労務

残業代の計算方法

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕

監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士

  • 残業代請求対応、未払い賃金対応

最近、未払い残業代問題が非常に取り上げられていますが、実際に残業代がいくらになるのかを計算方法についてまでは、詳しくない方が多いのではないでしょうか。

そこで、今回は、実際の残業代の計算方法について、よく問題となる手当の問題なども併せて解説していきます。

残業代の計算方法

残業代とは、労基法上の時間外手当のことで、この具体的な金額を算出するためには、次の算式を用いることになります。

労働契約に基づく1時間当たりの単価×時間外労働時間×労基法に基づく割増率

したがって、この三つの値を決めなければ、残業代を算出することは出来ないということです。

労働契約に基づく1時間当たりの単価とは

労基法上の計算方法について

労基法37条によれば、法定労働時間を超えた時間外手当は、「通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額」を割りまして支払うように命じられています。この「通常の労働時間または労働日の賃金の計算額」は、労基法施行規則19条によって「次の各号の金額に法第三十三条若しくは法第三十六条第一項の規定によつて延長した労働時間数若しくは休日の労働時間数又は午後十時から午前五時(厚生労働大臣が必要であると認める場合には、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時)までの労働時間数を乗じた金額とする。」とされています。

このうち次の各号とは、時給や日給、月給など、給与の支払い方法について、それぞれ定められています。

今回は、ご相談のケースが最も多い、月給で支払っている給与についてみていきます。

月給制の場合

月給制の場合は、「月によつて定められた賃金については、その金額を月における所定労働時間数(月によつて所定労働時間数が異る場合には、一年間における一月平均所定労働時間数)で除した金額」(労基法施行規則19条4号)が、1時間当たりの単価となります。

通常、月の所定労働時間は異なりますから(土日の数など違うので。)、1年における1月平均の所定労働時間数を計算したうえで、1時間当たりの単価を出します。

例えば、月40万円の支給を受けていた社員の事案で検討してみます。

1年のうち、1日8時間労働で、法定休日の他、契約で定められた休日を差し引いた所定労働日数が、240日であった場合、

8時間×240日=1920時間

になります。

そして、月40万円の支給を基に、この労働時間を12月で除して1月に平均したうえで、時間単価を出すと、

40万円×12月÷1920時間=2500円(1時間)

となります。

家族手当は算定基礎賃金に含まれるか?

ただ、月によって定められた賃金については、支給総額をみて単純に決まるかと言えば、そうではありません。それは、手当の問題です。

労基法37条5項によると、「第一項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。」とされていて、家族手当や通勤手当については、月によって定められた賃金には含まれないとされています。

したがって、家族手当や通勤手当は、時間外労働の単価を算出するにあたっては考慮しないのが原則です。

名目だけでは、除外されない

ただ、月によって定められた賃金から除外される手当については、名称のみをみて判断するのではなく、実質的に判断するものとされています。

ですから、扶養家族の人数や有無などに関係なく支払っている場合には、除外することは出来ません。人数毎にいくらと定めておく必要があります。

時間外労働時間をどう定める?

労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいいますが、労働時間にがいとうするかどうかは客観的に定まるものであって、労働契約等の定めによって決定されるようなものではありません。

それって労働時間にあたるの?-手待時間の労働時間該当性-

例えば、接客業に従事する社員が、レジでボーっとしている時間は、労働時間と言えるのでしょうか。いわゆる手待時間と言われる問題です。

これは来客があれば、その対応が使用者から義務付けられていることは当然ですから、使用者の指揮命令下に置かれている時間と客観的に評価できます。

そのため、労働時間に該当します。

持ち帰り残業は?

他にも、仕事が終わらなかった社員が、自宅に仕事を持ち帰って仕事をする持ち帰り残業などと言われる問題もあります。これは、家で仕事をしているのですが、労働時間と言えるでしょうか。

もちろん、使用者の明示的な指示に基づく持ち帰りであれば、使用者の指揮命令下に置かれている時間と評価せざるを得ませんが、勝手に持ち帰っている場合は、基本的には、指揮命令下にはありません。

したがって、労働時間とはいえません。

持ち帰り残業を見つけたら、注意すること

ここで注意が必要ですが、社員が勝手に持ち帰っているとしても、上司がそれを承知し、黙認している場合などは、黙示の業務命令が認定されかねず、使用者の指揮命令下に置かれた時間と評価されかねません。

従業員が勝手に持ち帰って仕事している場合であっても、形式的にそうなっているような場合には、労働時間に該当する可能性があるので、注意してください。

割増率は、労基法を下回るのであれば労基法どおりになる。

仮に労働契約や就業規則で、時間外労働に関する賃金の割増率を、労基法よりも有利(高い率)に定めていれば、それに従うことになります。

そうでない場合には、労基法に従って、以下の、労働契約に基づく1時間当たりの単価にかけて支払わなければなりません。

  • 時間外労働は25%増し
  • 休日労働は35%増し
  • 時間外労働と深夜労働が重なるときは50%増し
  • 休日労働と深夜労働が重なるときは60%増し
  • また、時間外労働が1月60時間を超えた場合、その時間は50%増し

(中小企業は2023年3月末まで対象外)

残業代の計算方法で気になる点がある企業様は、弁護士にご相談ください。

未払い残業代請求をされたときには、その請求金額が相当なものかを判断したうえで対応しなければなりません。

しかしながら、以上に見てきたとおり、残業代といっても多岐にわたる論点があり、それぞれ実質をみて法的に評価していかなければなりません。

未払い残業代の対応は、一歩間違えれば、労働審判や訴訟に移行しかねず、付加金の支払いなどの制裁を受けるリスクもあります。

埼玉県内で残業代の計算方法に疑問がある企業様は、自社の中だけで悩まず、ぜひ一度、弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所にご相談ください。

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕
監修:弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長
保有資格弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)
埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
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