監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士
- 企業で発生するハラスメント問題について
目次
セクハラは許されないこと
セクシュアルハラスメントとは、人事院の定義のように「相手方の意に反する性的言動」と定義されることが多いです。
会社に対し、職場におけるセクシュアルハラスメントの防止措置が義務付けられたのは、平成11年ですが、都道府県労務局に寄せられるセクハラの相談は、少なくなりません。セクハラは個人の尊厳や人格を不当に傷付けるものであって、社会的にも許されません。
2020年パワハラ防止法の施行に伴って、同年6月1日から改定されたセクハラ指針も施行されますので、このようなセクハラを防止することは会社にとって必要不可欠な措置であるといわざるを得ません。
セクハラとは?
職場におけるセクシュアルハラスメントは、職場において行われる労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応によりその労働者が労働条件について不利益を受けたり、性的な言動により就業環境が害されることをいいます(男女雇用機会均等法11条)。
対価型セクシュアルハラスメント
このうち、前者の「職場において行われる労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応によりその労働者が労働条件について不利益を受けること」については、対価型と言われます。
例えば、社長が社員に対し、性的な関係を要求したところ拒否されたので、その社員を解雇することや、車で移動している最中に、課長が社員の胸や腰などを触ったところ、抵抗されたので、その社員を配置転換すること等は、この対価型セクシュアルハラスメントに該当します。
環境型セクシュアルハラスメント
そして、後者の「性的な言動により就業環境が害されること」については、環境型と言われます。
例えば、労働者が抗議しているのに、同僚が業務に使用するパソコンでアダルトサイトを閲覧しているため、それを見た労働者が苦痛に感じて業務に専念できない場合とか、同僚が取引先で労働者にかかる性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布したため、その労働者が苦痛に感じて仕事が手につかないことをいいます。
セクハラについて会社が雇用管理上講ずべき義務
このような職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するために、以下の4つの措置義務が課されています。
- ①事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
- ②相談に応じ、適切に対応するために必要な態勢の整備
- ③職場におけるセクシュアルハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
- ④①~③と併せて講ずべき措置
事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
事業主は、自社内でセクシュアルハラスメントを行ってはならないことを就業規則などに明記し、また例えば社内にトップメッセージを出すことで改めて周知する義務があります。
ここは従前「あってはならない」とされていたところが「行ってはならない」に変更されており、従来よりも、厳しくなったと考えてよろしいでしょう。
加えて、セクシュアルハラスメントが生じた場合には懲戒処分の対象となること(もし、懲戒規定がなければ、それを明記したうえで。)を労働者に周知する義務もあります。
また、職場におけるセクシュアルハラスメントとは、どういった行為が該当し得るのかなどについて社内に研修を行うこと等も求められています。
このような周知・啓発によって、セクシュアルハラスメントを許さない、放置しないことを、会社が示すことで、セクハラを許さない会社にしていくことを目指しています。
相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
第三者機関に委託してもよいですが、セクシュアルハラスメント相談窓口を、問題が生じる前に設置し、労働者に周知しておくべきことが義務付けられています。
従前は、周知しておくことは求められていませんでしたが、被害者が窓口を知らなければ、相談できませんから、明示されることになりました。
単に相談窓口を設置するだけではなく、きちんとした体制を整えておく必要もあるので、相談にあたっての留意点を記載したマニュアルを作成することや、相談担当者に対する研修等も必要であるとされています。
職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
労働者が相談窓口に来た場合には、迅速かつ適切な対応を行う必要があります。
事実確認を行うにあたっては、事前にどのような手順で対応するかを明確に定め、迅速に対応を行う必要があります。
セクシュアルハラスメントの場合は、性的な言動があったか否かが重要となってきます。基本的に、性的な言動というものは業務上必要がありませんので、その言動の有無の確認が重要です。
また、仮にハラスメントの存在が明らかとなった場合には、被害者に対し、労働条件上の不利益の回復など適切な対処を行わなければなりません。当然ですが、行為者に対しても懲戒処分を含めて、適正な措置を実施する必要があります。
そして、セクシュアルハラスメントに関する研修などを行うことで、再発防止の措置を取らなければならないとされています。
①から③での措置と併せて講ずべき措置
プライバシーに十分配慮すべきことと、相談や事実確認へ協力したことによって、不利益に取扱うことの禁止や不利益に取り扱われることはないことを周知・啓発することが義務付けられています。
このようなことは当然の前提とされるものかもしれませんが、労働者からすれば、会社に対してセクシュアルハラスメントの相談をすることは非常に抵抗があります。性的な言動ということもあり、好奇の目線に晒される恐れもあるため、プライバシーには十分に配慮すべきですし、上司部下など、職場の力関係を背景に行われている場合には、被害者にこそ不利益な取り扱いがされてしまうのではないかといった恐れを抱き、相談に躊躇することもあり得ます。
十分にプライバシーに配慮し、また相談などを理由として不利益な取り扱いはされないことを労働者に周知・啓発することが必要です。
職場におけるセクシュアルハラスメント対応でお悩みの企業の方は、弁護士にご相談ください。
以上に述べたように、職場におけるセクシュアルハラスメントは許されるものではありませんし、会社には雇用管理上講ずべき措置も課されています。
会社でセクハラが生じた場合には、会社に賠償責任が生じ得るリスクもありますが、被害者の離職や行為者の離職であったり、職場の生産性の低下、会社のイメージダウンなど、それに伴って非常に大きな弊害が生じます。
職場において、性的な言動が業務上必要となることはありません。このような不必要な行為によって、尊厳を傷つけられる環境を会社が放置しておくことに、メリットはありません。
職場におけるセクシュアルハラスメントでお悩みの会社の方は、その防止に取り組まれることを強くお勧めいたします。
埼玉県内で、職場におけるセクシュアルハラスメント対応でお悩みの会社の方は、ぜひ一度、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。
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