、検察官が起訴・不起訴の判断が出るまでの時間的猶予はあまりないため、兎にも角にも刑事弁護はスピードが命です。早い段階で弁護士に依頼することで、起訴・不起訴という結果に大きな影響を与えるのみならず、ご家族や勤務先等の外部との連携も取れるようになります。
このように、特に逮捕されてから勾留されるまでの最大72時間は、被疑者にとって重要な時間である一方で、力になれるのは弁護士しかいません。万が一に備え、頼りがいのある弁護士や法律事務所を探しておくことをお勧めいたします。
この記事の監修
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埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。