逮捕されるのはどんな時?逮捕の種類について

コラム

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕

監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士

逮捕とは、逃亡や罪証隠滅(証拠を隠すことをいいます。)を防止するため、被疑者の身体の自由を指定場所にて短期間拘束することを意味します。
逮捕には、①通常逮捕(刑訴法199条)、②現行犯逮捕(刑訴法212条、同法213条)、③緊急逮捕(刑訴法210条)の3種類があります。

逮捕の種類

上述のとおり、逮捕には、①通常逮捕、②現行犯逮捕、③緊急逮捕の3種類があります。
①通常逮捕とは、裁判所が発する逮捕令状によって行う逮捕のことをいいます。
②現行犯逮捕は、令状なく現行犯人を逮捕することをいい、これは私人であっても行うことができます。
③緊急逮捕は、一定の犯罪を犯したと疑うに足りる十分な理由がある場合に、無令状(ただし逮捕後速やかに令状請求が必要)で行う逮捕のことをいいます。

逮捕の種類を知っておく重要性

逮捕は短期間であったとしても、身柄を拘束され外部との連絡も遮断されるため、私人の自由に対する制約は甚大です。そのため、刑事訴訟法は逮捕の要件を明確に定めています。

逮捕の各種類・要件を理解しておくことで、ご自身やご親族が万一逮捕されてしまった場合に、どの種類の逮捕によって身体拘束がなされているか、その要件は何か、この逮捕は要件を満たさず違法ではないか、等を識別できるようになり、捜査機関に対して適切な対応をとることができる場合もあります。

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通常逮捕

通常逮捕とは、裁判所が発する逮捕令状による逮捕のことです。一般の方にとっては一番なじみのある逮捕だと思われます。逮捕は令状によってされることが刑事訴訟法の大原則であるため、通常逮捕が一般的な逮捕である、ということができます。

通常逮捕の要件

通常逮捕の要件は、①逮捕の理由、➁逮捕の必要性、③逮捕状の取得になります。

捜査機関が裁判所に逮捕状の発布を請求し、裁判所において、①と➁があると認めた場合に、③逮捕状を発布します。

ここでいう➀逮捕の理由とは「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(刑訴法199条1項)を意味します。➁逮捕の必要性とは逃亡もしくは罪証隠滅のおそれを意味します。
なお、通常逮捕の場合には、逮捕をする際に逮捕状を被疑者に提示することが必要です。

逮捕状について

逮捕状とは、検察官または司法警察員の書面による請求によって、裁判官が発行する令状の一種です。
逮捕状の請求は、逮捕の理由・必要性を明らかにする資料を添付して行われ、当該資料に基づき、裁判官が逮捕の各要件を充たしているか否かを判断します。
逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認めるときは、明らかに逮捕の必要がないと認める場合を除き、逮捕状を発付しなければなりません。

通常逮捕の多い犯罪

通常逮捕される犯罪で多いものとしては、贈収賄等の犯行現場を取り押さえることが困難な犯罪があげられますが、万引き等の窃盗罪、痴漢行為等の条例違反であっても通常逮捕がなされることが多いのが実情です。

なお、軽微な犯罪(30万円以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪)については、住居不定又は正当な理由なく任意出頭に応じない場合にのみ通常逮捕することができます(刑訴法199条1項但書)。

現行犯逮捕

現行犯逮捕とは、「現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者」(現行犯人といいます。)を無令状で逮捕することをいいます。現行犯逮捕の特徴としては、通常逮捕と異なり、私人であっても現行犯逮捕をすることができること、無令状で行えることが挙げられます。
これは、令状の発布を受けるまで、また司法警察員でないと逮捕できないとすると、現行犯人が逃亡や罪証隠滅をするおそれがあるためです。

準現行犯逮捕

準現行犯逮捕とは、ある一定の要件に該当する場合に、「現行犯人とみなす」ことで、無令状で逮捕することをいいます。
ある一定の要件とは、被疑者が①犯人として追呼されているとき、②贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき、③身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき、④誰何されて逃走しようとするとき、に該当し、罪を行い終わってから間がないと明らかに認められるときです。

私人逮捕

私人逮捕とは、犯罪の被害者本人や、目撃者がその場で犯人を拘束することをいいます。
現行犯逮捕は誰でも逮捕状無くして行うことが可能であるため、捜査機関以外の一般私人が行うことが認められています。
なお、私人が現行犯人を逮捕した時には、直ちにこれを検察官や司法警察職員に引き渡さなければなりません。

現行犯逮捕の要件

現行犯逮捕の要件は、①その犯人による特定の犯罪であることが、逮捕者にとって明白であること、②その犯罪が現に行われていること、又はその犯罪が現に終わったことが、逮捕者にとって明白であることです。
なお、現行犯逮捕においても、通常逮捕と同様に逮捕の必要性が要求されると考える見解が有力です。

現行犯逮捕が多い罪名

現行犯逮捕は「現に罪を行い、又は現に行い終わった」者に対してしか行うことができません。そのため、その場で犯罪と犯人を現認できるような状況が必要となります。

現行犯逮捕が行われる典型例としては、①所持品検査によって発覚した覚せい剤等の違法薬物所持、②万引きGメンによって覚知された万引きなどがあげられます。

被害者との示談で不起訴となる可能性があります

万が一逮捕された場合であっても、必ずしも起訴されるとは限りません。
そのため、逮捕直後から不起訴に向けた弁護活動を早期に行うことが重要となります。

特に被害者がいる犯罪については、被害者との示談が成立しているかどうかは、検察官が起訴・不起訴を判断する上で極めて重要な事情となります。
逮捕をされてしまった場合には、できる限り早期に弁護士に依頼することをおすすめします。

緊急逮捕

緊急逮捕とは、一定の犯罪を犯したと疑うに足りる十分な理由がある場合で、裁判官の逮捕状の発付を待っていたのでは、その目的を達し得ないときに、逮捕の理由を被疑者に告げて、無令状(ただし逮捕後速やかに令状請求が必要)で行う逮捕のことをいいます。

緊急逮捕の要件

緊急逮捕の要件は、①死刑または無期もしくは長期3年以上の懲役もしくは禁固にあたる罪であること、②犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合であること、③急速を要し、裁判官の令状を求めることができないこと、④逮捕後直ちに裁判官の逮捕状を求める手続きをとることです。

逮捕された場合の流れ

逮捕された場合、逮捕後48時間以内に警察官から検察官に身柄が送致されます。検察官に送致されてから24時間以内に検察官から裁判所に対して勾留(身柄拘束の延長のことです。)請求が行われます。裁判官による面談を経て、勾留の決定がなされた場合、勾留の請求がされた日から10日間、勾留延長決定がなされた場合はさらに最大10日間勾留され、その勾留期間中に検察官にて起訴・不起訴の判断をします。

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逮捕されてしまった場合の対処について

このように、逮捕された場合には身体拘束について厳格な期間が定められているため、検察官による起訴・不起訴の判断が行われるまでに、時間的な猶予は無いと言っていいでしょう。
そのため、逮捕後できる限り速やかに、弁護士に依頼の上、逮捕時の要件(必要性や理由)を争うことや、示談等により逮捕の必要性がないことを主張する等の身柄解放や不起訴に向けた適切な弁護活動を行うことが極めて重要といえるでしょう。

接見・面会について

逮捕期間中は、警察署の留置所に身柄を拘束されることがほとんどであり、弁護士以外の者との接見や面会はできません。弁護人との接見については、逮捕直後から警察官の立ち合いなしで行うことができます。
勾留後には、弁護人以外の一般の方と面会することができますが、警察官も立ち会うことになります。また、面会時間も短時間に制限されることが多いです。

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不起訴で釈放されたい場合

逮捕された場合、検察官による起訴・不起訴の判断が出るまでに、時間的な猶予はないため、逮捕直後から不起訴に向けて適切な弁護活動を行うことが重要です。特に被害者がいる犯罪の場合、被害者との示談が成立しているかどうかが検察官による起訴・不起訴の判断で重要な要素となりますので、逮捕後速やかに弁護人を選任し、被害者との間で示談交渉を開始しましょう。
もちろん、告げられた犯罪事実に身に覚えがない場合には、起訴するだけの嫌疑が無いという資料を収集して検察官に説明していく必要があります。

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逮捕の種類に関するよくある質問

準現行犯逮捕は、どの程度距離や時間に間がある場合認められるのでしょうか。

準現行犯における「罪を行い終わってから間がない」とは、犯罪の実行行為の終了時点から時間的に近接した時点をいいます。ただ、準現行犯逮捕が無令状で行える根拠は、誤認逮捕のおそれが低い点にありますから、例えば、被害者が犯行後逮捕時まで一貫して被疑者を現認しているという状況であれば、比較的長く現場との距離や時間が開いても準現行犯逮捕は認められるでしょうし、逆に、一度見失うなど現認が途切れた場合等には、準現行犯逮捕は認められにくくなるといえます。

万引きで、後日通常逮捕されることはあり得ますか?

現行犯逮捕でない限り、先ずは任意出頭が求められると思われますが、逮捕の要件を満たす限り、通常逮捕されることもあります。

緊急逮捕の場合、警察が家に上がり込むことはあるのでしょうか?

自宅家宅捜索中に緊急逮捕の必要が生じたような場合には、自宅内で緊急逮捕されることはあり得ます。そもそも緊急逮捕は例外的な手続きであり、緊急逮捕することを前提に捜査機関が自宅を訪れることはあまりないと思われます

再逮捕とはなんですか?

被疑者の逮捕・勾留については「一罪一逮捕一勾留の原則」が妥当しますので、同一の犯罪事実で複数回逮捕・勾留されることは通常ありません。もっとも、同じ被疑者が別の余罪等の犯罪事実で、複数回逮捕・勾留が継続することがあります。

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弁護士への依頼が被疑者の命運を分けます

逮捕後、検察官が起訴・不起訴の判断が出るまでの時間的猶予はあまりないため、兎にも角にも刑事弁護はスピードが命です。早い段階で弁護士に依頼することで、起訴・不起訴という結果に大きな影響を与えるのみならず、ご家族や勤務先等の外部との連携も取れるようになります。

このように、特に逮捕されてから勾留されるまでの最大72時間は、被疑者にとって重要な時間である一方で、力になれるのは弁護士しかいません。万が一に備え、頼りがいのある弁護士や法律事務所を探しておくことをお勧めいたします。

盗撮
公共の場所、乗り物等で盗撮した場合

6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金
(迷惑防止条例8条1項、5条1項2号(東京都の場合))
公共の施設内で盗撮した場合
3年以下の懲役または10万円以下の罰金
(建造物侵入罪:刑法130条)
映画を盗撮の場合
10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金
(知的財産権侵害)
のぞきの場合
拘留又は科料
(軽犯罪法1条23号)
盗聴の場合
住居侵入罪成立の場合

3年以下の懲役又は10万円以下の罰金
電波法違反の場合
1年以下の懲役または20万円以下の罰金(電子通信事業法104条)

近年、カメラ付きのスマートフォンや小型カメラの普及によって盗撮事件が増えています。

電車内や駅のトイレなど公共の場所で盗撮をした場合は迷惑防止条例違反となり、公共施設内で盗撮した場合には建造物侵入罪にも問われる可能性があります。また、映画を盗撮した場合は知的財産権侵害として3年以下の懲役又は1000万円以下の罰金に処せられる可能性があります(映画の盗撮の防止に関する法律)。

盗撮ではなくのぞき行為をした場合には、軽犯罪法違反として拘留又は科料に処せられる可能性があります。

このような犯罪行為によって逮捕される可能性は十分にありますので、このページでは、逮捕や勾留への対応についても詳しく説明していきます。

盗撮事件とは

一般的な盗撮のイメージとしては、許可なく他人の下着や裸を撮影する行為を想像されますが、映画館で放映されている映画を撮影することも知的財産権侵害として罰せられます。

このような犯罪行為をした場合、その場で現行犯逮捕をされたり、後日、警察に任意同行を求められ、その後逮捕されることがあります。盗撮の際に他人の家や公共施設に入った場合には、侵入した行為に対しても建造物侵入罪や住居侵入罪として処罰される可能性があります。

盗撮にあたる行為

盗撮にあたる行為は、住居やトイレなどで人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置する行為(東京都迷惑防止条例第5条1項2号)です。

のぞきの場合

撮影せずにのぞきだけを行った場合でも、軽犯罪法違反として処罰されます。正当な理由なく、住居、浴場、更衣場、便所その他、人が、通常、衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た場合に処罰されます。

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盗撮の目的により異なる罪について

盗撮をした目的が個人で鑑賞をする目的か販売の目的かによって適用される法律が変わることはありません。

個人目的

他人に見せる目的がなく、もっぱら個人で鑑賞を行うための目的でされた盗撮であっても、迷惑防止条例違反もしくは軽犯罪法違反に該当します。

販売目的

販売目的で盗撮をした場合は、迷惑行為防止条例違反に該当します。
盗撮した写真等を実際に第三者に販売すると、わいせつ物有償頒布罪に該当する可能性があります。

18歳未満への盗撮

盗撮対象が18歳未満だった場合、迷惑行為防止条例違反だけではなく、児童ポルノ禁止法違反にも該当します。児童ポルノ製造の罪、児童ポルノ所持の罪、児童ポルノ作成目的の盗撮の罪に該当する可能性があります。

盗撮で問われる可能性がある刑罰

盗撮は、盗撮場所や盗撮した状況によって適用される法律が異なります。それによって刑罰の重さが変わってきますので、以下で説明していきます。

迷惑防止条例違反

迷惑防止条例違反に該当する盗撮は、「公共の場所又は公共の乗物」という特定の場所で盗撮した場合です。この場合、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます。
これに加えて常習性が認められた場合には、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられ、刑が重くなります。

軽犯罪法違反

軽犯罪法違反に該当する盗撮は、人の住居等公共の場所以外で盗撮した場合です。この場合、1日以上30日未満の拘留又は1万円未満の科料に処せられます。

児童ポルノ禁止法違反

盗撮の撮影対象が18歳未満であった場合、児童ポルノ製造の罪、児童ポルノ所持の罪、児童ポルノ作成目的の盗撮の罪に該当する可能性があります。

建造物侵入罪

盗撮のために建造物に立ち入った場合は、スーパーなどのように不特定多数の人が立ち入る場所でも建造物侵入罪が成立する可能性があります。

住宅侵入罪

盗撮目的で人の家に入って盗撮した場合は、迷惑防止条例違反だけでなく、住居侵入罪も成立する可能性があります。

知的財産権侵害

映画館で上映されている映画を録画したり撮影したりする行為は、知的財産権の侵害として10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金に処せられます(映画の盗撮の防止に関する法律)。

盗撮での逮捕

現行犯逮捕について

盗撮行為が被害者や目撃者に発見された場合、警察に通報されるなどして現行犯逮捕される可能性があります。逮捕された人が盗撮した画像や動画などのデータ(証拠)を持っていることが通常ですから、逮捕後は勾留手続に移行することが予想されます。

後日逮捕について

盗撮をした際に被害者に気付かれずに現行犯逮捕されなかったとしても、防犯カメラや目撃者がいたために警察に通報され、後日、逮捕状を持ってきた警察に逮捕されることがあります。この場合も、ある程度の証拠を押さえられている可能性が高く、勾留手続に移行することが予想されます。

逮捕されない場合

盗撮をしたけれども逮捕されない場合として想定できるのは、そもそも盗撮自体が発覚していない場合、逃亡や証拠隠滅のおそれが低いために逮捕をされないまま捜査が進んでいる場合が考えられます。

逮捕後の流れ

逮捕後は48時間以内に警察から検察官に身柄が引き渡されます。そこから24時間以内に、検察官は勾留請求するかどうかの判断をします。検察官から勾留請求がされた場合、裁判所は10日間の勾留を認めるかどうかの決定をします。

逮捕後の流れについてみる

20歳未満の未成年が盗撮行為をした場合

20歳未満の者が行った犯罪行為は、少年法が適用され、家裁送致の対象になる可能性があります。成人年齢が18歳に引き下げられたことに伴い、改正少年法が2022年4月から施行されています。改正少年法では、18歳や19歳は「特定少年」として成人に純ずる扱いがされ、事実上厳罰化されたといわれています。

盗撮で逮捕されたくない・起訴されたくない

盗撮で逮捕や起訴をされないようにするためには、早期に被害者と示談を成立させる等が必要となります。
逮捕された場合は身体拘束されますので、自身で被害者と示談を成立させることは容易ではありません。早期に弁護人を選任したうえで、自分の代わりとなって被害者と示談ができるような活動をしてもらうとよいでしょう。

盗撮に関する裁判例

判例 【最高裁判所第三小法廷平成20年11月10日】

事案
ショッピングセンター1階の出入口付近から女性靴売場にかけて、女性客に対してその後ろを少なくとも約5分間、40メートル余りにわたって付けねらい、背後の約1から3mの距離から、カメラ機能付き携帯電話を使用して、細身のズボンを着用したその女性客の臀部を撮影した。

最高裁判所の判断
被害者を著しくしゅう恥させ、被害者に不安を覚えさせるような卑わいな言動に当たり、迷惑防止条例違反に該当する。

解説
スカートの中など、隠れた部分を撮影する盗撮の事案が多いのですが、本件では、周囲からも見ることのできるズボンの上からの撮影が、迷惑防止条例(北海道)に規定する「著しくしゅう恥させ,又は不安を覚えさせるような」行為として罰せられるかが問題となった事案です。

本件では、撮影の対象が臀部であることや相当に執ような態様で撮影していることなど具体的な事実関係に踏み込んで罰則に該当する旨の判断をしていますから、周囲からも見ることができるズボンの撮影行為の全てが迷惑防止条例違反となるわけではありません。着衣の上から撮影した場合であっても迷惑防止条例違反として罰せられる可能性があると判断した点で注目を集めた判例です。

盗撮の事件でよくある質問

盗撮で使用したカメラには過去に盗撮したデータも入っています。そのせいで罪が重くなりますか。

常習性があるかどうかによって迷惑防止条例違反で規定する刑罰の重さが変わりますから、盗撮で使用したカメラに過去の盗撮したデータが入っていれば、常習性があるとして刑が重くなる可能性があります。

性依存症を理由に盗撮の罪が減刑されることはあるのでしょうか。

性依存症があるということだけを理由に減刑されることはありませんが、その他の精神疾患等を理由に減刑される可能性はあります。性依存症の自覚がある場合は、専門の医療機関を利用して治療を行い、自身の行動を制御できるようにしましょう。このような治療を受けていることを情状として主張していくことも考えられるところです。

海水浴場で水着の女性を盗撮したのですが罪にあたるのですか。

無許可で水着姿ばかりを執拗に撮影している場合には「公共の場所、乗物において、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑猥な言動」として迷惑行為防止条例違反に該当する可能性があります。

盗撮で実名報道されてしまう可能性はありますか。

盗撮事件が実名で報道される可能性はあります。社会的な関心が高い、事件の態様が悪質であるなど、マスメディアがとりあげて実名を用いて報道される可能性は否定できないところです。

私有地に入り、トイレの外窓から盗撮をしたのがばれてしまいました。

私有地に入った点で住居侵入罪、トイレの外窓から盗撮をした点で迷惑行為防止条例違反が成立することになります。

デリヘルでの盗撮がばれ、店から示談金を要求されました。

示談書を交わさずに示談金を支払った場合、後から示談があったことを証明することができなくなることがありますので、示談書を交わして示談をする必要があります。
仮に、示談書を店側が提示してきたとしても、示談金の額やその記載内容が妥当かどうかは即座に判断できないと思いますから、弁護士に相談して内容を確認してもらった方がよいでしょう。

使用するカメラを無音に改造して盗撮を行いました。

使用するカメラのシャッター音を無音に改造しただけで迷惑防止条例違反として罰せられるわけではありません。しかしながら、盗撮の態様が悪質であることや計画性があるなどと判断されて、相場とされる刑よりも重い判断がされる可能性があります。

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盗撮による逮捕で社会生活への影響を少なくしたいなら急いで弁護士へ!

盗撮によって逮捕された場合に、被害者と示談ができるかどうかはその後の刑事手続に大きな影響があります。逮捕や長期間の勾留によって家庭や仕事など、社会生活への影響は大きいですから、いち早く身体拘束からの解放に向けた活動が必要となります。迅速な弁護活動をしてもらえるよう、早期に弁護士に依頼されることをお勧めします。

ご家族が亡くなり、相続が発生した際に、財産を確認してみると借金の方が多いということがあります。その際に、借金を相続せずにすむ方法が相続放棄になります。

また、もともと疎遠であった親族が亡くなり、財産状況が全くわからない状況で相続するような場合には、他の親族との間で相続トラブルに巻き込まれるようなおそれがあるため、相続放棄を行いたいと考える方もいらっしゃいます。

ただ、相続放棄には「3か月」といった期間制限があります。以下では、相続放棄について詳しく解説してきます。

相続放棄の期限はいつから3ヶ月?期間の数え方

相続放棄は、民法上、「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」に行わなければならないとされています(民法915条1項)。

具体的には、被相続人が死亡したこと及び自らが相続人であることを知ったときから3か月以内に相続放棄をする必要があります。この3か月間は熟慮期間といわれています。

期限が迫っているからと、焦って手続をすると後悔する場合も…

熟慮期間は3か月なので、非常に短いです。そのため、つい焦って相続放棄を行ってしまうことがあります。しかし、亡くなられた方の生活を振り返り、借金が多いだろうと考えて相続放棄をしてみたものの、相続財産を調査した結果、借金などのマイナスの財産よりもプラスの財産の方が多かったということもあります。

相続放棄をした後にやっぱり相続放棄をなかったことにすること(「撤回」といいます。)はできないため、熟慮期間を過ぎないように注意する必要はありますが、慎重に判断する必要があります。

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理由があれば相続放棄の期限は延長可能、ただし必ず認められるわけではありません

熟慮期間は3か月とされているとしましたが、家庭裁判所に申し立てることで熟慮期間の延長をすることができる場合があります。ただし、熟慮期間の延長は必ず認められるものではなく、延長の期間もある程度制限されます。

相続財産の分量や相続財産の調査と相続放棄の判断にかかる時間等を考慮して、1か月~半年程度の延長が認められることが多いです。

相続放棄の期限を延長する方法

熟慮期間を延長するためには、家庭裁判所に相続の承認又は放棄の期間の伸長を申し立てることにより行います。

この手続は、各自の法定相続人が行うものです。一人の法定相続人が相続放棄を行うことにより、法定相続人全員に相続放棄の効果が生じるものではありません。

裁判所に相続の承認又は放棄の期間の伸長を申し立てる際には、申述人1人につき800円の収入印紙、裁判所との連絡に必要な郵便切手、戸籍謄本等が必要になります。裁判所には、申立書、被相続人の住民票除票または戸籍の附票、申述人の戸籍謄本等が必要です。

3ヶ月の期限を過ぎてしまったらどうなる?

3か月の熟慮期間が過ぎると相続の効力が生じ、プラスの財産のみならずマイナスの財産を含めてすべての相続財産を法定相続分に応じて相続することになります。

しかし、3か月の熟慮期間を過ぎたとしても相続放棄が可能な場合があります。以下では、3か月の熟慮期間が過ぎても相続放棄が認められるケースを見ていきましょう。

3ヶ月が過ぎても相続放棄が認められるケース

3か月の熟慮期間がすぎた後に相続放棄をするためには、相続放棄ができなかったことに「相当の理由」があると裁判所に認められる必要があります。具体的には、亡くなられたご家族に借金があることを知らなかったような場合です。

裁判所の判断の中には、「自己が取得すべき相続財産がなく、通常人がその存在を知っていれば当然相続放棄をしたであろう相続債務が存在しないと信じており、かつ、そのように信じたことについて相当の理由があると認められる場合には、・・・熟慮期間は、相続債務の存在を認識した時又は通常これを認識し得べき時から起算すべきものと解するのが相当である」としたものがあります。

相続放棄が認められないケース

亡くなられたご家族に借金があることを知っていたにもかかわらず、3か月の熟慮期間内に相続放棄をしなかった場合には、相続放棄は基本的に認められません。

相続放棄という手続自体を知らなかったような場合や相続放棄には3か月の熟慮期限があることを知らなかったというような場合にも相続放棄が認められないこと一般的です。

3ヶ月経過していたら弁護士にご相談ください

3か月という熟慮期間が過ぎていたとしても、上でみたように相続放棄をすることが可能な場合もあります。

熟慮期間がすぎた後に相続放棄をするためには、裁判所に相続放棄をしなかった「相当の理由」があることを説明する必要があります。具体的には、亡くなられた方とご本人の関係性、相続財産の種類やその分量なども考慮して、それを客観的に説明できる証拠に基づき説明する必要があります。

かかる説明は、専門的な知識を要するところであります。そこで、相続放棄にお困りの際には、相続問題に精通した弁護士に相談してみてください。

相続放棄の期限に関するQ&A

相続放棄の期限内に手続き完了までいかないといけないのでしょうか?

熟慮期間である3か月以内にすべての手続を行う必要はありません。熟慮期間の間に、相続放棄をすることを示す書面(申立書)を裁判所に提出する必要があります。なお、申立書を裁判所に郵送する場合には、熟慮期間である3か月以内に裁判所に到達するように郵送する必要があります。

相続後に借金が判明しました。まだ3ヶ月経っていないのですが、相続放棄可能ですか?

熟慮期間である3か月以内であれば、相続放棄をすることができます。ただ、借金といったマイナスの財産だけではなく、プラスの財産が存在する可能性もあり、総合的にみるとプラスの財産の方が多い可能性もあります。

家庭裁判所に、相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立てをしてみて、伸長された期間に相続財産の調査をしてみてはいかがでしょうか。
他方、期間の伸長をせずにいったん相続してしまうと、相続放棄することは難しくなります。

亡くなってから4か月後に借金の督促が来ました。借金を知らなかったのですが、相続放棄できないでしょうか?

たしかに、熟慮期間の3か月をすぎてしまっているため、相続放棄をできないのが原則です。しかし、被相続人の借金を知らなかったのであれば、熟慮期間である3か月以内に相続放棄できなかった「相当な理由」があると裁判所に判断された場合には、相続放棄をできる可能性もあります。

先日相続人であることが判明したのですが、知った日の証明なんてどうしたらいいんでしょうか?相続放棄したいのですが、すでに半年経過しているんです…。

どういった経緯でご自身が相続人であることが判明したかによっては証明することも可能な場合があります。具体的には、熟慮期間である3か月の経過後に督促状が届いて借金があることを知ったという場合には、当該督促状をもってご自身が相続人であることを知ったと証明することになります。

相続放棄の3ヶ月まで、残り10日ほどしかありません。消印が3ヶ月以内なら間に合うでしょうか?それともその日までに裁判所に到着していなければならないでしょうか。

申立書が裁判所に届いている必要があるため、ご心配であれば直接裁判所に申立書を提出することも検討された方が良いかと思います。熟慮期間である3か月経過前に郵送し、3か月経過後に裁判所に到達したのでは相続放棄が間に合わなかったことになってしまうので注意が必要です。

相続放棄の期限は3ヶ月と聞きましたが、第2順位の人の期限は、第1順位の人が放棄後3ヶ月で合っていますか?

第2順位の人(親など)は、第1順位の人(子など)が相続放棄等をしなければ、相続人とはなりません。そのため、第2順位の人の熟慮期間は、第1順位の人の相続放棄がなされ、その相続放棄を第2順位の人が知ってから3か月以内ということとなります。

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相続放棄の期限に関するお悩みは弁護士にご相談ください

相続放棄の期間制限は3か月とかなり短いです。その上、相続放棄をすべきかそれとも相続すべきかを判断するためには相続財産の調査をしてみなければ分からない場合もあり、その判断に迷われることもあるかと思います。

また、亡くなられた方ともともと疎遠であったような場合には、そもそも相続をしたくないと思われるような場合もあると思います。

相続放棄の熟慮期間を過ぎてしまったとき、相続放棄の熟慮期間は過ぎていないが相続財産がどのようになっているのか分からないときなど相続放棄に関連してお困りごとがおありの場合には、ぜひ一度、弁護士にご相談されることをおすすめいたします。

LINEのやり取りから浮気が発覚することは少なくありません。そこで以下では、LINEを浮気の証拠として不貞慰謝料請求をしていく場合に気をつけていただきたいことを説明いたします。

浮気・不倫で慰謝料を請求するには証拠が必要!

配偶者の浮気・不倫が強く疑われる場合でも、証拠がないと、配偶者がしらを切る限り、慰謝料請求をすることができません。そこで、言い逃れができないための証拠を収集する必要がございます。

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LINE(ライン)にトーク履歴は浮気の証拠になる?

LINEも浮気の証拠になり得ます。

浮気の証拠として有効になるやりとりとは?

浮気の証拠として有効と考えられるものは、配偶者以外の人と性的関係を持ったことがわかる証拠です。つまり、不貞相手と性行為があったことがわかるLINEのやりとりがあれば、浮気の証拠となります。

浮気の証拠がLINEのみだと慰謝料請求は難しい?

LINEのやり取りの内容によっては、不貞行為の証拠として弱い場合があります。例えば、「愛している」「好きだよ」等といったメッセージは、不貞行為を疑わせるものではありますが、それだけでは明らかに肉体関係を持っているとまでは判断されない可能性がございます。

LINE以外で浮気の証拠になるものとは?

携帯電話の通話履歴、メール、SNS、アルバム(写真・動画)、配偶者が浮気を認めた音声、ホテルに行ったことがわかる領収証、友達や知人の証言及びGPS記録等が浮気の証拠になります。

LINEを裁判で使える証拠にする方法

裁判で、「LINEに浮気の証拠がありました」と証言するだけでは、裁判官に不貞行為があったという事実認定をしてもらうことはできません。そのため、以下では、LINEを訴訟等で使える証拠にする方法をお伝えします。

LINEの画面を写真撮影する

LINEのやり取りを転送して保存することもできますが、加工・偽造と疑われないためにも、まずは、ご自身の携帯電話で証拠の画面をそのまま撮影してください。

LINE画面を撮影するときのポイント

撮影する時には、配偶者の携帯電話であることがわかるように、携帯電話全体が映るように写真に収めてください。また、不貞行為がいつどこで行われたかがわかるために日付や時間、送信者が誰であるかわかるように撮影してください。

LINEのトーク履歴をバックアップする

LINEのトーク内容に証拠がある場合には、トーク履歴の一斉送信を行うようにしてください。そうすれば、トーク履歴をコソコソ見続ける必要がなくなり、じっくりと確認することが可能となります。しかし、送信した内容が、送信済みフォルダーに残ってしまいますので、送信済みフォルダー内のデータを必ず削除することを忘れないでください。

相手を説得してLINEを見せてもらう

ただ、配偶者に内緒で携帯電話を操作することは、損害賠償請求をされる可能性があります。そこで、配偶者が任意に見せてくれるのであれば、配偶者を説得して、LINEを見せてもらうようにしましょう。

LINEで浮気の証拠を掴むときの注意点

LINEで証拠を掴むためには、配偶者の携帯電話を操作しなければなりません。そのため、操作することによるリスクについても、ご説明します。

相手のLINEを勝手に見ることは違法?

配偶者の携帯電話を操作してLINEを見ることは、プライバシー権の侵害を行ったとして、損害賠償請求される可能性がございます。

ID・パスワードを勝手に使うと不正アクセス禁止法違反

ロックをし忘れた携帯電話を勝手に覗き見ただけでは、不正アクセス禁止法違反に該当しませんが、ロックを解除するために、他人のID・パスワードを使用して他人の携帯電話に勝手にログインしたり、アプリを開いたりする行為は、不正アクセス行為に該当します。不正アクセス行為をすると、3年以下の懲役または100万円以下の罰金を課せられると規定されています。

相手が浮気を認めたら「不貞の自認書」の作成を!

素直に配偶者が浮気を認めたのであれば、犯罪者となるリスクを負ってまで、他人の携帯電話にアクセスする必要はなくなります。そのため、認めてくれたのであれば、すぐに「不貞の自認書」の作成を目指してください。

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よくある質問

浮気相手とはLINEだけの関係で、不貞行為がない場合でも慰謝料請求できますか?

離婚の原因となる配偶者の浮気を不貞行為と呼んでいます。そして、不貞行為とは、配偶者のある者が、その自由意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係を持つこと」と定義されていますので、LINEだけの関係であれば、性的関係がありませんので、慰謝料請求することはできません。

LINEの証拠をもとに、浮気相手へ慰謝料を請求することは可能ですか?

LINEの証拠をもとに、浮気相手へ慰謝料請求をすることは可能です。しかし、慰謝料請求が確実にできるために、LINEだけではなく、他の証拠(探偵報告書、配偶者と浮気相手がキスをしている写真及びホテルの領収書等)の入手もご検討ください。

浮気の証拠を掴むために、LINEのトーク履歴を開示請求できますか?

LINEのトーク履歴を相手方に開示することを求めても応じない場合、それを法的に強制することはできません。また、LINEの運営者に対して、トーク履歴の開示を請求しても、実務上、運営者が応じてくれることはないのが実情です。

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交通事故でけがをして、病院に入通院する必要があるときに、被害者以外の方が、被害者に付き添う場合があります。付き添いを行えば、仕事を休む必要があることもあれば、移動をするための交通費も発生します。そういった場合に、付添費用を請求できるのでしょうか。以下、交通事故の付添費用について解説していきます。

付添費とは

付添費とは被害者の介護・介助をする必要がある場合に、付添人を依頼するための費用のことをいいます。近親者付添費は、被害者自身の積極損害というよりも付き添った近親者の固有の損害であると指摘する学説もありますが、基本的には、被害者の損害として理解されています。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
交通事故被害者専用ダイヤル 24時間予約受付・年中無休・通話無料

付添費が認められる条件

医師からの指示、あるいは受傷の部位、程度、被害者の年齢などから付き添いが必要であれば、相当な限度で認められます。

子供に付き添う場合は条件が緩和されている

被害者が幼児・児童の場合には、症状に関わらず、付き添いの必要性が認められることがあります。これは、幼児・児童を1人で入通院させることは困難であるからです。被害者の年齢が中学生以上の幼児・児童ではない場合にも、付き添いの必要性の判断について、幼年であることが考慮されて付き添いの必要性が認められることがあります。

付添費の内訳と相場

以下、入院付添費と通院付き添い費にわけて、付添費としてどの程度の金額が認められるのか、解説します。

入院付添費

入院付添費のうち職業付添人のための支出が被害者本人の損害であることは問題にはなりませんが、近親者付添費についてはこれを近親者本人固有の損害であると指摘する学説もあり、その性質が問題になります。近親者付添費をどのように理論構成するかは近親者の付き添いにつき休損相当額をどのように理解するのかということに影響がでてきます。

入院付添費の相場

自賠責基準の場合、入院付添費は1日につき4200円とされています。
弁護士基準の場合、入院付添費は1日につき6500円程度とされています。

通院付添費

通院付添費とは、通院期間中に近親者等が付き添った場合に支払われる費用のことをいいます。
幼児等、通院を一人で行うことが困難な場合には、これが、認められることになるでしょう。また、事故により歩行が不可能になるなど、付き添いがなければ通院できない場合にも認められることになります。

通院付添費の相場

自賠責基準の場合、通院付添費は1日につき2100円とされています。
弁護士基準の場合、通院付添費は1日につき3300円程度とされています。

自宅付添費

自宅付添費とは、被害者が自宅での療養期間中に近親者等が付き添った場合に支払われる費用のことをいいます。
自宅付添費の対象となるのは、症状固定までの期間で、症状固定後の期間は対象外となります。症状固定後は、将来介護費として支払われるかが問題になります。

自宅付添費の相場

自賠責基準の場合、自宅付添費は1日につき2100円とされています。
弁護士基準の場合、自宅付添費は事案によって大きく異なります。どの程度の介護が必要であったかという事情によって、認められる金額が異なります。

将来介護費

症状固定後、将来にわたって介護が必要な場合に支払われることになるものです。被害者に重度の後遺障害が残ってしまった場合に認められることがあります。
遷延性意識障害、失調麻痺、高次脳機能障害、脊髄損傷等によって、後遺障害等級別表第1の1級1号または2級1号と認定されれば、認められることが多いといえます。
別表第2の3級以下の等級であっても、被害者の状況によっては認められることがあります。

将来介護費の相場

将来介護費は基本的には以下の計算式で求められます
将来介護費=介護費日額×365日×症状固定時の平均余命に対応するライプニッツ係数
介護費日額について、近親者等が付き添う場合には、日額8000円程度とされることが多いです。ただし、被害者の症状及び必要とされる介護によって金額が増減します。職業付添人の場合には、実費相当額とされ、日額1~2万円が認められる可能性があります。

通学付添費

通学付添費は、被害者が児童の場合に、その通学に近親者等が付き添った場合にその支払いが認められることがあります。
例えば、脚を怪我して、一人では通学することが困難である場合には、これが認められることがあります。

通学付添費の相場

通学付添費には、明確な相場というものがなく、事案ごとに相当な範囲で認められることになります。

仕事を休んで付き添いをした場合は付添看護費と休業損害と比較する

付き添いのために休業した場合には、付添看護費と休業損害を比較して、いずれか高い金額が損害として認められることがあります。そのため、このような場合には、付添看護費と休業損害のいずれか高い方の金額を請求していくことになるでしょう。ただし、休業損害が職業付添人に依頼する費用よりも高額になる場合には、職業付添人の費用分までしか損害が認められないおそれがあります。

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プロに付き添ってもらった場合の付添費は実費精算

職業付添人に付き添いを依頼した場合には、基本的には、実費を請求することになります。
これに必要性と相当性がある場合には、実費が損害として認められることになります。

交通事故の付き添いに関するQ&A

子供が通院を嫌がり暴れたため、夫婦で仕事を休んで付き添いました。付添費は二人分請求できますか?

原則として、付添費として認められるのは一人分です。そのため、基本的には、二人分の請求が認められることは難しいといえます。

子供の付添看護料は12歳以下しか支払われないと聞きましたが本当ですか?

自賠責保険の基準では、原則として12歳以下の子供に近親者が付き添った場合に支払うとされております。
しかし、症状医師の指示等により、13歳以上であっても、付き添いの必要性が認められることがあります。

姉に子供の通院付き添いをお願いしました。通院付添費は支払われますか?

付き添いを行った者が、被害者にとって近親者であれば、通院付添費が支払われることがあります。したがって、ご質問のような場合、通学付添費が支払われる可能性があるといえます。

両親が入院している病院まで来てくれました。駆けつけ費用は請求できますか?

被害者の症状によっては、駆けつけ費用が損害として認められることがあります。

交通事故の付き添いに関して、お困りでしたら弁護士にご相談ください

付添監護費を請求するべきか、請求したとしてどのぐらいの金額が認められるのかということについて、ご自身で判断いただくのは難しいと思います。是非弁護士に相談されることをおすすめします。

在宅事件と身柄事件の違い

在宅事件と身柄事件の違いは身体拘束があるか否かです。
在宅事件であっても、後に逮捕されてしまうことはあり得ます。

在宅事件となる条件

犯罪の嫌疑があったとしても、そのすべての事件において逮捕・勾留がされるわけではありません。
逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれが小さい等の事情がある場合には、身体拘束がされずに在宅事件となることがあります。

在宅事件となるケース(具体例)

例えば、痴漢をしたが、被疑者と被害者に面識がなく、被疑者の社会的地位が高いような場合には、逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれが小さいことから、在宅事件となることがあるでしょう。

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在宅事件と起訴(略式起訴)

在宅事件では逮捕がされないことから前科がつかないのかと疑問に思われるかもしれませんが、在宅事件であっても起訴されることは珍しくありません。
したがって、逮捕がされないからといって前科がつかないとは言えません。
検察官のする起訴処分には、公判請求と略式請求があり、在宅事件であっても、起訴処分がされることはあります。

在宅事件の起訴率は?

在宅事件のうちどの程度の割合の事件が起訴されたのかということはわかりませんが、在宅事件が身柄事件に比して、軽微な事件であることが多いため、身柄事件に比して起訴されるおそれは小さいです。

在宅事件で実刑となることはあるの?

前述のとおり、在宅事件は、軽微な事件であることが多いので、身柄事件に比して実刑となるおそれは小さいです。
しかし、在宅事件であっても、行為内容や前科の有無、示談の有無によっては、起訴され、実刑となることは十分に考えられます。

在宅事件の流れ

在宅事件の場合は、立件された後も、身柄拘束がありませんから従前と同様の生活を送りながら警察官の捜査を受けることになります。警察官の捜査が終了すると、検察官に捜査書類が送致され、検察官が起訴するか否かを決めます。

検察から呼び出しがかかることがあります

書類送検とは?

書類送検とは、被疑者のうち、身体拘束されていない者の捜査書類等を検察官に送ることの通称です。法律用語ではなく、マスメディアが慣習的に用いています。
警察官が犯罪の捜査をしたときには、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなればなりません(刑訴法246条)
在宅事件の場合、被疑者が逮捕されていないので、捜査書類だけが検察官に送ることになります。このことから、警察官による書類、証拠物、事件の検察官に対する送致のうち、身柄拘束されていない被疑者について行われるものが書類送検と呼ばれています。

どのように検察から呼び出しがかかるの?

検察官に送致された後、電話等による方法で呼び出しの連絡が来ることがあります。
軽微な事件で、犯行を認めている場合には、検察官の取り調べは1、2回程度で終了することが多いです。

在宅事件のメリットは普通の生活ができること

前述のとおり、在宅事件の場合には身柄拘束がされません。
このことから従前と同様の生活を送りながら捜査を受けることになります。
身柄事件と比較すると、生活に大きな影響がないことが在宅事件のメリットであるといえます。

在宅事件のデメリットは長期化する可能性があること

身柄事件の場合には、事件終結までの時間的制約がありますが、在宅事件の場合にはこれが公訴時効しかないため、事件が長期化する傾向があります。
このことが在宅事件のデメリットであるといえます。

公訴時効まで捜査が続く可能性も

公訴時効とは、犯罪が行われたとしても、法律の定める期間が経過すれば、犯人を処罰することができなくなる定めのことをいいます。
比較的在宅事件となりやすい犯罪の公訴時効は以下のとおりです。

公訴時効1年 侮辱罪、軽犯罪法違反など、拘留または科料にあたるもの
公訴時効3年 暴行罪、名誉棄損罪、過失傷害罪、威力業務妨害、器物損壊罪など、人は死亡させていないが、長期5年未満の懲役または禁錮、罰金刑にあたるもの

在宅捜査中にできること

在宅事件のメリットでも述べましたが、在宅事件の場合には、身柄拘束がされていないので、基本的には普段通りの生活を送ることができます。
また、身柄事件に比べて時間的に余裕をもって示談交渉を行うこともできます。

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在宅捜査中に注意すること

身体拘束がされていないことから基本的には普段通りの生活を送ることができますが、捜査の展開によっては、後に身柄拘束がされることがあります。以下の点には注意が必要です。

検察の呼び出しにはきちんと応じましょう

察官の呼び出しは、任意の出頭を求めるものに過ぎないことから、これに従って呼び出しに応じる義務はありません。しかし呼び出しにはきちんと応じたほうがいいでしょう。
これは、任意出頭に応じないことを繰り返した場合には、逮捕状が請求され、身柄事件に切り替えられる可能性があるからです。身柄拘束がされてしまえば、日常生活に大きな影響が出ることは必至ですから、これを避けるためには、検察の呼び出しには応じたほうがいいでしょう。

在宅捜査中の行動に気を付けましょう

在宅捜査中に証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断されれば、この場合にも身柄事件に切り替えられる可能性があります。したがって、証拠隠滅や逃亡のおそれがあるとみられるような行動はさけるべきでしょう。例えば被害者との過度な接触や警察又は検察からの呼び出しに応じないということは避けるべきです。

在宅事件でも逮捕される可能性があります

これまで述べてきたとおり、在宅事件であっても、逃亡または罪証隠滅のおそれがあると判断されれば、逮捕されることもあります。

在宅事件は弁護士に相談を

在宅事件であっても、捜査の途中で身柄拘束がされることもありますし、前科がついてしまうこともあります。
不起訴処分等、有利な結果を得るためにも、弁護士に相談されることをおすすめします。

業務上横領罪
10年以下の懲役(刑法第253条)

会社のお金を使い込んでしまった――そのようなケースで問題となるのが、業務上横領罪です。本コラムでは、業務上横領罪と同じく会社と従業員との間で問題となることがある背任罪との違いや、業務上横領罪の量刑などについて触れながら、業務上横領罪について解説をしています。
業務上横領罪について知りたい方は、ぜひ本コラムをご覧ください。

業務上横領罪とは?

業務上横領罪については、刑法第253条で「業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。」と規定されています。つまり、仕事として(「業務上」)、他人から管理を任されている物(「自己の占有する他人の物」)を、自分の所有物であるかのように使用してしまう行為(「横領」)が、業務上横領罪です。

横領罪の種類

刑法では「横領」とつく犯罪として、(単純)横領罪、業務上横領罪、遺失物等横領罪の3つが規定されています。単純横領罪について詳しく知りたい方は、こちらのページをご覧ください。

横領罪の初犯は執行猶予がつく?
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背任罪と業務上横領罪のちがい

業務上横領罪と同時に問題になることが多い犯罪として、背任罪(刑法第247条)があります。
業務上横領罪と背任罪は、任務に反して会社等に損害を与える点では共通しています。背任罪ではなく業務上横領罪が成立するのは、加害者の行為によって主に「物を得る(領得する)」場合です。また、会社のお金を第三者に貸し付ける場合で、自身の名義を利用する場合にも業務上横領罪が問題となります。

背任罪となる例

会社の情報を流出させたような場合、加害者は物を得ているわけではないため、背任罪が成立します。同じように、会社の名義で、会社のお金を不正に貸し付けた場合や、会社の物を不当に低額で売ったような場合には、背任罪が成立します。

窃盗罪と業務上横領罪のちがい

物を得るという点で業務上横領罪と共通するのが、窃盗罪(刑法第235条)です。
業務上横領罪と窃盗罪とのちがいは、物の占有が自身にあるのか、第三者にあるのかという点です。そのため、例えば会社のお金や備品を勝手に使ってしまったような場合、そのお金や備品について元々会社から管理を任されていた場合は業務上横領罪となり、管理する権限を与えられていなかった場合は窃盗罪となります。

窃盗罪となる例

業務上横領罪と似ているものの窃盗罪が成立する例として、経理を担当していない従業員が会社のお金を着服する場合、商品を管理する権限を持っていない従業員が店舗の商品を無断で持ち帰る場合、使用が許されていない従業員が社用車を私用で利用する場合があります。

業務上横領罪の刑の重さ

業務上横領の法定刑は、10年以下の懲役です(刑法第253条)。単純横領罪(刑法第252条第1項)の法定刑が5年以下の懲役と規定されているのと比べると、仕事として(「業務上」)物の管理を任されているという関係がある分だけ、重い刑になっています。

業務上横領の時効

業務上横領罪の公訴時効は7年です(刑事訴訟法第250条第2項第4号)。もっとも、公訴時効は、刑事事件として起訴をするための期限です。そのため、公訴時効の経過期間後であっても、民事事件として、被害者から損害賠償請求を受ける可能性はあります。民事事件としての時効は、被害者が業務上横領による損害と加害者を知った時から3年か、業務上横領がされてから20年です。

業務上横領罪の裁判例

業務上横領罪が成立した裁判例として、次のようなものがあります。

  • 協議会の会計、口座管理業務を任せられていた者が、協議会の口座から自身の口座に150万円を送金した事件(懲役2年、執行猶予4年)※鹿児島地方裁判所 令和元年(わ)第77号 業務上横領被告事件 令和元年10月8日
  • 農協の税金等受取の収納業務に従事していた者が、税金として収納して保管していた現金51万400円を農協に納入せず、手元に残して着服した事件(懲役1年6月、執行猶予3年)※津地方裁判所 令和元年(わ)第165号 業務上横領被告事件 令和元年7月22日
  • 証券会社の取締役・部長として会社の預金口座の管理等の経理業務全般を統括していた者が、61回にわたり現金合計約1億6000万円を払い戻して受け取るなどして着服した事件(懲役5年)※松山地方裁判所 平成31年(わ)第15号、平成31年(わ)第36号、平成31年(わ)第82号、平成31年(わ)第102号、令和元年(わ)第127号 業務上横領被告事件 令和元年7月11日

これも業務上横領?ケース別事例

業務上横領と聞いてまず思い浮かぶのは、会社のお金を勝手に使い込んでしまったというケースではないでしょうか。しかし、業務上横領に該当するのは、そのようなケースに限られません。次のような行為は、被害が軽微で悪質ではないとして刑事事件化しないこともありますが、法律上は業務上横領に該当する可能性があります。

空出張で出張費を着服した

空出張とは、実際には出張して仕事をしていないにもかかわらず、私用の旅行にあたっての交通費や宿泊費を出張費として受け取る行為のことをいいます。
会社から経理を任されていたり、経費に充てるお金を渡されていたりするような場合、空出張で出張費を着服すると、業務上横領罪となります。他方で、お金を管理しているわけではない場合は、会社を騙して経費を受け取ることになりますから、詐欺罪となります。

交際費を着服した

会社から経理を任されていたり、交際費に充てるお金を渡されていたりするような場合、取引先の方などの接待がないにもかかわらず、交際費として計上したときは業務上横領罪となります。お金を管理しているわけではない場合に詐欺罪となる点は、空出張と同様です。

領収書を偽造した

領収証を偽造して会社に提出した場合には、業務上横領罪ではなく私文書偽造・行使罪が問題となります。また、領収証の提出によって経費としてお金を受け取ろうとしたのであれば、詐欺罪となります。

交通費を着服した

交通費を着服した場合、あらかじめ会社から預かっているお金であれば業務上横領罪となります。会社を騙して経費を受け取った場合には、詐欺罪となります。

備品を自分のものにした

会社の備品を勝手に自分のものにした場合、個人に支給・貸与されて管理している備品であれば、業務上横領罪となります。自身で管理していない備品であれば、窃盗罪となります。

会社のカードのポイントを私用で使う

会社から支給されているクレジットカードに貯まったポイントを私用で使った場合、業務上横領罪が成立する可能性はありますが、裁判での先例がないため、実際に成立するかについては確定的ではありません。もっとも、業務上横領罪が成立する可能性が否定できない以上、避けておいた方が望ましいでしょう。

会社のマイルを私用で使ったり、自分のカードにマイルを貯める

会社のマイルを私用で使ったり、自分のカードにマイルを貯める行為については、会社の就業規則で禁止されている場合には、業務上横領罪が成立する可能性があります。
一方で、各航空会社では、マイルは法人ではなく搭乗した個人に付与する扱いとしていることや、会社に損害を生じさせるわけではないことから、就業規則で禁止されていない場合は業務上横領罪が成立する可能性は低いです。

業務上横領は必ず逮捕される?

業務上横領をした場合でも、必ず逮捕されるわけではありません。警察が捜査し、加害者を逮捕するためには、前提として刑事事件として事件化される必要があります。業務上横領罪に該当する行為は多岐に及びますから、被害額が少なかったり、被害弁償したりした場合には、事件化されないケースもあります。

被害者から被害申告(告訴)により事件化するケースが多い

警察が業務上横領を事件化するためには、警察の方で業務上横領に該当する行為を把握するきっかけが必要です。そのようなきっかけとして最も多いのが、被害者から被害申告があるケースです。

被害者以外の第三者の通報によって事件化することもありますが、業務上横領罪の場合には被害者と加害者との間に会社と従業員といった一定の関係性が背景にありますから、被害者からの被害申告がなければ捜査は積極的にはされないことが多いです。

横領した会社のお金を返済したら逮捕されない?

横領した会社のお金を返済したとしても必ずしも逮捕されないわけではありません。
被害弁償がされても、被害額の大小や横領の方法次第では、警察において逮捕が必要であると判断して逮捕されるような場合もあります。
一方で、裁判所が、最終的に量刑を決定する際には、被害弁償が行われているかは重要なポイントとなります。そのため、被害弁償については、弁護士と相談しながら可能な限り行うことが望ましいです。

逮捕されてからの流れ

逮捕後の状況や、弁護士への依頼のタイミングなど、逮捕されてからの流れについてはこちらのページで解説しています。逮捕されてからの流れを知りたい方は、こちらのページをご確認ください。

逮捕された時の流れ

業務上横領に執行猶予はつく?

言い渡される刑が3年以下の懲役の場合には、執行猶予(刑法第25条)がつけられる場合があります。
業務上横領も法律上は3年以下の懲役となり得るので、執行猶予がつく可能性はあります。
実際に執行猶予がつくかは、犯行の悪質性、被害金額、被害弁償や示談の有無、前科の有無などを踏まえて判断されることになります。

500万円以上なら実刑?横領した額は刑の重さに影響あるの?

業務上横領罪の場合、横領した額は被害の大きさを示す事情なので、刑の重さを決める重要な要素となります。被害金額が大きければ、それだけ実刑となったり刑が重くなったりする可能性は高まります。
他方で、執行猶予がつくかは、犯行の悪質性、被害金額、被害弁償や示談の有無、前科の有無などを踏まえて判断されます。そのため、被害金額が大きい場合でも、被害弁償の有無や金額、横領に及んだ事情次第では、執行猶予がつく可能性はあります。

横領した額が少額の場合

横領した額が10万円など比較的少額な場合、被害額が大きい場合と比較して、刑が軽くなる方向に考慮されることになります。
他方で、犯行が悪質であったり、同種前科があったりする場合には、少額であったとしても実刑になる可能性もあります。被害金額の大小は、刑の重さを決める重要な要素となりますが、被害金額の大小だけで刑の重さが決まるわけではありません。

その他の量刑に影響を与える要素

これまでに触れたもののほかに刑の重さに影響を与える可能性がある要素として、次のようなものが挙げられます。

横領行為をした動機

横領行為をした動機が遊興費目的であるような場合は、身勝手な動機で横領に及んだものとして、刑を重くする方向に働きます。
一方で、病気の家族の治療費の確保など、動機に同情の余地がある場合には、刑を軽くする方向で考慮される可能性があります。

社会的影響

会社の財産を横領した場合、直接の被害者である会社にとどまらず、取引先や債権者、株主などの第三者にまで横領の影響が及ぶことがあります。そのような場合には、会社の内外に与えた社会的影響が大きいとして、刑を重くする方向に働くことがあります。

被害者との示談は成立しているか

被害者との示談が成立していたり、被害弁償がなされていたりする場合には、被害者が加害者を許していたり、被害者の被害が回復していたりするものとして、刑を軽くする方向に働くことになります。また、示談や被害弁償は、加害者の反省を客観的に示すものでもあります。

親族間でも業務上横領は成立するの?

親族間であっても業務上横領罪は成立します。例えば、親族経営の会社において経理を任されている者が、経費等を着服したような場合にも業務上横領罪となります。

一方で、一定の親族(配偶者、直系血族、同居の親族)との間での業務上横領の場合には、業務上横領罪自体は成立するものの、刑罰は免除されます(刑法第255条、第244条第2項)。また、その他の親族との間での業務上横領罪の場合は親告罪となり、被害者の告訴がなければ起訴されなくなります。
もっとも、後見事務での横領は、後見事務の公的性質から刑罰が免除されないと判断されています(最高裁平成20年2月18日決定)。

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業務上横領は弁護士による弁護活動が必要です

業務上横領の場合、事件化を防いだり、不起訴を得たりする上で、早期の示談や被害弁償が重要となります。
また、示談交渉や警察への対応について、適切な行動を選択し続けることは容易ではありません。会社とのことだから自身で解決できると考えたために、かえって示談や被害弁償が難航してしまうケースもあります。
弁護士であれば、ご本人で進めていただくよりも適切かつ迅速に、示談や被害弁償に向けた交渉を進めることができます。
業務上横領が問題となった際には、まずは一度弁護士にご相談ください。

「遺言書を書いておけば相続人間で揉めることはない」とお考えの方も多くいらっしゃるかもしれません。
しかし、実際に書かれた遺言書の内容が、各相続人間の相続分について大きく差がつけられているような場合、紛争に発展することも少なくありません。

このような場合、いかなる事情があってもその遺言書の内容に従わなければならないのでしょうか。
本記事では、遺言の効力や、遺言書に関して納得できないことがある場合における対処法等について解説していきます。

遺言書は絶対?納得いかない遺言書でも従わなければいけないの?

遺言書と聞くと、相続人が残した最終的な意思表示ということもあり、どこかとてつもなく強い効力があるように思われます。

確かに、被相続人の意思を尊重するために、(有効な)遺言書がある場合、これに従って相続を行うのが原則ではあります。
しかし、次のような要件を満たす場合には、必ずしも遺言書どおりに相続をしなくてもよい、とされています。

相続人全員の合意が得られれば従わなくて良い

まず、相続人全員の合意(遺言執行者がいる場合は、その者の同意も必要です。)が得られた場合には、必ずしも遺言書に従う必要は無く、遺言書とは異なる遺産分割をすることは可能です。これは、遺言書の種類が自筆証書遺言でも、公正証書遺言でも変わりません。

協議が成立した場合には、合意した証拠を残すため、「遺産分割協議書」を作成することをお勧めします。
もっとも、遺言書とは別の取り決めを相続人間でするということは、相続人のうち誰かの取り分を減らし、他の相続人の取り分を増やすことがほとんどである以上、このようなケースは珍しいといえるでしょう。

合意が得られなくても、遺留分を請求できる場合がある

次に、遺言書の内容が、ある相続人の遺留分(相続人に最低限補償された遺産の取り分のことです。)を侵害するような場合、遺留分を侵害された相続人は、遺留分を侵害した者に対して、侵害された限度で、金銭の支払いを請求することができます。これを「遺留分侵害額請求権」といいます。

この場合、遺言書の内容と異なった遺産分割がなされたことになります。
ここで注意が必要なのは、あくまでの請求ができるのは、金銭の支払いのみであって、不動産の取得などは求めることができません。

そもそも無効の遺言書であれば従わなくてよい

最後に、遺言書が無効な場合です。遺言書はそれがもたらす効力が強いため、作成用件が細かく定められています。

よくある事例としては、署名と押印が無い場合、遺言能力(遺言書の内容や効力を理解する能力)がない場合等が挙げられます。

この場合、そもそも遺言書が無効なわけですから、各相続人は、無効な遺言書の内容に拘束されません。相続人間で、任意に遺言書の内容を踏まえつつ遺産を分割することもできますし、協議の結果、遺言書とは異なった内容の相続をすることもできます。

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遺言書の無効を主張したい場合は?

遺言書の形式面等に納得がいかず、遺言書の無効を主張したい場合には、まず、相続人間で、遺言書が無効であることについて合意をすることが必要となります。

相続人全員の合意が得られない場合には、調停(裁判所内でのお話し合い)の申立や訴訟の提起を検討する必要があります。
もっとも、調停や訴訟はあくまでも遺言書の有効性を決定する手続きであるため、遺言書が無効であると判断された場合には、別途、相続人間で遺産分割協議を実施する必要があります。

納得いかない遺言書であっても偽造や破棄は違法に

「遺言書の内容に納得がいかない」、「遺言書は無効だ」ということで、勝手に遺言書を偽造、変造、破棄、隠匿等すると、当該相続人は相続人としての資格を失うことになります。このことを「相続欠格」といいます。相続欠格となった場合、当該相続人は遺留分すら請求できなくなります。
そのため、仮に、遺言書について納得がいかないことがあるとしても、きちんと法的手続きを踏む必要があります。

遺言書に納得いかない場合のQ&A

私は遺言書のとおりに分割したいのですが、納得いかないと言われてしまいました。話し合いが平行線なのですが、どうしたらいいでしょうか?

仮に、遺言書の内容に納得がいかないと言われたとしても、遺言書自体が有効で、かつ遺言執行者が選任されれば(遺言執行者の指定がない場合には、遺言執行者の選任の申立が必要です。)、遺言書に基づいて遺産を分割することができます。
また、どうしても話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てるということができます。調停内では、遺言の有効性を主張し、遺言書の内容どおりの遺産分割をするとの合意ができるように調停委員を介して協議することになります。
よって、ある相続人において遺言書の内容に納得がいかないという事態が発生したとしても、遺産分割が全くできないということはありません。
もっとも、当該相続人の遺留分を侵害しているような場合には、遺留分の侵害額相当分の金銭を支払う必要があるのは前述のとおりです。

愛人一人に相続させると書かれていました。相続人全員が反対しているので、当人に知らせず遺産を分けようと思いますが問題ないですよね?

相続人以外の者を受遺者として指定されている場合、仮に、相続人全員が同意していたとしても、当該受遺者に何も知らせず、遺言書の内容と異なる遺産分割をすることは認められません。このように無断で遺産分割を行った場合、事後的に当該受遺者から遺産分割の有効性を争われる可能性が残ってしまいます。
そのため、本件のような場合で遺言書と異なる遺産分割を行う際には、相続人だけでなく、当該受遺者(質問上の愛人)も含めて、全員で合意をする必要があります。

遺言書に納得がいかないのですが、遺留分程度の金額が指定されている場合はあきらめるしかないのでしょうか。兄は多めにもらえるため、このままでいいじゃないかと言っています。

この場合、遺留分侵害額請求をしたとしても、請求の労力が多大であるにもかかわらず、取得できる遺留分が大幅に増加することは期待できません。
ただ、それであきらめるのではなく、例えば、被相続人の生前の介護を献身的に行っていたとして、自身の寄与分を主張する、他の相続人が被相続人から生前贈与を受けていることを主張する、遺言書の無効を主張する等の余地は残されています。

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遺言書に関して納得いかないことがある場合、弁護士への相談で解決できる可能性があります!まずはご相談ください

遺言書の内容に納得がいかない場合であっても、遺留分を請求したり、遺言書の有効性を争ったり、ある相続人の特別受益を主張したり等、取りうる手段は様々あるため、諦める必要はありません。

もっとも、これらの主張は他の相続人に大きな影響を与えることになりますから、その相手となる相続人に適切な主張を行う必要があります。
そのため、遺言書の内容に納得がいかないとお考えの際には、一度弁護士にご相談することをお勧めいたします。

この点、弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所では遺言書に限らず、多くの相続事件を取り扱っており、解決実績も多数ございます。
まずは、お気軽にお問い合わせください。

離婚の際、相手に慰謝料を支払ってほしいと考えることがあると思います。慰謝料を請求するとはいっても、そもそも慰謝料とは何か?どのような場合に慰謝料を支払ってもらえるのか?慰謝料を支払ってもらえる場合、いくらが妥当なのか?など様々な疑問があると思います。そこで、以下、離婚慰謝料について詳しく解説したいと思います。

離婚慰謝料とは?

離婚する際に生じる精神的な苦痛を金銭的に評価したものが離婚慰謝料です。離婚慰謝料には、「離婚自体慰謝料」と「離婚原因慰謝料」とがあります。
「離婚自体慰謝料」とは、離婚することそれ自体から生じる精神的苦痛を金銭的に評価したものです。
「離婚原因慰謝料」とは、不貞行為や暴力など離婚にいたる原因から生じる精神的苦痛を金銭的に評価したものです。

離婚慰謝料を請求する際には、上記の2つを明確に区別することなく、慰謝料の金額を決めることが多いです。

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離婚慰謝料を請求できるケース

では、具体的にどのような場合に離婚慰謝料を請求できるのでしょうか、代表的なケースを見ていきましょう。

不貞行為

不貞行為とは、婚姻関係にある者が配偶者以外の物との間で肉体関係を持つことをいいます。
不貞行為は、その当事者にしか不貞行為があったか否かが分からないため、訴訟で不貞行為に基づく離婚慰謝料を請求する場合には、夫又は妻が、不貞相手とラブホテルから出てくる場面や不貞相手の自宅から出てくる場面を撮影した写真などから不貞行為があったことを証明したりもします。

DV・モラハラ

DVとは、ドメスティック・バイオレンスを略したものであり、家庭内における身体的な暴力を意味します。モラハラとは、モラルハラスメントを略したものであり、言葉や態度などによる精神的な嫌がらせを意味します。

DVやモラハラには、夫婦間だけではなく、夫または妻から子どもに対するものや姑によるものを夫または妻が黙認しているようなケースもあります。

悪意の遺棄

婚姻している夫婦間には、お互いに同居義務、協力義務、扶養義務といった義務が民法で定められています。正当な理由がないにもかかわらず、これらの義務に反するような場合に悪意の遺棄とされます。

ただし、単に別居する、協力しないといっただけでは、悪意の遺棄が裁判上認められるわけではありません。悪意の遺棄と裁判上認められるにはハードルが高いと言われています。

浪費やギャンブルによる借金

相手が浪費やギャンブルにより借金を作ったような場合には、離婚慰謝料が認められるケースもあります。単に借金を作っただけでは離婚慰謝料は認められません。例えば、夫婦の住居として住宅ローンを組んだ場合や生活に必要な会社経営などにより借金を作った場合には、離婚慰謝料が認められることはまずありません。

セックスレス

1か月以上パートナーとの間に何らの性愛的なスキンシップがないような場合にセックスレスと評価されることがあります。若く健康的な夫婦であれば、何らかの性愛的なスキンシップがあることが一般的であり、そのようなスキンシップを何らの理由なく一方的に拒否しているような場合には離婚慰謝料が認められることもあります。ただ、セックスレスについては、相手も理由や反論があることが多く、容易には離婚慰謝料が認められないことも多いです。

離婚慰謝料を請求できないケース

性格の不一致のような場合には、離婚慰謝料が認められないことも多いです。人はそれぞれ性格が異なり、性格が全く一緒といった方が珍しいといえます。

ただ、当事者がただの性格の不一致と考えていたことも、弁護士の目線からみると離婚慰謝料を請求できるようなケースもあります。離婚慰謝料を請求できるのだろうかと悩んでしまった場合には、弁護士に相談してみることをおすすめします。

離婚慰謝料の請求でのポイントは「不法行為の証拠」

ここまで、離婚慰謝料が認められる代表的なケースを見てきましたが、離婚慰謝料を裁判所で認めてもらうためには、何よりも証拠が必要です。例えば、DVにより怪我をしたような場合にはその診断書や不貞行為の場合には不貞相手との肉体関係を想起させるLINEのメッセージなどです。
夫婦の主観的ではない客観的な証拠を残しておくことが何よりも重要です。

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離婚慰謝料の相場

離婚慰謝料は、裁判所だと数十万円から300万円程度で、100万円から200万円程度が多いといえます。裁判所で判断する場合には上記の相場になることが多いですが、当事者間の交渉ではその額に特に決まりはないので、お互いに納得できるのであればその額は基本的に自由です。

離婚慰謝料の増額・減額に影響する要因

離婚慰謝料は、夫婦の一方が他方に対して与えた精神的な苦痛を金銭的に評価したものですから、精神的な苦痛を増減させるものが離婚慰謝料の金額を増減させます。
例えば、婚姻期間や子供の有無・人数、不法行為の期間・回数・程度、反省や謝罪の有無などが離婚慰謝料の額を増減させる事情として挙げられます。

離婚慰謝料の請求の流れ

離婚慰謝料を裁判で請求する場合には、上記したように必ずしも高額になるものではありません。また、証拠により請求が認められるか否かが決まるため、まずは交渉により慰謝料請求をすることが多いです。

交渉で話がまとまらないような場合には、調停や裁判などで争うこともあります。交渉の仕方が分からない、交渉が難航して調停や訴訟に移行する可能性があるような場合には、弁護士の一度相談してみるとよいでしょう。

離婚慰謝料に関するQ&A

離婚慰謝料の貰い方(受け取り方)は?

相手が離婚慰謝料を支払うと口頭で言ったとしても、口約束だけでは「言った、言わない」などといった争いになる可能性があります。そこで、離婚協議書などの書面に残しておく方が望ましいといえます。
離婚協議書などを夫婦間で作成しておくと、後々に紛争を生じさせる可能性を減らすことができます。

離婚後でも慰謝料請求できますか?できる場合、いつまで可能ですか?

離婚慰謝料の請求は、原則として離婚が成立した日から3年間で時効にかかります。そのため、離婚の原因になる不貞行為が、5年以上前にあったとしても、離婚が成立した日から3年以内であれば、離婚慰謝料を請求することは可能です。ただ、不貞相手に対する不貞慰謝料を請求する場合には、不貞行為があったことと不貞相手の氏名などを知ったときから3年以内に不貞慰謝料を請求する必要があります。

離婚慰謝料には税金はかかりますか?

離婚慰謝料は、基本的に税金がかかりません。慰謝料は、精神的に被った苦痛を金銭により埋め合わせをするものですから、慰謝料を受け取る人に利益が生じていません。
ただ、慰謝料として金銭の代わりに不動産等を受け取る場合には、税金がかかる可能性があるため注意が必要です。

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離婚慰謝料についてわからないことがあれば弁護士に相談してみましょう

離婚慰謝料は、テレビのワイドショーなどでよく取り上げられることからなじみがあり、離婚の際に必ず認められるかのように考えてしまうかもしれません。ただ、離婚慰謝料が認められるためには、相手方の合意を得たり、客観的な証拠を集めたりする必要があり、それなりにハードルは高いといえます。離婚慰謝料を請求したい場合や離婚慰謝料を請求された場合など、離婚慰謝料に悩みや不安が生じたときには、ぜひご相談ください。

交通事故の相手方が無保険だった場合に、被害者の方が、正当な損害賠償を受けるために知っておいていただきたいことを以下でご説明します。

交通事故における無保険とはどういう状態?

交通事故に備える保険には、自動車損害賠償保険(以下、自賠責保険)と自動車保険(以下、任意保険)があります。交通事故における無保険とは、自賠責保険のみに加入し任意保険に未加入であるケースと、どちらの保険にも未加入であるケースの両方の意味があります。

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交通事故の相手が無保険の時のリスクと問題

交通事故の相手が無保険である場合には、生じた損害について、きちんと賠償を受けられないリスクがあります。交通事故による慰謝料などの損害賠償金は、通常は、加害者の加入する保険会社から被害者に対して支払われますが、例えば、加害者が任意保険未加入の場合には、加害者の自賠責保険から支払われる分を超えた部分は、加害者に直接請求する必要があったり、相手方との連絡がつかないため交渉ができないといった問題が生じたりする可能性がございます。

加害者と直接交渉しなければならない

加害者が任意保険と自賠責保険の両方に加入していないケースでは、保険会社から損害賠償金を受け取ることができないことから、被害者の方が、直接加害者本人と交渉しなければなりません。仮に、自賠責保険のみに加入していた場合であっても、自賠責保険の補償内容が、傷害で120万円までという上限があるため、超えた部分については補償されないことから、その部分については、加害者本人との交渉が必要です。

物損の補償をしてもらえない

自賠責保険は、対人賠償を補償するものであることから、任意保険に未加入である加害者との交通事故では、対物賠償(車や物への補償)をしてもらうことができません。

音信不通になる

加害者と直接示談交渉をするため、加害者と交渉途中で連絡がつかなくなったり、返事が来なくなったりといった音信不通となるリスクがあります。交通事故の加害者といっても、真摯な対応をしてくれる人だけではありません。示談金を支払うことを避けようとして、音信不通となる人もいます。

踏み倒される可能性がある

加害者全ての方が、任意に示談金の額を支払ってくれる人ばかりとは限りません。無保険者の場合、保険金を支払う余裕がないので無保険であることが容易に想像できますので、十分な資力がないため、踏み倒される可能性が、賠償金全額を回収するまで残ります。

無保険の加害者に請求する方法

交通事故の加害者が無保険であった場合、直接相手方本人と交渉する他に賠償金を回収する術は存在しないのでしょうか。以下では、直接本人から回収する以外の方法について、お伝えします。

相手が任意保険に入っていない場合

自賠責保険に請求する

加害者が任意保険に加入していなくても、自賠責保険にのみ加入しているケースでは、加害者の加入する自賠責保険を使って賠償金の一部(傷害の補償の上限は120万円まで)を受けることが可能になります。

不足分は加害者に請求する

加害者の自賠責保険で、賠償金全額を回収することができなかった場合には、その不足分を加害者本人に直接請求していくことになります。

相手が自賠責保険にも入っていない場合

相手が任意保険のみならず自賠責保険にも加入していないケースでは、直接加害者に請求する以外、何もできないのでしょうか。請求する方法がないわけではございませんので、まずは、下記を検討してください。

まずは自身の保険会社に対応できないか聞いてみましょう

ご自身が加入している保険会社から保険金を受け取ることが可能か否かを問い合わせてみてください。
代表的な保険として、4つの保険(1 搭乗者傷害保険、2 無保険者傷害保険、3 車両保険、4 人身傷害保険)があります。

1は、運転手、その車両に乗っている人が交通事故で負傷した場合に補償する保険です。2は、加害者が任意保険に未加入であったり、加入していても保険金額が十分でない場合に、支払ってもらえる保険です。3は、物損に関する保険です。4は、過失割合に関係なく、保険金の支払いが保険会社から受けられるものです。

政府保障制度を活用する

加害者が、自賠責にも加入していない無保険者であった場合には、政府の保障事業に請求することができます。政府の保障事業では、被害者が受けた被害を国(国土交通省)が加害者にかわって填補(立替払い)する制度です。最終手段としての活用をお考えください。

労災に請求する

もし、就労中(勤務中・通勤中)の交通事故である場合には、加害者の自賠責保険会社からの補償とは別に、被害者が加入する労災保険から補償を受け取ることができますので、労災に請求しましょう。

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加害者が支払いに応じなかった場合の対処法

加害者が支払いに応じなかった場合には、どのように回収していけば良いのかについて以下で、ご説明します。

そもそも支払い能力がない場合

加害者が支払いに応じない場合として、そもそも加害者に支払い能力がない場合が考えられます。支払いますと言ったものの、現実的に支払えないという場合があり得ます。

弁護士なら法的措置が可能

加害者が支払いませんと言った場合でも、弁護士であれば、訴訟を提起し、判決を得た上で、強制執行を申立て、強制執行手続きに着手することができます。加害者の給料債権を差し押さえたり、財産を差し押さえたりすることで、賠償金の回収が可能となります。

自己破産したと言われたら?

加害者が、自己破産をして支払うことができませんと支払いを拒む場合も考えられます。しかし、本当に自己破産をしたのかどうかは、漢方を見なければわからず、きちんと確認をする必要があります。

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加害者が無保険の交通事故は弁護士にご相談ください

加害者が無保険の場合には、通常想定されるルートでの賠償が望めません。そこで、交通事故に精通した弁護士にまずはご相談をいただいて、適正な賠償金を得られるようにしましょう。

弁護士費用特約に加入していれば弁護士費用の心配はありません

弁護士費用を心配して、弁護士に依頼することを躊躇なさっている方がいらっしゃるかもしれません。しかし、ご自身の任意保険に弁護士費用特約が付いていれば、弁護士費用の心配をすることなく相談してご依頼いただけます。

費用倒れになってしまう場合は、事前にご説明します

仮に弁護士費用特約の範囲を超えて、弁護士費用をご自身でご負担いただかざるを得ない場合には、事前にご説明いたしますので、まずはご自身の任意保険に弁護士費用特約がついているのかをご確認ください。

加害者が無保険であっても、諦めずに、適正な損害額が支払われるためにも、弁護士に一度ご相談されることをお勧めいたします。

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕
監修:弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長
保有資格弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)
埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。