監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士
土地や建物などの不動産に関する相続放棄について解説します。
目次
土地や建物などの不動産は相続放棄できるのか?
相続財産に不動産が含まれている場合にも当然相続放棄することができます。
相続放棄をすれば、はじめから相続人ではなかったとみなされるため、固定資産税を支払う必要はなくなります。また、基本的には、不動産を管理する責任からも免れることができます。
相続放棄せずに土地を所有し続けるリスクとは?
相続放棄せずに、土地を所有することとなった場合には以下のようなリスクがあります。
固定資産税を支払わなければならない
固定資産税は土地の所有者に課されるものですから、土地を相続した場合には、その土地の固定資産税を納付する義務を負います。
空き家問題と固定資産税について
相続した不動産が、空家等対策特別措置法における「特定空家等」に該当する場合には、高額な固定資産税の納付義務を負うリスクがあります。空家等対策特別措置法では、倒壊の危険がある又は衛生上有害であるような空き家等を「特定空家等」と定義しています。
共有名義にするとトラブルに発展することも
不動産を共同相続人と共有することとなった場合、売却等の処分行為をするときには共有者全員の合意が必要となりますし、管理行為をするときには過半数の同意が必要となります。
また、管理費用や固定資産税の負担を巡って、トラブルになることも容易に想定されます。
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土地を相続放棄する際の注意点
土地を相続放棄するときには以下のようなことに注意するべきです。
土地だけ相続放棄することはできない
これは、他の相続財産についても同様ですが、相続財産のうち土地だけを相続放棄するというようなことはできません。相続財産全体の時価、債務の金額等を考慮して、相続放棄するか否かを判断することになります。
相続放棄しても土地の管理義務は残る
土地を相続放棄した場合において、相続放棄したことから直ちにその管理義務から解放されるということにはなりません。
土地が、他の相続人又は清算人に引き渡すまでの間、自己の財産に対するものと同一の注意をもって、その財産を管理しなければなりません(民法940条1項)。
土地の名義変更を行うと相続放棄できなくなる
相続放棄をする前に、土地の名義変更を行った場合には、単純承認となり(民法921条第1号)。
相続放棄には3ヶ月の期限がある
相続放棄には、相続人となったのを知った時から、3か月以内に相続放棄の申述をしなければならないという期限があります。
相続放棄した土地はどうなるのか?
法定相続人の全員が相続放棄した場合には、相続財産清算人が債務の清算等行った後、国庫に帰属するということが想定されています。しかし、相続財産清算人の選任申立てには、相当の負担があります。
そのため、令和5年4月27日から相続土地国庫帰属法が施行され、一定の場合には、土地を相続放棄することにより、国庫に帰属させることができるようになりました。
土地を相続放棄する手続きの流れ
一般的な相続放棄と同様の手続きで相続放棄を行うことができます。
相続放棄以外で土地を手放す方法はある?
相続放棄をせずに、土地を手放す方法には以下のものが考えられます。
売却する
最も一般的な方法は土地を売却することです。
寄付する
土地を寄付するという方法もあります。寄付の相手としては、自治体、個人、法人が挙げられます。
個人や法人に寄付する場合には、土地を贈与したとみなされて、寄付をした者に贈与税が課されることには注意が必要です。
土地活用を行う
土地を賃貸する等、土地活用を行うことも考えられます。
土地を相続放棄するかどうかで迷ったら、一度弁護士にご相談ください。
土地の相続放棄については弁護士に相談されることをおすすめします。
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- 保有資格
- 弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)