未成年と痴漢|加害者・被害者が未成年の場合をそれぞれ解説
未成年者が関与する痴漢事件は、加害者であれ被害者であれ、その後の人生に大きな影響を及ぼす可能性があります。特に、少年法が適用される未成年者の場合、成人と異なる手続きや処遇がなされる点を理解しておくことが重要です。
また、被害者が未成年者の場合には、その保護にも十分な配慮が求められ、時に加害者への処分が重くなることもあります。本記事では、未成年者による痴漢、未成年者への痴漢について解説していきます。
目次
【未成年が加害者の痴漢】生活への影響は?
未成年者が痴漢事件の加害者となった場合、その後の生活に様々な影響が生じ得ます。捜査機関から学校へ必ず連絡がいくというわけではありませんが、可能性はゼロではありません。
逮捕されたことが学校に露見した場合、義務教育課程であれば退学処分となることは通常ありませんが、高校生など義務教育課程でない場合には、学校ごとの内規に基づき、停学や退学といった厳しい処分が下される可能性があります。
また、そもそも逮捕・勾留などの身体的拘束を受けることになれば、通学することが出来なくなりますので、学業への直接的な支障も避けられません。
生活へ影響が出る前にすぐ弁護士へ相談しましょう
痴漢事件を起こしてしまった場合には、早期の段階で弁護士に相談することが重要です。弁護士は、専門的知見をもとに、捜査機関への対応、被害者との示談交渉、学校への対応など、多岐にわたるサポートを行い得ます。
事態が深刻化し、生活への影響が大きくなる前に、まずは専門家である弁護士にご相談ください。
未成年が痴漢で逮捕されたら
未成年者が痴漢で逮捕された場合、成人の刑事事件とは異なり、原則として少年事件として扱われます。少年事件では、刑罰を科すことよりも、少年の健全な育成や更生を目的とした手続きが進められます。このため、逮捕後は、捜査機関による捜査・取り調べ、検察への送致、家庭裁判所への送致及び審判という流れを辿ることが一般的です。
20歳未満の場合の痴漢事件について
前述したとおり、少年事件として扱われる場合、逮捕後の流れは成人の場合とやや異なります。具体的には、捜査機関による捜査・取り調べ、検察への送致、家庭裁判所への送致・審判という流れを辿ります。
家庭裁判所では、少年審判を行う必要があるのかが判断されます。結果として、審判を行う必要がないと判断されれば、審判不開始となりますが、重大犯罪の場合には、検察へ逆送致することもあります。
20歳未満の痴漢の処分
未成年の加害者の場合には、家庭裁判所の少年審判により、不処分、保護処分、検察官送致等のいずれかの処分が下されることになります。保護処分には、保護観察、児童自立支援施設または児童養護施設送致、少年院送致などがあります。
事案が悪質でない、または深く反省し更生の見込みが高いと判断されれば、審判不開始や不処分となることもあります。他方、重大犯罪については、検察官へ逆送致がおこなわれることもあります。
未成年が前科をつけないためには?
14歳未満の場合には、刑事責任能力がないため、前科はつきません。他方で、14歳以上の未成年の場合には、家庭裁判所の処分ではなく、刑事裁判にかけられ、刑罰に課せられる可能性があります。
この場合には、前科がつくことになります。そのため、未成年に前科がつかないようにするためには、できる限り軽い処分を目指すことが重要となります。
示談を行う
少年事件においては、成人の刑事事件のような「不起訴処分」という形での終結はありません。しかし、被害者との間で示談が成立していることは、家庭裁判所が処分を決定する上で非常に重要な要素となります。
被害者の処罰感情が和らいでいること、被害回復がなされていることは、少年の更生にとって好ましい状況と判断されやすいためです。
更正の見込みを示す
少年事件では、加害少年が真摯に反省し、更生する見込みがあるかどうかが重視されます。そのため、自身の行為を深く悔い、二度と同様の過ちを繰り返さないための具体的な取り組みを示すことが求められます。
例えば、専門家のカウンセリングを受ける、贖罪寄付を行う、生活環境を改善するための具体的な計画を立てるなど、更生の意欲と具体的な行動を家庭裁判所に伝えることが重要です。
弁護士ができること
未成年者の痴漢事件においても、弁護士は様々なサポートを行い得ます。具体的には、逮捕直後から接見を行い、法的な助言だけではなく、精神的なサポートを行うことができます。
また、捜査段階では、不当な取り調べが行われないよう監視し、早期の身柄解放を目指すとともに、被害者との示談交渉を代理人として行い、円滑な解決に向けて動くことができます。
家庭裁判所の審判においては、少年の付添人として、更生の意欲や具体的な取り組みを裁判官に伝え、寛大な処分を求める弁護活動を行うことができます。
20歳未満の未成年の場合、特に示談や更正の見込みが重要視されます。
20歳未満の少年による痴漢事件では、被害者との示談の成否や、少年自身に更生の具体的な見込みがあるかどうかが、その後の処分を大きく左右します。
これらの活動を適切に進めるためには、専門的な知識と経験を持つ弁護士のサポートが不可欠です。早期にご相談いただくことで、より有利な結果を得られる可能性が高まります。
【未成年が被害者となる痴漢】
痴漢の被害者が未成年である場合、精神的なダメージが大きいため、保護には最大限の配慮が必要になります。加害者の処罰を求めることはもちろん、被害者の心のケアも非常に重要となります。
このような事件に巻き込まれた場合、一人で悩まず、まずは信頼できる大人や専門機関に相談することが大切です。
痴漢で逮捕されたら?刑罰や逮捕された場合の注意点について相手が20歳未満の場合
痴漢の加害者が20歳未満の未成年であった場合でも、被害者としての立場に変わりはありません。加害者が少年であっても、捜査機関は事件の真相を究明し、家庭裁判所は適切な処分を下そうとします。
相手が13歳未満の場合
痴漢行為の対象が13歳未満の児童であった場合、加害者はより厳しい法的責任を問われることになります。これは、13歳未満の児童は特に手厚い保護が必要であり、そのような児童に対するわいせつ行為は極めて悪質性が高いと判断されるためです。
具体的には、同意の有無にかかわらず、刑法上の不同意わいせつ罪や強制わいせつ罪に該当することになります(2023年7月13日以前の事件であれば後者の罪名となります。)。
未成年への痴漢で逮捕されたら
成人が未成年者に対して痴漢行為を行い逮捕された場合、通常の痴漢事件と同様に、逮捕・勾留、起訴・不起訴の判断、そして刑事裁判という流れを辿ります。
なお、被害者が未成年者であるという事実は、犯情等の面で不利に働くことが多く、起訴された場合の量刑にも影響を与える可能性があります。
逮捕された時の流れを図で分かりやすく解説します不起訴になるには
被害者が未成年者である痴漢事件で不起訴処分を獲得するためには、被害者側との間で早期に示談を成立させることが極めて重要です。真摯な謝罪と適切な示談金の支払いを通じて、被害者の処罰感情を和らげることができれば、検察官が不起訴処分とする可能性が高まります。
不起訴とは保護者を交えての示談
被害者が未成年者の場合、示談交渉は原則としてその保護者(親権者)と行うことになります。未成年者本人の精神的負担を考慮し、また法的に有効な示談を成立させるためにも、保護者の関与は不可欠です。
しかし、加害者本人やその家族が直接示談交渉を行うことは、被害者感情を逆なでし、交渉が難航するケースも少なくありません。専門家である弁護士を介することで、冷静かつ円滑な示談交渉が期待できます。
弁護士ができること
未成年者への痴漢で逮捕された場合、弁護士はまず、逮捕直後の接見を通じて、被疑者に対して法的な助言を行い、今後の見通しを説明します。同時に、被害者の保護者との示談交渉を行い得ます。
弁護士が代理人として交渉することで、加害者側の真摯な反省の意を伝え、適切な条件での示談成立を目指します。加えて、捜査段階においては、早期の身柄解放や不起訴処分を得るための弁護活動を行います。
未成年への痴漢はより罪が重くなります。早急に弁護士へご相談下さい
被害者が未成年者である痴漢事件は、成人に対する痴漢事件と比較して、社会的非難も強く、刑事処分も重くなる傾向にあります。
逮捕されてしまった場合、あるいはそのような疑いをかけられた場合には、事態を甘く見ることなく、専門家である弁護士にご相談されることをおすすめします。早期の対応が、その後の結果を大きく左右します。
未成年の痴漢でよくある質問
18歳の高校生ですが、痴漢以外の余罪があった場合少年院へいくことになるのでしょうか。
痴漢行為に加えて、例えば盗撮などの余罪がある場合、事件の悪質性が高まります。少年審判においては、これらの行為全体が総合的に評価され、処分が決定されます。余罪の内容や回数、計画性などによっては、保護観察処分ではなく、少年院等の厚生施設への送致といった、より重い保護処分が選択される可能性が高まります。個別の事案により異なりますので、具体的な見通しについては弁護士にご相談ください。
高校生の息子が痴漢をしてしまいました。受験生なのですが、進学先から入学拒否されることはありますか。
警察が捜査情報を進学予定の学校に伝えることは、基本的にはありません。しかし、何らかの形で事件が進学先に露見した場合、入学を許可するか否かは、最終的には進学先の学校の判断に委ねられます。学校によっては、入学前に非行歴が判明した場合、入学を許可しないという内規を設けていることもあります。ご不安な場合は、弁護士に相談し、対応を協議することをおすすめします。
高校生ですが、実名報道されてしまうことはあるのでしょうか。
少年法は、本人と推知できるような記事や写真の出版物への掲載を禁止しておりますので、未成年者の実名報道は原則として行われません。これは、少年の健全な育成と更生を妨げないようにするための配慮です。ただし、SNS等で事実上特定されてしまうこともありますので、注意が必要となります。
なぜ相手が13歳未満の児童だと罪が重くなるのですか?
13歳未満の児童は、是非善悪を判断する能力や性的行為に対する同意能力が未発達であると考えられています。そのため、そのような児童に対するわいせつ行為は、児童の心身に深刻な悪影響を及ぼす可能性が極めて高く、社会的に強く非難されるべき行為とされており、刑事処分においても重く判断される傾向にあります。
13歳未満の未成年に痴漢したことを後から知りました。
痴漢行為を行った際に、相手が13歳未満であることを認識していなかったとしても、直ちに罪に問われないわけではありません。迷惑防止条例違反や不同意わいせつ罪の成立においては、13歳未満であることの認識が常に厳密に求められるわけではないためです。行為者が相手の年齢をどのように認識していたか、あるいは認識し得たかという点は、情状として考慮される可能性はありますが、具体的な状況によって法的な評価が異なるため、まずは、弁護士にご相談ください。
ご家族が痴漢で逮捕された場合すぐ弁護士へご相談下さい
ご家族が痴漢で逮捕された際には、どうすれば良いか分からず、冷静な判断が出来なくなることがあります。
逮捕後の対応は時間との戦いですので、早期に弁護士が介入することで、適切なアドバイスを受け、不利益を最小限に抑えるための行動をとることが可能になります。
特に、ご本人が未成年者の場合は、成人の事件とは異なる手続きや配慮が必要です。まずは落ち着いて、経験豊富な弁護士にご相談ください。
この記事の監修
-
埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。