労務

従業員の不適切なSNS投稿への会社対応

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕

監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士

  • 問題社員

従業員の不適切なSNS投稿は、一度炎上・拡散されると、デジタル・タトゥーとして半永久的に残り、企業のブランドイメージや社会的信用を著しく毀損するリスクを孕んでいます。

今回は、万が一従業員が不適切な投稿を行った際の初動対応から、懲戒処分の法的有効性、再発防止策まで、企業が取るべき法的実務を解説します。

従業員の不適切なSNS投稿が企業に与えるダメージ

従業員によるSNS上のトラブルは、企業の経営基盤を揺るがす重大な事態を招きかねません。

企業に損害を与えるSNS投稿の具体例とは?

皆さんも、バイトテロと呼ばれた、アルバイト従業員による飲食店等での不適切な動画・写真の投稿については記憶にあるのではないでしょうか。

また、機密情報・顧客情報の漏洩、会社や特定の個人への誹謗中傷、差別的・反社会的な発言が問題となって炎上するアカウントも見ることがあるのではないでしょうか。

従業員のSNSトラブルにおける企業の責任

従業員が業務に関連して第三者に損害を与えた場合、企業は民法第715条(使用者責任)に基づき、損害賠償義務を負う可能性があります。

業務用アカウントであればもちろん、たとえ従業員の個人的なアカウントによる投稿であっても、その内容が業務と密接に関連していると判断されれば、企業が使用者責任を負う可能性は否定できません。
また、社会的な責任については、どうあっても免れません。

従業員が不適切なSNS投稿を行った際の対応

不適切な投稿が発覚した際は、被害を最小限に抑えるため、迅速かつ正確な初動対応が求められます。

投稿内容の保全

投稿者が証拠隠滅のために投稿を削除したり、アカウントを非公開にする可能性がありますので、まずは、投稿内容を保全し、証拠を残しておく必要があります。

投稿者の特定と事情聴取

投稿者が自社の従業員によるものか確認し、速やかに事情聴取を行う必要があります。

投稿内容の削除要請

投稿が自社の従業員によるものであり、不適切な投稿であるならば、削除を要請することになります。

公式サイト等での公表・謝罪

既に炎上している場合、投稿を削除するだけでは社会的責任は免れません。
事実関係の確認が取れ次第、速やかに謝罪文を公表する必要があるでしょう。

再発防止策の立案

また、再発防止策の立案を行い、就業規則の改訂や教育体制の強化をしていく必要もあります。
公式サイトでの謝罪時において、同時に再発防止策も公表できると、なおよろしいかと考えます。

SNSトラブルを理由とした懲戒処分

不適切な投稿を行った従業員に対して懲戒処分を下す場合、そもそも懲戒事由に該当するかどうかを確認することが必要です。たとえ懲戒事由に該当するとしても、不相当に重い処分や手続きを無視した処分は、事後的に無効となることも想定されます。

不適切な投稿による懲戒処分が許されないわけではありませんが、適正な手続き等が求められることにご注意ください。

不適切なSNS投稿を行った従業員を解雇できるか?

懲戒処分ではなく、そもそも解雇(普通・懲戒)することはできるでしょうか。

解雇には、客観的に合理的な理由が必要であり、また社会通念上相当である必要もあります。
私生活上の不適切な投稿について、何ら改善の指導を行うことなく、解雇することは、不当解雇として無効となるリスクが高いです。

解雇を行うかどうかは、慎重な判断が求められます。

従業員に対する法的措置の検討について

従業員の不適切なSNS投稿によって会社が損害を被った場合、会社は雇用契約上の問題のみならず、従業員に対して民事、刑事上の法的措置を検討しなければなりません。

民事上の損害賠償請求

不適切な投稿によって会社が損害を被った場合(その投稿によって被害を受けた第三者に賠償金を支払った場合も含みます。)には、会社から従業員に対して民事上の損害賠償請求や求償請求を行うことが考えられます。

ただ、SNSの投稿内容や、従業員の業務内容によっては、会社から従業員への請求は制限される傾向にあるため、事前に弁護士等への相談をされることをお勧めいたします。

刑事告訴・告発

投稿の内容が会社に対する名誉毀損であったり、業務妨害を構成する場合がわかりやすいですが、警察への告訴も検討されます。また、投稿の内容によって、会社の財産を毀損しているところが映っていた場合には、器物損壊なども検討に値します。

従業員のSNSトラブルを未然に防ぐには

従業員のSNSトラブルは年々増加の傾向にありますから、これを未然に防ぐためには事前の対策が必要不可欠です。

就業規則・SNSガイドラインの策定

例えば、就業規則において、SNS利用に関する禁止事項を定めるということが必要になってきます。
もちろん、附則としてSNSガイドラインを策定するといったことも考えられます。

従業員に向けた教育・研修の実施

定期的な研修を通じて、匿名であっても投稿者は特定されることや、一度の投稿によって雇用を失ったり、会社の信用を台無しにするといったリスク教育を徹底します。

誓約書を提出してもらう

入社時や研修時などに、SNS利用ルールに関する誓約書を従業員から取得することも考えられます。
従業員に、自覚を促す効果が期待できますし、懲戒処分をする際などにも、追及しやすくなる効果も期待できます。

社内体制の整備

会社に対する誹謗中傷や、バイトテロといったものは、会社への不満や不信感、管理体制の不備がきっかけとなっていることもあります。

普段から、従業員への待遇、管理体制等を見直し、整備することで、SNSへの誹謗中傷やバイトテロといった投稿を抑制する効果も期待できます。

自社の公式アカウントの運用で注意すべき点

最近は、自社の公式アカウントでの炎上も増えてきています。

アカウント運用では、

  • ・私物化させない
  • ・投稿時する内容の基準化
  • ・投稿前ダブルチェック

といった、事前の対策が不可欠です。

担当者を1人だけにすると、感覚が世間からズレてしまっても気づかないことがあり得ます。
これを是正するため、最低でも2人以上の体制にすることを心がけるとよろしいかと考えます。

従業員のSNS利用に関する裁判例

SNSというよりは、個人名義で開設したHPに会社の誹謗中傷を記載したという裁判例があります(日本経済新聞社(記者HP)事件)。

事件の概要

記者として会社に勤務していた労働者が、個人名義で開設したHPにおいて、自社を「悪魔」「屍姦症的性格を帯びた邪悪な企業」「腐った組織」などと過激な表現で中傷したり、取材源の秘匿に反して取材の過程などを公開したことから、会社より、出勤停止処分等がくだされたところ、貴社が私生活上の行為(HP)であるとしてその有効性などを争った事案です。

裁判所の判断

裁判所は、「労働者の私生活上の行為であっても,その行為が労働者の企業における職務に密接に関連するなど,企業秩序維持の観点から許されない行為と認められる場合には,なお企業秩序遵守義務に違反する行為として懲戒処分の対象とすることができるというべきである」と述べて、私生活上の行為であっても、懲戒処分の対象となり得ると判示しました。

ポイント・解説

同裁判例の判断は多岐にわたりますが、個人のHPという私生活上の行為であったとしても、懲戒処分の対象となると判断していますので、従業員の私的なSNSへの投稿を懲戒するにあたって参考となる裁判例かと考えます。

従業員のSNSトラブルへの対策について、企業法務のプロである弁護士がアドバイスをさせていただきます。

日に日にSNSは普及し、今ではSNSに触れていないという人を探す方が難しくなってきました。
それに伴って、会社は従業員が私的なSNS投稿を行っていることを前提として、その対処法を考えなければなりません。

炎上してしまってからの対応よりも、炎上を未然に防ぐ、弁護士などの専門家の関与のうえでの就業規則の作成などが必要不可欠です。また、従業員の処分を検討するにあたっても、労務の専門家である弁護士等の関与が必要となってくるでしょう。

埼玉県内で、従業員のSNSトラブルへの対策についてお悩みの企業の方は、ぜひ一度、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所へご相談ください。

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埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕
監修:弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長
保有資格弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)
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