労務

求人票記載の給与額と契約上の給与額

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕

監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士

  • 残業代請求対応、未払い賃金対応

求人広告などで、月給25万円~などと記載して従業員を募集していたとして、必ず月給25万円以上で採用しなければならないのでしょうか。

労働条件は明示しなければならない。

労基法では、労働条件の明示が義務付けられています(15条)。

「労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」

具体的には、契約がいつまでか、期間の定めがある契約の更新については、更新があるかないか、仕事の場所、仕事の内容、仕事の時間や休み、賃金の額、支払い方法、締め切りと支払い日や、退職に関することの6項目は、口約束だけではなく、書面を交付して明示しなければならないとされています。

※労働契約法上、これ以外の契約内容についても、労使間で、できる限り書面で確認する必要があるとされています(労契法4条2項)

給与額も、明示するべき労働条件のひとつ

そのため、使用者と労働者が労働契約を結ぶ際には、給与の金額は、明示しなければなりません。

また、労働契約の内容となっているのであれば、使用者は、労働者に対し、その給与を支払わなければなりません。

求人票と異なる条件で採用することは出来ないのか

では、契約前、面接段階などで求人票と異なる条件で採用することは出来るのでしょうか。

労働契約を締結する前の段階ですから、法律や就業規則に反しない限り、契約内容は自由に定められるはずです。

採用することは出来る。

結論から言えば、求人広告などに記載した金額と異なる給与額であっても、契約締結時に使用者、労働者間で合意ができているのであれば、異なる給与額で採用することはできます(八州(旧八洲測量)事件参照)。

労働条件の明示は、契約締結の際に求められているものですから、その前段階である求人票の記載に絶対的に拘束されるわけではありません。

ただし、労働者にはきちんと伝えるべき。

ただ、求人票の記載をみて応募してきてくれた労働者に対して、何ら伝えることなく、求人票を下回るような条件で契約を成立させようとすることは問題があります。

労働には自己実現の側面もありますから、だまし討ちのようにして雇用しても、労働者は不満を抱えるだけであり、長続きしません。また、労使間で良い関係を築くことも出来ません。

仮に求人票の記載を下回る条件での契約をしようとするならば、事前に労働者に伝えることを徹底しましょう。

虚偽の広告又は虚偽の条件とされたら刑事罰もあり得る。

職業安定法では、「虚偽の広告をなし、又は虚偽の条件を呈示して労働者の募集を行った者又はこれらに従事した者は6カ月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処せられる」としています(法第65条第8号)。

実際には、そのような好待遇で採用することはないのに、あえて広告を出した場合などには、罰則もあり得ます。

従業員との契約関係にお困りの経営者の方は弁護士にご相談ください。

労務に関しては、労働者保護の観点から、通常の契約法理以上に使用者に義務付けられていることが多々あります。

以上に述べたように、労働契約を締結するにあたっては、労働条件を明示する必要がありますし、面で明示しなければならない条件もあります。

時代の変化によっては、書面で明示すべき内容も増加するかもしれません。労務問題は、弁護士などの専門家の関与を受けながら、時代の流れにリアルタイムで対応していくことが何より大事です。

埼玉県内で従業員との契約関係についてお悩みの企業様は、ぜひ弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所にご相談ください。

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕
監修:弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長
保有資格弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)
埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
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