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少額でも業務上横領罪は成立する?逮捕や懲戒解雇の可能性

会社のお金を管理する立場にいる人だけが業務上横領罪になるのか、どのくらいの金額を横領したら罪に問われるのか、逮捕される可能性や懲戒処分の対象になる可能性等詳しく知らない方が多いと思います。以下ではそれらを詳しく解説します。

少額でも会社のお金を横領すると横領罪は成立する

業務上横領罪の対象は、「業務上自己の占有する他人の物を横領した者」(刑法253条)と記載されており、「他人の物」を横領したか否かが基準です。たとえ、1円であったとしても、自分が占有している他人の物を横領すると、業務上横領罪に問われる可能性があります。

業務上横領罪とは

業務上横領罪とは、「業務上自己の占有する他人の物を横領した」場合に成立します。

「業務上」とは、社会生活上の地位に基づいて、反復継続して行う事務のことを指します。また、「他人の物を横領した」とは、委託信任関係に基づいて預かっている他人の所有物を自分の物にしたり、勝手に処分する行為を指します。

業務上横領罪ついては以下の記事で詳しく解説しております。併せてご確認ください。

業務上横領は必ず逮捕される?横領額と刑の重さは関係あるのか

少額横領のケース

  • ・会社で集金業務あたっている者が、集金したお金を会社に未収金として報告し、自分の物とするケース
  • ・店舗の責任者などが、売上金を少なく申告し、差額を自分のものにするケース
  • ・会社の経理担当者が、郵便切手を使用済みであると偽って、自分の物にするケース

少額横領でも逮捕されるのか

以上で解説したとおり、被害金額が少額であったとしても、会社のお金を横領すれば業務上横領罪が成立することになります。もっとも、この場合に、ただちに逮捕に至るケースは多くありません。1~5万円など少額のケースでは、会社と話し合って全額を被害弁償できれば、刑事事件にまで発展しない可能性が高いです。では、どのような場合が刑事事件となり、逮捕及び起訴されるのででしょうか。以下で詳しく解説します。

被害者からの被害申告(告訴)があって事件化するケースが多い

業務上横領は、被害者からの申告がなければほぼ事件として扱われることがありません。事件が複雑化することが多く、第三者からの通報では事実関係を把握することが困難な場合がほとんどです。まず、被害者が警察に被害を相談し、その後、警察が被害申告(刑事告訴)を受理して、はじめて事件として扱われることが多いです。

少額の場合は会社と示談交渉し逮捕されないケースもある

被害額が少額であるケースでは、会社側と示談交渉し、被害金額が全額弁済することで会社側が事件化させないことが多いです。業務上横領罪が発覚した場合に刑事事件にするには、以上のとおり、警察に被害申告をする必要があり、すべてが事件として扱われるわけではありません。そのため、会社としても被害弁償が済めば大事にしないケースが多いと言えます。

会社との示談交渉は弁護士にお任せください

前述のとおり、横領事件を穏便に解決できるもっとも有効な方法は、会社との示談交渉です。謝罪のうえ、横領した金銭の全額を返済するか、あるいは分割でも返済する約束を取り付けることができれば、警察への届け出を回避できる可能性があります。

横領事件の場合、被害金額について会社側の認識している金額と被疑者側が認識している金額が異なることが多いです。そのような場合についても、弁護士であれば、客観的資料に基づき被害金額についての交渉をすすめやすくなります。

そのため、会社との示談交渉は、弁護士に任せることが賢明です。弁護士が代理人として交渉の場に立つことで、会社側も穏便な解決に前向きな姿勢を示す可能性が高まります。

横領した額と刑の重さは関係あるのか

横領した金額が少額の場合には、刑の重さが軽くなるケースが多いです。これは、被害金額が少ないことが理由となります。もっとも、刑の重さは、必ずしも被害金額のみで決まるわけではありません。行為態様や常習性などの要素を加味して判断されることになるため、少額の場合でも刑が重くなる場合もあります。

少額の場合は会社にバレない?発覚の可能性

少額横領の場合には、会社側に発覚しないと思い込みさらに使い込みを行うケースが多いです。しかし、会社は、お金の流れを正確に把握しようとします。また、少額横領を繰り返すことで不自然なお金の流れとなり、発覚することが考えられます。

したがって、少額のため発覚しないということはなく、隠し通すことは困難です。

はじめは少額でも長期間に渡り横領を続けてしまうことも

最初は少額であっても、繰り返しているうちに被害金額が大きくなっているケースが多いです。

横領の多くは、最初は「バレないだろう」「このぐらいいいか」といった軽い気持ちで始まります。実際に気がつかれないと「もっとやっても大丈夫」と気が大きくなり、次第に行動がエスカレートしていきます。何度も繰り返しているうちに、被害金額が膨らんでいくのです。

被害金額が大きくなればなるほど逮捕の可能性も高まり、示談交渉でも解決が困難になる可能性が高くなります。

少額でも会社のお金を横領したら懲戒解雇になるのか

業務上横領罪が成立し、刑事事件として処罰を受けるかどうかと、会社から懲戒解雇されるか否かは必ずしも一致しておらず、以下では少額横領の場合でも懲戒解雇を有効とした例を解説します。

1万円を横領について懲戒解雇を有効とした判例(前橋信用金庫事件)

信用金庫の業務推進部に所属する調査役が、顧客から集金した金員の一部(1万円)を着服したため、懲戒解雇したという事案です(前橋信用金庫事件 東京高判平成元年3月16日)。

「控訴人が被控訴人には金員着服行為があるものと認定し、右は就業規則四九条一号、三号及び四号(証拠略)に該当するとして被控訴人を解雇処分に付したことについては、その原因があり、かつ信用に立脚する金融機関の性格上やむを得ないもので、もとより有効といわなければならない。」として、懲戒解雇を有効と判断しました。

1万円という金額は、多額とまではいえないため、懲戒解雇までは相当ではないと判断されることも考えられます。しかしながら、金融機関の性格を考慮し、1万円であったとしても、信用のために解雇を持って臨むのは有効であると裁判所は判断しました。

都営バスの乗務員が運賃を横領した行為について懲戒解雇を有効とした判例(東京都公営企業管理者交通局事件)

都営バスの乗務員が、乗務中に運賃を乗客から直接手で受け取り、不正に横領したことが乗客からの通報で発覚した事案。乗務員が不正に乗客から得たお金は1,100円であった。東京都は乗務員を懲戒免職とした。これに対して、乗務員が懲戒免職は不当な処分であるとして裁判を起こしました。

裁判所は、バスの乗務員として、運賃の不正取得は極めて悪質であり、職務上、許されない行為である。運賃の不正取得の額の大小に関わらず懲戒解雇は有効としました。

領収書を改ざんし10万円を不正請求したことについて懲戒解雇を有効とした判例(ダイエー事件)

慰労会の飲食代金16万4368円(二〇人分)を仮払いし、領収書の10万の位を2に改竄し、飲食代金を26万4368円に見せかけ、仮払金の清算手続で差額の10万円を着服した事案です。

裁判所は、周到に計画された犯行であるとまではいえないとしつつも、意図的なもので、その性質上、会社に対する重大な背信行為であり、依願退職の申出を繰り返し勧めたにもかかわらずこれが拒否されていることを考慮し、懲戒解雇は有効としました。

業務上横領罪が成立したら刑事上の責任と民事上の責任を負うことになる

業務上横領罪が成立する場合、上記のように、刑事上の責任だけではなく、民事上の損害賠償請求もされる可能性があります。

刑事上の責任

業務上横領罪が成立する場合には、「10年以下の懲役」となります。

民事上の責任

業務上横領をしてしまった場合には、上記の刑事上の責任だけではなく、民事上の責任として、不法行為に基づく損害賠償責任が発生します。

少額横領してしまったら

少額横領の場合には、ばれないと勘違いをして、行為がエスカレートする危険性があります。気づかないうちに被害金額が高額になり、被害弁償では取り返しのつかないことになる可能性があります。少額横領をしてしまった場合には、行為が常態化する前に会社に報告し、被害弁償をし、示談交渉を開始する必要があります。

会社のお金を横領してしまったら弁護士にご相談ください

業務上横領罪は、犯行に一度手を染めると発覚するまで際限なく横領を繰り返してしまう傾向にある犯罪類型です。被害金額が高額になってしまってからでは、被害弁償も困難でしょうし、事件化される可能性はもちろんのこと、量刑面も厳しい判断となる可能性を高めてしまいます。すでに発覚してしまった、という方はもちろんのこと、まだばれていないという方も、なるべく早い段階で自身の行為を清算する覚悟を決めて、弁護士に被害弁償や示談交渉などを依頼することをお勧めします。

この記事の監修

弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕
弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長弁護士 辻 正裕
埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。

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