接見禁止とは?
家族が逮捕されたと聞いてあわてて警察署に向かったのに、家族に会わせてもらえない――そのような事態が生じる理由の一つが「接見禁止」です。
接見禁止とはいったい何なのでしょうか。また、接見禁止にはどのように対応したらよいのでしょうか。
本コラムでは、接見禁止について解説しています。接見禁止に関してお困りの方は、ぜひ本コラムをご覧ください。
目次
接見禁止とは?
罪を犯したと疑われている方(被疑者)は、捜査上必要がある場合に逮捕や勾留をされ、警察署に留置されることがあります。また、刑事裁判を受けている方(被告人)も勾留される場合があります。そのように留置されている被疑者や被告人と会うことを「接見」や「面会」といいます。
接見や面会は、原則的には自由に行えます。しかし、弁護士以外の方が被疑者や被告人と会うと、捜査等が適切に行えない場合があります。そこで、弁護士以外との接見や面会を禁止されることがあり、これを「接見禁止」と呼びます。
接見禁止となるのはなぜか
接見禁止は、被疑者や被告人に逃亡のおそれがある場合、または証拠隠滅のおそれがある場合に、裁判所の判断によってなされます(刑事訴訟法第81条)。具体的には、本人や共犯者が罪を犯したことを否認していたり、暴力団が関与している組織的犯罪であったりすると、接見を通じて証拠隠滅等の依頼がされてしまう可能性があります。そのため、そのようなケースでは接見禁止が認められる可能性が高いです。
接見禁止の期間
接見禁止の期間について、法律上の規定はなく、明確な基準があるわけではありません。もっとも、検察による起訴前は、捜査機関が証拠収集の途中であるため、接見禁止がなされることが一般的です。
他方、起訴後は、捜査機関が既に必要な証拠の収集を完了していますから、証拠隠滅のおそれも小さくなっています。そのため、共犯者の捜査が必要な場合等でなければ、接見禁止が解除されることが多いです。
接見禁止で制限されること
弁護士以外との面会禁止
接見禁止となった場合は、弁護士以外とは接見や面会ができなくなります。被疑者や被告人の勤務先の関係者や友人だけでなく、被疑者や被告人の家族であっても接見を実施することはできません。
手紙のやり取りの禁止
接見禁止がされると、直接接見をすることだけでなく、手紙のやりとりも禁止されます。被疑者や被告人に伝えたいことがある場合は、接見禁止の状態でも被疑者や被告人と接見を行うことができる弁護士に伝言してもらうことになります。
生活必需品以外の差し入れ禁止
接見禁止の状態では、手紙だけでなく、生活必需品(現金や衣服など)以外の差し入れができない場合があります。差し入れしたい物について差し入れが認め得られるか不安な場合には、事前に留置施設に確認をしておきましょう。
宅下げの禁止
差し入れとは反対に、被疑者や被告人から物品を受け取ることを「宅下げ」といいます。宅下げも、証拠物品の所在を示すことなどによって証拠隠滅を招くおそれがあるため、接見禁止がなされていると基本的に行えません。
接見禁止でも弁護士は接見可能
被疑者や被告人が取調べや裁判に適切に対応するためには、弁護士と接見する機会を持つことがとても重要です。そのため、弁護士と被疑者や被告人とは自由に接見が行えることとされています(接見交通権、刑事訴訟法第39条第1項、憲法34条)。
弁護士以外では接見が行えない逮捕から72時間以内でも、弁護士であれば接見が行えます。また、以下のような弁護士以外の方が受ける制限も、弁護士による接見であれば受けません。
時間制限、回数制限なく面会できる
留置施設の設備の関係で、弁護士以外の接見は、接見の時間帯、1日の接見回数や接見1回あたりの時間が制限されているケースが多いです。しかし、弁護士による接見であれば、それらの制限を受けることはありません。土日や夜間であっても接見を実施でき、1日の間に複数回接見することも可能です。
警察官の立ち合いはない
弁護士以外の接見には警察官が立ち会いますが、弁護士による接見の場合は警察官が立ち会いません。弁護士による接見であれば、捜査機関に知られたくない事柄であっても気兼ねなく話すことができます。
回数制限なく差し入れができる
弁護士以外の方からの差し入れは回数が制限され、被疑者や被告人の方が必要だと思った物が翌日にならないと差し入れられないことがあります。弁護士からの差し入れであれば、そのような回数制限は受けません。
接見禁止を解除する方法
準抗告・抗告
裁判所が行う接見禁止処分について、取消しや変更を請求するための方法として、準抗告(起訴後は抗告)という手続が規定されています(刑事訴訟法第429条第1項第2号)。準抗告または抗告では、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを、具体的な事実関係を踏まえて主張することになります。準抗告または抗告が認められると、接見禁止処分は解除されます。
接見禁止処分の一部解除申し立て
被疑者や被告人の家族との関係でも接見禁止がなされている場合、一部解除の申し立てを行うことも考えられます。裁判官が、弁護士以外のすべての方との接見は認められないものの、家族との関係では接見を認めるべきであると考えれば、接見禁止の一部解除がなされることになります。
勾留理由開示請求
勾留理由開示は、勾留の理由について、公開の法廷において開示する手続です(刑事訴訟法第第82条から第86条)。勾留理由開示では、裁判官から勾留理由の告知が行われた後、検察官、被疑者・被告人、弁護士、勾留理由開示を請求した方(被疑者・被告人や弁護士以外の場合)は、法廷で裁判官に意見を述べることができます。
直接被疑者や被告人と家族等が話すことはできませんが、公開の法廷で行われるため、お互いの状況を確認することができます。
接見禁止になっても弁護士なら被疑者との面会や接見禁止解除の働きかけができます。
接見禁止がなされていると、直接の接見が行えないため、被疑者や被告人の家族では本人の状況が分からず、本人の方では家族や職場の状況が分からないという状況になりやすいです。逮捕や勾留といった非日常的な状態に置かれた中でお互いの状況が分からないことは、心身ともに大きなストレスとなります。
弁護士であれば、本人と家族との橋渡しになってお互いの状況を共有することが可能です。また、接見禁止の解消に向けて、法的な知識を踏まえた適切な提案が行えます。
接見禁止でお困りの際は、まずは一度弁護士にご相談ください。
この記事の監修
-
埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。