高額な業務上横領で逮捕されてしまったら。執行猶予付判決を獲得するためには
はじめは少額であっても、長期間に渡り横領を重ねることで横領額が高額になってしまうことは珍しくありません。横領した額の大きさは、刑罰の重さ(量刑)に直接的に影響を与えます。
本記事では、高額横領となるケースを簡単に述べ、横領額が量刑に影響を与えるのか、並びに逮捕されてしまった場合の対応方法、及び執行猶予付判決を獲得するための具体的な弁護活動について解説いたします。
目次
会社のお金を横領すると業務上横領が成立する
会社のお金を横領した場合、横領した金額の大小に関わらず、業務上横領罪が成立します。
高額な横領は当然ながら、少額であっても犯罪であり、刑事罰の対象となります。
業務上横領罪とは
業務上横領罪は、業務上自己の占有する他人の物を横領することで成立する犯罪です。
本罪が成立した場合、十年以下の懲役に処せられます。
業務上横領罪のより詳しい概要については、こちらの記事で解説しておりますのでご参照ください。
業務上横領罪について詳しく見る横領額が高額の場合実刑となり、量刑も重くなる可能性がある
業務上横領罪において、「いくら以上の横領で懲役〇年」と明確に規定されているわけではありません。
横領の金額に加え、犯行の常習性や動機、弁済の有無、並びに会社からの処罰感情など他の要素も加味されるため、量刑を断言することはできません。
しかしながら、横領額が大きくなればなるほど、刑罰が重くなる傾向にあることは事実であり、実刑判決(執行猶予が付かない懲役刑)となる可能性が高まります。
1400万円横領し、懲役3年6月となった判例
リフォーム工事を行う会社の従業員が、顧客からの集金代金の着服及び架空請求書の偽造等により、約1400万円を不正に着服した事件があります。
裁判所は、横領金額が高額であり、計画的な犯行であったことを重く見て、長野地方裁判所は平成29年10月17日に懲役3年6月の判決を言い渡しました(長野地方裁判所平成29年10月17日判決)。
この事例は、1000万円を超える横領事案では、実刑となるリスクが高いことを示しています。
8000万円横領し、懲役6年となった判例
経理事務の担当者がインターネットバンキングを悪用して会社のお金を横領した事案において、被害金額が8000万円に達した事例があります。
裁判例によると、被告人男性は、会社の銀行口座から自身の銀行口座に振り込み送金する方法で、数年間にわたり400回以上も振り込み操作を実行することで現金を着服したことが認定されました(千葉地方裁判所 平成31年3月19日判決)。
この事案に対し、裁判所は懲役6年の判決を言い渡しました。
ネットバンキングを悪用して自身の個人口座に現金を送金させる行為も不法領得の意思の発現といえるため、「横領した」に該当し、常習性や被害額の大きさから重い刑罰が科されます。
1億6500万円横領し、懲役7年となった判例
學校の理事長であった被告人が、その立場を悪用して公私混同を繰り返し、長期間にわたり横領を継続した結果、合計1億6500万円を着服した事案において、仙台地方裁判所は、平成18年2月24日に懲役7年及び罰金2000万円の実刑判決を下しました(仙台地方裁判所平成18年2月24日判決)。
これは、組織への重大な信頼侵害、身勝手な動機、及び長期にわたる計画性が認められたものであり、一億円を超えるような超高額の横領事件では、執行猶予付判決の獲得は極めて困難となり、重い実刑判決が下される傾向にあることを示す事例です。
高額の横領で逮捕されてしまったら
横領額が高額の場合、会社が被害届を提出し、警察が捜査に乗り出すケースが多くなります。
その結果、ある日突然、警察官が自宅を訪れ逮捕されるケースも珍しくありません。
逮捕されてしまった場合、直ちに弁護士にご相談ください。
弁護士は以下のような活動を行い、ご依頼人様の権利を守ります。
身柄を拘束されている場合は保釈に向けて活動します
逮捕や勾留により身柄を拘束されている場合、弁護士は保釈(勾留されている被告人を一時的に釈放すること)に向けて活動します。
具体的には、検察官や裁判官に対して、ご依頼人様が逃亡したり証拠を隠滅したりするおそれがないことを客観的な資料に基づき説明し、勾留の取り消し又は保釈を請求します。
身元引受人を確保すること、及び職場復帰の可能性を示すことなどが、保釈を認めてもらうために重要な活動となります。
執行猶予つき判決の獲得を目指します
業務上横領罪は懲役刑しか規定されていない犯罪であり、判決によっては直ちに刑務所に入らなければならない可能性があります。そのため、社会復帰を目指す上で、刑の執行を一定期間猶予してもらう執行猶予付判決の獲得が重要となります。
特に高額の業務上横領事件においては、実刑判決となるリスクが高いため、弁護士のサポートが必要不可欠です。
具体的な弁護活動としては、被害者である会社との示談を成立させること、横領金を弁済すること、並びに再犯防止のための環境を整備すること(家族による監督や治療の開始など)を裁判所に主張立証します。
逮捕はされていないが自宅待機を命じられた
高額な業務上横領の場合であっても、会社が警察に被害届を出す前に、調査のために従業員に自宅待機を命じるケースもあります。逮捕はされていなくとも、会社は既に横領の事実を把握している可能性が高く、事件化の準備を進めている段階であると言えます。
このような場合も、一刻も早く弁護士にご相談ください。
弁護士が会社と示談交渉します
弁護士は、被害者である会社との示談成立を目指し、交渉を行います。
高額横領事件の場合は、一括での全額返済が難しいことが多いため、一時金の支払確保や長期の分割による支払計画を立案するなど、粘り強い交渉を行います。
高額横領は事件化(警察に被害届が提出されること)することが多いですが、仮に事件化し裁判になったとしても、会社と示談が成立しているかどうかは、執行猶予付判決を獲得するために極めて重要な要素となります。
返済したいが高額のため一括では難しい
横領した本人に返済の意思はあるものの、横領額が高額であるために一括での弁済が難しいというケースも多くあります。そのような場合も、弁護士にご相談ください。
弁護士は、ご依頼人様の財産状況をもとに、実現可能な返済計画を作成します。
そして、この返済計画に基づき、分割払いによる返済を会社に対し交渉します。
横領罪における返済に関するより詳しい内容は、こちらの記事で解説しております。
横領罪における返済について詳しく見る懲戒解雇の可能性も
業務上横領は、従業員が会社に対して負う信頼関係を根本から裏切る行為であり、その額が高額であればあるほど、懲戒解雇となる可能性は極めて高くなります。
懲戒解雇は、退職金不支給、又は再就職の困難など、社会生活において大きな不利益をもたらします。
再就職のためにも会社と示談しておくことは非常に重要です
仮に刑事裁判になったとしても、会社と示談を成立させておくことで、執行猶予付判決の獲得を目指すことができ、早い社会復帰が望めます。
また、示談が成立していることは、その後の再就職活動においても、反省の態度を示す一助となり、非常に重要です。
会社のお金を横領してしまったらお早めに弁護士にご相談ください
会社のお金を横領してしまった場合は、警察の捜査が本格化する前、あるいは会社からの追求が始まる前といったお早めの段階で弁護士にご相談ください。
特に高額の横領事案は実刑のリスクが高く、早い段階での弁護士のサポートが必要となります。
弁護士にご相談いただくことで、今後の刑事手続きの適切な見通しを立て、最善の弁護活動を行うことができます。
この記事の監修

-
埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。