監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士
交通事故で受傷後、しばらく時間が経過してもめまいが続くことがあります。
このような場合に慰謝料を請求できるのでしょうか。
このことについて、以下述べていきます。
目次
交通事故によるめまいで慰謝料はもらえるのか
交通事故によるめまいが生じた場合に、生じているめまいが後遺障害に該当すれば、慰謝料を請求することができます。
後遺障害認定には、治療の経過や内容、医師の意見が重要です。めまいがある場合には医師の症状を説明して、記録に残してもらう必要があります。
交通事故でめまいが起こる原因
交通事故によるめまいには、以下の各項目のとおりのいくつかの原因が考えられます
良性発作性頭位めまい症
交通事故の衝撃で、耳石が後半規管等に誤って入り込むことにより生じる回転性のめまいのことで、難聴や耳鳴りを伴うことはありません。
交通事故により頭部付近に衝撃を受けた後にめまいが生じた場合には良性発作性頭位めまい症である可能性があります。
耳石を元の位置に戻せば治癒するため、自然治癒することもあります。
外リンパ瘻
外リンパ瘻とは、耳の内耳を満たしているリンパ液が内耳から中耳に漏れることによって、めまいや難聴等の様々な症状を引き起こす疾患です。
交通事故による衝撃等で内耳の一部に穴があき、リンパ液が中耳に漏れることで、中耳の役割がうまく果たせなくなることにより、症状が引き起こされます。
外リンパ瘻には、薬を使う保存治療法と手術による治療法があります。めまいや難聴等の一部の症状が後遺症として残ることがあります。
むちうち
むちうちによってめまいが生じることもあります。自律神経の一種である交換神経は頸椎の前方に存在し、交通事故によって頸椎の周辺に炎症が発生すると、交換神経が刺激されることによって耳の機能をつかさどる部分の血流が低下することがあります。その結果、めまいが生じることがあります。
バレリュー症候群
むち打ち等により、首の痛み以外にも頭痛やめまい、耳鳴り等の自律神経失調症状が出ることがあります。むち打ちに自律神経失調症状が合併した病態がバレリュー症候群といわれています。
交換神経が刺激され、内耳動脈が収縮して血流低下を引き起こして、耳鳴りやめまいが生じるとされています。
軽度外傷性脳損傷
脳へ衝撃が加わったことにより、30分以内の意識消失や記憶喪失等の症状が生じる外傷性の軽度の脳損傷を軽度外傷性脳損傷といいます。
脳脊髄液減少症
交通事故等により、体に強い衝撃を受けて、脳脊髄液が漏れ続け減少することにより、頭痛やめまい、吐き気、耳鳴り等の症状を引き起こす病気です。
髄液は血液からつくられる透明の液体で、クモ膜下腔を循環して脳や脊髄を衝撃から守ったり脳や脊髄の機能を正常に保ったりする働きがあります。
この脳脊髄液が漏れ続けることによって、上記のような様々な症状を引き起こします。
交通事故から数日後にめまいがした場合は、むちうちであることが多い
事故から数日後にめまいがするようになった場合、上記に挙げてきたような原因が考えられます。
めまいで後遺障害認定を受けるためには検査が必要
めまいの検査には、めまいの症状の程度を調べる眼振検査が必須となります。めまいが生じているときには、眼球に激しい揺れが生じているので、その揺れを検査します。
その他体のバランスを調べる両足立ちや片足立ちをして、体の傾きを調べたり、文字を書いたときの傾きを調べる等の検査を行うこともあります、
このような種々の検査を受け、めまいと交通事故に因果関係が認められれば、後遺障害が認定されることがあります。
めまいで認定される可能性のある後遺障害等級
3級 生命の維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高度の失調または平衡機能障害のために労務に服することができないもの
5級 著しい失調または平衡機能障害のために、労働能力がきわめて低下し一般平均人の1/4程度しか残されていないもの
7級 中等度の失調または平衡機能障害のために、労働能力が一般平均人の1/2以下程度に明らかに低下しているもの
9級 通常の労務に服することはできるが、めまいの自覚症状が強く、かつ、眼振その他平衡機能検査に明らかな異常所見が認められ、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの
12級 通常の労務に服することはできるが、めまいの自覚症状があり、かつ、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められるもの
14級 めまいの自覚症状はあるが、眼振その他平衡機能障害検査の結果に異常所見が認められないものの、めまいのあることが医学的にみて合理的に推測できるもの
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
めまいが後遺障害認定された裁判例
バスが急停車し、被害者がバスの窓ガラスや壁に打ち付けた事案において、回転性めまいの後遺障害該当性が問題になりました。当該事案において、裁判例は外リンパ瘻を原因とする回転性めまいが「局部に頑固な神経症状を残すもの」として12級13号に該当することを認めました(福岡地判平成28年4月15日)。
交通事故後にめまいが続く方は弁護士にご相談ください
めまいの症状は後遺障害として認定を受けにくい症状であるため、交通事故後にめまいが続く方はぜひ弁護士にご相談ください。
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- 保有資格
- 弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)