管理職と残業代請求-管理監督者とは

公開日:2020年10月8日
  • 残業代請求対応、未払い賃金対応

労基法上、管理監督者に対しては、残業代を支払う必要はありません。ただ、この管理監督者とは、日常的に使われる管理職とは違います。

今回は、実務上も頻繁に問題となる管理職の残業代について、ご説明いたします。

管理職に対しても残業代を支払う義務があるのか?

よくあるご相談の一つに、管理職の地位にあった従業員から残業代を請求されているが、管理職に対して残業代は支払わなくて良いんですよね。というものがあります。

確かに、労基法上の管理監督者に該当するというのであれば、残業代の支払いをする必要はありませんが、それが単なる名ばかり管理職というのであれば、管理監督者に該当するとは言えませんから、残業代を支払う必要があります。

管理監督者に残業代を支払う義務はない

労基法上、「監督もしくは管理の地位にある者」(=管理監督者。41条2号)では、労働時間、休憩及び休日に関する規定の適用を除外しています(=時間外手当の支払い義務を免れるということです。深夜割増賃金の支払い義務までは免れません。)。

しかしながら、単に管理職の地位にあるだけでは、労基法上の管理監督者とは言えません。

管理監督者とは?

管理監督者とは、「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者」(労基法41条2号)のことを言います。

労基法上、管理監督者に該当するものには、労基法の労働時間、休憩、休日に関する規定が除外されます。管理監督者として認められた場合には、労働者の健康確保等のために定められた労働時間等の規制がかからなくなるため、労働者の心身の安全に極めて重大な影響を及ぼすものです。

名ばかり管理職では、管理監督者と認められない

そのため、店長という名前で稼働しているとはいえ、単なる雇われ店長にすぎず、何の権限もない方や、平社員と同様に勤怠管理がされている課長などは、管理監督者とは認められません。

逆に、経営方針を決定するような重要な会議に積極的に参加していたとか、労働時間に自由裁量があるとか、それに見合うだけの賃金を得ていたという場合であれば、労基法上の管理監督者と認められる方向に傾きます。

管理監督者でも深夜手当の支払いは必要

管理監督者に該当した場合に適用が除外されるのは、労働時間、休憩及び休日に関する規定ですが、労基法は、労働時間と深夜業を区別しているので、管理監督者であっても、深夜割増賃金を請求することは出来ます。

もっとも、所定賃金内に一定額の深夜増賃金を含める趣旨で定められていることが、労働協約、就業規則等によって明らかな場合には、既に支払っていることになりますから、支払う必要はありません(昭和63年3月14日基発150号)。

管理職には残業代を支払わないと就業規則で定めている場合は?

管理職には残業代を支払わないという就業規則を定めていたとしても、これが管理監督者には支払わないという趣旨であればともかく、労基法上の管理監督者に該当しない、自社の管理職に対して残業代を支払わないという規定であったとすれば、無効です。

就業規則よりも、労基法の定めが優先されます。

労働基準法における管理監督者の該当性

裁判所は、労基法上の管理監督者に該当するかどうかについて、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」などと定義した上で、管理監督者に該当するかどうかを、職位等の名称にとらわれず、職務内容、権限及び責任並びに勤務態様等に関する実態を総合的に考慮して判断しています。

労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有している

例えば、会社の経営会議に参加に参加し、その会社の行く末を決定するような職務内容であるとか、労働者の枠に収まらない重要な職務内容を有していなければ管理監督者とは言えないとされています。

労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な責任と権限を有している

例えば、労働条件の決定その他労務管理について、自らの裁量にゆだねられていなければ、管理監督者とは言えません。

課長やリーダーなどの肩書があっても、自らの裁量で行使できる権限が少なく、多くの事項について上司に決済を仰ぐ必要がある場合には、管理監督者とは言えません。

現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものである

経営者と一体の立場にある者は、時を選ばず経営上の判断や対応が要請されます。そのため、労務管理においても普通の労働者とは異なる立場にある必要があります。

労働時間について厳格な管理をされている場合には、管理監督者とは言えません。

賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされている

管理監督者は、その職務の重要性から、一般労働者としてふさわしい待遇(高い給与や賞与など)がなされていなければなりません。

そのため、課長やリーダーなどの肩書があっても、肩書がない労働者と待遇に異なるところが無ければ管理監督者とは言えません。

管理職が必ずしも管理監督者に該当するわけではない

以上に述べたように、管理職(課長など)の役職がついているからと言って、必ずしも管理監督者に該当するわけではありません。

その実態として、労基法の労働時間の規制の適用を除外するほどの職務や権限、待遇を得ている必要があります。

企業で違う管理職の扱い

そもそも、企業ごとにどのような管理職の地位を設け、どのような取り扱いをしているかは異なります。

係長や課長、次長、部長などの名称から、マネージャー等の名称を用いるものまで、企業によって異なります。

その企業の必要によって設けられた役職と、労基法の管理監督者が異なることは必然ともいえます。

「名ばかり管理職」と残業代の問題

労基法上は「名ばかり管理職」であったとしても、会社としては、管理監督者であると捉えてしまい、残業代を支払わなくてよいと勘違いしていることが有ります。

しかしながら、名ばかり管理職であったとしても、通常の従業員よりは賃金がある程度高かったり、また労働時間が長時間に及んでいることが多いです。

そのため、名ばかり管理職からの残業代の請求は高額の請求になりやすく、企業にとっては無視できないリスクとなっているのです。

管理職の勤務実態を把握する必要性について

管理監督者であれば、適用除外を受けることになり、他方で名ばかり管理職であれば残業代の支払いなどが義務となってきます。

自社の管理職が、どちらに該当するのかについては、その勤務実態から改めて確認し、適切に対処していかなければなりません。

今一度、管理職が、管理監督者に該当するのか、しないのか、確認されることをお勧めいたします。

管理監督者の該当性が問われた裁判例

管理監督者の該当性が問題となった裁判例は数多くありますが、特に有名なものとして、日本マクドナルド事件があります。

事件の概要

ファーストフードチェーン店の店長が、管理監督者に該当するかどうかが問題となったものです。

アルバイトの採用権限や時給額、人事考課、勤務シフト等の決定に関する権限を有し、自己の勤怠の自由もあったという事案です。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

裁判所は、店長である労働者について、その権限について、アルバイトの人事上の権限を有してはいるものの、将来アシスタントマネージャーや店長に昇格していく社員を採用する権限はないことや、企業全体としての経営方針等の決定に関与していないということから、重要な職務と権限を付与されているとは認められないとされ、勤怠の自由についても、形式的には裁量があることもあるが、労働時間に関する自由裁量性があったとも認められないとし、処遇についても、シフトマネージャーの業務も兼務していたこと等から労働時間等も踏まえれば、管理監督者に対する待遇としては不十分であるとして、管理監督者性を否定しました。

ポイントと解説

チェーン店とはいえ、店長という独立した職場の長が、ある程度の権限を有していたにもかかわらず管理監督者性を否定されたところが大きなポイントです。

判断要素自体は従前重要視されていたところと変わらないのですが、この裁判例によると、経営者との一体的な立場については、企業全体の運営への関与を要するとしたように見えるところがあり、担当する組織(店など)について、経営者の分身として経営者に代わって管理を行う立場にあることで、経営者と一体とみても良いのではないか、という評価も受けています。

もっとも、事案判断としては、シフトマネージャーとしての営業業務にも従事していたにもかかわらず、店長としての報酬しか得ていなかったという事情もあることから、事案判断としては、相当なものであると評価されています。

管理職について正しい知識を持つ必要があります。企業法務でお悩みなら弁護士にご相談ください。

以上に述べてきたように、単に管理職であるからと言って、残業代を支払う義務がないとは直ちには言えません。

管理職は、会社でそれ相応の地位にあることが多いことも相まって、通常の従業員よりも高額な賃金を得ているために、残業代の金額も高額になってしまいます。また、管理職であるがために、長時間労働をしているケースも多く、時間外労働時間もかなり長時間に及ぶことも多いです。

そのため、単価も高く、また支払うべき時間外労働時間も長くなってしまうケースが多く、管理職の未払い残業代問題が会社に与える経済的な負担は極めて大きなものになりがちです。

このようなリスクがあるにもかかわらず、管理監督者に該当するか否かは、役職名だけで決まるものではなく法的な判断を伴います。

そのため、自社のみで判断することなく、弁護士などの専門家に相談することは必要不可欠と言わざるを得ません。

埼玉県内で、自社の管理職が管理監督者に該当するか否かお悩みの企業の方は、ぜひ一度弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所にご相談ください。

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