身体に触れていなくても暴行罪になる?暴行罪になる行為と逮捕後の対応
暴行罪と聞くと、殴ったり蹴ったりという行為がまず思い浮かぶのではないでしょうか。しかし、暴行罪に当たる行為は、実は単純な殴る蹴るだけではありません。本記事では、どのような行為が暴行罪にあたるのか、暴行罪と類似する犯罪との違い、暴行罪で逮捕されたときの対処法等について解説しています。
暴行罪に関してお困りの方は、ぜひご覧ください。
目次
暴行罪とは
暴行罪は「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったとき」に成立する犯罪です(刑法第208条)。ここでの「暴行」とは「人の身体に対する不法な有形力の行使」と解釈されています。そのため、後ほど詳しくご説明させていただくように、直接的に殴る蹴る以外の行為も「暴行」に含まれます。
また、暴行罪は親告罪ではありません。そのため、被害者からの告訴がなくとも、刑事事件として扱われる場合があります。
暴行罪の刑罰
暴行罪の刑罰は「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」です。
2年の懲役や30万円の罰金はあくまで法律上の上限であるため、より短い期間の懲役や拘留、より低額な罰金や科料になる可能性もあります。
暴行罪の時効
犯罪には、犯罪の種類と刑罰の重さによって異なる公訴時効の期間が設定されています。暴行罪は、「長期5年未満の懲役若しくは禁固又は罰金に当たる罪」(刑事訴訟法第250条第2項第6号)ですので、公訴時効は3年となります。
暴行罪にあたる行為
「人の身体に対する不法な有形力の行使」に含まれるのは、殴ったり蹴ったりという典型的な行為だけではありません。身体や服を引っ張るといった比較的軽度な接触や、音や光などを浴びせるといった身体同士の接触を含まない行為も「不法な有形力の行使」に当たり、暴行罪が成立する場合があります。
直接的に身体に触れる行為
直接的に身体に触れる行為、例えば、身体や衣服をつかんだり引っ張ったりする行為や、握手、相手の肩を抱くといった行為も、威力によっては「不法な有形力の行使」に当たる場合があります。
実際に警察が捜査をしたり、裁判が行われたりするかは別として、相手を攻撃する意図や威力で身体に直接的に触れる行為は、暴行罪が成立する可能性があります。
身体に触れない行為
直接的に身体に触れない行為であっても、大きな音や強い光を浴びせたりする行為は、暴行罪が成立する可能性があります。
また、石やイス等を投げる行為については、実際に相手に当たっていない場合でも暴行罪が成立しています。他の例として、嫌がらせでの車の幅寄せについても暴行罪が認められたケースがあります。
暴行罪にあたらない場合
暴行罪の成立には故意が必要であるため、暴行罪(または傷害罪)の故意がなければ暴行罪は成立しません。
もっとも、裁判では、暴行罪の故意があるかは暴行までの経緯、暴行の方法や内容、暴行の後の言動などから総合的に判断されます。そのため、例えば大きな石を投げつけて「わざと当てるつもりはなかった」と説明したとしても、故意は認められる可能性が高いです。
全くの偶然の行為は暴行罪に当たりませんが、ケガを負わせる危険性のある行為をわざと取った場合には、暴行罪に当たる可能性があります。
傷害罪との違い
「人を傷害するに至らなかったとき」との規定のとおり、暴行の結果として人の身体を傷つけた場合は傷害罪に当たり、人の身体を傷つけるまでにはいかなかった場合は暴行罪となります。
このように暴行罪は「暴行」という行為の態様に着目した犯罪であるため、「傷害」という結果が発生した場合には、他の犯罪が成立する可能性があります。具体的には、傷害罪、過失傷害罪、傷害致死罪などが成立する可能性があります。
過失傷害罪
傷害罪の成立にも、暴行罪と同様に暴行罪または傷害罪の故意が必要とされています。そのため、傷害の結果が発生しているものの、そもそも暴行自体に故意がなかったケースでは、傷害罪ではなく過失傷害罪が問題となります。例えば、よそ見をしていて相手にぶつかってしまい、転倒してケガをしたような場合などです。
傷害致死罪
暴行によって生じた傷害が原因で被害者が死亡した場合には、傷害致死罪が成立します。殺人罪との違いは故意の程度であり、自分の行為によって相手が死亡する可能性があると認識していたような場合には、殺人罪の故意があったと認められ、殺人罪が成立する可能性があります。他方で、暴行または傷害の故意しかなかった場合には、殺人罪の故意がないため、傷害致死罪の成立が問題となります。
酒に酔っていた場合も罪になるか?
酒に酔っていた場合でも、暴行罪は成立します。異常酩酊(複雑酩酊、病的酩酊)の場合には、心神耗弱、心神喪失に該当し、刑罰が軽くなったり、暴行罪が成立しなかったりする可能性がないわけではありません。しかし、飲酒前に異常酩酊に陥る可能性が高いことの認識がある場合には、そもそも飲酒を控えるべきであったといえるため、心神耗弱や心神喪失の主張も認められない可能性が高いです。
酒に酔うと我を忘れるような危険がある方は、飲酒後に他人とトラブルが生じることのないように、飲酒の量や場所にはくれぐれも気を付けましょう。
暴行罪で逮捕されたときの対処法
暴行罪で逮捕された場合、主に身柄拘束からの解放と、示談の成立を目指すこととなります。検察官による起訴や量刑の選択にあたっては、被害者への賠償や被害者の処罰感情の有無が影響します。そのため、被害者との間で示談が成立すると、不起訴や減刑に有利に働きます。
一方で、逮捕された本人や家族の方が示談交渉をしようとしても、被害者が連絡先を教えたがらないなど交渉が上手く進まないことも多いです。弁護士が入ると「弁護士であれば」と連絡先を教えてもらえたり、弁護士を通じて反省文や謝罪文の受渡しができたり、状況が好転することもあります。
暴行事件で逮捕されてしまったら弁護士へご相談ください!
暴行罪で逮捕された状況では、迅速な社会への復帰のためには身柄拘束からの解放、不起訴や減刑の実現のためには取調べ等の捜査に対する対応、示談交渉などが重要となります。いずれも本人が一人でできることには限界があり、自分では正しいと思ってした行動でかえって悪い結果を招いてしまうこともあります。
まずは専門家としっかり相談することが重要です。暴行事件で逮捕されてしまったら、まずは弁護士にご相談ください。
この記事の監修
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埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。