監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士
- 問題社員
職場において、特定の従業員が頻繁に席を外す「離席問題」は、単なるマナーの問題に留まらず、組織の生産性や法的リスクに直結する重要な課題です。
離席の理由は喫煙、私用電話、トイレなど様々ですが、会社として適切に対応しなければ、周囲の不満が募り、職場環境の悪化を招きます。
今回は、離席の多い従業員の対処法について解説していきます。
目次
従業員の離席が多いことで考えられる問題点とは
従業員の過度な離席を放置することは、企業にとって以下のリスクを孕んでいます。
周囲の従業員が不満を持つ
離席せずに勤務している他の従業員から見れば、頻繁に離席する従業員と同じ待遇であることには不公平感を抱きます。
もちろん離席の理由は様々ですが、真面目に働く者が損をするという認識になってしまう従業員もいるため、過度の離席を放置することで周囲の従業員が不満を持ち、組織全体のモチベーション低下や離職の原因となります。
生産性の低下に繋がる
離席する以上、本人の業務は進展しませんから、業務は停滞します。
それだけではなく、不公平感が蔓延することで他の従業員のモチベーションが下がり、その結果チーム全体の生産性も低下します。
必要以上の離席に違法性はあるのか?
勤務時間中の離席が直ちに違法となるわけではありませんが、必要以上の離席に関しては雇用契約上の義務に反するのではないかという検討が必要になります。
従業員は職務に専念する義務を負う
従業員は、雇用契約に基づき、就業時間中は職務に全力を注ぐべき職務専念義務を負っています。
合理的な理由のない離席は、この義務に違反する行為となります。
会社が許容すべき離席理由とは
一方で、トイレ等の生理現象のための離席や家族の急病や保育編からの緊急連絡等の緊急事態に対応するための離席は、社会通念上相当な範囲という限度ではありますが、会社は許容すべきことになります。
離席の多い従業員にはどう対応すべきか?
では、実際に離席の多い従業員に対してはどのように対応すべきでしょうか。
離席回数の記録・離席理由の調査
そもそも、本当に離席が多いのか、なぜ離席しているのかを確認しなければ、それが注意されるべき離席なのかどうか判然としません。
まずは、いつ・誰が・どのくらいの時間、離席していたかを客観的に記録します。
その後、本人との面談時には、具体的なデータ(例:1日に合計90分、15回の離席)を提示し、離席の理由についてヒアリングする等して、調査していくことになります。
口頭・書面による注意
上記調査によって、合理的な理由なく離席していることが明らかとなった場合には、口頭で注意するのみならず、書面による注意を行って改善を促します。
書面による注意には書面作成等のコストがかかりますが、口頭での注意では言った言わないの紛争を招くことがありますので、手間をかけてでも書面(メールでも構いません。)による注意もご検討いただくのがよろしいかと考えます。
懲戒処分の検討
このような口頭・書面による注意にも関わらず、離席が繰り返される場合には、就業規則に従って懲戒処分を検討することになります。
離席が多いというだけで解雇することは困難
なお、離席が多いという理由のみで解雇することは困難です。
解雇には、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要とされますが(労契法16条)、離席のみで一発解雇した場合に、これらの要件を満たすことは無いでしょう。
注意→懲戒処分といった形で、従業員に改善の見込みがないことを段階的に進めていく必要があります。
懲戒処分をされたにも関わらず、改善の見込みがないときに、解雇の選択肢も現れますが、解雇はリスクも高いため、弁護士等の専門家に事前に相談することが不可欠です。
他の社員からの苦情が出た場合の対応
他の社員が苦情を述べる以上、これを放置すればモチベーションの低下は避けられません。
会社としては離席の問題を認識していることや、対応を進めていることを適切に伝え、不公平感を解消する姿勢を示すことが重要です。
離席回数を制限することはできるのか?
業務の性質上必要な範囲であれば、回数や時間の目安を指示することは可能でしょうが、理由を問わず離席を一律に制限するというのは現実的ではありません。
例えば、トイレの回数は1日1回までといった制限は、現実的に無理があります。
逆に離席する従業員の人格権の侵害や健康への配慮不足として違法となる可能性もありますので、仮に目安等を定めるとしても体調不良等に応じた例外的な配慮も必要です。
従業員の離席を許可制としても良いか?
これも離席回数の制限と同様、制度としては可能かと思いますが、事情に応じた例外的配慮は必要で祖父氏、離席理由によっては許可制を設けること自体が不適切と判断されることもあるでしょう。
他方で、トイレであると述べて、トイレにこもってスマートフォンでゲームをしていた等、明らかに合理的な理由がない離席は職務専念義務違反と言って良いでしょうから、許可制等を採用しなくとも、注意指導を行って改善させていく必要があります。
離席の許可制が違法となるケース
例えば、トイレ利用を許可制とすることも考えられますが、トイレ利用を不許可とする合理的な理由はあるのでしょうか。
許可制を採用すること自体が従業員の人格権の侵害として違法とされることもありうるかと考えれます。
また、いかなる場合も上長の許可を要するとすると、緊急事態(家族の急病の連絡など)への対応に支障が生じ、従業員に大きな不利益を招きかねないリスクもあります。
離席の多い従業員の残業を禁止できるか?
残業の許可制を採用すること自体は可能です。
離席が多い従業員からの残業申請に対し、離席が多いことを指摘しな、所定労働時間内に業務を終わらせるように指導し、残業を許可しないことも可能と考えられます。
但し、残業を不許可にしたからと言って、居残って従業員が残業していたのを放置していた場合には、残業を黙認したとして、残業代の支払いが必要となってきます。
不許可にしたのであれば、従業員が居残りしないように注意が必要です。
頻繁な離席を防止する社内ルール・就業規則
就業規則の定めとして、頻繁な離席を禁止することは可能です。
例えば、服務規律として、勤務中は、上司の許可無く職場を離れないこと等の条項を定めることが考えられます。
このように服務規律を定めるとともに、懲戒事由として服務規律違反を定めることで、頻繁な離席を懲戒処分の対象とすることも可能になります。
メンタルヘルス不調との関連性について
頻繁な離席の背後にADHD(注意欠如・多動症)などの発達障害や、うつ病による頻尿・体調不良が隠れているケースもあります。
安易にサボりと決めつけず、職場にハラスメントなどのストレス原因がないかといった確認や産業医への相談や受診を促すといった健康配慮の観点も必要となってくることがありますので、離席理由については慎重に確認していく必要があります。
業務中の離席が争点となった判例
業務中の離席が問題となった裁判例として、三菱電機エンジニアリング事件があります。
事件の概要
労働者が遅刻や長時間離席、上司への反抗的態度、業務と無関係のウェブサイトを閲覧する等の職務懈怠を繰り返したため、注意や懲戒処分(出勤停止)を行ったが、態度を改めないどころか、かえって上司に反抗する態度がエスカレートしたことから、会社が普通解雇したところ、労働者が解雇は無効だと争ったものです。
裁判所の判断
神戸地判平成21年1月30日
裁判所は、「原告は、注意、出勤停止等の処分を受けても勤務態度を改めないどころか、かえって、上長に反抗したり、あるいは揶揄したり、愚弄するようになったのであるから、自らの行為によって被告との信頼関係を破壊したものといえる。したがって、被告にこれ以上の原告との労働契約関係の維持を強いるのは相当でない」として、解雇を有効と判断しました。
ポイント・解説
同裁判例の原告は、懲戒処分を受けた後も、業務上の必要性もないのに、1日当たり3時間以上の離席を続けた等、極めて不適切な勤務態度を繰り返していたものですが、同裁判例では、著しく不適切な態度だけではなく、懲戒処分を受けたものの、その態度が改善しなかった(むしろエスカレートした)ことも指摘して解雇を有効と判断しています。
やはり会社が段階的な手続きを取ったことが、解雇を有効に導いたポイントと考えられます。
必要以上に離席が多い従業員への対処法でお悩みなら、企業の労働問題を得意とする弁護士にご相談ください。
以上に解説してきたように、単なる離席の問題から、職場の生産性の低下や離職にまで発展することはあります。
離席の問題は、程度にもよりますが、放置してよい問題ではなく、会社が適切に対処していく必要がある問題です。
対処が遅れてしまい、問題が悪化してから突如解雇すると、解雇は無効となってしまうリスクもあり、段階を踏んだ適切な対処が不可欠であり、弁護士などの労働問題の専門家の関与が不可欠です。
埼玉県内で、必要以上に離席が多い従業員への対処法でお悩みの企業の方は、ぜひ一度、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

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