公務員による業務上横領は必ず逮捕される?懲戒免職の可能性も
公務員が業務中に管理する金銭を着服した場合、業務上横領罪だけでなく、文書偽造などの犯罪も成立する可能性があります。
万が一、横領をしてしまった場合、逮捕や懲戒免職のリスクが高まりますので、早期に弁護士へ相談し、被害弁償や示談交渉を行うなど、適切な対応をとることが重要です。
目次
公務員が公金などを横領すると業務上横領罪が成立する可能性がある
公務員が業務として管理している「公金」を、自身の私的な目的で使用したり持ち出したりした場合、刑法253条の業務上横領罪が成立する可能性があります。
公金は国民の税金等から成るという性質上、極めて厳格な管理が求められており、これを着服する行為は国民の信頼を裏切るものとして厳しく処罰される傾向にあります。
金額の多寡にかかわらず、1円であっても自己の占有する他人の物を領得すれば犯罪は成立し得ます。
業務上横領罪とは
業務上横領罪とは、業務上自己の占有する他人の物を横領した場合に成立する犯罪です。
単純な横領罪よりも刑が重く規定されています。
業務上横領罪の詳細な成立要件や刑罰については、別の記事で詳しく解説していますので、そちらをご参照ください。
業務上横領罪について詳しく見る領収書の偽造や改ざんを行った場合は私文書偽造罪が成立する可能性もある
横領の事実を隠蔽するために、領収書の金額を書き換えたり、架空の領収書を作成したりするケースがあります。
このような行為を行った場合、刑法159条の私文書偽造罪および同行使罪が成立する可能性があります。
横領行為そのものに加え、証拠となる文書を改ざんする行為は、犯行の隠蔽工作として悪質性が高いと判断され、量刑判断においても重く考慮され得る重大な要素となります。
私文書偽造罪とは
私文書偽造罪とは、行使の目的で、他人の印章や署名を使用して権利義務や事実証明に関する文書を偽造する犯罪です。
例えば、店舗が発行した領収書の金額を勝手に書き換える行為や、白紙の領収書に店舗の印鑑を無断で使用して作成する行為などがこれに該当します。
作成権限のない文書を作成すること自体が処罰の対象となります。
公務員の場合、横領の際に書類を偽造すると虚偽公文書作成罪が成立する可能性もある
公務員が、その職務に関し、行使の目的で虚偽の文書を作成した場合、刑法156条の虚偽公文書作成罪が成立する可能性があります。
公務員という立場を利用して、決裁文書や会計報告書などに嘘の記載を行い、公金を不正に引き出した場合などがこれに該当します。
公文書に対する社会的信用を損なう犯罪であるため、私文書偽造よりも厳しく処罰される傾向にあります。
虚偽公文書作成罪とは
虚偽公文書作成罪とは、公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は文書若しくは図画を変造したときに成立する犯罪です。
公務員が作成する文書は社会的に高い信用性を有しているため、その内容に嘘を記載することは、公務に対する信用を害する行為として処罰の対象となります。
実際にあった公務員の横領事件
例えば、ある自治体の職員が、生活保護費の支給業務を担当していた際、架空の受給者をシステムに登録し、数千万円単位の公金を自身の管理する口座に振り込ませて横領した事例があります。
また、公立学校の事務職員が、PTA会費や給食費などの公金外現金を管理していることを奇貨として、数年間にわたり着服し、発覚後に懲戒免職および業務上横領罪で起訴されたケースも存在します。
横領した公務員の責任
公務員が横領を行った場合、単に職を失うだけでなく、法律上の重い責任を負うことになります。
具体的には、国や自治体に対する損害を賠償する民事上の責任と、国家から刑罰を受ける刑事上の責任の双方です。
これらは別個の手続きで追及されるため、民事上の全額返済が完了しても、刑事責任が当然に消滅するわけではありません。
刑事上の責任
刑事上の責任としては、刑法253条の業務上横領罪により、10年以下の懲役に処せられる可能性があります。
公務員の場合、公金を取り扱うという職務の性質上、社会的影響が大きく、初犯であっても金額が高額であれば実刑判決が下されるリスクがあります。
起訴され有罪となれば前科がつき、その後の社会生活に多大な影響を及ぼす可能性があります。
民事上の責任
民事上の責任として、横領した公金全額に加え、遅延損害金を付して返還する義務を負います。
これは民法709条の不法行為に基づく損害賠償請求にあたります。
横領した金銭を既に遊興費などで費消してしまっている場合でも、原則として、返還義務は免れません。
場合によっては、監督不届き等を理由に上司等が処分を受けることもありますが、本人の賠償責任が免除されるわけではありません。
懲戒免職について横領した公務員は懲戒免職の可能性がある
国家公務員法や地方公務員法、各自治体の条例・規則に基づき、懲戒処分が行われる可能性があります。
公金の横領は、公務員に対する国民の信用を著しく失墜させる行為であるため、最も重い懲戒免職処分となる可能性が極めて高いものです。
懲戒免職となると、退職金が支給されない、あるいは全額没収されるケースが一般的であり、経済的にも大きな打撃を受ける可能性があります。
将来の再就職のためにも弁護士にご相談ください
再就職を目指すにあたり、前職での横領による懲戒免職事由は大きな不利益になり得ます。
しかし、横領した公金を全額返済し、真摯に反省している事実は、採用選考における情状として考慮される可能性があります。
返済計画の履行を含め、法的な観点からどのように身の振り方を考えるべきか、将来の生活再建に向けて弁護士にご相談ください。
横領に時効はあるのか
業務上横領罪の公訴時効は7年と定められており(刑事訴訟法250条2項4号)、この期間が経過すると検察官は起訴することができなくなります。
他方、民事上の損害賠償請求権の消滅時効は、被害者である国や地方公共団体が損害及び加害者を知った時から3年、または不法行為の時から20年(民法724条)です。
刑事と民事で時効期間が異なる点に注意が必要です。
公務員の横領は必ず逮捕される?
公務員の横領は社会的関心が高く、事件化する可能性は否定できません。
しかし、必ず逮捕されるわけではありません。
捜査機関が介入する前に、弁護士を通じて職場である役所等と交渉し、全額を弁償して示談が成立すれば、刑事告訴を行わないとの合意を取り付けることが可能な場合もあります。
逮捕を回避するためには、早期の対応が不可欠です。
自宅待機を命じられた場合にできること
横領の疑いで自宅待機を命じられた場合、懲戒処分や刑事告発が差し迫っている状況といえますので、できる限り早い段階で弁護士へ相談されることをおすすめします。
弁護士が代理人として職場と交渉し、被害弁償の申し入れや事実関係の精査を行うことで、懲戒処分の軽減や刑事事件化の回避を目指します。
何もしないまま待機していると、事態は悪化する可能性があります。
逮捕された場合は減刑に向けて弁護士がサポートします
万が一、事件化し逮捕された場合、弁護士は直ちに接見を行い、取調べへの対応をアドバイスします。
また、被害弁償を行い、職場や関係者からの嘆願書を集めるなどして、裁判所や検察官に対して情状酌量を求めます。
これらの活動により、起訴猶予(不起訴)や、起訴された場合でも執行猶予付き判決などの減刑を目指して、全力で弁護活動を行います。
身柄が拘束されてしまった場合は解放に向けて動きます
逮捕・勾留により警察署に身柄が拘束されると、防御の準備が十分にできません。
弁護士は、証拠隠滅や逃亡の恐れがないことを客観的な証拠とともに主張し、勾留請求の却下や保釈許可決定を求めます。
弁護活動が功を奏し、早期に身柄が解放されれば、会社への対応や社会生活への影響を最小限に留めつつ、裁判に向けた準備を整えることが可能になります。
横領に関するご相談はお早めに弁護士へご相談ください
公務員による横領は、社会的信用を失い、人生を大きく左右する重大な問題です。
しかし、早期に対処することで、最悪の事態を回避できる可能性は残されていますので、一人で抱え込まず、まずは弁護士へご相談ください。
この記事の監修

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埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。