不起訴処分となるポイントを解説!~不起訴処分となる理由とは?~
検察官が、被疑者を起訴しないとの処分を下すことを、不起訴処分と言います。
不起訴処分がなされた場合には、そもそも刑事裁判の手続きに進むことはなく、また前科がつくことなく事件が終了するため、日常生活への影響は小さくなります。
不起訴処分には、いくつかの種類がありますので、以下では、この点について解説していきます。
目次
不起訴になる主な理由は4種類
不起訴処分には、大きく分けて、①嫌疑なし、②嫌疑不十分、③起訴猶予、親告罪の告訴取り下げという4種類があります。以下、この4つの不起訴処分の具体的な内容について、解説していきます。
不起訴について嫌疑なし
嫌疑なしを理由とする不起訴処分は、一言でいうと証拠がない場合のことです。
犯人性や犯罪の成否を裏付ける証拠がない場合には、「嫌疑なし」として不起訴処分になることが多いと言えるでしょう。
「被疑者補償規定」とは?
被疑者補償規定とは、逮捕され勾留されていた事件に関して無罪の裁判を受けたときに、身体拘束に対して被った損害の補償を求めることが出来る制度のことです(刑事補償法第1条)。
補償の金額は、逮捕又は勾留されていた期間に一日あたり1000円から1万2500円程の額を乗じることで算出されます(同法4条1項)。一日あたりの金額を算定するに際しては、「拘束の種類及びその期間の長短、本人が受けた財産上の損失、得るはずであった利益の喪失、精神上の苦痛及び身体上の損傷並びに警察、検察及び裁判の各機関の故意過失の有無その他一切の事情」が考慮されます(同法同条2項)。
嫌疑不十分
嫌疑不十分とは、証拠はある程度存在するが、犯人性や犯罪の成否を認定するだけに足りるほどの証拠がない場合のことを言います。仮に、起訴したとしても、犯人性や犯罪の成立を立証することができず、有罪判決を得られないとした場合、検察官は嫌疑不十分による不起訴処分を下します。
起訴猶予
起訴猶予とは、犯人性や犯罪の成立が明らかで、刑事裁判に進んだ段階においてもそれらを立証するだけの証拠も揃っている場合に、検察官の裁量的な判断によって、あえて起訴しないことを指します。
検察官がこうした判断をするケースとしては、軽微な犯罪であり、被疑者に深い反省が見られる場合、被害者との示談が成立している場合、改善更生の見込みがあり刑罰を科す必要性がない場合などが挙げられます。
起訴猶予は無罪とは違います
起訴猶予と無罪の違いは、裁判所で審理されたか否かです。起訴猶予は、検察官がそもそも起訴をしなかったというものですが、無罪は、検察官が起訴したにもかかわらず、検察官が被告人の犯人性や犯罪の成立を立証することができず、裁判所が無罪の判断を下すことを意味します。
また、両者は、難易度も大きく異なります。裁判所で無罪判決が下されることは、検察官に起訴猶予が下されることと比べて、圧倒的にハードルが高いものだからです。
親告罪の告訴取り下げ
親告罪とは、被害者の告訴がなければ検察官が起訴することが出来ない犯罪類型のことを指します。
このため、被害者との間で示談が成立し、被害者が告訴を取り下げた場合には、不起訴処分となります。
親告罪に該当する犯罪としては、名誉毀損罪(刑法230条)、器物損壊罪(同法261条)などが挙げられます。
起訴されてしまうと99%有罪判決!早めの弁護活動が重要です
テレビドラマの題名にもなっていることからもわかるように、一般的に、起訴されてしまうと99%に近い確率で有罪判決となってしまいます。これは、検察官が、有罪が得られるだけの証拠が揃った事件に限定して起訴しているからでもあります。
検察官に起訴されないためにも、早期の段階の弁護活動が極めて重要になってきます。
処分保留とは?
処分保留とは、起訴・不起訴の判断をすることなく、身柄拘束を解放することを指します。
注意すべきなのは、処分保留は、あくまでも、検察官が起訴・不起訴の判断を保留にしているだけですので、釈放後に起訴される可能性は十分にあるという点です。
不起訴処分となれば被疑者の身柄は釈放されます
検察官が起訴すべきではないと判断すれば、被疑者の身柄は釈放されます。
被疑者を逮捕・勾留した場合、検察官は、勾留請求の日から最大で20日間のうちに、起訴処分とするか、もしくは身体拘束を解くかのどちらかを選択しなければならない、という期間制限が課せられているからです。
不起訴処分を獲得するには
不起訴処分を獲得するためには、初期段階の弁護活動が非常に重要になってきます。
特に、被害者が存在する犯罪の場合には、被害者との示談が重要です。なぜならば、検察官は、起訴・不起訴の判断をするにあたって、被害者の感情や被害弁済の有無・程度を非常に重視するからです。
不起訴について早期釈放を目指すなら弁護士へ相談するのがおすすめです
刑事事件は時間との勝負です。早期の釈放を目指す場合には、初期の段階から専門家である弁護士のバックアップを得ておく必要があります。
よくある質問
起訴猶予でも罰金は払いますか?
罰金は、あくまでも刑罰の一つですから起訴猶予の場合に罰金を払うことにはなりません。
罰金刑が科せられる可能性が出てくるのは、起訴処分がなされた以降の段階です。
起訴猶予で想定されるリスクやデメリットは?
起訴猶予は、不起訴処分の1つですが、これがなされたからといって、デメリットが完全に消失するというわけではありません。起訴猶予の場合でも、警察等の捜査機関から捜査を受けたことに変わりはありませんので、前歴がつくからです。
また、逮捕・勾留などの身体拘束により欠勤が続いた場合には、それを理由に会社から解雇されるなどもリスクもあります。
起訴猶予の「猶予」とは?猶予期間があるということですか?
起訴猶予とは、単に、検察官が起訴しないと判断する処分のことですので、猶予期間があるわけではありません。この点では、執行猶予と混同しないように注意が必要です。
処分保留や不起訴処分で将来、起訴される可能性はありますか?
処分保留や不起訴処分がなされたとしても、将来的に起訴される可能性がなくなるわけではありません。
ただし、不起訴処分については、特別な理由もないのに不起訴処分を恣意的に取り消して起訴した場合などに、公訴権の濫用として、起訴処分が制限を受ける余地があります。
不起訴で前科はつきますか?
前述したとおり、不起訴の場合、前科はつきません。
もっとも、捜査機関による捜査がなされているため、前歴がつくことには注意が必要です。
不起訴処分の9割以上は「起訴猶予」です。早めに弁護士へ相談しましょう
不起訴処分の9割は、上記4つのうちの「起訴猶予」と言われています。
そして、起訴猶予を勝ち取るためには、専門家のバックアップを得たうえででの、適切な示談交渉などが重要になります。
まずは、専門家である弁護士に相談されることをおすすめします。
この記事の監修
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埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。