監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士
- 退職・解雇
従業員が何らの連絡もなく欠勤する無断欠勤は、企業の業務運営に多大な支障をきたすだけでなく、他の従業員の士気低下や負担増大を招く重大な問題です。
経営者や人事担当者としては、「解雇したい」と考えてしまうことも無理からぬことですが、進め方を誤ると「不当解雇」となってしまうリスクがあります。
今回は、無断欠勤が続く社員への適切な対応フローから、解雇を検討する際の法的留意点について解説します。
目次
無断欠勤が続く社員への対応と流れ
無断欠勤が発生した際、感情的な判断で即座に処分を下すことは避けなければなりません。
まずは以下の手順で事実確認と督促を行うことが、後の法的紛争を防ぐ鍵となります。
本人に連絡をとる
まずは欠勤の理由(急病、事故等、無理からぬ事情がないか。)を確認するため、本人に連絡を試みます。電話だけでなく、メールやSNS等、会社で把握している連絡先に連絡を試みます。
ただ、独身者で連絡が取れない場合は、安否確認のためにも、必要に応じて自宅訪問や警察への通報(安否確認依頼)の検討が必要となってきます。
出社命令を出す
本人と連絡が取れ、理由のない欠勤であることが判明した場合は、速やかに出社を命じます。
この際、後の証拠とするため、口頭だけでなくメールやLINE、特定記録郵便等を用いて、出社命令を出した記録が残るようにしておくべきです。
仮に、本人と連絡が取れない場合でも、郵便やメール等によって連絡を発出することが出来るようであれば、同様に出社命令(ないしは連絡するように命令)を出しておくべきでしょう。
指導・処分の検討
出社命令に従わない場合、まずは就業規則に基づき、軽い懲戒処分(戒告、譴責など)を行い、改善を促します。
いきなり重い処分を科すのではなく、段階的な対応を行っても改善しないことが、後の解雇の有効性を担保するために重要になってきます。
退職勧奨を行う
改善の見込みがない場合には、解雇に進む前に、合意による労働契約の終了(退職勧奨)を検討します。
本人と連絡が取れるにもかかわらず、出社しないのであれば、自主的な退職を促すことから初めることをお勧めします。
これによって合意退職に至ることが出来れば、解雇に伴う法的リスクを回避できるからです。
無断欠勤を繰り返す社員は解雇できるのか?
結論から言えば、無断欠勤を理由とした解雇は可能ですが、以下の法的ハードルをクリアする必要があります。
「解雇権濫用法理」に関する注意点
労働契約法第16条では、解雇について以下のように定められています。
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」(労契法第16条)
無断欠勤が事実であっても、その期間が短い場合や、連絡できないやむを得ない事情(意識不明の重体など)がある場合には、解雇は無効とされる可能性が高いです。
普通解雇・懲戒解雇どちらに該当するのか?
長期にわたる無断欠勤は、一般的に懲戒解雇の事由とされますが、懲戒解雇は、普通解雇に照らして手続き面等でより厳格な規制があるためため、実務上は、普通解雇とするか、又は懲戒解雇としつつも、予備的に普通解雇の意思表示を行うことが多いです。
解雇事由として就業規則に定めていない場合
また、懲戒解雇を行うには、あらかじめ就業規則にその事由が記載されている必要があります。ですから、懲戒解雇事由として無断欠勤が定められていない場合には、懲戒解雇を行うことはできません。
他方で、普通解雇であれば、無断欠勤を解雇事由と定めていなかったとしても、例示列挙であるとする説が有力であるため、普通解雇することは可能となる余地があります。
しかしながら、無用な争点を増やすこととなりますので、事前に就業規則にきちんと定めをおいておくことをお勧めいたします。
無断欠勤が何日続くと解雇が認められる?
具体的事情によるため、何日間無断欠勤した場合には直ちに解雇が認められるという基準はありません。
ただ、かつて、解雇予告手当の除外認定の例示事由として、「原則として二週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合。」とした通達があります(昭和二三・一一・一一 基発一三六七号、昭三一・三・一 基発一一一号)。
1日であっても、無断欠勤は問題ですが、この通達を参考としますと、2週間以上、無断欠勤するというのは一つの目安になろうかと考えます。
無断欠勤が続いても解雇できない場合とは?
例えば、無断欠勤であっても、精神疾患の影響によるものであると、休職などの配慮を行ったうえで解雇を検討すべきことはあり得ますし、精神疾患がパワーハラスメントなど、業務に起因する場合は労災扱いとなり、解雇はできません。
このほか、家族の急病や災害といった、例外的な事情があり、それに合理性がある場合などは、無断欠勤が続いても、直ちに解雇することはできない可能性があります。
具体的事情にもよるため、弁護士に個別に相談されることをお勧めいたします。
不当解雇をめぐる損害賠償リスク
解雇が無効と判断された場合、もっとも重くのしかかるのは、バックペイです。
解雇が無効と判断された場合、労働者は会社の従業員としての地位が継続していたことになりますので、その間の給与の支払義務が生じます。
1~2年間にわたって裁判等で争った場合、一時に多額の支払いを求められることになり、企業にとって予期せぬ大打撃を受けることになります。
不当解雇とならないためにしておくべきこと
不当解雇と主張されないためには、出社命令、段階的な懲戒処分といった、手続きを履践することが何より重要です。
無断欠勤による解雇にも解雇通知は必要か?
解雇を行う際は、原則として30日前の予告、または30日以上の解雇予告手当の支払いが必要とされています(労基法20条1項)。
解雇予告の除外認定について
もっとも、同項但書においては「労働者の責に帰すべき事由」がある場合には、労働基準監督署長の「除外認定」を受けることで即日解雇することが可能とされています。前記したとおり、通達において、2週間以上の無断欠勤は、この除外認定の対象となり得るとされています。
社員が行方不明になってしまった場合は?
会社の寮から荷物をまとめて蒸発した場合などは、黙示の退職の意思表示として取り扱って差し支えないとされますが(昭二三・三・三一 基発五一三号)、単に行方不明となっただけでは、同様に取り扱うことはできません。
解雇の意思表示は、相手方に到達しないと効力が発生しないため、裁判所の手続きによって公示による意思表示を行う必要が出てきます(民法98条)。
このような手間を省くため、就業規則に、長期行方不明の場合に備えた自然退職の定めをおくということも可能です。
無断欠勤を防ぐために企業ができる取り組み
無断欠勤の事情にもよりますが、まずは勤怠ルールの明確化を行い、欠勤時の連絡手段(電話を原則とし、メール・SNSは不可とする等)を定めておくことから始めるべきでしょう。また、無断欠勤の一因としてメンタルヘルスも考えられますので、相談窓口の設置等の体制整備も考えられます。
何よりも、事態を放置しないために、1日でも無断欠勤があった場合には、本人に迅速に連絡を取るなどといった、社内での対応策を事前に取り決めておくことをお勧めいたします。
無断欠勤による解雇の有効性が問われた判例
無断欠勤による解雇の有効性が問われた事例として、日経ビーピー事件(東京地裁平成14年4月22日判決)があります。
事件の概要
会社に編集記者として約11年間勤務していた労働者(原告)が、福利厚生部への配転命令、およびその後の累次の懲戒処分(けん責、減給、出勤停止)、長期欠勤、職務復帰命令違反を理由とする最終的な懲戒解雇の有効性が争われた事案です。
裁判所の判断
裁判所は、「平成12年1月11日から同年3月2日までの長期間,上司による承認を受けることなく連続して欠勤し,被告乙山,被告会社の人事部長及び人事・総務担当役員による職務復帰命令に違反したという点は,原告の被告の従業員としての基本的な義務に反する重大な命令違反であるといわなければならない。
それだけでなく,前記認定のとおり,本件出勤停止処分の後の福利厚生部会の出席拒否,伝票を伊藤次長に提出するとの指示命令違反行為,早退に許可を受けるべしとの指示命令違反行為は,原告の重大な非違行為であると評価することができる。
そして,前述のとおり,原告は,それまでに,本件第1けん責処分,本件第2けん責処分,本件減給処分及び本件出勤停止処分という懲戒処分を受けていることを合わせ考えれば,本件懲戒解雇は,相当な処分であるし,平等原則の見地からも適切であるといわなければならない。」と述べて、懲戒解雇を相当なものとして有効と判断しました。
ポイント・解説
従業員は、会社からの度重なる違法な懲戒処分により被告会社に対して信頼関係を喪失したために欠勤していたなどと主張しましたが、そもそも適法な懲戒処分であると判断されているだけでなく、職務復帰命令違反を正当化する根拠とはならないとされました。
長期の無断欠勤が懲戒解雇理由となることを示している点で、参考となる裁判例です。
無断欠勤を繰り返す社員の対応や解雇問題でお困りなら、労働問題に強い弁護士にご相談下さい。
無断欠勤を繰り返す社員に対しては、最終的に解雇に至ることもあり得ますが、初動対応を誤ると不当解雇として、バックペイの支払い問題を会社に生じさせかねません。
就業規則と整合的な対応を行っていく必要もあり、労働問題の専門家である弁護士等に相談、依頼しながら対処していくことが不可欠です。
埼玉県内で、無断欠勤を繰り返す社員の対応や解雇問題でお困りなら、ぜひ一度、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

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