逮捕後、72時間以内の刑事弁護が
運命を左右いたします
逮捕後の72時間は、法律上、捜査機関が被疑者の身柄を拘束してもよいという建前のもと、制度が組み立てられています。
捜査機関は、この72時間の間に、好きなだけ被疑者を取調べることができるのです。もし、この72時間の間に、弁護士による適切なアドバイスを被疑者が受けることができなければ、被疑者は気付かないうちに不利な証拠をどんどん作成され、本来はもっと軽い刑罰となったはずなのに重い刑罰となったり、無罪であったにも関わらず有罪に仕立て上げられたりすることすらあります。捜査機関は国家権力そのものであり、一個人が相手をするにあまりにも強大です。
そこで、国家権力から独立した弁護士が当該捜査は適正なのか、被疑者に有利な事情はないのか、被疑者は本当に疑われているようなことをしたのか、検証をする必要があります。逮捕後の72時間は、その後の勾留や起訴を見据える必要があることから、弁護士が最も活躍しやすい期間であるといえるでしょう。
勾留されてしまうと、最大20日間の身柄拘束になります。
被疑者の最初の勾留期間は、法的な上限を10日間と定められています。しかし、検察官は、「やむを得ない事由」があるときには、さらに追加で最大10日間、勾留期間の延長をすることができます。
「やむを得ない事由」については、実務上、かなり緩やかに解釈されており、弁護士がつかない多くの案件では、特に捜査の必要がなかったとしても、通常考えられる最大限の延長がなされ、合計20日間もの勾留がなされているのです。
このような実務の運用からは、勾留をいわば刑罰のように利用し、被疑者に精神的な揺さぶりをかけ、自白をさせようという捜査機関側の意図が透けて見えます。法務省刑事局の資料(「平成27年の検察事務の概況」法曹時報68巻12号)によれば、刑法犯の約35%が、6日~10日間、約63%が、11日~20日間の勾留がなされている事実が明らかとなりました。
勾留をされてしまうデメリット
日常生活では考えられない様々な制約があります。
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身体拘束日常生活ではおよそ考えられない長期間の身柄拘束がなされます。
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入浴・洗髪が毎日ではなくなる夏場は特に堪えると皆さん口々におっしゃいます。
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人と会うことを制限される勾留中は、家族とは、平日、限られた時間しか会えなくなります。具体的には、午前9時から午後5時の間、15分程度に制限されてしまいます。なお、弁護士の場合は、時間制限なく、深夜でも早朝でも面会が可能です。
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プライバシーの制限原則として、他の被疑者と一緒に雑居と呼ばれる部屋で生活することを余儀なくされます。
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名前ではなく番号で呼ばれるこちらも勾留特有の苦痛の一つです。名前を奪われ、モノのように取り扱われます。
勾留されず在宅事件となった場合
在宅事件となった場合は、身柄拘束がなされる事件と異なり、通常、捜査のスピードは緩やかになります。
前回の取り調べから2か月間捜査機関から連絡がないということもよくあることです。
もっとも、在宅事件となることと、不起訴になることの間には何の関係もありません。したがって、在宅事件でも、被疑者は防御のための適切な措置を講じる必要はあります。
例えば、性犯罪で、在宅事件となった場合でも、不起訴を目指すには示談交渉等が必要となってきますが、通常、被害者は被疑者と直接やり取りをすることを拒否します。
示談交渉をする場合には、被害者と交渉ができる弁護士が必要となるのです。
起訴された場合
起訴されてしまうと99%有罪となり前科がついてしまいます。
日本では、検察官が、裁判で十分に罪を立証できると考えた案件のみ起訴する運用をとっており、その裏返しとして、起訴された場合は、ほとんど有罪となってしまいます。検察官は、被疑者勾留中になされた、警察の取調べ等捜査の結果収集できた証拠を踏まえて、起訴できるかどうかを判断します。したがって、起訴がなされる前の弁護活動で、どれだけ被疑者に有利な証拠を収集できるか、不利な証拠を作らせないかが、重要な意味をもつのです。
前科が付くデメリット
前科がついてしまった場合、典型的に問題となるのが就職活動等の際の履歴欄に前科を記載しなければならなくなる点が挙げられます。
また、現在の職を失ってしまうというリスクもあります。国家資格等の場合には、欠格といって、資格を生かした仕事ができなくなる場合があります。
さらに、前科があった場合、何かの間違いで再度罪を犯してしまうと、罪が重くなってしまいます。例えば、前科が全くない状態であれば、執行猶予がついていたかもしれないのに、前科があることで実刑となる確率が高まることがあるのです。
国選弁護人と私選弁護人の違い
「私選弁護人」も「国選弁護人」もいずれも弁護士であることに変わりはありません。
しかし、私選弁護人は、ご家族やご本人の方が、弁護士を選択することが出来るのに対して、国選弁護人は、裁判所が弁護士を選任するため、ご家族やご本人が弁護士を選択することはできません。の結果、ご家族やご本人の方と国選弁護人との間で、事件方針や連絡内容等に齟齬が生じてしまい、結果として、国選弁護人から私選弁護人に切り替えるという方もいらっしゃいます。
また、刑事事件は、スピードが非常に重要となってきます。しかし、国選弁護人が選任されるのは、勾留決定が出された後になります。そして、勾留決定がなされるのは、概ね逮捕されてから72時間以内です。他方、私選弁護人であれば、このような時期による制限はありません。そのため、逮捕後直ぐ、接見することができます。その結果、早期に示談交渉等の弁護活動に着手でき、いち早く不起訴処分に向けた活動を開始することができます。また、勾留決定をさせないための弁護活動にも着手することができます。
弁護士の選択 | 料金 | 接見可能時期 | |
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国選弁護人 | 不可能 | 安い | 勾留状が発せられた後から |
私選弁護人 | 可能 | 高い | 逮捕直後から速やかに |
この記事の監修
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埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。