交通事故の慰謝料とは|適正な慰謝料を受け取るために

交通事故の慰謝料とは|適正な慰謝料を受け取るために

慰謝料とは、被害者が受けた精神的苦痛に対する賠償をいいます。交通事故においても、入通院や後遺症、死亡によって被害者が受けた精神的苦痛について、慰謝料を請求することができます。

以下では、このような慰謝料を請求するにあたって、適正な慰謝料がいくらなのかについて、算定するための基準や、算定方法などを解説します。

交通事故における慰謝料とは

交通事故における慰謝料の種類には、入通院をしたことによるもの、後遺症が残った場合によるもの、死亡したことによるものがあります。これらが原因となって、交通事故の被害者が精神的な苦痛を受けた場合に、それを填補するものとして慰謝料が認められます。すなわち、精神的なダメージを金銭の受領によって和らげることができるとされているのです。

入通院慰謝料

交通事故によって、傷害を負った場合に、治療のために病院に入院もしくは通院をする場合があります。この時に生じた精神的な苦痛に対する賠償として認められるのが、入通院慰謝料です。交通事故によって入院や通院を必要とする傷害を負ったことへの慰謝料という意味で、傷害慰謝料とも呼ばれます。

後遺障害慰謝料

交通事故後に、後遺症が残ることによって生活に不自由なことや不都合なことが生じる場合があります。このような後遺症が残ったことで、精神的な苦痛が生じた場合に賠償が認められるのが後遺障害慰謝料です。

死亡慰謝料

交通事故によって、被害者の方が亡くなられることがあります。このような場合に受けた精神的な苦痛に対する賠償として認められるのが、死亡慰謝料です。
これには、死亡した被害者ご本人に慰謝料請求権が発生し、これを相続した相続人が請求する場合と、亡くなった方の近親者が、受けた精神的損害の賠償を請求する場合(民法711条)があります。

適正な交通事故慰謝料を算定するための3つの基準

交通事故慰謝料を算定する基準について3つあります。1つ目は、自賠責保険基準によるもの。2つ目は、任意保険基準によるもの。3つ目は、弁護士基準によるもの。となります。このうち、弁護士基準は、裁判を行った際に裁判所が考える基準となり(裁判基準)、一番高額となります。

自賠責保険基準

初めに、自賠責保険基準について説明します。自賠責保険の制度は、自動車運転者を自賠責保険に強制加入させて、交通事故の被害者を確実かつ公平に救済するというものです。交通事故慰謝料の算定基準として自賠責保険基準を用いる場合、これは交通事故被害者の最低限の補償を行うという性質から、賠償される額が低く抑えられることがあります。また、賠償される額には上限があり、傷害慰謝料の場合には120万円、死亡慰謝料の場合には3000万円となっています。

任意保険基準

次に、任意保険基準ですが、これは加入している各保険会社が独自の基準を用いて算定した基準です。交通事故にあった被害者の方に、保険会社が慰謝料を支払う額が多ければ多いほど、保険会社にとって利益が減っていきます。したがって、任意保険会社が提示する慰謝料は、のちに説明する弁護士基準(裁判基準)よりも低額であることが多いのです。

弁護士基準(裁判基準)

最後に、弁護士基準ですが、これが最も高額な慰謝料算定基準となります。弁護士基準は、過去の裁判例や裁判所の考え方を参照し、実際に裁判で認められると考えられる基準を用いています。このことから、裁判基準とも呼ばれます。同程度の事故であれば同程度の損害の賠償がなされるべきであるとして、公平の観点から裁判所が認めてきた基準です。

交通事故事件に弁護士が介入する場合には、訴訟を見据えて損害額を算定していくため、これまで見てきた基準に比べて一番高額になる弁護士基準が提示されるのです。

交通事故慰謝料の算定方法

以上のように、交通事故慰謝料の算定は、用いる基準によって変わります。特に任意保険基準は、各保険会社が独自の基準を用いて算定しており、その算定方法や基準も公開されていません。そして、保険会社から提示される賠償額は、上述のとおり、弁護士基準(裁判基準)より低額となることがほとんどです。したがって、適正な交通事故慰謝料の算定を行うためには弁護士基準(裁判基準)を用いて算定を行う必要があります。

入通院慰謝料

自賠責基準

自賠責基準による入通院慰謝料の具体的な計算方法について説明します。自賠責基準では、一日あたりの入通院慰謝料を4300円で計算します。そして、計算方法には、①4300円×治療期間(入院期間と通院期間を足したもの)、②4300円×実治療日数の2倍、の2通りあり、①と②のうち、治療期間と実治療日数の少ない方を採用します。

これが、自賠責基準による入通院慰謝料の算定方法です。

弁護士基準

次に、弁護士基準による入通院慰謝料の具体的な計算方法について説明します。弁護士基準では、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(公益財団法人日弁連交通事故相談センター)という通称「赤い本」に掲載されている算定表を用いて入通院慰謝料を算定します。この算定表では、入通院期間に応じて慰謝料の金額が明記されています(横軸が入院期間、縦軸が通院期間)。算定表には別表ⅠとⅡがあり、別表Ⅰは、骨折等の重傷を負ったケースに用いられ、別表Ⅱは、むちうちや打撲などの比較的軽傷のケースに用いられます。

後遺障害慰謝料

自賠責基準

後遺症慰謝料は、後遺症として認定された等級に応じて、支払われる金額が異なっています。自賠責基準では、寝たきり状態や植物状態で介護を必要とする程度の障害については別表Ⅰ(1級から2級まで)を、その他については別表Ⅱ(1級から14級まで)を用いて、慰謝料の支払基準の算定が行われます。重度の障害を伴うことから当然、介護を必要とする別表Ⅰの方が慰謝料が高額となっています。

自賠責基準の後遺障害慰謝料(別表Ⅰ)
後遺障害等級 慰謝料相場
1級 1650万円
2級 1203万円
自賠責基準の後遺障害慰謝料(別表Ⅱ)
後遺障害等級 慰謝料相場
1級 1150万円
2級 998万円
3級 861万円
4級 737万円
5級 618万円
6級 512万円
7級 419万円
8級 331万円
9級 249万円
10級 190万円
11級 136万円
12級 94万円
13級 57万円
14級 32万円

弁護士基準

これに対して、弁護士基準では、入通院慰謝料と同様、赤い本を用いて算定され、いずれの等級においても自賠責基準より高額となっています。また、弁護士基準では、自賠責基準のように、別表Ⅰ及びⅡに別れてはいないものの、別表Ⅰについては、重度後遺障害の1級や2級の認定をうけた場合には、慰謝料が増額されることがあります。

弁護士基準の後遺障害慰謝料
後遺障害等級 慰謝料相場
1級 2800万円
2級 2370万円
3級 1990万円
4級 1670万円
5級 1400万円
6級 1180万円
7級 1000万円
8級 830万円
9級 690万円
10級 550万円
11級 420万円
12級 290万円
13級 180万円
14級 110万円

死亡慰謝料

自賠責基準

自賠責基準の死亡慰謝料の算定方法は、弁護士基準と大きく異なります。すなわち、自賠責基準では、①亡くなった被害者本人の慰謝料を、一律400万円とし、②遺族の慰謝料については、請求者の人数によって変動します。また、③被扶養者がいる場合には、②の遺族の慰謝料に200万円を加算します。請求できる遺族の範囲ですが、被害者の配偶者・子供・父母に限定されます。

弁護士基準

これに対して、弁護士基準では、亡くなった人の属性に応じて慰謝料の金額の相場が異なります。すなわち、一家の支柱にあたる人が亡くなった場合は、2800万円。母親や配偶者がなくなった場合は、2500万円、その他独身の男女、子供、幼児等が亡くなった場合は2000万円から2500万円となっています。これらの相場から、事故の態様や加害者の態度などが考慮されて決定されます。

通院期間別の入通院慰謝料相場比較

(例)通院期間3ヶ月・実通院日数45日の場合

自賠性基準弁護士基準
38万7000円53万円

例えば、打撲によって通院期間3ヵ月・実通院日数45日の場合、前述した計算方法によると、自賠責基準が38万7000円(4300円×90日)に対して、弁護士基準では、53万円(赤い本、別表Ⅱ参照)となっています。このように、打撲のような症状で3ヵ月程度通院をした場合、弁護士基準では自賠責基準の約1.4倍の賠償額を獲得することができる計算となります。

(例)通院期間6ヶ月・実通院日数(85日)の場合

自賠性基準弁護士基準
73万1000円89万円

むちうちで通院期間6ヵ月・実通院日数85日の場合、前述した計算方法によると、自賠責基準が73万1000円(4300円×170日)に対して、弁護士基準では、89万円(赤い本、別表Ⅱ参照)となっています。このように、むちうちのような症状で6か月程度通院をした場合、弁護士基準では自賠責基準による慰謝料額からさらに15万円以上上乗せした額を獲得することができる計算となります。

(例)通院期間8ヶ月・実通院日数(140日)の場合

自賠性基準弁護士基準
103万2000円132万円

骨折などの重傷によって通院期間6ヵ月・実通院日数85日の場合、前述した計算方法によると、自賠責基準が103万2000円(4300円×240日)に対して、弁護士基準では、132万円(赤い本、別表Ⅰ参照)となっています。このように、骨折による重症で8か月程度通院をした場合、弁護士基準では自賠責基準による慰謝料額からさらに30万円弱上乗せした額を獲得することができる計算となります。

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慰謝料以外にも請求できるものがある

ここまで、入通院や後遺症などによって慰謝料を請求することができることを説明しましたが、交通事故によって被害者が加害者に賠償請求できる損害には、慰謝料に限られません。たとえば、交通事故によって入通院をすることによって会社を休むことになった際に、受け取ることができなくなった給料があります。以下では、このような慰謝料以外の損害について説明します。

休業損害

休業損害とは、交通事故によって受けた傷害の症状が固定するまでの間、仕事を休んだために被った損害をいいます。例えば、交通事故にあった会社員が、症状が固定するまでの間、治療のために会社を休んで病院に行くことになり、その分の給料がもらえない場合があります。このような場合に、給料がもらえないという不利益を休業損害といいます。

逸失利益

交通事故に遭わなければ、被害者の方が獲得していたであろう収入や利益を逸失利益といいます。たとえば、交通事故によって、後遺症が残ったことによって今までとは同様の収入を得られなくなった場合があります。これを後遺症逸失利益といいます。また、被害者の方が死亡したことによって働けなくなり、受け取ることができたはずの給料が受け取れなくなる場合があります。これを死亡逸失利益といいます。このように、交通事故によって治療費のような実際に出費をした損害に限らず、交通事故がなければ被害者が受け取ることができたはずの収入や利益についても、損害賠償請求の対象となるのです。

その他に請求できるもの

これまで説明した慰謝料や休業損害、逸失利益以外にも、請求できるものがあります。たとえば、入通院に付き添いを必要とした場合に要した費用(付添監護費)、通院にかかった交通費や宿泊費(通院交通費、宿泊費)、被害者に幼児がいる場合には通院中の保育費用(子供の保育費)、被害者が亡くなった場合の葬儀費用や仏具の購入費用(葬儀関係費)、弁護士を利用して訴訟を提起した場合(弁護士費用)などがあります。

交通事故慰謝料を受け取るまでの流れ

交通事故が発生してから慰謝料を受け取るまでの流れについて説明します。

まず、交通事故の発生後、病院での入通院が始まり、治療を受けます。治療を続けても効果が見込めない場合は、医師によって症状固定の診断がなされます。後遺症が残る場合には、後遺障害等級の認定がなされます。

その後、示談交渉が開始されます。示談が成立した場合には、保険会社から被害者に対して示談書が送付され、示談書の内容を確認して署名や押印をして返送します。これによって保険会社は保険金の支払手続を開始し、示談金が支払われます。
一方、示談が成立しなかった場合には、裁判や交通事故紛争処理センターなどの手続に移行します。

慰謝料の支払い時期について

慰謝料の支払い時期は、示談が成立してから示談書を返送することによって保険会社の保険金の支払手続が開始されるため、示談が成立してから2週間前後で支払われます。もっとも、示談が成立せず、裁判や交通事故紛争処理センターでの手続きに移行する場合には、このような手続きが終了するまで慰謝料の支払いを受けることができません。

そこで、慰謝料の先払いを希望する場合には、自動車損害賠償保障法第16条第1項による被害者請求をする方法があります。この請求は、示談成立前でも行える手続になりますので、いち早く慰謝料を受け取れます。ただし、被害者請求の傷害についての慰謝料には120万円の上限があることに注意が必要です。

慰謝料の増減要素

これまで慰謝料の算定の説明をしてきましたが、実際に裁判で争われた場合に、算定された慰謝料かが増額されたり、減額されたりすることがあります。すなわち、交通事故の慰謝料の額は、具体的に事件の内容に応じて様々な要素を考慮して最終的に判断されているのです。

慰謝料が増額するケースとは?

慰謝料が増額されるケースとしては、まず、加害者の故意や過失の程度が著しい場合があげられます。たとえば、加害者の飲酒、著しいスピード違反、信号無視、ひき逃げなどが加害者の故意や過失が著しい場合といえます。また、加害者の事故後の対応が不誠実である場合にも慰謝料の増額事由となりえます。たとえば、加害者からの謝罪が全くない場合や、嘘の主張をするなどです。さらに、被害者の家族が、交通事故によって精神疾患を発症させた場合にも慰謝料の増額事由となりえます。

慰謝料が減額する要素

慰謝料が減額されるケースでは、被害者の側に交通事故以前から既往症があり、治療期間が長引いた場合です。たとえば、被害者が以前から頚椎ヘルニアを患っており、交通事故による頚椎捻挫の治療が長引いた場合などです。
また、被害者が、交通事故によって労災保険金を受け取った場合など、他の利益を受けたといえる場合(損益相殺といいます)にも慰謝料の減額事由となりえます。

さらに、交通事故が発生した原因が、加害者のみならず、被害者にもあった場合には、過失相殺として慰謝料の減額事由となります。

適切な慰謝料を請求するために

必ず整形外科で見て貰う

交通事故に遭った場合には、必ず整形外科に受診しましょう。軽い事故であるとか、目立った怪我や痛みがないことを理由に、自己判断で整形外科を受診しないと、後から痛みが出た段階で受診した場合に、この痛みと事故との関係性(因果関係といいます)が疑われる原因となるからです。この場合、保険会社から治療費の支払いを拒否される可能性もあります。したがって、交通事故に遭った場合には、時間をあけずに整形外科を受診する必要があります。

人身事故で処理する

交通事故には、人身事故と物損事故の2種類があります。交通事故によって死傷者が出た場合が人身事故であり、車両や建物など器物にのみの場合を物損事故といいます。警察官が物損事故として処理した場合、被害者は保険会社から治療費や慰謝料を受け取ることができません。また、物損事故では実況見分調書が作成されないことから、事故の客観的な状況が不明となり過失割合の証明ができなくなるおそれがあります。

したがって、交通事故に遭って、少しでもけがをした場合には人身事故で届け出なくてはなりません。

慰謝料が減額する要素

交通事故による慰謝料は、保険会社からの提案をそのまま受け入れる場合、減額されたままの慰謝料を受け取るだけとなって適正な慰謝料を受け取ることができません。また、慰謝料の減額事由である過失割合も、弁護士に相談しなければ、誤った割合を前提にして慰謝料が算定されるおそれもあります。さらに、既往症との関係で著しく慰謝料が減額される場合や、時間が経過した後の受診によって事故との因果関係が否定されてしまい、受け取るべき慰謝料が算定されないことも考えられます。

もっとも、弁護士に依頼すれば、弁護士が、前述した弁護士基準によって交通事故慰謝料を算定し、交渉や裁判を被害者の方に代わって行います。これによって、適正な交通事故慰謝料を獲得することができるのです。

交通事故に関して不安があれば、弁護士へご相談ください

交通事故に遭った場合には、自分で示談交渉をする必要はありません。弁護士に依頼すれば、被害者の方に代わって弁護士が相手方保険会社と交渉し、弁護士基準による適正な交通事故慰謝料の獲得に向けて動いてくれます。これによって被害者の方は、相手方保険会社との面倒なやり取りをする必要がなくなり、ストレスなく治療に専念することができます。

また、弁護士に交渉を依頼すれば、示談交渉の流れや期間などの見通しが立ち、不安に思うことなく生活することができます。

また、加入している保険会社に弁護士費用特約があれば、弁護士費用も上限まではかかりませんので、弁護士費用の心配もありません。

以上のように、交通事故の被害者の方が、弁護士を利用することには多くのメリットがあります。保険会社の提示した保険金の支払金額に納得ができない場合や、一度弁護士に見てもらいたいなと思った方は、お気軽に弁護士にご相談ください。

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この記事の監修

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕
弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長弁護士 辻 正裕
埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
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