監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士
- 問題社員の解雇・雇い止め
反復型休職復職者の特徴と対応について
《企業内で問題視されている反復型休職復職者》
精神疾患、すなわちうつ病等により休職となるのですが、医学的に原因・治療法がはっきりせず、復職したと思ったら、病気が再発してまた休職してしまう状態にある社員が昨今で問題になる「反復型休職復職者」の特徴です。
休んでいる間はもちろんその社員が担当する業務は出勤している社員たちで対応しなければいけません。この状態は企業にとっては大きな問題です。
しかし、最近の社会情勢において、反復型休職復職者への対応は避けて通れない大問題となっています。
また、この反復型休職復職者の大きな特徴として、休職期間満了、すなわち自然退職日の前に無理に復職し、また制度的に休職できる状態になると休職してしまうというパターンです。
就業規則に触れないので、対処法が見つかりません。
休職が続き、休職期間が終わると復職していますから、欠勤ではありません。解雇事由には該当しないのです。
このような問題社員を解雇、または自主退職させるには、
- ◎安易に復職を認めないこと
- ◎配慮を持った退職勧奨
- ◎就業規則の変更
という3つの方法をとることになります。
安易に復職を認めないとは?
精神疾患の場合、就業可能となっていないのならば復職を認めないことを規定しておきます。
すなわち、産業医および会社指定医師が復職可能と判断しない限り、復職させないと規定を就業規定に謳っておくのです。
従業員がかかっている主治医が、復職可能と診断しても対抗することができます。
決して主治医の判断を反故(ほご)にする規定ではない
従業員の主治医の診断内容を真っ向から否定するということではもちろんありません。
まだ働ける状態ではないのに、主治医の患者に対する気遣いから就労可能と診断することは多く見受けられます。
安易な復職を認めないためには、人事担当あるいは責任者が、産業医同席で主治医と面会して、病状・回復に関する見解を一致させる努力をすることも重要です。
配慮を持った退職勧奨とはどのような方法か?
この退職勧奨はかなりデリケートに行うことが必要となります。
精神疾患、つまり心の病ですから話し合いの内容によっては、病状が悪化することも考えられます。
出勤と欠勤が繰り返されている状態であり、本来の労働契約の労務が提供されない状態であることを休職者に伝えることをまず行い、じっくり休職して病状が良くなり復職する場合は、休職前の同じ業務ではなく簡単な業務から始めてみることなども提案しておきます。
これらの説明に関しては、内容をすべて書面で記録しておく必要があります。
また、このような話し合いがもたれて、その内容を理解したという該当社員の署名も取っておく必要があるでしょう。
そのような配慮を行ったとしても、労働契約の本旨に従った労務を提供できないようであれば、休職者としても自主的な退職を考慮にいれてくれることもあり得るでしょう。
就業規則の変更で気を付けること
「復職日から◯◯日以内に、同様の疾患により再び休職するときは、休職期間を通算する」という一文を就業規則に明記しておくことで、短期間での休職、復職を繰り返しても、復職したことにはならず休職しつづけたことになり、自然退職することになります。
安易な復職を認めないこと、退職勧奨、就業規則の変更を行ったにもかかわらず、労使紛争に発展した場合には、復職の要件である治癒に該当する状態であったか、復職にあたって配置転換を考慮すべきであったか否か等が争点となります。
この項目でお話している3点(安易な復職を認めないこと、配慮を持った退職勧奨、就業規則の変更)を行い、そして労働者が本当に復職できるかどうかについて、誠実な協議の場を持っていたならば、処分が不当であったということにはならないことも十分に考えられます。
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保有資格弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)
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