監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士
- 問題社員の解雇・雇い止め
目次
有期契約社員の更新や雇止めと就業規則の改定について
無期転換ルールとは?
同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が5年を超えて更新された場合、有期雇用契約労働者からの申し込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルールということです。
無期転換ルールに対象となる労働者
対象となる労働者は、雇用形態や雇用名称は問わず、原則として同一の会社で通算5年を超えるすべての有期雇用労働契約者です。1年や半年単位で有期労働契約を結び、その契約の更新を反復している労働者が対象ということになります。
すなわち、パートやアルバイト、契約社員といった労働契約期間が定められている方々も対象ですし、3か月契約の派遣社員で更新の可能性がある方もこの対象になります。
(しかしながら、派遣社員の場合は、派遣元企業との間で無転換ルールの対象となり、派遣先企業とはこの対象にはなりません。)
無期転換後の労働条件、就業規則の変更
企業が無期転換をするときは、就業規則の改定、新たに作成するなどが必要です。
無期転換ルールを導入する前に、雇用形態や労働条件をきっちり決めておかなければいけません。
- 雇用期間のみの変更か?
- 多様な正社員として扱うのか
- 正社員に転換するのか
この3つの変更については、就業規則を改定する必要があります。
①雇用期間のみ変更
《大きな変更はなく、手続きがシンプル》
これは無期転換ルールを導入して、雇用期間のみを変更する方法です。
賃金や勤務時間、就業場所など労働条件そのものの変更はなく、有期労働契約から無期労働契約へ雇用期間のみだけが変更されます。
この方法だと、会社側も煩雑な手続きもなく、雇用期間だけの変更で済みます。
②多様な正社員として扱う
《制限のある働き方がメリットになる社員も存在する》
多様な正社員とはどのような雇用形態かというと、転勤が無い、残業時間などの労働時間に対して一定の制限がある社員のことを指します。
家庭の事情(育児、介護、闘病など)を抱える社員にはこの働き方はプラスとなります。
一定の制限を設けることで、育児、介護などと仕事の両立が可能になります。
そして雇用側は、制限にあった報酬体系を設けることができます。
働く側と雇用側ともにメリットがある雇用形態といえます。
③正社員に転換する
《労働者に活躍の場を与えることができる》
無期転換ルール後に従業員が最も活躍できるのが、この正社員への転換です。
キャリアを積むことで、将来、社内での要職に就くことも可能です。
労働時間、雇用期間に制限なく、働き続けたいと考えるなら正社員への転換を希望することになります。
会社側も、事業価値である労働力を確保することができるのです。
働きぶりに応じての、報酬などの見直しは必要になってきます。
企業がとるべき無期転換ルールへの対応
《無期転換ルールを導入するには事前準備がとても重要》
- 無期転換を受け入れる場合
- 無期転換を回避する(雇止め)する場合
上記の2つの場合で企業側とるべき対応をご説明していきます。
1.無期転換を受け入れる場合
就業規則を変更して、申込書と承諾書をとっておく必要があります。
就業規則の変更に関しては、次にあげる3つのポイントを押さえておきます。
- ポイント①:該当する無期転換労働者をはっきりさせる
- ポイント②:転勤の有無を明確にする
- ポイント③:定年に関する条項を設定する
これらのポイントを押さえて就業規則を改定して、該当の無期転換労働者へ申込書と承諾書をきっちり取っておくようにしてください。これらは口頭ではなく、すべて書面で整備するようにします。
2.無期転換を回避する(雇止め)する場合
雇止め、つまり有期雇用にして労働契約を更新しないという場合には、労働契約書を整備しておく必要があります。
この雇用契約書に「5年以上雇用契約を更新しない」というように明記しておけば、無期転換ルールの対象となる労働者にはなりません。
《解雇と同一視されるケースとは?》
以前から雇用されている有期雇用契約労働者で、雇用契約書に労働契約が自動更新となっている場合等で雇止めを行うと「解雇」と同様の法的規制の適用を受けます(労契法19条)。
有期労働契約の更新を期待する合理的な理由があるのに、更新しないとなるとこれも、解雇権濫用法理同様に、客観的な合理性と社会的相当性がない場合には、承諾したものとみなされてしまいます。
雇止めの際には、このような規制の適用があることに注意が必要です。
無期転換ルールを導入するにあたりその対策とは?
《対策で重要なのは現状を把握すること》
長期間にわたる契約労働者が存在するとき、無期転換権が発生しているのに気づいていない場合があります。勤続年数や更新回数に関して正確な情報を把握しておいてください。
- 有期雇用契約労働者は何人いるか
- 更新された回数
- 勤続年数
- 業務内容
上記の4つは少なくとも確認しておく必要があります。
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保有資格弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)
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