家宅捜索とは?家宅捜索の条件やタイミング、捜索後の対応について
よくニュース等で【家宅捜索】という言葉をお聞きになったことがある方も多いかと思われます。
とはいえ、この家宅捜索が、どのような場合に、どのような条件のもと、いつ行われるのか、万が一、ご自身が家宅捜索をされた場合にどのように対応すべきか等についてご存じの方は少ないのではないでしょうか。本記事ではこれらの事項について解説していきます。
目次
家宅捜索とは
そもそも【家宅捜索】とは、法律に規定されている言葉ではありませんが、一般的に警察等の捜査機関が、犯罪の証拠を収集することを目的として、被疑者やその他関係者の自宅等(場合によっては、会社等も対象となります。)を探す捜査手続のことをいいます。
自宅等を捜査する理由としては、特定の犯罪事実に深く関与していると思われる人物の自宅等にはその犯罪の証拠(凶器、被害品、犯行時に着用していた衣服、犯行に使用した携帯電話やパソコン等)が存在する可能性が高いと考えられるためです。
家宅捜索は拒否できない
家宅捜索は裁判所が発付する捜索差押許可状に基づく強制処分(捜査機関が対象者の意思に関わらず強制的に行う捜査)であるため、これを拒否することはできません。
たとえ自宅へ立ち入られたくない、自分の物を押収されたくない等と思っていても、変わりません。
仮に、家宅捜索を妨害しようとして、警察官に抵抗すると、公務執行妨害罪で現行犯逮捕される可能性もありますので、注意が必要です。
家宅捜索の条件
家宅捜索を行うには、裁判所が発付する捜索差押許可状を家宅捜索の対象者に示す必要があります(刑事訴訟法222条1項、同110条)。
この捜索差押許可状は、家宅捜索の対象となる住居等に犯罪の証拠が存在する可能性があるか、そこで捜索・差押えを行うことについて問題がないか等を裁判所が事前に審査をして、初めて発付されるものです。
また、「住居主若しくは看守者又はこれらの者に代わるべき者」の立会いも必要です(刑事訴訟法222条1項、114条2項)。
警察の捜査が始まるきっかけ
捜査機関が捜査を始めるきっかけのことを【捜査の端緒】といいます。
捜査機関も何の理由もなく捜査をするわけではなく、あくまでも何かしらのきっかけがあって初めて捜査をするかどうかの検討をします。
被害届が提出された
被害者が警察署等に被害届を提出したケースが捜査の端緒の典型例といえます。
この被害届をもとに、捜査機関において家宅捜索の必要性等を検討し、裁判所に対して捜索差押令状の発布を請求します。
通報された
被害者や目撃者等による110番通報も捜査の端緒の1つでといえます。
例えば、ひったくり被害に遭った被害者が通報する場合、その現場を目撃した目撃者が通報する場合などが考えられます。
告訴・告発された
被害届の提出と似て非なるものとして、告訴・告発という手続が存在します。
この告訴・告発について、刑事訴訟法242条は、「司法警察員は、告訴又は告発を受けたときは、速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない。」と規定しています。
被害届はあくまでも被害の申告にすぎませんが、告訴・告発の場合には、このように法律で書類送検が義務付けられており、念入りな捜査が行われることが予想されます。
職務質問を受けた
その他、捜査機関から職務質問を受けた結果、家宅捜索に発展する場合もあります。
職務質問はあくまで任意であり(警察官職務執行法2条1項)、本来なら応じる義務はありません。
しかし、事実上職務質問を拒否することは困難です。抵抗すると公務執行妨害罪となり、現行犯逮捕をされる可能性もあるので、素直に応じるのが無難な対応といえます。
家宅捜索のタイミング
捜査機関が家宅捜査を行える時期について、法律は特段制限しておらず、起訴・不起訴の処分(【終局処分】ともいいます。)の前後いずれにおいても(公判段階であっても)家宅捜索をすることができるとされています。
しかし、通常、事件の捜査は終局処分の前に完了するため、実際に家宅捜査が行われるのは、捜査機関が犯罪事実を知ってから、終局処分がされるまでの間が大半となります。
なお、捜査対象者による証拠隠滅を防ぐため、家宅捜査は通常、捜査対象者への予告なしに突然行われます。そのため、家宅捜索を予期することは困難といえます。
家宅捜索の対象
家宅捜索をするにあたっては、不当・過剰な捜索を防止し、対象者の被侵害利益を最小限にするため、家宅捜索の対象について裁判所が事前に審査します。
その審査結果によって、捜索できる場所、差押えができる物、令状の有効期限(刑事訴訟法219条1項)等が記載された捜索差押許可状が発付されます。
同許可状に記載されていない(=裁判所が許可した範囲を超える)捜索・差押えについては、行うことはできず、仮に行った場合には違法な捜索・差押えとなります。
捜索差押許可状の内容の確認
前述のとおり、捜索差押許可状には裁判所が認めた捜索・差押えの範囲が記載されています。そして、捜査開始前に、捜査機関がその内容を読み上げることになっています。
そのため、これから家宅捜索をされるとなった場合には、その内容の読み上げを聞く、録音する、実際に捜索差押許可状を見せてもらう等して、必ず同許可状の内容を確認しましょう。
また、捜索開始後は、同許可状に記載されていない場所、物まで捜索・差押えされていないか、捜査機関の動きをしっかり確認しましょう。
差し押さえられたものの返却について
証拠品として差し押さえられた物のうち、すでに警察や検察が精査し、証拠として押さえておく必要が無くなった物については、事件が終了する前(終局処分決定前や公判中等)であっても、返還されることになっています(刑事訴訟法123条)。
家宅捜索されることが多い犯罪
家宅捜索が行われることが多い犯罪としては、覚せい剤や大麻などの薬物犯罪、窃盗、児童ポルノ禁止法違反などが挙げられます。
前者の薬物事件は、被疑者の自宅に薬物や器具などの証拠品が存在することが多いためです。
また、後者の窃盗、児童ポルノ禁止法違反などについても同様に、被疑者の自宅に犯罪で得た物や犯罪で使用された物が存在する可能性が高いため、家宅捜索を受けることが多い事件類型といえます。
家宅捜索に弁護士の立ち会いは可能か
起訴前の段階(=被疑者段階)では、弁護士には「弁護人」固有の立会権は法律上存在しません。
しかし、刑事訴訟法114条2項には、「前項の規定による場合を除いて、人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内で差押状、記録命令付差押状又は捜索状の執行をするときは、住居主若しくは看守者又はこれらの者に代わるべき者をこれに立ち会わせなければならない。」と規定されています。
そこで、家宅捜索の対象となる住居等の住人や看守者(会社代表者等)が依頼した弁護士を、「これらの者に代わるべき者」として指定すれば、同弁護士が家宅捜索の立会いに関する代理人として、家宅捜索に立ち会うことができます。
家宅捜索での対応と弁護士ができること
家宅捜索では、捜査機関から、捜索差押許可状の記載に反して事件に関係のないものまで押収されてしまうこともあります。そのため、捜査中には、違法な捜査はなかったかを常にチェックし、もし違法な捜査があれば、その旨をその場で捜査機関に、若しくは公判段階で裁判所に対して主張する必要があります。
また、家宅捜索の結果、犯罪の嫌疑が高まったとして、逮捕されてしまうことは少なくありません。このような場合、家宅捜索によって必要な証拠が収集されたことで証拠隠滅のおそれが無くなり、ひいては逮捕の必要性も無い等の主張を行うことで、逮捕・勾留を避けられる可能性があります。
家宅捜索を受けてしまった場合、早期に弁護士が介入すれば、以上のような弁護活動を行い、不当な家宅捜索や逮捕などについて争うことができます。
家宅捜査を受けた場合は、早期に弁護士へ相談を
家宅捜索が行われるということは、何らかの犯罪の嫌疑がかけられていることは間違いありません。そのため、犯罪の立証を裏付ける証拠が家宅捜索によって収集されている可能性が高いといえます。
そして、家宅捜索を受けた場合、その内容に問題(違法性)が無いかどうかは専門家でなければ判断しがたいですし、家宅捜査に続いて逮捕されてしまう場合もあります。
今、逮捕されていない、取調べを受けていないからといって、安心することは全くできません。
早期に弁護士に相談することで、不当な家宅捜査や逮捕・勾留について事前に対策を練り、争うことができます。そのため、弁護士への早期段階でのご相談をお勧めします。
この記事の監修
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埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。