労務

申し立てがあった場合の会社側の対応のポイント

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕

監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士

  • 労働審判

労働審判の申立てがあった場合、会社側はどのように対応すべきでしょうか。事前に交渉が挟まれることも多いですが、突然労働審判が申立てられることもあります。今回は、労働審判の申立てがされた場合の会社側対応のポイントについてご説明いたします。

労働審判のポイント

労働審判は、紛争の実情に即した迅速、適正かつ実効的な解決を図ることを目的としています(労働審判法第1条)。そのため、通常の訴訟に比べて、かなり迅速に手続きが進められるというところにポイントがあります。

労働審判の大まかな流れ

まず、労働審判は、大まかに次のような流れで進んでいきます。

  1. 労働者からの労働審判の申立て
  2. 裁判所から会社へ労働審判の期日指定・呼び出しの通知
  3. 会社からの答弁書提出
  4. 期日(1~3回)
  5. 調停成立又は審判等

労働審判を申し立てられた会社はどう対応すべきか?

労働審判は、原則として3回以内の期日で審理を終える手続として定められています(労働審判法第15条2項)。ただ、実際には、第1回目の期日で審理の帰趨が決まってしまうことも多いです。ですから、第1回目の期日までの準備が何よりも重要となります。

申立て~期日前のポイント

特別の事由がある場合を除き、労働審判の申立てがされた日から40日以内の日に労働審判手続の第一回の期日を指定しなければならないとされています(労働審判規則第13条)。

裁判所は、期日を指定したうえで、申立書と呼出状を会社に郵送してきますから、第1回期日までの準備期間は非常に限られています。

ですが、前記したとおり、第1回期日までの準備が何よりも重要ですから、この限られた期間の中で、会社側の主張を証拠と共に準備する必要があります。

答弁書は期限間近に提出すると不利になる?

準備期間が限られている以上、どうしてもぎりぎりになってしまうことはあります。

もちろん、期限間近に答弁書を提出しただけで、決定的に不利となることはありませんが、労働審判の性質上、迅速な手続きが求められることもあり、裁判所からは不利な心証(労働者の主張に対して反論が無い、できないのだろう。等)を抱かれることはあり得ます。

十分な証拠や主張のために、間近になってしまうことはあるでしょうが、できる限り、期限を守って提出する方がよろしいかと考えます。

労働審判期日のポイント

答弁書を提出した後、実際の期日においては以下の点がポイントとなります。

事実関係を説明できる者を同行させる

第1回期日においては、申立人の主張や証拠の確認、会社側の主張や証拠の確認がされます。

これに加えて、労働審判委員会から、申立人本人や、会社の担当者から直接の質問がなされていって、労働審判委員会の心証が形成されていきます。

会社に有利な事情を説明できる担当者や責任者を同行させるのは必須といってよいポイントです。

審判員からの質問には端的に回答する

審判員からの質問に対しては、どうしてもいろいろな事情も含めて伝えたくなってしまうことがあります。

しかしながら、今までの発言と矛盾してしまったり、余計なことを言って墓穴を掘るという結果になることもあり得ます。質問には端的に回答することがポイントです。

調停成立時のポイント

労働審判は、双方の合意によって調停が成立することもあります。

和解の落としどころを見極める

調停が成立するには、双方の合意が必要ですから、落としどころを見極める必要があります。

労働審判では、申立人・相手方と個別に和解について協議してきますから、その際に労働審判委員会の心証や自身の資金力等も踏まえた落としどころを見極めていくことがポイントになります。

調停条項には「守秘義務条項」を入れておく

残業代の請求においては特に問題となりますが、申立人1人のみが残業代未払いであるというケースは稀です。労働審判について調停を成立させるとしても、他の従業員にまで波及することは避けたいという会社の考えは非常に理解できます。

また、SNSの発展に伴い、事実と相違することやニュアンスの違う発信をされてしまうというリスクもあります。そのため、調停条項には第三者に口外しないという守秘義務条項を入れておくこともポイントになってきます。

審判確定時のポイント

労働審判は、調停が成立しない場合には、審判が下されることになります。

異議申立ては2週間以内に行う

この審判に対して不服がある場合は、2週間以内に異議を申立てる必要があります(労働審判法第21条1項)。異議が出された場合には、労働審判はその効力を失い、訴訟に移行することとなります(労働審判法第22条1項)。

期間制限があるので、労働審判に不服がある場合には、その点にも注意する必要があります。

労働審判でやってはいけない対応とは?

労働審判の呼出しを無視する

期日の呼出しを無視する以上、労働者側の主張のみで、会社に不利な審判が下される可能性がありますから、無視することはお勧めできません。

また、正当な理由がなく欠席するときは、5万円以下の過料が科せられる可能性もあります(労働審判法第31条)。呼出状が届いた際には、無視せずに対応する必要があります。

法律や証拠に事実に基づかない主張を行う

労働審判は、迅速な解決を目的としてはいますが、あくまで裁判所を通じた手続きですから、法律や証拠から認定される事実に基づいて判断が出されます。

うちの会社では残業代は発生しない、等と主張したところで、受け入れてもらうことはできませんから、法的に成り立つ主張を行っていくことが大前提となります。

声を荒げたり、侮辱するような発言をする

労働審判では、申立人本人も参加していますから、会社側としても、事実と違う話をされた際などには、つい熱くなってしまうことがあり得ます。

ただ、それでも声を荒げたり、侮辱するような発言をすることは良くありません。かえって労働者n主張に理由があるかのような不利な心証を抱かれかねませんし、別の事件に発展してしまうこともあり得ます。あくまで冷静に主張していくことがポイントとなります。

労働審判委員会の進行に従わない

労働審判委員会は、当事者の陳述を聞いて争点及び証拠の整理をしなければならないとされています(労働審判法第15条1項)。労働審判委員会には、その権限が与えられている以上、労働審判委員会の進行に従わないことは不利な心証を抱かれても致し方ありません。

会社が労働審判で虚偽の陳述をした場合はどうなる?

故意に虚偽の陳述を行うことはお勧めできません。客観的な証拠と異なることが判明し、それを故意に行ったというのであれば、すべての主張について労働審判委員会の心証は非常に害される恐れがあります。

かえって不利な認定をされる可能性もありますから、虚偽の陳述をすることは止める方が良いでしょう。

労働審判に強い弁護士を選ぶポイント

労働審判は迅速な手続きであることから、レスポンスの早い弁護士を選ぶというのが一つのポイントです。また、労働審判の期日では、丁々発止のやり取りも行われますから、弁の立つ弁護士を選ぶということもポイントになろうかと考えます。

そして、当然のことながら、労働関連法規や労働審判に詳しい弁護士を選ぶことが何よりも重要かと考えます。

労働審判の有利な解決を目指すには会社側の対応が重要です。労働審判の対応でお悩みなら弁護士にご相談下さい。

労働審判が申立てられたとしても、期日までの対応や、期日当日の対応によって結論は大きく左右されるということがあり得ます。

会社で労働審判の対応に慣れた方というのはあまり考え難いですから、専門家である弁護士等の協力が必要不可欠です。期日までの対応がタイトなこともあり、労働審判の呼出しがされた場合には、直ぐに弁護士に相談することをお勧めいたします。

埼玉県内で労働審判の対応にお悩みの方はぜひ一度弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕
監修:弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長
保有資格弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)
埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。

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