新型コロナウイルスワクチン接種における新たな労務問題

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕

監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士

  • 新型コロナウイルス関連

新型コロナウイルスについては、現在ワクチン接種が進んでおり、令和3年9月30日時点で、一回目接種率は63.93%、二回目接種率も54.08%と、国民の半数以上がワクチン接種を完了している状況になっています(政府CIOポータル参照 https://cio.go.jp/c19vaccine_dashboard)。 しかしながら、ワクチン接種が進むにつれて、新しい労務問題が生じてきています。

従業員に新型コロナウイルスのワクチン接種を義務付けることは可能?

新型コロナウイルスのワクチンは、「いずれも、新型コロナウイルス感染症の発症を予防する高い効果があり、また、重症化を予防する効果が期待されています。」とされるように(厚生労働省新型コロナワクチンQ&A参照)、新型コロナウイルスの脅威に対向する手段として、非常に有用なところがあります。
従業員が新型コロナウイルスに感染した場合、営業所の一時閉鎖などを行うリスクを抱えていますから、企業にとっては、可能であれば、従業員全員に接種してほしいと考えることは自然です。
しかしながら、ワクチン接種を会社が従業員に対して義務付けることまでは出来ません。
ワクチンには、副反応のリスクもあり、この接種を強制することは、従業員の自由を制限しすぎるものであって、認められません。
国も、国民に対し、予防接種法第9条の規定による努力義務(強制ではない)を課しているにすぎません。

ワクチン接種証明書の提出を求めてもいい?

では、ワクチン接種証明書の提出を求めるのはどうでしょうか。
これも義務化することは難しいと言わざるを得ません。接種証明書の提出を義務付けることはワクチン接種を義務付けることと同じになってしまいかねません。
提出するかどうかは、従業員の自由な意思に任せるしかなく、接種証明書の提出を強制するようなことはできないとお考え下さい。

ワクチン接種を推奨するための企業の措置

ワクチン接種を義務付けることは出来ませんが、企業にとっては新型コロナウイルスのリスクに備える手段であって、必要性も高いことから、これを推奨していくこと自体に問題はありません。

有給休暇や欠勤扱いとすることは問題ないか?

推奨するからといって、業務命令として接種させているわけではありませんので、ワクチン接種中に、従業員が使用者の指揮命令下にあるとは言えません。ワクチン接種については、労働者の自由意思に基づくものであることから、業務として行われるものとは認められません。
したがって、ワクチン接種について有給休暇扱いや欠勤扱いとすることに問題はありません。

厚生労働省が望ましいとする労働時間の取り扱い

厚生労働省としては、「職場における感染防止対策の観点からも、労働者の方が安心して新型コロナワクチンの接種を受けられるよう、ワクチンの接種や、接種後に労働者が体調を崩した場合などに活用できる休暇制度等を設けていただくなどの対応は望ましいものです。」とされています(厚生労働省QA参照)。
中抜けなどをペナルティなく認めるようにすることも推奨されています。

職域接種の場合は労働時間として扱うべき?

職域接種であろうと、ワクチン接種は個人の自由意思に任されているものです。

そのため、労働時間として扱わなくても問題ありません。 ただ、従業員の負担もあるため、労使で協議して、ペナルティなく中抜けなどさせるとか、特別休暇を創設するといった手段はあり得ます。

ワクチン接種に備えた「ワクチン休暇」の新設について

前記したとおり、ワクチン接種に備えたワクチン休暇の創設は、厚生労働省としては望ましいものとしています。

ワクチン休暇は有給か?無給としてもいいか?

ワクチン休暇は、法定の有給休暇と異なり、企業の福利厚生の一環として導入するかどうかを決めるものです。慶弔休暇等と同様に、会社の制度ですので、それを有給とするのか無給とするのかは、会社の広範な裁量にゆだねられています。
そのため、有給とするか、無給とするかは、会社で決断してよろしいです。

就業規則の変更について

仮にワクチン休暇を導入する場合、「一般的には、労働者にとって不利益なものではなく、合理的であると考えられることから、就業規則の変更を伴う場合であっても、変更後の就業規則を周知することで効力が発生するものと考えられます。」とされています(厚生労働省QA)。

ワクチン接種で健康被害が出た場合は労災の対象?

ワクチン接種を接種するかどうかは、従業員の意思にゆだねられている以上、業務起因性は認められず、労災の対象とはならないことが原則です。
ただ、医療従事者については、強制こそされないものの、業務の性質上、ワクチン接種をしなければならない状態にあります。
そのため、「医療従事者等に係るワクチン接種は、労働者の自由意思に基づくものではあるものの、医療機関等の事業主の事業目的の達成に資するものであり、労災保険における取扱いとしては、労働者の業務遂行のために必要な行為として、業務行為に該当するものと認められることから、労災保険給付の対象となります。なお、高齢者施設等の従事者に係るワクチン接種についても、同様の取扱いとなります。」とされています(厚生労働省QA)。

ワクチン接種の拒否を理由に懲戒処分とすることは可能?

これは出来ないとお考えいただく方がよろしいです。
あくまでワクチン接種は従業員の自由意思に基づいて行われるものであり、これをしないからといって、懲戒処分とすることは出来ません。

ワクチン接種に関する不利益な取り扱い・ワクハラ(ワクチンハラスメント)の禁止

当然ですが、ワクチン接種を推奨する際、ワクチンを接種しないものの人格を否定するような行為は、パワーハラスメントに該当する行為で、禁止されます。
また、これに伴って解雇や雇止めなどの不利益な取り扱いを行うことも当然出来ません。

従業員のワクチン接種において求められる企業対応

企業としては、従業員にワクチンを接種してほしいと考えるのは自然ですし、ワクチン自体の有効性もあります。
そのため、企業としては、あくまでも従業員の自由な意思による接種が前提であることを周知しながら、従業員に対して、自分の身を守ることや、周囲の従業員、取引先などの身を守ることにもつながること、ワクチンに対する正確な理解を周知していくなどしてワクチン接種を推奨していくことが求められます。

新型コロナのワクチン接種における労務管理で不明点があれば弁護士にご相談ください

新型コロナウイルスのワクチン接種については、コロナ禍同様、企業にとって経験したことのない出来事であり、また、副反応のリスク等もあることから、非常にデリケートな問題です。
ワクチン接種に伴う欠勤等も問題となり得ますし、いわゆるワクハラ(ワクチンハラスメント)の被害も聞こえてくるところがあります。このような労務管理の問題については、専門家である弁護士と共に進めていくことが何より大事です。
埼玉県内で、新型コロナのワクチン接種における労務管理でお悩みの企業様はぜひ一度弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕
監修:弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長
保有資格弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)
埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。

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