会社社長よる横領は業務上横領罪や特別背任罪が成立する可能性。解任請求も。
会社の社長という立場にある者が、その地位を利用して会社の資金を私的に流用したり、不当に財産上の損害を与えたりする行為は、業務上横領罪や特別背任罪といった重大な犯罪に該当する可能性があります。
これらの犯罪が成立した場合、社長は刑事上の責任を負うだけでなく、会社に対する民事上の損害賠償責任、さらには解任請求を受ける可能性もあります。
本記事では、会社社長による横領はどのような犯罪が成立し、どのような責任を負うことになるのか、具体的に解説します。
目次
会社社長が会社のお金を横領すると業務上横領罪が成立する可能性がある
会社社長が会社の金銭を私的に費消するなど、自己の利益のために利用する行為は、業務上横領罪に問われる可能性があります。
社長は、会社の財産管理を業務として担っており、この職務上の立場を利用して会社の財産を自分のものにしようとすれば、業務上横領罪の構成要件に該当します。
会社の子会社の資金を着服する行為も同様に、業務上横領罪が成立する可能性があります。
業務上横領罪とは
業務上横領罪は、刑法第253条に規定されており、「業務上自己の占有する他人の物を横領した者」に成立する犯罪です。
法定刑は10年以下の懲役と、通常の横領罪(刑法第252条)よりも重く設定されています。
この犯罪は、会社から信任されて財産を任されているにもかかわらず、その信頼を裏切る行為を特に重く罰するものです。
業務上横領罪の概要を簡単に述べましたが、より詳細な解説については、こちらの記事をご参照ください。
業務上横領罪について詳しく見る中小企業では社長による横領事件は多い
一般的に、中小企業においては、社長が会社の資金を自由に扱う権限を強く持っている場合が多く、他の役員や従業員、株主によるチェック機能が十分に働いていないことがあります。
特に、社長が経理業務も兼任しているような小規模な会社では、監視の目が緩みがちであるため、社長が私的な目的で会社の財産を流用(着服)する事件が発生しやすい傾向があります。
社長による横領事件の例
社長による横領事件の事例としては、以下のような手口が考えられます。
- ①取引の仮装による着服:
社長が、実際には存在しない取引先との間で架空の取引を捏造し、その代金名目で会社の資金を経費として計上し、最終的に自らの口座に送金する手口。 - ②子会社を利用した資金流用:
社長が、支配下にある子会社との間の送金や融資を装い、実態のない名目で会社から資金を流出させ、私的な借金の返済などに充てる手口。 - ③不透明な経費の計上:
社長自身の飲食費や旅行費、趣味の物品購入費など、個人的な支出を業務上の経費であると偽って精算させ、会社のお金を着服する手口。
これらの手口で会社の財産を不法に領得した場合、社長には業務上横領罪が成立します。
会社社長の地位を利用して横領行為をすることは刑の重さに影響するの?
会社社長という、会社財産の管理における最も重要な地位を利用して横領行為に及ぶことは、裁判になった際に刑の重さに影響します。
業務上横領罪は、会社からの信任に背いた行為であるため、その責任は元々重いものですが、社長という最高責任者の立場が悪用されたことは、悪質性が高いと判断され、より重い刑罰が科される傾向があります。
特別背任罪と業務上横領罪の違い
社長による不当な財産処分行為は、業務上横領罪と特別背任罪の2つの犯罪が問題となる可能性がありますが、その成立要件には明確な違いがあります。
業務上横領罪は、社長が自己の占有下にある会社の財産を着服し、自分のものにする(不法領得の意思)行為であるのに対し、特別背任罪は、自己または第三者の利益を図る目的、あるいは会社に損害を与える目的で、任務に背く行為をし、会社に財産上の損害を与えることで成立します。
例えば、会社の資金を直接着服すれば横領罪、会社の利益にならない高額な不動産を第三者から購入させ、会社に損失を与えれば特別背任罪が問題となります。
特別背任罪とは
特別背任罪は、会社法第960条等に規定されている犯罪です。これは、会社の取締役などの役員が、その任務に背き、会社に財産上の損害を与える行為をした場合に成立します。
会社法第960条(特別背任)
「発起人、取締役、執行役、監査役若しくは会社法第59条第1項の清算人又は支配人その他の会社を代表する者(以下略)が、自己若しくは第三者の利益を図り、又は会社に損害を加える目的をもって、その任務に背く行為をし、当該会社に財産上の損害を加えたときは、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」
この特別背任罪は、自己のために着服することを目的としている「不法領得の意思」までは必要とせず、子会社を利用した不当な利益供与や、会社に不利益な取引の締結など、任務違背行為によって会社に損害を与えた場合に成立する点が、業務上横領罪との大きな違いです。
横領を行った社長の責任
横領を行った社長は、その行為に対して、刑事上の責任、民事上の責任を負うことになり、さらに会社に損害を与えたことにより、解任請求の可能性があります。
刑事上の責任
社長が横領を行った場合、その行為は業務上横領罪(刑法第253条)または特別背任罪(会社法第960条等)という犯罪に該当し、刑事上の責任を問われます。
これらの犯罪が成立すると、社長は10年以下の懲役に処せられる可能性があり、特別背任罪の場合は1000万円以下の罰金が併科される可能性もあります。
社長による横領は悪質性が高いと判断されやすいため、起訴された場合には実刑判決となるリスクも高まります。
民事上の責任
社長が横領行為により会社に損害を与えた場合、会社に対して民事上の責任を負います。
これは、民法上の不法行為責任(民法第709条)または会社法上の取締役の任務懈怠による損害賠償責任(会社法第423条第1項)に基づき、会社が被った損害額を賠償しなければならないというものです。
具体的には、横領した金銭の全額(着服した金額)並びに、その行為によって会社が被った間接的な損害(例:調査費用、信用毀損による逸失利益など)についても賠償を求められる可能性があります。
会社に損害を与えたことにより解任請求の可能性がある
社長は会社との間で雇用契約を結んでいるわけではないため、「解雇」されることはありませんが、取締役という地位にあります。
しかし、社長が横領行為によって会社に対して重大な損害を与えた場合や、法令に違反した責任を負うことになった場合、会社法に基づき、株主総会において解任請求を受ける可能性があります。
具体的には、以下のいずれかの手続きにより、取締役の地位を失うことになります。
- ①株主総会の特別決議による解任:
会社法第339条に基づき、株主総会の特別決議(議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成)によって取締役を解任することができます。
横領行為は、取締役としての適格性を著しく欠く行為であり、解任請求の正当な理由となります。 - ②訴訟による解任の請求:
会社法第854条に基づき、総株主の議決権の100分の3以上を有する株主は、取締役がその職務に関し不正の行為をし、又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があるにもかかわらず、当該株主総会においてその解任の議案が否決された場合には、株主総会の日から30日以内に、訴えをもって解任の請求をすることができます。
横領した会社のお金を返済さえすれば逮捕されない?
業務上横領罪は、被害者である会社からの刑事告訴を受けて事件化するケースが多い犯罪です。
したがって、社長が横領した会社のお金を全額弁済するなどして会社との間で示談が成立し、会社が刑事告訴を行わない、あるいは既に提出した刑事告訴を取り下げるという合意が得られれば、警察の捜査が開始されない、または事件化しても不起訴処分となる可能性があります。
着服したお金を返済し、被害弁償を尽くすことが、逮捕を回避し、または刑を軽くするための最も重要な要素となります。
示談交渉は弁護士にお任せください
社長という会社のトップの地位を利用して横領してしまった責任は重く、被害者である会社側も厳しい態度で臨むことが予想されます。
このような状況の中、当事者同士で示談交渉を進めることは極めて困難であり、冷静な話し合いが実現しない可能性が高いです。
そのため、社長だからこそ、速やかに弁護士に相談し、示談交渉のサポートを依頼することが不可欠です。
弁護士が代理人として交渉することで、客観的な立場から示談条件の調整を行い、会社側の感情的な反発を抑えつつ、穏便な解決を目指すことができます。
事件化した際も減刑にむけてサポートします
業務上横領罪で警察の捜査が入り、事件化してしまった場合でも、弁護士は減刑にむけた最大限のサポートを行います。
具体的には、検察官や裁判所に対して、示談の成立や被害金額の全額弁済など、被疑者・被告人にとって有利な情状事実を主張・立証します。
反省の意思、再発防止策の策定、家族などの監督環境の整備といった要素も減刑の重要な判断材料となるため、これらを客観的に示すための証拠収集及び主張活動を行います。
身柄が拘束されている場合は解放に向けて活動します
業務上横領罪は重い犯罪であり、逮捕された場合、身柄が拘束される期間が長くなる可能性があります。
社長が逮捕され、身柄が拘束されてしまうと、会社の業務が滞り、事業にも深刻な影響を与えかねません。
弁護士は、逮捕後の警察や検察による取調べへの対応を助言するとともに、勾留阻止のための意見書の提出や、勾留が決定された場合の準抗告手続きなどにより、早期の身柄解放に向けて活動します。
横領したお金を返済する際に分割払いは可能なのか
横領した金額が大きく、一括での返済は難しいが、返済の意思はあるというケースは少なくありません。
このような場合、会社側との示談交渉において、分割払いを認めてもらえる可能性もあります。
会社側としても、分割払いであっても確実に返済を受ける方が、刑事告訴により事件化させ、一切の返済を受けられない可能性があるよりも現実的だと判断する場合があります。
この分割払いの交渉においても、会社側の同意を得るためには、返済計画の確実性を示すなど、専門的な知見と交渉力が必要となるため、弁護士のサポートが不可欠です。
横領による返済については、こちらの記事でより詳しく解説しています。
横領による返済について詳しく見る会社のお金を横領してしまったらお早めに弁護士にご相談ください
会社の社長による横領行為は、業務上横領罪や特別背任罪という重い犯罪に該当する可能性があり、刑事、民事、さらには解任請求といった複数の問題が同時に発生します。
特に、社長という立場を利用した行為は悪質性が高いと判断されやすく、ご自身だけで解決を図ることは極めて困難です。
逮捕を回避し、会社との示談を成立させ、減刑を目指すためには、一刻も早く弁護士に相談し、適切な法的手続きと示談交渉のサポートを受けることが重要です。
横領が発覚する前、あるいは着服が始まった早い段階でご相談いただくことで、とり得る選択肢を増やし、最も円満な解決を目指すことが可能です。
まずはお気軽に当事務所の弁護士にご相談ください。
この記事の監修

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埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。