背任罪とは?成立要件と背任行為発覚後の対応
背任罪の成立要件と背任行為発覚後の対応について解説します。
目次
背任罪とは
背任罪とは、他人の事務を処理する者が、自己もしくは第三者の利益を図り、又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときに既遂となる犯罪です。
背任罪の保護法益は本人の財産であると解されています。
回収見込みがないにもかかわららずそのことを認識しながら貸付を実行した場合等に背任罪が成立することがあります。
背任罪の刑罰
背任罪の法定刑は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
背任罪の成立要件
他人のために事務を処理している
背任罪の主体は、他人のためにその事務を処理する者とされています。
他人とは行為者以外の者のことを指し、処理される事務の主体となります。
他人のための他人の事務を処理する者だけが背任罪の主体を構成するもので、単なる給付義務を履行するにすぎない者は、他人のために事務を処理する者にはあたらないと解されています。
任務違背行為
任務違背行為とは、他人の事務を処理する者として法的に期待されているところに反する行為、事務処理の委託の趣旨に反する行為であるとされています。
任務違背行為には、不作為の場合も含まれますし、事実行為も含まれます(例えば、債権の取立てを依頼された者が債権を消滅時効にかかるまで放置した場合等)。
図利加害目的
背任罪は故意犯ですから、任務違背行為と損害の発生の認識が必要ですが、それに加えて、自己又は第三者の利益を図る目的又は本人に損害を加える目的が必要だとされています。
財産上の損害
背任罪の成立には、任務違背行為の結果、財産上の損害が発生したことが必要です。
この場合の損害は、全体財産の減少を意味するもので、財産上の損害の有無は本人の財産状態を全体として評価することによって判断されます。
背任罪の時効
背任罪の公訴時効は5年です。
未遂でも処罰される
背任罪には、未遂処罰規程が存在します(250条)。しかし、未遂処罰は、財産上の損害が認定し得る可罰性の明確なものに限って起訴されているようです。
特別背任罪とは
特別背任罪は会社の経営者等が自らの任務に違背する行為を処罰するものです。
会社法や保険業等に規定されています。
法定刑は通常の背任罪よりも重いものとなっています。
背任罪と横領罪の違い
横領罪と背任罪は信義誠実義務違反という意味で共通した性格を有するものです。
横領罪の初犯は執行猶予がつく?背任罪とのちがい逮捕前後の流れ
会社において背任行為があった場合には、社内で事実調査が行われ、会社や従業員からの通報により刑事事件として捜査が開始されることがあります。その後、他の犯罪と同様に逮捕、勾留期間中に取調べが行われ、起訴、不起訴が決まります。
逮捕された時の流れを図で分かりやすく解説背任行為をしてしまった場合の対応
刑事事件となり、逮捕されてしまった場合は、被害者との示談等により不起訴処分を目指すこととなります。
背任行為をしてしまったら、早期に弁護士へご相談ください
背任行為をしてしまった場合には、刑事事件となり逮捕、起訴されるおそれがあるだけではなく、会社から損害賠償請求される等民事上の責任を追及される可能性もあります。
刑事、民事、いずれの問題を解決するにあたっても、早期の段階で弁護士にご相談いただくことで、よりよい結果となる可能性が高くなります。早期に弁護士にご相談されることをおすすめします。
この記事の監修
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埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。