監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士
- テレワーク
コロナ禍以降、テレワークが普及し、今や珍しいものではなくなりました。
テレワークは専ら自宅で行われることから、事業所で働く労働者と比べて、様々な違いがありますが、労災保険の適用に関して違いはあるのでしょうか。
今日は、テレワークと労災についてご説明いたします。
目次
テレワーク中の怪我でも労災保険は適用されるか?
テレワークであったとしても、それが労働者である以上、事業所等で働く労働者と同様に労働者災害補償保険法の適用を受け、労災保険給付を受けることができます。
労働災害には「業務災害」と「通勤災害」がある
労働災害には、業務災害と通勤災害があります。
業務災害は、「労働者の業務上の事由による」又は「業務上の」傷病等をいいます。
例えば、外壁工事中に転落する場合などは、業務災害に当たり得ます。
通勤災害は、その名前のとおり、通勤中に事故に遭った場合をいいます。
業務災害の認定基準となる2つの要件
業務災害に該当するかどうかは、「業務上の事由による」かどうかが基準となりますが、それは業務遂行性と業務起因性の2つの要件で判断されます。
業務遂行性
業務遂行性とは、労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にある状態をいいます。
労働者が業務に従事している最中はもちろん、休憩中であっても、事業主が指揮監督を行い得る余地があって、その限りで事業主の支配下にあるならば、業務遂行性があるとされています。
なお、休憩時間中に、労働者個人の自由な行為や私的行為が原因となった場合は、次に述べる業務起因性が否定されることになります。
業務起因性
業務起因性とは、業務が原因となって労働者に傷病などが発生したことをいいます。裁判例などでは「業務に内在する危険が現実化したものによると認められること」と表現されることもあります。
前述したように、労働者個人の自由な行為や私的行為が原因となった場合には、業務に内在する危険が現実化したものとは言えず、業務起因性が否定されることになります。
テレワーク中の労災が認定されにくい理由
テレワーク中の従業員は、私的な空間である自宅で労働していることに伴って私的行為が原因で負傷することが多いのがその要因であると考えられます。
テレワークで労災認定されるケース・されないケースとは?
では、どのようなケースがテレワークで労災認定されるのでしょうか。また、どのようなケースでは労災認定されないのでしょうか。
労災認定されるケース
例えば、自宅で所定労働時間にパソコン業務を行っていたところ、トイレに行くため作業場所を離席し、作業場所に戻り椅子に座ろうとして転倒した事案について、業務行為に付随する行為に起因して災害が発生したもので、私的行為によるものとも認められないことから業務災害と認められると認定したケースがあります。
労災認定されないケース
例えば、就業時間内であっても、自宅内のベランダで洗濯物を取り込む行為や、個人宛の郵便物を受け取る行為で転んで怪我をした場合等には私的行為が原因であるとして労災認定がされないと考えられています。
他にも、就業時間中、気分転換にジョギングしていて事故に遭った場合なども、私的行為が原因であると判断されて労災認定はされないと考えられます。
テレワーク中の労災防止のために企業がすべきこと
テレワーク中であっても、労災認定があり得るわけですが、企業はどのように労災を防止していくべきでしょうか。
業務時間と私的時間を区別させる
労災認定されるケースと労災認定されないケースを比較してみると、共に業務中ではあるものの、私的な行為を行っていたかどうかで区別されています。
そのため、まずは労働者に業務時間と私的時間を区別させることが大事です。
就業時間や勤務内容を記録する
労働災害に該当するには、業務遂行性と業務起因性が必要となりますが、テレワークのように自宅であると、就業時間と私的時間の区別があいまいになりがちです。
会社としては、労働者に対して、就業時間や勤務内容を記録させることで、その区別をつけさせることができます。また、区別させることで、就業時間かつ勤務に起因する怪我かどうかを判断する際にも役立ちます。
就業場所を明確化しておく
就業場所が明確になっていないと、私的行為であるかの判断も曖昧になりがちです。
また、自宅での就業場所を明確化することで、会社がその労働者の就業に危険がないか(あまりに狭い場所でやっていないか等。)を判断することも可能になってきます。
テレワークに適した就業環境を整備する
厚労省では、労働者が自宅等においてテレワークを行う際の作業環境を確認するためのチェックリストを公開していますが、そのチェックリスト内には、無理のない姿勢で作業ができるようになっているか、転倒することが内容に整理整頓されているかどうかや、その他事故を防止するための措置は講じられているかといったチェック項目があります。
テレワークを行う際の作業環境を確認するためのチェックリスト【労働者用】(厚労省)このように、労働者の自宅で事故が生じないかどうかを確認し、テレワークに適した就業環境を整備することで、労災を防止することが企業には求められています。
テレワークの労災認定で不明点があれば、お気軽に弁護士までご相談下さい。
以上に説明したようにテレワークであったとしても、労働者である以上、事業所等で働く労働者と同様に労働者災害補償保険法の適用を受け、労災保険給付を受けることができます。
もちろん、何でも労災認定されるわけではありませんが、業務遂行性と業務起因性が認められた場合には、労災認定があり得ます。企業は、従業員の安全に配慮する義務があり、労災認定を超えて賠償義務を負うリスクも考えられるところです。
埼玉県内でテレワークでの労災認定に不明点がある企業の方は、ぜひ一度弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。
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