職務怠慢な社員を辞めさせたい

  • 問題社員の解雇・雇い止め

会社内で、他の社員と比べて、不熱心な社員に悩まされている上司や経営者の方は多いのではないでしょうか。

例えば、頼んだことの報告がないとか、仕事が遅いとか、業務時間内にネットサーフィンしているといった社員が、御社にもいるのではないでしょうか。そのような職務怠慢な社員を辞めさせたいという相談は多いです。

以下では、職務怠慢な社員を辞めさせることができるかどうかについて、ご説明いたします。

職務怠慢の社員を解雇することは可能か?

結論からいえば、職務怠慢な社員を解雇することは困難です。

解雇は、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」(労契法16条)とされており、この厳しいハードルをクリアしなければ、解雇が有効にはなりません。

まずは業務命令によって改善を図っていくことから始めなければなりません。

労働契約上の債務不履行とは

労働契約とは、「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。」とされるものです(労契法6条)。

労働者は、使用者に使用されて(指示に従って)労働しなければなりません。これを怠った場合には、労働契約上の債務不履行があるということができます。

職務怠慢とみなされる問題社員の例

例えば、以下の相談事例のような社員が職務怠慢な社員といえるでしょう。

相談事例

雑貨の販売をしています。店頭のほかにネット通販を行っています。従業員が30名ほどいるのですが、一人困った社員がいます。その社員を仮にCとします。

Cは入社当初から仕事に対してあまりやる気が感じられませんでしたが、ここしばらくは遊んでいるような状態です。店舗に出勤はするものの、店頭に立つことはなく、勤務時間のほとんどをSNSに費やしています。SNSといっても、お店の宣伝をするわけでもなく、他の従業員からも不満の声が上がっています。

何度か口頭で注意していますが、一向に改善の余地が見られないため解雇したいです。解雇することに問題はないでしょうか?

問題社員でも簡単に解雇することはできない

前記Cは、いわゆる問題社員であり、就業時間中にもさぼっているのですから、労働契約上の債務不履行も認められるというべきでしょう。

しかしながら、このような問題社員であっても、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」には、解雇できません(労契法16条)。

前記Cに対しては、口頭で注意したにとどまっているため、きちんと書面の形で注意指導を行ったうえで改善を図るところから始めなければ、解雇が有効とは言えないでしょう。

就業規則に解雇事由を定める必要性

就業規則の必要的記載事項には、退職に関する事項(解雇の事由を含む)があります(労基法89条)。

そのため、就業規則に解雇事由を定めなければなりません。

ただ、「その他、前記各号に準じるもの」といった条項が記載されていることがほとんどでしょうから、そこまで厳密に就業規則の解雇事由該当性を考えなくとも問題ありません(懲戒解雇の場合は別です)。

懲戒解雇における権利濫用法理とは?

労働契約法15条において「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」とされ、同16条において「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定められています。

要件は似通ったところがあるのですが、懲戒解雇は制裁の性質を有し、労働者に与える不利益も大きいことから、厳格に判断されます。

職務怠慢は普通解雇・懲戒解雇どちらにあたるか?

職務怠慢の問題社員を解雇するには、普通解雇と懲戒解雇の二つの種類があります。

職務怠慢が懲戒事由にあたることが就業規則に明記されており、懲戒解雇となることが就業規則に記載されていれば、職務怠慢の労働者を懲戒解雇することができます。

また、職務怠慢について、普通解雇事由に該当すると就業規則に記載しておくことも可能ですから、この場合にも職務怠慢の労働者を普通解雇できます。

ただ、前記したとおり、懲戒解雇の方が、普通解雇に比べてハードルが高いです。

懲戒解雇は、制裁としての性質があり、労働者に与える不利益も大きいことから、より厳格に有効性が判断されます。

就業規則上は懲戒解雇に該当し得るとされているものの、厳格な判断を避けるために、実際の解雇の際には普通解雇とする実務的な運用がなされることも多いです。

職務怠慢による解雇が認められるには

解雇は、客観的合理的理由があり社会通念上相当であると認められなければ無効とされます。

そのため、労働者の職務怠慢の程度などを使用者が立証し、これらのハードルをクリアしなければなりません。

職務怠慢を客観的に証明できる

例えば、勤怠が乱れているのであれば、出勤簿やタイムカード等によって、証明を行っていかなければなりません。

また、勤務態度が不良(サボり癖があるとか、ネットサーフィンをしている等)というのであれば、口頭による注意だけではなく、書面による改善命令を出しておくなど、事後的に職務怠慢を証明できるようにしておく必要があります。

会社が解雇回避措置を講じている

解雇一般に言えることですが、職務怠慢な社員がいた場合に、その問題を指摘せず、改善の指示も出さないで解雇することは出来ません。解雇は、会社と労働者の関係を終了させるもので、また労働者の生活の糧を奪うものですから、最後の手段としてなされなければなりません。

そのため、解雇を避けるため、会社は、まずは業務指導を行って、労働者に改善を促しておかなければなりません。

就業規則による懲戒の種別及び事由を定めておく必要

まず必要なのは、就業規則に懲戒処分の内容と種類がきっちり明記されていることです。

  • そもそも就業規則を作っていない企業
  • 懲戒規定の記載がない企業
  • 規定があっても、これを事業場の労働者に周知していない企業

などは、いずれも懲戒解雇を行うことは出来ません。

また、懲戒規定を細則まで細かく設定したり、懲戒の種類を明確にしておくことや、懲戒処分に当たる内容を時流、業種に合わせておく必要もあります。

解雇に合理性を持たせるため職務怠慢の客観化をしておく

先ほどの項目でお話しました通り、就業規則において懲戒規定について詳細に取り決めたうえで、次は当該社員の職務怠慢(債務不履行事由)を客観化しておく必要があります。

不当解雇だといって訴訟に発展した場合には、この資料が活用できます。

該当社員が使用していたPCの閲覧履歴、またSNSのタイムラインなども確認しておき、就業時間内に業務以外のSNSへのログイン履歴を証拠として押さえておきます。

私用で行っていたSNSで会社において内部事情などを暴露していたということも考えられますので、その点の確認や証拠化も必要です。

問題社員を解雇する場合も「解雇予告」は必要か?

使用者が労働者の解雇を行う場合には、30日以内に解雇予告をする必要があります(労基法20条)。

職務怠慢の問題社員であっても、解雇する以上必要です。

円満退職を目指すなら退職勧奨の検討も

日本の労働法によれば、解雇は非常に高いハードルをクリアしなければなりません。

解雇した後に労働者から労働審判等を申立てられた場合には、裁判所でその有効性を争わなければならず、非常にコストがかかります。

こういったリスクを避けるために、労働者との合意による退職、又は労働者からの意思表示で退職をしてもらう方法を取ることが考えられます。

いわゆる退職勧奨による退職です。この方法によれば、そもそも解雇ではありませんから、解雇に伴うリスクを避けることができます。

ただ、執拗な退職勧奨は、それ自体が強要などとして違法となりかねませんので、やりすぎには注意が必要です。

問題社員による職務怠慢を防ぐために服務規律をどう充実させるべきか?

使用者は、円滑な事業活動を行っていくために、就業規則に服務規律(組織の構成員として守るべきルール)を定めることができます。

これに反した場合に、懲戒処分を行うとしておくことで、服務規律の順守を促すことができます。

例えば、遅刻早退欠勤休暇の手続き、離席外出面会の規制、服装規定、職務専念規定、上司の指示命令への服従義務、職場秩序の保持などを定めておくことが考えられます。

職務怠慢な社員の典型例としては、欠勤・遅刻・早退、勤務態度不良等が考えられますから、これらを服務規律として規定しておくことで、職務怠慢を防ぐ効果を期待することができます。

職務怠慢による解雇の有効性が問われた判例

勤怠不良によって、解雇の用う構成が問われた裁判例として、テレビ朝日サービス事件判決(東京地判平成14年5月14日)があります。

事件の概要

ほぼ毎日就業時間御ほとんどを離席し、外出中に連絡をするようにとの上司からの指示にも従わなかったという事情がある正社員に対して、解雇したという事案です。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

種々の勤務成績不良等が認定されたうえで、「原告は、正社員になったころからほとんど毎日、就業時間のほとんどを離席して外出し、外出中に会社に何らの連絡をせず、終業時刻まぎわに帰社しており、具体的な業務内容を上司に報告したことはほとんどなく、上司から外出中に連絡を入れるよう指示されてもこれに従わなかった。これらによれば、原告は、従業員として会社の規律や上司の命令に従って業務を遂行しようとする意思を著しく欠いており、勤務態度が著しく不良であった。」等として、労働者の勤怠不良を認め、解雇を有効としました。

ポイント・解説

職務怠慢の社員を解雇するということは非常に困難だといわれます。しかしながら、この裁判例のように職務怠慢の程度が極めて大きい場合には場合には、解雇が有効となることを改めて示したところにポイントがあります。

問題社員の対応には人事労務の専門家である弁護士のサポートが必要です。お悩みなら一度ご相談下さい。

問題社員に対しては、改善の機会を与えることが何より肝要ですが、最終的に改善しない場合には、解雇等によって会社から離れてもらわなければなりません。

しかしながら、これまでに述べてきたように解雇には非常に高いハードルがあり、また事後の法的紛争にも発展しやすいものです。

解雇をするにせよ、解雇を避けるにせよ、人事労務の専門家である弁護士のサポートを受けたうえで判断することをお勧めいたします。

弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所では、労働審判等の紛争対応はもちろんのこと、解雇するタイミングでの法的サポート業務なども対応しております。

埼玉県内で問題社員の対応にお悩みの方は、ぜひ一度、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

この記事の監修

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕
弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長弁護士 辻 正裕
埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。

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