会社役員や取締役による業務上横領罪・特別背任罪の解説。懲戒解雇の可能性も
会社の経費などを横領してしまうケースは、世の中に無数に存在します。今回は、会社役員や取締役が横領してしまったケースについて解説します。
目次
会社役員や取締役による横領は業務上横領罪が成立する可能性がある
会社役員や取締役が会社のお金を使いこんでしまった場合、成立し得る犯罪の一つが、業務上横領罪です。まずは業務上横領罪がどのような犯罪なのか、ご説明します。
業務上横領罪とは
業務上横領罪とは、「業務上自己の占有する他人の物を横領」することによって成立する犯罪です。業務のために会社の物を預かることは、多くの人が経験しているのではないでしょうか。
そのような際に、預かった物を自分の物にしてしまうケースでは、業務上横領罪が成立します。
たとえば、取引先に支払うために預かったお金を自分の趣味のために使ってしまうケースなどが業務上横領罪に該当します。業務上横領罪についてはこちらの記事で詳しく説明していますので、ご覧ください。
業務上横領は必ず逮捕される?横領額と刑の重さは関係あるのか会社役員や取締役による横領事件は多い
会社役員や取締役は高度な責任を負う立場です。会社役員や取締役は会社から信頼されるので、監査などのチェックは緩いものになりがちです。
そのため、会社役員や取締役が「横領できる環境」にいることは多く、会社役員や取締役による横領は少なくありません。
会社役員や取締役の地位を利用して横領することは量刑に影響するのか
業務上横領罪は、通常の横領罪よりも重い処分が定められています。これは、業務のために物を預かるという行為は、会社からの信頼を基礎としたものといえるので、会社からの信頼を裏切る行為は悪質であると評価されることが理由となっています。
会社役員や取締役は、通常の社員よりも更に会社から信頼される立場だといえるでしょう。
そのため、会社役員や取締役の地位を利用して横領することは、通常の社員が横領した場合に比べ、量刑が重くなる可能性があります。
会社役員や取締役による業務上横領の事例
会社役員や取締役による業務上横領の事例として、以下のようなものが考えられます。
- ・会社の金庫の管理を任されている役員が、こっそりお金を抜いて自分の借金返済のために使用してしまった
- ・会社の通帳を預けられている役員が、銀行からお金を引き出し、自分の趣味のために使用してしまった。
- ・社用の車を貸与されている取締役が、お金に困って車を売却し、得た金額を生活費のために使用してしまった。
特別背任罪と業務上横領罪の違い
会社役員や取締役が会社の財産を自分のために使用してしまった場合、業務上横領罪のほかに、特別背任罪が成立する可能性があります。
特別背任罪は、「会社の物を自分の物にする」ケース以外に、「会社の物を他人の物にする」ケースなどでも成立します。
特別背任罪とは
特別背任罪は、役員等が、自分や第三者に利益をもたらすことや、会社に損害を与えることを目的として、任務に背く行為をした場合に成立し得る犯罪です。
「任務に背く行為」には、会社の物を自分の物にしてしまうような行為も含まれます。また、会社のものとなるはずの利益を、他者に譲ってしまうような場合も含まれます。
特別背任罪の事例
特別背任罪が成立するようなケースとして、以下のようなものが挙げられます。
- ・自分の取引で損失が出てしまった際に、その取引は元々会社の取引だったことにした
- ・仲の良い友人のために、原価割れの安い価格で取引をした
- ・自分のミスを隠すため、借金を返す余裕がなさそうな法人に対し、会社のお金を融資した
横領を行った役員・取締役の責任
会社の物を横領し業務上横領罪が成立した場合、その行為を行ってしまった人は、どのような責任を追及させられるのでしょうか。追及され得る責任は、1つだけではありません。
刑事上の責任
業務上横領罪は、刑罰の定めがある犯罪です。業務上横領罪が成立した場合、10年以下の懲役が言い渡される可能性があります。
なお、特別背任罪が成立する場合は、10年以下の懲役の代わりに、1000万円以下の罰金が科されることや、懲役と罰金の両方を科されることがあります。
民事上の責任
会社の物を横領してしまったことが判明した場合、会社は、損害の補填を求めてくるでしょう。任意での支払いに応じないでいると、裁判などを起こされる可能性もあります。
懲戒解雇の可能性
会社の物を横領することは、業務上の不正行為ですから、懲戒される可能性が高いでしょう。懲戒処分には、戒告やけん責といった比較的軽いものから、懲戒解雇という重いものまでが含まれます。
会社に与えた損害の額次第では、懲戒解雇されてしまう可能性も否定できません。
横領をしてしまった場合にできること
横領してしまったような場合、どのような対応が可能でしょうか。横領をしないのが一番ですが、してしまった後にもできることがあります。
- ・これ以上の横領を行わないようにする
- ・横領について会社に素直に報告する
- ・会社に与えた損害の分を補填する
事件化させないためにも弁護士にご相談ください
横領事件は、被害者からの申告がないままであれば、警察が動かないことも多いです。そのため、会社が警察や検察に報告しないよう、交渉を行うことが有効です。
警察や検察が動かなければ、起訴をされることもなく、前科がつくこともありません。そのため、警察や検察が動く前に示談交渉を行うことは、有効だといえるでしょう。
会社との示談交渉を弁護士に依頼するメリット
会社との示談交渉を弁護士に依頼する場合、弁護士から、法的な説明を受けることが可能でしょう。
会社が要求してくることの中には、法律上の根拠がなく、「ただ会社が要求しているだけ」といったことも含まれます。そのような場合、要求に応じないということも選択肢に入ります。
交渉の様々な場面で法的な意味を確認できることは、弁護士に依頼することによって発生する大きなメリットです。
事件化した際も減刑にむけてサポートします
警察が横領の捜査を始めてしまうケースもあります。そのような場合でも、弁護士であれば、刑事的な対応を行うことが可能です。
弁護士が携わる専門分野には刑事事件も含まれますので、安心して依頼を行うことができるでしょう。
横領したお金を返済する際に分割払いは可能なのか
横領したお金を会社に返したいが、手元に現金がない、といった場合もあり得ます。そのような場合、「分割払いで返済したい」というニーズが発生するでしょう。
分割払いによるお金の返済が可能かどうかは、相手の会社の対応次第で変わります。ご依頼者様が分割払いをご希望されている場合、弁護士は、支払い方法についても交渉します。
会社のお金を横領してしまったらお早めに弁護士にご相談ください
業務上横領罪や特別背任罪は、懲役10年を言い渡される可能性もある、重い犯罪です。警察や検察がどのような対応を行うかは、被害者である会社の意向も大きく影響してきます。
そのため、会社のお金を横領してしまった際には、なるべく早く弁護士にご相談ください。
この記事の監修
-
埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。