有期雇用と試用期間について

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕

監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士

  • 採用

最初から正社員として採用するのではなく、試用期間を設ける会社は非常に多いかと思います。同様に、有期雇用契約を締結した後、無期雇用に転換されるような会社も多いです。
では、有期雇用契約において試用期間を設けることはできるのでしょうか。
本日は有期雇用と試用期間について、ご説明いたします。

試用期間と有期雇用の法的性格

試用期間とは、一般的に解約権留保付労働契約と解されています。
他方で、有期雇用契約とは、1年等といった期間の定めがある労働契約を意味します。

試用期間を設けるメリット

採用面接や試験といった短期間で限定された手法で採用者の適性を正確に評価することは難しいと言わざるを得ません。
そのため、採用者に本当に適性があるか否かを判断するために、3~6か月程度の試用期間を設ける必要があります。
こうすることで、試用期間経過での本採用拒否については、本採用後の解雇よりも、適法と認められやすくなるメリットがあります。

有期雇用契約をするメリット

いわゆる正社員の場合は、一時的な労働力需要のために採用したとしても、簡単に契約を終了することが出来ません。
有期雇用契約は、その名のとおり、期間の定めがありますので、労契法19条に反しない限り、期間満了によって終了します。そのため、一時的に労働力が必要な場合にメリットがあります。

試用期間としての有期雇用契約は認められるか?

では、試用期間としての役割を持った有期雇用契約を利用することはできるのでしょうか。
実務上、有期雇用契約を試用期間のように扱い、その期間中に適性があると判断した場合に、期間の定めのない労働契約を締結されるということがあります。
このような場合、裁判例上、有期雇用契約の成立が否定されて、期間の定めのない労働契約の試用期間であったと判断されたことがあります(神戸弘陵学園事件判決)。
会社としては、契約期間満了の方が、都合が良いのでしょうが、裁判所からは、期間の定めのない労働契約の試用期間とされることがあり得ます。

試用期間として有期雇用契約した場合、期間満了による雇止めは可能か?

以上に述べたように、試用期間として有期雇用契約を締結した場合、期間の定めのない労働契約の試用期間と判断される可能性があります。
したがって、雇止めは考えられず、本採用拒否の適否が検討されるにすぎないことになります。

試用期間満了による本採用拒否は解雇と同等の扱い

試用期間満了による本採用拒否は、会社が解約権として留保してきた権利を行使するため、法的性質は解雇となります。そのため、解雇と同様に簡単には認められませんが、本採用後の解雇に比べれば、認められやすい傾向にあります。

有期雇用契約でも試用期間と判断される可能性がある

以上に述べたように、有期雇用契約を締結していたものの、その後に無期雇用が続くことが構造的に予定される場合には、有期雇用が試用期間と解釈されることがあります。

試用期間を有期雇用契約とする際の留意点

試用期間の代わりに有期雇用契約を締結したところで、裁判所からは、実態として試用期間であると判断される可能性もあります。
少なくとも、有期雇用契約を利用する際には、以下の点に留意が必要です。

契約期間満了により労働契約が終了する旨の合意が必要

この点が無ければ、有期雇用契約ではなく、試用期間と判断されてしまう可能性が上がります。
仮に有期雇用契約と判断されたとしても、更新の期待があるとされてしまった場合には、労契法19条の適用を受ける可能性も出てきます。

有期雇用契約は期間途中での解除が困難

有期雇用契約は、「やむを得ない事由がある場合」でなければ中途解約はできません(労契法17条)。
安易に試用期間代わりに1年間に期間を定めて契約した場合、途中で解約することは非常に困難であると考えていただいた方がよろしいです。

試用期間と有期雇用に関する裁判例

前記しましたが、神戸弘陵学園事件が有名です。

事件の概要

常勤講師が、学園から、最初の契約期間を1年とする有期雇用契約を締結させられたものの、その間の勤務状態を見て期間の定めなく再雇用するか否かの判定を受けると説明されていたという事案です。
この常勤講師は、学園から最初の契約期間の満了で再雇用されることが無かったため、その有期雇用契約の実態が試用期間であったと訴えた事案です。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

裁判所は、「使用者が労働者を新規に採用するに当たり、その雇用契約に期間を設けた場合において、その設けた趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものであるときは、右期間の満了により右雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、右期間は契約の存続期間ではなく、試用期間であると解するのが相当である。」と述べて有期雇用契約ではなく試用期間であると判示しました。

ポイント・解説

名目だけを有期雇用契約としても、その実態が試用期間であるのであれば、裁判所としては、期間の定めがあるとは認定しません。
会社に一方的に都合が良いということは認められない点に注意が必要です。

試用期間や有期雇用に関するお悩みは、労働問題に詳しい弁護士にご相談下さい。

以上に述べたように、試用期間と有期雇用に関しては、その実態を見ながら判断していく必要があり、会社としては有期雇用契約であるから大丈夫であろうと考えていたとしても、裁判所から試用期間と判断されて、期間の定めのない労働契約を締結していたということにもなりかねません。
このような法的判断を含む事項については、自社のみで悩まず、労働問題に詳しい弁護士などの専門家にご相談されることをお勧めいたします。
埼玉県内で試用期間や有期雇用にお悩みの企業の方は、ぜひ一度、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕
監修:弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長
保有資格弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)
埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。

企業側人事労務に関するご相談

初回1時間電話・来所法律相談無料

顧問契約をご検討されている方弁護士法人ALGにお任せください

※会社側・経営者側専門となりますので、労働者側のご相談は受け付けておりません

※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。

会社側・経営者側専門となりますので、労働者側のご相談は受け付けておりません