会社を守る36協定の締結方法

公開日:2020年10月8日
  • 残業代請求対応、未払い賃金対応

世間では、残業が当たり前の会社もありますが、労働基準法(以下、「労基法」といいます。)は、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。」「使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。」(労基法32条)と定めています。

本来、労基法は残業(時間外労働)を禁止しています。この制限を外し、従業員を適法に残業させるために必要なものが、いわゆる36協定、「時間外・休日労働に関する協定届」です。

36協定とは

労基法では、「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間…又は前条の休日…に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。」(労基法36条)と定めています。

この協定を結び、労基署へ届け出ることによって、適法に残業をさせることができるようになります。

この条文が36条なので、サブロク協定と呼ばれているのです。

会社が36協定を締結しなければならない理由とは?

労働時間の原則

前記したとおり、労基法では、原則として1週間につき40時間、1日につき8時間に制限されています。

そのため、それを超える労働をさせることは原則としてできません。

労働時間の規制違反の罰則

もし仮にこの原則に反した場合、労基法違反として刑事罰(6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科せられる事になりかねません(労基法第119条)。

ただ、いきなり罰則が科せられることは稀で、行政指導や是正勧告といった経過をたどることが殆どではあります。

36協定の効果

このように、労基法は時間外労働に厳しい態度を示していますが、36協定を締結しておくことで、時間外労働をさせることが適法になります(以下で述べるように限度はあります)。

この意味で36協定には、刑事責任を免れさせる効果(免罰的効果)があるといわれています。

36協定を締結していない残業は違法となる

もし36協定を締結せずに時間外労働をさせた場合には、残業させたことが違法なこととなってしまうため、前記したとおり、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

36協定で定められる残業の限度時間

上限規制の導入

働き方改革関連法案の施行によって、従来は告示にすぎなかった36協定で定める時間外労働の限度時間(月45時間、年360時間)について、罰則付きの上限として導入されました(労基法36条4項)。

そのため、一部の適用除外事業を除き、36協定によっても、月45時間、年360時間以上、時間外労働させることは出来なくなりました。

上限規制の趣旨

このような上限が設定されたのは、企業における長時間労働や違法残業の蔓延と過労死・過労自殺による労災認定の増加が見られた結果、社会における健康被害の防止が強く叫ばれたからです。

自社の従業員を大事に思っていない経営者の方はいらっしゃらないかと思います。

この働き方改革関連法案の施行を受けて、自社の時間外労働や休日労働について、ぜひ見直されることをお勧めします。

特別条項付き36協定について

従来は、臨時的な特別事情がある場合の特別条項付きの36協定を結んでおけば、上限の基準はないといっても過言ではありませんでした。

しかし、働き方改革関連法案の導入によって、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)であっても、上限が設けられました(労基法36条5項、6項)。

以下のとおり①時間外労働が年720時間以内、②時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満、③時間外労働と休日労働の合計について、2~6か月の平均が全て1月当たり80時間以内、④時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月が限度のいずれを超えてもいけないものとされました。

この上限を超えた場合には、やはり罰則が適用されることになりますので、ご注意ください。

36協定を締結する方法

36協定を締結するためには、必要事項を記載した書面において、労働者の過半数を代表する者の署名又は記名押印を加えることで成立します。

実務上は、厚生労働省が用意した様式に必要事項を記載したうえで、労働者の過半数代表者が署名又は記名押印をし、その写し、又は提出時に受理印を得た様式の写しを保存するという運用がなされていることが多いでしょう。

36協定に盛り込むべき内容

36協定には、以下の必要事項を記載しなければなりません。

  • 事業の種類
  • 事業所の名称
  • 事業所の所在地
  • 業務の種類
  • 協定の有効期間
  • 労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる場合として定める具体的な事由
  • 労働時間を延長して労働させることができる時間、法定労働時間を超える時間数
    (1日単位、1ヶ月単位、1年単位(1年の上限の起算日))
  • 労働者数
  • 労働させることができる法定休日の日数
  • 休日労働時の始業・終業時間
    (特別条項付きの場合)
  • 臨時的に限度時間を超えて労働させることができる場合の具体的事由
    特別条項適用時の時間外労働時間数(1日単位、1ヶ月単位、1年単位(1年の上限の起算日))
  • 限度時間を超えて労働させる場合における手続
  • 限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置
  • 1ヶ月100時間を超えないこと、及び複数月80時間を超えないことの誓約

特に形式は問われませんが、厚生労働省が用意した様式に則って記載を行えば、必要事項を漏れなく盛り込むことができるでしょう。

36協定届の提出

過半数代表者と締結した協定は、労働基準監督署に届けられて、初めて効力を持つことになります。

せっかく協定を結んだにもかかわらず、労基署への提出をしない、等といったことのないようにご注意ください。

過半数代表者の選出方法

過半数を超える労働者によって組織された労働組合が会社に存在するのであれば、当該労働組合の署名又は記名押印を得ることで、36協定を成立させることができます。

そうでない場合は、挙手、回覧、選挙等の民主的な方法によって労働者から選任された、過半数代表者の署名又は記名押印を得る必要があります。

会社が労働者代表を指名することはできない

以下でも述べますが、会社(使用者)が労働者の代表を選出することは出来ません。

過半数代表者の要件

過半数代表者になる者は、以下の要件を充たさなければなりません(労基法施行規則6条の2参照)。

  1. 管理監督者ではないこと
  2. 過半数代表者の選出であることを明らかにしたうえで民主的方法により選任された者であること
  3. 使用者の意向に基づいて選出されたものではないこと

労働者の過半数で組織する労働組合がない場合には、この点に注意しつつ、過半数代表者を選任することになります。

働き方改革による「時間外労働の上限規制」

前記したとおり、働き方改革関連法の施行に伴い、時間外労働の上限規制が始まりました。

大企業については2019年4月1日から、中小企業については2020年4月1日から、施行されています。

原則として、月45時間、年360時間の規制があります。また、これを超える残業を可能にする特別条項付き36協定を締結する場合でも、単月100時間、複数月平均80時間、年間720時間という上限を意識する必要があります。

仮に、この基準に適合しない労使協定が届けられた場合は、労基署から労使当事者に対して助言・指導が行われることになります。

36協定の締結後には従業員への周知が必要

36協定の締結後、所轄の労働基準監督署に届出をしても、それだけではまだ適法な手続を完了したとは言えません。

36協定は、締結後、従業員に以下の方法で周知しなければなりません(労基法106条、同施行規則52条の2)。

  • 常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付けること
  • 書面で労働者に交付すること
  • 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずるものに記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること

36協定が争点となった裁判例

36協定の効力が争点となった判例としては、トーコロ事件判決(最判平成13年 6月22日)があります。

事件の概要

これは、従業員の親睦団体の代表者が自動的に労働者の過半数代表となって締結された36協定の有効性が争われたものです。

これは解雇された従業員が、36協定は無効であって、時間外労働に応じる義務がなかったとして、その解雇の無効などを争った事案です。

裁判所の判断(事件番号)

裁判所は、本件36協定について、親睦団体である友の会の代表者が、自動的に労働者の過半数代表となって締結しているものと認定し、作成手続において適法・有効なものであったとは言い難いとの判断を下しました。

そのため、時間外労働に応じる義務はないと判断されました。

ポイント・解説

過半数代表者が、適法に選任されていなければ、36協定の効力は無効と判断した点が、本判例のポイントです。

使用者が労働者に時間外労働をさせるにあたっては、適正な36協定が締結されていなければなりません。その際、過半数代表者を適正に選任しておかなければ無効とされてしまうことが、改めて明らかにされました。

36協定締結のプロセスは、慎重に行うべきです。近時の働き方改革の影響もあり、適切な36協定を結ばずに残業をさせた場合、法的な責任を負うことはもちろん、社会的にも強い非難を受ける可能性があります。

残業に関するトラブルから会社を守るためにも36協定の締結が必要です。不明点があれば弁護士にご相談ください。

36協定の締結自体でお悩みの経営者の方もいらっしゃるかもしれませんが、この度の働き方改革に伴って自社の協定内容の見直しが必要ではないかということをお悩みの経営者の方が多いのではないでしょうか。

36協定締結のプロセスは、慎重に行うべきことをご説明しましたが、自社の協定内容を変更し、再締結される場合にも同様のことが言えます。

労務については、時代の変化に伴い、常に見直しが必要です。そこに労務問題に強い弁護士を関与させることで、時代の変化に置いて行かれず、また自社をより良い方向に導いていくことができるようになります。

埼玉県内で、36協定でお悩みの経営者の方は、ぜひ弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所にご相談ください。

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