症状固定の時期と慰謝料との関係

交通事故

症状固定の時期と慰謝料との関係

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕

監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士

症状固定とは

症状固定とは、治療を続けてもこれ以上症状の改善が望めない状態になったことをいいます。

損害賠償請求をする際、症状固定時期は、「傷害による損害」が発生しなくなり、「後遺障害による損害」が発生するという、発生すべき損害が切り替わるタイミングとして理解されています。

【図1】

症状固定とは

「傷害による損害」と「後遺障害による損害」の境界

「傷害による損害」は、症状固定日までに生ずる損害を指します。【図2】の下線部分の項目です。

「後遺障害による損害」は、症状固定日後の損害を指します。【図2】の四角で囲った分部分の項目です。

※死亡による損害については、ここでは触れません。

【図2】

「傷害による損害」と「後遺障害による損害」の境界

症状固定はだれが判断するのか

医師と患者です。症状固定は、今後治療を続けて症状が改善するかどうかという医学的視点が必要です。

医師が、患者の自覚症状、医学的検査、診療経過などを総合考慮して判断します。

症状固定の判断時期

症状固定の時期は、医師が、患者の訴え、医学的検査、診療経過、現状などを総合考慮して個別具体的に判断します。医師が症状固定を慎重に判断していくので、一律に、決まっているものではありません。

あくまでも参考目安ですが、例えば、むち打ち症状のケースでは、事故から3か月から6か月後頃になることが多いです。もちろん、重度ものなどはもっと時間がかかることがあります。

骨折のケースでは、骨癒合の状態になった頃が目安となります。具体的には、ひびが入った程度だと事故から半年以内、開放性の骨折だと事故から1年近くかかります。

高次脳機能障害のケースでは、事故から1年半、事故から2年程度の事例が多いようです。

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負傷した部位によって、別々に症状固定とするのか

複数の症状に見舞われている場合、治療を続けてもこれ以上症状の改善が望めない状態かどうかは、各部位の回復の度合いによって異なります。

また、担当する科によっても違いが出るので、その場合には、別々に症状固定とする必要が出てきます。

症状固定までの期間が長いほど賠償額は高くなるのか

【図1】を見てみると、症状固定までの期間が長いことは、「傷害による損害」部分が増えるように思えます。それでは、【図2】に沿って損害項目別に個別に検討するとどうでしょうか。

治療費は、入通院の回数が増えれば増えるほど、その都度発生しますから、賠償額は高くなります。ただ、治療費は保険会社から病院に対して直接支払われるものなので、被害者の手元には入りません。

傷害による慰謝料の額は、入通院期間に応じて増えるので、期間が長いほど賠償額は高くなり得ます。ただ、けがの内容にもよりますが、ある程度の期間を超えたあたりから、増加率は低くなります。

休業損害は、症状固定までの間に仕事を休んだことによる現実の収入減、及び有給休暇を使用した分です。仕事を休まず治療を続けていたら休業損害は発生しません。だからと言って、治療期間中仕事たくさん休めば休業損害をいただけるのかというと必ずしもそうではありません。休業の必要性がない場合、「事故との因果関係」がない休業と判断され、賠償の対象とならない可能性があるので、気を付けてください。

保険会社からの治療費打ち切りの要請がある場合どうすればいいのか

医師が、「まだ治療効果がある。」とはっきりおっしゃるようであれば、保険会社に対しその旨を伝えて、医師が症状固定時期に至ったと判断するまで治療を続けてよいと思います。

しかし、医師が、「まだ治療効果がある。」とはっきりおっしゃらない場合、後で保険会社が損害として認めず、治療費を負担しない可能性があります。

このような場合、医師と患者の訴えを聞き、どのようなスケジュールで症状固定の診断まで進めていくかを検討し、保険会社と交渉しながら、治療を打ち切り、症状固定することを検討すべきでしょう。

ただ、あと1か月か2か月くらいだけ治療を続けたいと申し出ると、1か月か2か月だけなら、ということでその期間の治療費支払いをしていただけることがあります。

症状固定後は治療費や通院交通費などは請求できないのか

【図1】のとおり、症状固定後、原則として「傷害による損害」は認められません。ですから、「傷害による損害」の項目である、治療費、通院交通費、休業損害などを請求することはできません。

例外的に、治療の必要性と相当性が認められた場合、症状固定後の治療費を請求することができます。治療の必要性と相当性は、症状の内容・程度、治療の内容によって、現状を維持し症状の悪化を防止するために不可欠な治療であると判断された場合に認められます。

例えば、症状固定後、義足作成のための通院について認めた判例があります。ただし、症状固定後の【図2】の治療費、通院交通費、休業損害などの請求は、とても厳格に判断され、一般的には否定されてしまうのが現状です。

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕
監修:弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長
保有資格
弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)
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