養育費算定表で養育費の相場を調べる方法

養育費算定表で養育費の相場を調べる方法

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕

監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士

「妻や夫と性格が合わず、離婚を考えているが、離婚した後に子どもの生活費等が不安である」、「子どもを連れて、別居をしている妻や夫から養育費を請求されているが、その額が妥当かわからない。」など、離婚を考えるにあたって、子どもの生活費としての養育費が不安の種になることもあると思います。

以下では、裁判所において、養育費の額を判断する際に使用されている養育費算定表を基に養育費の額をどのように考えるか見ていきます。

養育費算定表とは

養育費算定表は、家庭裁判所で婚姻費用や養育費の算定に用いられる標準算定方式を基に作成された表になります。

養育費算定表は、両当事者の年収を用いて、縦軸と横軸の重なる点を見ると、簡易迅速に家庭裁判所の実務上の養育費の額を把握することができます。個別的事情も算定表によることが特段不公平であると判断されない限りは、算定表の幅の中で判断されるにとどまるため、実務上でも養育費算定表により、養育費を決定していくことが多数あります。

新養育費算定表について

元々の算定表が前提としていた計算は平成15年4月に考えられたものでした。ただ、社会の変化に伴い、物価の上昇、子どもにかける教育費の変化など10年前と後では必要な養育費の額が異なることがしばしば見受けられました。そこで、令和元年10月ごろに租税公課の額や生活費として必要な額を見直し、再度作成されたものが新養育費算定表になります。

ですので、現在の家庭における支出の相場に近づけた額が新養育費算定表では出ることになり、旧算定表に比べて新算定表の額が高くなる傾向にあります。

養育費算定表の使い方

養育費算定表を利用することによって、裁判所等で利用されている養育費の相場が分かります。また、養育費算定表を確認しておくことで、将来的にいくらの養育費を支払う、又は、支払わられることになるかを事前に把握することにもなります。

それでは、実際に裁判所の調停などで実際に用いられる養育費算定表の見方について見ていきたいと思います。具体的な例として、夫の収入600万円、妻の収入500万円、12歳の長男、8歳の長女、妻が子2人を連れて別居・離婚して、妻が夫に対して養育費を請求する場合を架空の家族として想定したいと思います(以下、「本例」と言います。)。

子供の人数と年齢を確認する

2.2で見るように、子の人数、年齢によって、見るべき養育費算定表が異なります。子の年齢は、0~14歳、15歳以上で分けられています。また、子の人数については、1人増えるごとに、見るべき表が異なりますので、子の人数が何人であるかも重要になります。

本例で考えると、子の人数は長男と長女の2人となり、子の2人の年齢は0~14歳になります。

裁判所のHPから該当の算定表をダウンロードする

裁判所のHPに「養育費・子1人表(子0~14歳)」などと子の人数と子の年齢ごとに作成された表がありますので、ご自身の子の人数と子の年齢に当てはまる表を選択して、ダウンロードします。本例では、「養育費・子2人表(第1子及び第2子0~14歳)」の表を見ることになります。

義務者(支払う側)の年収を確認する

見るべき算定表が決まったら、今度は当事者の年収を確認していきます。まず、支払う側である義務者の年収を額面で確認したうえで、養育費算定表上の縦軸のどのあたりにあたるか見ていきます。自営業者と給与受領者では見る部分が異なりますので、注意してください。

本例では、妻が夫に対して養育費を請求しているので、夫が義務者となります。夫は給与受領者で年収600万円であることから、養育費算定表上の縦軸の外側のうち、600万円部分になります。

権利者(もらう側)の年収を確認する

次は、養育費をもらう側である権利者の収入を確認します。権利者についても、同様に控除等がなされる手取り額ではなく、額面上の年収で確認します。また、給与受領者と自営業者では異なる点も同様です。

本例でみると、妻が権利者にあたります。また、妻は、給与受領者で年収500万円であることから、横軸のうち、外側の「給与」とされている部分の500万円部分を見ることになります。

2つの年収を辿り、養育費の金額を決定する

2.3や2.4で見てきました義務者の収入額の横線と権利者の収入額の縦線が重なり合う部分が、養育費の金額の幅になります。

本例でみると、夫の年収600万円の横線と妻の年収500万円の縦線の重なるところが養育費の金額になります。そうすると、重なる部分は、「6~8万」の下の方になります。ですので、養育費の相場としては、6万円が相当であると考えられます。

養育費算定表の結果はあくまでも相場

もっとも、ここで見てきた養育費の額はあくまでも一般的に必要な子どもの生活費の額になります。ですので、夫婦間で話し合い、互いに合意をすれば、算定表で示される額よりも高い額や低い額で養育費を決定することも可能です。また、病気や子どもの教育費など特別な事情があることを主張して、養育費を増額することもあります。

養育費算定表に関するQ&A

養育費算定表以上の金額をもらうにはどうしたらいいですか?

養育費算定表は、上記のように一般的に考えられる子どもの生活費として養育費を算出するので、一般的に考えられる生活費の他に、当事者間で子どもについて拠出することを決めていた私立学校の学費などを当事者間で加算することを合意することにより養育費算定表以上の金額をもらえる可能性はあります。

古い算定表で金額を決めました。新養育費算定表の金額で支払ってほしいのですが、どうしたらいいですか?

古い算定表よりも新算定表の方が高いために、新算定表に照らして養育費を支払うべきとの主張のみでは、家庭裁判所により養育費を増額するべきだと判断される可能性は低い状況にあります。一度決定した養育費の額を変更するためには、大きな事情変更、例えば、当事者一方の収入が激増、激減したことや子どものうち一人が社会人になり、自立したこと等が必要になります。
ただ、両当事者間で、新算定表の額で支払うことを決めた場合には新算定表に依った金額で支払うようにできます。

子供に障害があるため医療費がかかります。それでも算定表の額しか支払ってもらえないのでしょうか?

子どもに障害があるために、高額な医療費がかかる場合には通常想定される生活費ではまかなえない額になりますので、通常、子どもにかかる医療費を超える部分については算定表上の養育費の額に加算していくことになります。ですので、算定表どおりの額のみが支払われるのではなく、それに加えてかかる医療費等を養育費として加えることもあります。

新算定表の額が高すぎると調停を申し立てられました。減らさなければいけないのでしょうか?

新算定表上の養育費は、前記のとおり、今の社会情勢上子どもの生活費として一般的にかかるであろう額になりますので、通常は新算定表の養育費の額が高すぎるとして減らす必要はないと考えられます。しかし、特別な事情として特別に子どもの生活費としてかからない費用があるなどの事情がありましたら、新算定表の額から減らす可能性もあります。

再婚を理由に算定表の金額よりも養育費を減らしたいと言われました。受け入れなければいけないのでしょうか?

再婚だけを理由に算定表の額よりも養育費を減らすべきであると判断される可能性は低いです。しかし、養育費を支払う側に新たに子どもができた等の事情がある場合や、養育費を受ける側が再婚して、再婚相手が子どもを養育している等の場合には、算定表の額から減額される可能性はあります。

子供が4人以上いる場合の養育費算定表がありません。相場はどう調べればいいでしょうか?

子どもが4人以上いる場合の算定表は、裁判所のHP上にはございませんので、算定表にしたがって、相場を調べることは難しいです。ですが、標準算定方式と呼ばれる計算式を用いて計算することや法律事務所のサイトなどで自動で算定してくれるツール等がございます。弊所でも養育費計算ツールがございますので、ご活用ください。

上の子を夫が引き取り、下の子2人を私が引き取ることになりました。算定表はどう見たらいいのでしょうか?

算定表では、養育費をもらう側が子ども全員を見た場合を想定して表を作成しております。ですので、算定表を用いてすぐには養育費の相場を把握することは難しいです。
しかし、ある程度の相場は計算により把握することができます。まず、夫が子1人を監護し、妻が夫に対して養育費を支払うと考えて、養育費の額を計算します。一方で、妻が2人の子を引き取り、夫が妻に対して養育費を支払う場合の養育費の額を計算します。2つの計算により算出した養育費をそれぞれ相殺して、残った額について、養育費を支払うと考えます。
もっとも、この計算は正確なものとは言えないので、あくまでも、相場の大体の幅を知るための計算にすぎません。

算定表に書かれている年収は手取りですか?支払額ですか?

算定表で書かれている年収は、これまで見てきたように、支払額、いわゆる、額面になります。これは、算定表が前提としている標準査定方式が支払額から様々な控除分を計算した上で養育費を算定するため、標準査定方式を基に作成されている算定表に記載の年収も支払額になります。

養育費のことでお困りのことがあれば、弁護士への相談がおすすめ

これまで見てきたように、算定表を用いることによって、一般的な家庭で支払われるべきと考えられる養育費の相場を知ることはできます。ですので、当事者間で話し合いする際には、養育費の相場を前提にお話合いされることもよいかと思います。

もっとも、Q&Aで見てきたように、細かい事情を含めて正確に養育費を決めていきたいとのご希望や当事者間の話し合いでは養育費の額について決められない等の困りごとがある場合には、ぜひ弁護士にご相談ください。

交通事故の被害に遭われた際、加害者側との交渉や適正な損害賠償金の獲得のために弁護士への依頼を検討される方は少なくありません。

弁護士が介入することで、賠償額の増額が期待できるなど多くの利点がありますが、同時に「弁護士費用はどれくらいかかるのか」「費用倒れになってしまわないか」といった金銭的なご不安を抱かれるのも事実です。

本稿では、弁護士費用の内訳や相場、費用負担を軽減するための具体的な方法、そして安心して弁護士に依頼するための知識について、専門家の立場から詳しく解説いたします。

交通事故の弁護士費用の内訳と相場

交通事故案件を弁護士に依頼する場合の費用は、かつて日本弁護士連合会による統一的な基準が存在しましたが、現在は廃止され、各法律事務所が自由に料金体系を定めています。

もっとも、その内訳は一般的に「相談料」「着手金」「成功報酬(報酬金)」「実費」「日当」といった項目から構成されており、事務所ごとの大きな違いはありません。

それぞれの費用の意味と相場を正しく理解することが、適切な弁護士選びの第一歩となります。

費用 相場
相談料 30分5000円程度
着手金 10万円~
成功報酬 経済的利益の額によって異なる
実費 交通費・収入印紙代・通信費などで異なる
日当 3~5万円/半日、5万~10万円/1日

相談料

相談料とは、弁護士に事件処理を正式に依頼する前段階で、法律的な助言を求める法律相談の対価として支払う費用です。

多くの法律事務所では、30分あたり5,000円から10,000円程度を相場としていますが、近年、交通事故分野に注力している事務所を中心に「初回相談料無料」のサービスが広く普及しています。

まずは無料相談を活用し、事件の見通しや弁護士との相性を確認することが推奨されます。費用に関する不明点も、この相談の機会に遠慮なく質問すべきです。

着手金

着手金は、弁護士に事件の対応を正式に依頼し、委任契約を締結する際に支払う費用です。

これは、事件の結果(例えば、示談交渉の成否や裁判の勝敗)にかかわらず、弁護士が業務に着手するための対価として支払うものであり、原則として返還されません。

金額は事務所によって様々ですが、近年では依頼者の初期負担を軽減するため、「着手金無料」としている法律事務所も増えています。

ただし、その分、後述する成功報酬の算定率が異なる場合があるため、総額での費用を見極める必要があります。

成功報酬(報酬金)

成功報酬は、委任された事件が解決に至った際に、その成功の度合いに応じて支払う報酬です。

交通事故の案件では、一般的に「弁護士が介入したことで増額した賠償金の額」や「最終的に獲得した賠償金の総額」を「経済的利益」と定義し、これを基準に「経済的利益の〇%+〇万円」といった形で算出されることが多くなっています。

この報酬体系により、依頼者の得た利益が大きくなるほど弁護士の報酬も増えるため、双方の利害が一致しやすいという特徴があります。

実費

実費とは、弁護士の報酬とは別に、事件を処理するために実際に必要となった経費のことを指します。

具体的には、裁判所に納める収入印紙代、訴訟記録の謄写費用、通信費(郵便切手代)、遠方への移動が必要な場合の交通費や宿泊費などがこれに該当します。

これらの費用は、事件の進行に応じて発生するため、あらかじめ一定額を預かり金として事務所に預託し、事件終了時に精算する方式が一般的です。

日当

日当とは、弁護士が事件処理のために事務所を離れて外部で活動(裁判所への出廷、現地調査、遠隔地での示談交渉など)を行った場合に、その拘束時間に対して支払われる費用です。

通常、半日あたり3万円~5万円、1日あたり5万円~10万円程度が相場とされています。

この日当は、交通費や宿泊費といった実費とは別途に発生する費用です。もっとも、近年の民事裁判ではウェブ会議システムの活用が進んでおり、遠方の裁判所への出廷に伴う日当が発生するケースは減少しつつあります。

交通事故の弁護士費用は誰が払う?相手に請求できる?

交通事故の損害賠償請求において、弁護士に依頼した際の費用は、原則として依頼者自身が負担することになります。示談交渉の段階で、加害者側の保険会社に対してこちらの弁護士費用を請求しても、支払いに応じられることはまずありません。

ただし、交渉が決裂し、訴訟を提起した場合には、判決において損害賠償元金の1割程度が弁護士費用相当の損害として認められ、相手方に負担させることができる場合があります。

これは、不法行為(民法第709条)と損害との間に相当因果関係が認められる費用は賠償の対象となるという考え方に基づくものであり、判例上確立された実務です。

しかし、これはあくまで賠償額の1割程度であり、実際に支出した弁護士費用の全額が填補されるわけではない点には注意が必要です。

交通事故を弁護士に依頼すると費用倒れのリスクがある?

費用倒れとは、弁護士に依頼したことで得られた経済的利益(賠償金の増額分など)よりも、支払う弁護士費用の方が高額になってしまい、結果的に依頼者の手元に残る金額が減ってしまう状態を指します。

このリスクは、特に車両の修理費のみを争う物損事故や、通院期間が1ヶ月程度の軽傷事案など、弁護士が介入しても賠償額の大きな増額が見込みにくいケースで高まります。

もっとも、依頼を受ける前の相談段階で費用倒れの可能性を十分に説明しますので、ご依頼される方が知らないうちに損をするという事態は通常起こりにくいと言えます。

弁護士費用を抑えるための4つのポイント

早めのタイミングで相談する

費用倒れのリスクを回避し、かつ、適正な賠償を受けるためには、事故後可及的速やかに弁護士へ相談することが重要です。

事故直後の段階で相談すれば、通院方法、医師への症状の伝え方、証拠の保全方法など、後々の交渉を有利に進めるための的確なアドバイスを受けられます。

自己判断で不適切な対応をしてしまい、後から弁護士に依頼しても覆すことが困難になるケースは少なくありません。

早期の相談は、結果的に不要な紛争の長期化を防ぎ、弁護士費用を抑制することにも繋がります。

見積もりを出してもらう

弁護士への依頼を具体的に検討する際には、必ず費用の見積もりを請求し、その内訳を詳細に確認することが不可欠です。

特に、複数の法律事務所に相談し、それぞれの見積もりを比較検討することが望ましいでしょう。「着手金無料」といった表面的な宣伝文句だけで判断するのではなく、成功報酬の算定基準や実費、日当の有無などを含めた総額でどれくらいの費用が見込まれるのかを把握することが重要です。

着手金無料・成功報酬型の弁護士を選ぶ

初期費用を抑えたい場合には、着手金が無料の法律事務所を選択することが有効な手段となります。これにより、事件を依頼する時点での経済的な負担がなくなり、弁護士へのアクセスが容易になります。

ただし、着手金を無料とする代わりに、成功報酬の算定率を比較的高めに設定している事務所も存在します。

したがって、最終的に獲得できる賠償額の見込みと、総額で支払うことになる弁護士費用を天秤にかけ、自身の事案にとって最も合理的な料金体系の事務所を選択する視点が求められます。

弁護士費用特約が使えるかを確認する

弁護士費用を抑制する最も効果的な方法は、ご自身またはご家族が加入している自動車保険等に「弁護士費用特約」が付帯しているかを確認することです。

この特約を利用すれば、保険会社が弁護士費用を上限額(多くの場合300万円)まで負担してくれるため、実質的な自己負担なく弁護士に依頼することが可能となります。

費用倒れのリスクを完全に払拭できるため、もし特約が利用可能であれば、積極的に活用すべきです。

交通事故で弁護士費用特約を利用するメリット

弁護士費用が300万円まで補償される

弁護士費用特約の多くは、法律相談料の上限を10万円、弁護士報酬や実費などの上限を合計300万円と定めています。死亡事故や重篤な後遺障害が残る事案でない限り、弁護士費用の総額が300万円を超えるケースは稀です。

そのため、この特約を利用することにより、大半の交通事故案件において、被害者は費用負担を一切気にすることなく、賠償請求に関する一切の手続きを弁護士に委任することができます。

これは、被害者が経済的な不安から解放され、治療に専念できるという点で非常に大きなメリットと言えます。

保険の等級は変わらない

自動車保険を利用すると、翌年度のノンフリート等級が下がり、保険料が上がってしまうという懸念をお持ちの方もいらっしゃいます。

しかし、弁護士費用特約のみを利用した場合には、等級に影響はなく、保険料が上がることはありません。したがって、特約の利用を躊躇する必要は全くありません。

ただし、ご自身の車両保険や対人・対物賠償保険などを同時に使用した場合は、当然ながら等級ダウンの対象となりますのでご注意ください。

家族や同乗者でも利用できる

弁護士費用特約の補償対象は、契約者本人に限定されません。

保険契約の内容にもよりますが、一般的に、契約者の配偶者、同居の親族、さらには別居している未婚の子なども対象に含まれることが多くなっています。

また、契約車両に同乗中に事故に遭った友人・知人も利用できる場合があります。ご自身の保険に特約が付いていないと諦める前に、ご家族が加入する保険の内容も確認してみることが重要です。

車を運転中の事故以外でも利用できる

弁護士費用特約の補償範囲は、自動車を運転中の事故に限定されません。歩行中に車にはねられた、自転車で走行中に自動車と接触した、といったケースでも利用できるのが一般的です。

さらに、自動車保険だけでなく、火災保険や傷害保険などにこの特約が付帯している場合もあります。交通事故に遭われた際は、ご自身が加入しているあらゆる保険契約の証券を確認し、特約の有無を調べることが肝要です。

弁護士費用特約なしでも弁護士に依頼した方がいい?

弁護士費用特約が付帯しておらず、費用を自己負担しなければならない場合でも、弁護士に依頼すべき事案は数多く存在します。

特に、後遺障害の等級認定が争点となるケース、死亡事故、被害者の過失割合に大きな争いがあるケースなどでは、弁護士が介入することによる賠償金の増額幅が、弁護士費用を大幅に上回る可能性が高いと言えます。

軽微な物損事故や短期の通院で完治した怪我の場合には費用倒れのリスクも考慮すべきですが、重大な被害を受けたにもかかわらず、費用を懸念して泣き寝入りすることは避けるべきです。

交通事故の弁護士費用でご不安がある場合は、まず無料相談をご利用ください。

ここまで解説してきたとおり、交通事故の弁護士費用には様々な種類と料金体系があります。費用に関するご不安や疑問をお持ちのまま、独りで悩み続けることは得策ではありません。

現在、多くの法律事務所が交通事故に関する初回無料相談を実施していますので、まずは専門家である弁護士に直接ご相談されることをおすすめします。

遺産相続において、「寄与分」という言葉を耳にされたことはありますでしょうか。
これは、被相続人の財産の維持または増加に特別な貢献をした相続人がいる場合に、その貢献を相続財産の分配において考慮する制度です。例えば、長年にわたり被相続人の事業を手伝ってきた、あるいは献身的な介護を行ってきたといったケースが考えられます。

しかし、この寄与分を主張するにあたり、いつまで請求できるのか、つまり「時効」はあるのかという疑問が生じることがあります。本記事では、寄与分の請求期限の有無、「特別寄与料」の制度とその期限について、詳しく解説いたします。相続人間での公平な遺産分割を実現するため、これらの知識は非常に重要となります。

まずは知っておきたい「寄与分」の意味

寄与分とは、共同相続人の中に、被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした者がある場合に、相続財産の価額からその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、各相続人の相続分を計算し、その寄与をした者に対しては、前記控除後の相続財産から算定された相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする制度です(民法第904条の2第1項)。

平たく言えば、被相続人の財産を増やすことに貢献したり、財産の減少を防いだりした場合に、その貢献度に応じて他の相続人よりも多くの財産を受け取ることができる仕組みと言えます。これは、相続人間の実質的な公平を図るために設けられています。

寄与分が認められるための要件

寄与分が認められるためには、いくつかの要件を満たす必要があります。

まず、寄与行為を行った者が共同相続人であることです。 次に、その寄与行為が「特別の寄与」であると評価される必要があります。 これは、夫婦間の協力や親族間の扶養義務の範囲を超える程度の貢献を指します。

さらに、寄与行為によって被相続人の財産が維持された、または増加したという結果との間に因果関係が必要です。 そして、その寄与行為が無償で行われたものであることも求められます。

寄与分に時効はあるのか?

結論から申し上げますと、令和7年(2025年)現在、寄与分の請求権そのものに、民法上の消滅時効の規定は存在しません。 つまり、「何年以内に請求しなければ権利が消滅する」といった明確な期限はありません。

しかし、これは無制限にいつでも主張できるという意味ではありません。寄与分は、遺産分割協議または遺産分割調停・審判の中で主張し、他の相続人との間で合意するか、家庭裁判所に認めてもらう必要があります。 したがって、遺産分割が一度成立してしまうと、その後に寄与分を単独で主張することは原則としてできません。

例外的に、遺産分割協議が無効であった場合や、相続人全員の合意によって遺産分割をやり直す場合には主張の余地がありますが、実際には困難なケースが多いと言えます。

昔の寄与分が認められにくいのは本当?

寄与分に時効はないと説明しましたが、あまりにも古い時期の寄与行為については、事実上、認められにくい傾向があります。これは、時の経過とともに証拠が散逸し、寄与の事実やその程度、財産の維持・増加との因果関係などを客観的に証明することが難しくなるためです。

例えば、数十年も前の被相続人の事業への貢献や療養看護について、具体的な内容や貢献度を裏付ける資料(日記、帳簿、医療記録、第三者の証言など)が乏しくなりがちです。そのため、寄与分を主張する際には、できる限り早期に、かつ具体的な証拠を収集・保全しておくことが重要となります。

「特別寄与料」には期限があるため注意!

平成30年(2018年)の相続法改正により、令和元年(2019年)7月1日から「特別寄与料」という新しい制度が施行されました。

これは、相続人以外の親族(例えば、相続人の配偶者など)が、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより、被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与をした場合に、相続人に対して金銭の支払いを請求できるというものです(民法第1050条第1項)。

従来の寄与分制度では、相続人でなければ寄与が認められませんでしたが、この制度によって、例えば長年、義父母の介護に尽くしてきたお嫁さんなども、その貢献に応じた金銭的評価を受けられる道が開かれました。

この特別寄与料の請求権には、明確な期間制限が設けられているため、注意が必要です。

特別寄与料の消滅時効

特別寄与者が、相続の開始及び相続人を知った時から6か月を経過したときは、特別寄与料の請求権は時効によって消滅します(民法第1050条第2項)。

これは、権利を行使できることを知った時から進行する主観的起算点の時効です。したがって、相続発生の事実と、誰が相続人であるかを知った時点から、迅速に請求の意思表示をするか、法的手続きに着手する必要があります。この6か月という期間は比較的短いため、特に留意が必要です。

特別寄与料の除斥期間

上記の消滅時効とは別に、特別寄与料の請求権には除斥期間も定められています。相続開始の時から1年を経過したときも、特別寄与料の請求はできなくなります(民法第1050条第2項)。

この1年という期間は、特別寄与者が相続の開始や相続人を知っていたかどうかに関わらず、相続開始時から進行する客観的起算点の期間制限であり、中断や停止といった時効の概念が適用されません。つまり、この期間が経過すると、権利は確定的に消滅してしまいます。

寄与分を主張するためのポイント

寄与分を適切に主張し、認めてもらうためには、いくつかの重要なポイントがあります。まず、どのような行為が「特別の寄与」にあたるのかを具体的に整理し、それを客観的に裏付ける証拠を収集することが不可欠です。

例えば、事業への貢献であれば、具体的な業務内容、期間、無償性を示す資料(給与明細がないことの証明など)、事業の収益状況の変化を示す資料などが考えられます。療養看護であれば、介護記録、医療機関の領収書、要介護認定の資料、他の親族が関与していなかったことを示す証言などが有効です。

また、他の相続人に対して、感情的にならず冷静に、かつ具体的に寄与の事実と内容を伝える努力も重要です。可能であれば、遺産分割協議の初期段階から弁護士に相談し、法的な観点から主張を整理し、適切な証拠収集のアドバイスを受けることをお勧めします。

寄与分を請求する流れ

寄与分を請求する一般的な流れは、まず相続人間での遺産分割協議において主張することから始まります。

ここで他の相続人全員が寄与分を認め、その額についても合意に至れば、遺産分割協議書にその旨を明記し、合意内容に従って遺産を分割します。しかし、相続人間で話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。

調停では、調停委員が間に入り、各相続人の主張を聞きながら、合意形成を目指します。調停でも合意に至らない場合は、自動的に遺産分割審判に移行し、裁判官が一切の事情を考慮して寄与分の有無や額を判断し、遺産分割の方法を決定します。

特別寄与料の場合は、相続人に対する協議を求めることから始め、まとまらなければ家庭裁判所に調停または審判を申し立てることになります。

よくある質問

遺産分割協議後に寄与分を主張することはできますか?

原則として、一度有効に成立した遺産分割協議の後に、寄与分を単独で追加主張することはできません。 遺産分割協議は、相続財産の分配について相続人全員が合意した内容を確定させるものです。したがって、その合意内容に寄与分が含まれていないのであれば、後から覆すことは困難です。
ただし、遺産分割協議自体に詐欺や強迫があった場合や、相続人全員が協議のやり直しに合意した場合など、例外的な状況では再度主張できる可能性も残されていますが、ハードルは高いと言えます。

特別寄与料の時効を延長することは可能ですか?

特別寄与料の消滅時効(相続の開始及び相続人を知った時から6か月)については、民法の時効の更新(旧中断)や完成猶予(旧停止)の規定が適用される余地があります。 例えば、相続人に対して請求の意思を内容証明郵便で通知したり、協議を行う旨の合意をしたり、家庭裁判所に調停や審判を申し立てたりすることで、時効の完成が猶予されたり、時効期間が新たに進行を開始(更新)したりする場合があります。 しかし、除斥期間である「相続開始の時から1年」については、その性質上、延長することはできません。

夫の親(被相続人)を介護した妻にも寄与分は認められますか?

夫の親(被相続人)を妻が介護した場合、妻自身は夫の親の相続人ではないため、原則として「寄与分」を主張することはできません。 寄与分は、あくまで共同相続人のみが主張できる権利です。
しかし、このようなケースこそ、令和元年(2019年)7月1日から施行された「特別寄与料」の制度が活用される典型的な場面です。 妻は、被相続人の親族(子の配偶者)として、無償で療養看護等を行い、被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与をしたと認められれば、相続人に対して特別寄与料を請求することができます。

寄与分はできるだけ早い段階で主張することをおすすめします。まずは弁護士にご相談下さい。

これまで述べてきましたとおり、寄与分の主張には時効こそありませんが、遺産分割が成立した後では事実上主張が困難になります。また、特別寄与料には明確な期間制限があります。

いずれの場合も、証拠の収集という観点からも、相続開始後できるだけ早い段階で専門家である弁護士に相談し、ご自身の状況が寄与分や特別寄与料の主張に該当するのか、どのような証拠が必要か、どのように手続きを進めていくべきかについて、具体的なアドバイスを受けることを強くお勧めいたします。早期の相談が、ご自身の正当な権利を実現し、円満な相続解決に繋がる第一歩となります。相続に関するお悩みは、一人で抱え込まず、まずは経験豊富な弁護士にご相談ください。

刑事事件の判決で「執行猶予」という言葉を耳にすることがあります。これは、有罪判決でありながらも、刑務所への収容を一定期間猶予し、その間に問題を起こさなければ刑の執行が免除される制度です。被告人にとっては社会生活を維持しながら更生を目指せる大きな機会となりますが、その意味や条件、期間中の生活について正しく理解しておくことが重要です。

執行猶予について

執行猶予とは、有罪判決に基づく刑の執行を一定期間(1年以上5年以下)猶予し、その猶予期間中に再度罪を犯すことなく過ごせば、刑の言い渡し自体が効力を失う制度です。つまり、直ちに刑務所に収容されるのではなく、社会の中で更生の機会が与えられるということです。

ただし、無罪放免であった場合とは異なり、猶予期間中に一定の条件に違反すると、執行猶予が取り消され、猶予されていた刑に加えて新たな刑が科される可能性もあります。

刑の一部執行猶予制度とは

刑の一部執行猶予制度(刑法27条の2)とは、判決で言い渡された刑期の一部について執行を猶予し、残りの期間は実際に服役するという制度です。例えば、「懲役3年のうち、1年間は刑務所に服役し、残りの2年間は執行を猶予する」といった形になります。

この制度の目的は、刑務所での処遇と社会内での更生支援を組み合わせることで、再犯防止と円滑な社会復帰を促進することにあります。条文上、保護観察は任意とされていますが、猶予期間中は、原則的に保護観察が付されるとの運用がなされています。これにより、社会生活への適応を助け、再犯に至らないようサポートが行われます。

執行猶予と懲役・実刑の違い

実刑とは、刑事裁判ですぐに刑務所に収容される判決が下されることです。実刑の一つとして懲役刑があります。懲役とは、刑務所に収容され、所定の作業を行わなければならない刑罰です。

一方、「執行猶予」は、懲役刑や禁錮刑の判決が下された場合でも、刑務所に収容されず、その執行が一定期間猶予される制度です。この期間を問題なく過ごせば、刑の執行は免除されます。

執行猶予の考え方

例えば、「懲役2年・執行猶予4年」という判決が下された場合、これは「あなたは懲役2年の刑に処せられますが、その刑の執行を4年間猶予します」という意味になります。

この4年間を、執行猶予期間と呼びます。この期間中に、執行猶予の取り消し事由に該当するような新たな罪を犯したり、保護観察中の遵守事項に違反したりすることなく過ごせば、懲役2年の刑の言い渡しはその効力を失い、刑務所に行く必要はなくなります。

しかし、もし猶予期間中に罪を犯すなどして執行猶予が取り消されると、猶予されていた懲役2年の刑が執行されることになります。

執行猶予の期間について

執行猶予の期間は、法律で1年以上5年以下と定められています(刑法25条1項)。そのため、何十年もの長期間にわたって執行猶予が付されることはありません。最長でも5年です。

この期間設定の理由は、あまりに長期の猶予期間は、かえって本人の社会復帰を不安定なものにし、更生の意欲を削ぐ可能性があるためとされています。また、執行猶予制度の目的は、社会内での更生を促すことにあり、一定の期間で区切りを設け、その間の努力を評価するという趣旨にも合致しています。

日常生活に制限はあるか

執行猶予期間中の日常生活は、基本的に制限されません。しかし、「保護観察付執行猶予」となった場合は、通常の執行猶予とは異なり、一定の制限が生じます。

保護観察付執行猶予では、保護観察官や保護司による指導監督を受け、定められた遵守事項を守る必要があります。遵守しなかった場合、情状次第では執行猶予が取り消されることがあります(刑法25条の2第2号)。

仕事・就職への影響

通常の執行猶予の場合、法律上の制限はなく、原則としてこれまで通り仕事を続けることができますし、新たに就職することも可能です。ただし、執行猶予付きの有罪判決を受けたという事実は「前科」となりますので、一部の職業では資格制限に該当し、就けない場合があります(例:公務員、弁護士、医師など)。

保護観察付執行猶予の場合も、仕事や就職自体が禁止されるわけではありませんが、保護観察官に職業や収入について報告する必要があり、場合によっては仕事に関する指導を受けることもあります。

公務員の場合、禁錮以上の刑に処せられた者は、執行猶予期間中であっても、その職を失うことが法律で定められています(国家公務員法第76条、地方公務員法第28条4項)。これは「失職」といい、執行猶予付きの有罪判決が確定すると、原則として公務員の職を続けることはできません。

就職活動において、執行猶予期間中であることや前科について、自ら積極的に申告する法的義務はありません。しかし、虚偽の申告をした場合、経歴詐称として採用取り消しや解雇の理由となる可能性があります。

海外旅行

執行猶予中の場合、パスポートを取得することができない場合があります。「拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者」(旅券法13条1項3号)については、パスポートを発給しないことができると規定されています。

また、通常の執行猶予の場合、海外旅行に行くこと自体に法律上の制限はありません。しかし、保護観察付執行猶予の場合は注意が必要です。保護観察の遵守事項として、7日以上の旅行をする場合には、あらかじめ保護観察所の長に許可を受けなければなりません(更生保護法50条1項5号)。

引っ越し

通常の執行猶予の場合、引っ越しをすることに法律上の制限はありません。自由に転居することができます。一方、保護観察付執行猶予の場合は、引越しをする際には、あらかじめ、保護観察所の長の許可を受ける許可を得る必要があります(更生保護法50条1項5号)。無断で引っ越しをすると、遵守事項違反とみなされ、ペナルティが科されることがあります。

ローンは組めるか

執行猶予期間中であるという理由だけで、ローンが組めなくなるという法律上の制限はありません。金融機関がローンの審査を行う際には、申込者の収入、勤務先、信用情報などを総合的に判断します。執行猶予付きの有罪判決を受けたという事実(前科)は、信用情報機関に事故情報として登録されるわけではありません。しかし、ローンの種類、金融機関の審査基準によっては、審査に影響が出る可能性は否定できません。

弁護士への依頼で執行猶予がつく可能性が上がります

刑事事件で起訴されてしまった場合、執行猶予が付くか否かは、その後の社会生活を大きく左右します。しかし、どのような場合に執行猶予が認められるのか、その条件や判断基準は複雑です。弁護士に依頼することで、過去の判例や専門的な知識に基づき、被告人に有利な事情を効果的に主張し、執行猶予獲得に向けた具体的な弁護活動を展開することができます。早期の段階から弁護士に相談し、適切なアドバイスとサポートを受けることが、執行猶予を得る可能性を高める上で非常に重要です。

執行猶予を付ける条件

執行猶予は、まず、法律で定められた条件を満たす必要があります。

①前に禁錮以上の刑に処せられたことがないか、または、前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日またはその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがないこと(刑法25条1項1号、2号)②今回言い渡される刑が、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金であること(刑法25条柱書)です。

また、前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が1年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるとき(刑法25条2項本文)も同様です。

これらの条件を満たした上で、裁判官が、犯行の動機、態様、結果の軽重、被告人の年齢、性格、境遇、反省の状況、更生の可能性などを総合的に考慮し、社会内での更生が相当であると判断した場合に執行猶予が付きます。

取り消される場合について

執行猶予には取消事由があります。取消事由には、必要的取消事由と裁量的取消事由があります。

必要的取消事由に該当する場合には、執行猶予は必ず取り消されます。裁量的取消事由に該当する場合には、裁判所の裁量により執行猶予を取り消すか否かが判断されます。

必要的取消事由には、猶予の期間内に更に罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ、その刑について執行猶予の言渡しがないときなどがあります(刑法26条1号)。裁量的取消事由には、猶予の期間内に更に罪を犯し、罰金に処せられたときなどがあります(刑法26条の2第1号)。

執行猶予が取り消されたら

執行猶予が途中で取り消されると、猶予されていた刑が執行されることになります。つまり、言い渡されていた懲役刑や禁錮刑について、実際に刑務所に収容されることになるのです。執行猶予期間を一部経過していたとしても、その分が刑期から差し引かれることは基本的にありません。ただし、刑の一部執行猶予の場合には、既に服役した期間が考慮されることになります。

執行猶予をつけてもらう方法はある?

執行猶予が付くかどうかは、法律上の条件を満たした上で、最終的には裁判官の総合的な判断によります。しかし、積極的に働きかけることで、執行猶予が付きやすい状況を作り出すことは可能です。

被害者との示談交渉

被害者がいる犯罪の場合、被害者との間で示談を成立させることは、執行猶予を得るために非常に重要な要素となります。示談が成立し、被害者が被告人の処罰を望まない、あるいは寛大な処分を求める意思を示していることは、被告人が反省し、被害回復に努めていると評価され、裁判官の心証に良い影響を与える可能性が高まります。

しかし、加害者本人やその親族が直接示談交渉を行うことは、被害者の感情を逆なでしたり、交渉が難航したりするケースが少なくありません。弁護士に依頼することで、冷静かつ専門的な立場で被害者と交渉を進め、適切な内容での示談成立を目指すことができます。

被害弁償・贖罪寄付

被害弁償とは、被害者に対して金銭的な賠償を行い、損害を補填することです。贖罪寄付とは、被害者がいない犯罪や、被害者が示談に応じてくれない場合に、被告人が反省の情を示すために、公益団体などに金銭を寄付することです。

これらの行動は、被告人が自らの罪を償おうとする具体的な意思表示として評価され、執行猶予の判断において有利な情状となることがあります。特に、被害弁償は被害者の経済的な損害を回復させるものであり、真摯な反省の態度を示すものとして重視されます。弁護士に依頼することで、適切な被害弁償額の算定や、贖罪寄付先の選定、手続きなどをスムーズに進めることができます。

監督人がいることの主張

被告人が社会内で更生していくためには、家族や雇用主など、日常生活を監督する人の存在が重要です。このような監督人がいることを具体的に裁判で主張し、その監督体制が実効的であることを示すことで、裁判官に対して、社会内での更生可能性が高く、再犯のおそれがないという印象を与えることができます。

弁護士であれば、被告人の家族や関係者から事情を聴取し、具体的な監督計画を作成したり、情状証人として法廷で証言してもらったりするなど、監督体制が整っていることを効果的に裁判官に伝えることが可能です。これにより、執行猶予付き判決の可能性を高めることができます。

執行猶予をつけるために弁護士が交渉致します

執行猶予付き判決を獲得するためには、専門的な知識と経験に基づく弁護活動が不可欠です。弁護士は、被害者がいる場合には示談交渉を代理人として行い、検察官や裁判官に対しては、被告人の反省の情や更生の意欲、具体的な監督環境などを説得的に主張します。弁護士は、有利な事情を最大限に引き出すお手伝いをいたします。

執行猶予についてよくある質問

なぜ罪を犯しているのに執行猶予という制度があるのですか?

執行猶予制度の主な目的は、罪を犯した人に対して、直ちに刑務所に収容するのではなく、社会の中で更生の機会を与えるということにあります。社会から隔離するよりも、社会生活を継続させながら立ち直りを支援する方が、適した場合があると考えられています。もっとも、あくまで有罪であり、その責任を自覚し、更生に努めることが前提とされています。

執行猶予中に逮捕された場合は、逮捕された時点で執行猶予取消しとなりますか?

執行猶予中に逮捕されたとしても、その時点で直ちに執行猶予が取り消されるわけではありません。執行猶予が取り消されるのは、逮捕された事件について、最終的に禁錮以上の刑(執行猶予なし)や罰金刑などの有罪判決が確定した場合です。逮捕されただけでは、まだ有罪が確定したわけではないため、その後の捜査や裁判の結果を待つことになります。ただし、逮捕されたという事実は、その後の裁判で不利な情状として考慮される可能性はあります。

懲役以外でも執行猶予が付く刑罰はありますか?

懲役刑だけでなく、3年以下の禁錮刑や50万円以下の罰金刑についても付されることがあります。(刑法25条1項柱書)。禁錮は、懲役と異なり、刑務作業の義務がない刑罰です。罰金刑に執行猶予が付された場合、猶予期間中に問題を起こさなければ、その罰金を支払う必要がなくなります。

何事もなく執行猶予期間を終えた場合、前科は消えることになるの?

執行猶予期間を何事もなく満了した場合、刑の言渡しはその効力を失います(刑法27条)。これにより、刑務所に行く必要はなくなりますし、法律上の資格制限なども回復することがあります。 しかし、「前科」そのものが完全に消えるわけではありません。検察庁には前科調書として記録が残ります。この記録は一般の人の目に触れることはありませんが、再び刑事事件を起こした場合に、不利益に考慮させるリスクがあります。

執行猶予をつけたいなら弁護士へ早めのご相談を!

もしあなたやご家族が刑事事件の当事者となり、執行猶予付き判決を目指しているのであれば、一刻も早く弁護士にご相談ください。執行猶予を得るためには、早期からの適切な対応と専門的な弁護活動が不可欠です。

弁護士は、事件の見通しを立て、示談交渉、有利な証拠の収集、効果的な訴訟活動など、あらゆる手段を尽くしてサポートします。不安を抱えたまま時間を過ごすのではなく、まずは専門家である弁護士に相談し、最善の道を探ることが重要です。

路上痴漢という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、法律上の言葉ではございません。路上で痴漢が行われたことを指してこのように呼ぶことがあります。

路上痴漢をした場合に、逮捕されることがあるのかまたは、どのような刑罰が科せられるのかをご説明いたします。

路上痴漢について

痴漢とは、相手の意に反してわいせつな言動や行為などの性的嫌がらせをすることをいいます。

典型的には、満員電車などで密着した異性の身体を相手方の意に反して触る行為がこれに当たります。

では、どのような行為が路上痴漢として行われるのでしょうか。以下では、路上痴漢の具体的な行為及び路上痴漢をした場合に逮捕されることがあるのか等について解説していきます。

痴漢で逮捕されたら?刑罰や逮捕された場合の注意点について

路上痴漢となる行為

路上で行われる痴漢とは、以下のような行為を指します。

  • 夜道などの人通りの少ない場所で突然、抱きつく、胸を触る行為
  • 路上で突然、衣類を脱がそうとしてくる
  • 夜道を歩いていて、見知らぬ人から突然、体液をかけられる
  • 夜道で、通りすがりに卑猥な言葉を投げかける

路上痴漢の刑罰

路上痴漢も満員電車での痴漢と同様に、犯罪行為となります。そのため、刑罰が科せられます。

路上で上記のような痴漢行為を行った場合、どのような刑罰が科せられる可能性があるのでしょうか。以下では、具体的な刑罰について解説していきます。

迷惑防止条例違反

路上痴漢は、各都道府県が制定する迷惑防止条例違反(正式名称は、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」に該当する可能性があります。

迷惑防止条例は、各都道府県が定めるものになりますので、それぞれによって、多少内容が異なります。

東京都の迷惑防止条例を例にとると、「人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であって、公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること」を禁止する旨の規定が設けられています(東京都迷惑防止条例5条1項1号)

これに違反した場合、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

迷惑防止条例違反は、「衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること」を禁止するものであるため、例えば、路上で、すれ違いざまに衣服の上から身体に触れる行為や突然抱きつく行為が路上痴漢のうち、迷惑防止条例違反に該当する行為となります。

迷惑防止条例違反にあたる犯罪や逮捕された場合について

不同意わいせつ罪

不同意わいせつ罪との言葉は耳慣れない言葉かもしれません。これは、2023年7月13日から新たに施行されている刑法上の犯罪となります。

以前は、強制わいせつ罪や準強制わいせつ罪と呼ばれていたものがこれに該当します。不同意わいせつ罪とは、相手方の同意がないのに、体を触る、キスをするなどのわいせつな行為をした場合に成立する犯罪行為です。

不同意わいせつ罪は、迷惑防止条例違反に該当する上記の行為よりも悪質性の高い行為について適用されます。具体的には、路上で見つけた相手に対して、被害者の逃げ場を塞いで執拗に触り続けるまたは被害者の帰り道を把握して計画的に痴漢行為に及ぶ行為等が挙げられます。

強制わいせつとなる行動と逮捕された場合の対処法

不同意わいせつ致死傷罪

不同意わいせつ致死傷罪は、前提として、不同意わいせつ罪を行った場合または行おうとした場合に成立します。この不同意わいせつ罪の中には、「暴行」を用いてわいせつ行為に及ぶ場合があります。この「暴行」をした際に、被害者に怪我を負わせた場合に、不同意わいせつ致傷罪が成立します。「暴行」を加えて、死亡させた場合には、不同意わいせつ致死罪が成立します。

路上痴漢のうち、不同意わいせつ致死傷罪にあたる行為の具体例は、夜道ですれ違った被害者の同意なく、胸を揉むなど衣服の上からわいせつ行為に及んだ際、被害者から抵抗されたので、腕をつかんで押し倒したことにより、被害者に擦り傷を負わせた場合などです。

路上痴漢の逮捕

路上痴漢をした場合には、逮捕される可能性があります。具体的には、その場で逮捕される現行犯逮捕または後日犯罪行為が行われたことが発覚して逮捕される後日逮捕があります。

以下では、現行犯逮捕及び後日逮捕される場合について解説いたします。

現行犯逮捕

現行犯逮捕とは、現に罪を行い終わってから間がない者を逮捕することをいいます。

路上で被害者に対し、わいせつ行為を行っている最中に取り押さえられる、またはその行為を目撃した人に追いかけられて取り押さえられる等が典型的な現行犯逮捕となります。

現行犯逮捕は、犯罪行為が起きてから間がないときに捕まえることになるため、逮捕者にとって、誤認逮捕のおそれが低いといえます。そのため、私人による逮捕も可能となります。

後日逮捕

後日逮捕とは、犯罪行為が後日明らかになり、逮捕状に基づいて逮捕することをいいます。

具体的には、被害者などから警察に通報があり、犯罪行為が明らかになることで、捜査が開始され、犯人の身元が明らかになり、後日逮捕されることになります。

後日逮捕するためには、現行犯逮捕と異なり、誤認逮捕の可能性があるため、犯罪行為が行われたことを証拠によって明らかにし、裁判官によって発布される逮捕状に基づいて逮捕する必要があります。

後日逮捕の証拠となりやすいもの

後日逮捕の場合には、上記のとおり、証拠に基づいて逮捕状が発布されなければ逮捕ができません。路上痴漢の場合に、犯罪行為があったとする証拠としては、防犯カメラの映像などが考えられます。

現在は、路上に防犯カメラが設置されていることが多く、犯罪行為が発覚する可能性が高いといえます。

路上痴漢で逮捕された・される可能性がある場合弁護士へご相談下さい。

路上痴漢をしてしまった場合、上記のとおり、後日逮捕される可能性があります。

ご自身が捜査されていることは、基本的に逮捕がされるまでわからないことがほとんどです。早期に示談交渉をするなど、対応を迅速に行うことで、逮捕されずに事件を解決するまたは逮捕されたとしても早期に釈放される可能性があります。

弁護士にご相談いただければ、今後の手続の流れをご説明するとともに、示談交渉を早期に進めるお手伝いを行います。
ご自身が逮捕される可能性がある場合には、弁護士に一度ご相談することをご検討ください。

路上痴漢で逮捕されたら

逮捕後に勾留されず在宅事件となる場合

逃亡または罪証隠滅のおそれがあり、捜査に支障が生じる可能性がある場合に逮捕されます。逮捕されて捜査機関による捜査が進み、証拠等の収集が済んでいる場合には、上記のおそれがなくなっているものといえます。痴漢事件の場合、証拠となるのは、被害者の証言や防犯カメラの映像となります。逮捕される際に、防犯カメラは既に捜査機関が収集していることが多く、その他に具体的な証拠がないことが考えられます。そのため、多くの痴漢事件では、逮捕され、捜査機関からの取調べに応じると、釈放され在宅事件に切り替わります。

逮捕後勾留される場合

上記のとおり、逮捕後に釈放されるには、逃亡及び罪証隠滅のおそれがないことが必要となります。

被害者が怪我をして不同意わいせつ致死傷罪に該当する場合には、量刑が重くなることを考えて、被害者を脅迫するなどして証拠隠滅を図るおそれがあると考えられることがあります。また逮捕される際に逃亡を図った場合などは、さらに逃亡するおそれがあると判断される可能性が高くなります。

この場合には、逮捕後も引き続き勾留される可能性があります。

逮捕された時の流れを図で分かりやすく解説します

路上痴漢で逮捕された場合に弁護士ができること

逮捕された場合には、被害者と示談交渉をすることで、早期の釈放がされる可能性があります。逮捕中の場合、ご自身で被害者と直接交渉することができなくなります。弁護士にご依頼いただければ、示談交渉を行うとともに、警察に早期釈放を求めます。示談交渉は、当事者同士の話し合いの手続になります。痴漢にあった被害者との交渉は、感情の対立がありますので、ご自身で行われるよりも弁護士に依頼していただく方がスムーズに進むことが多いです。

路上痴漢をした場合、前科が付かないよう弁護士へご相談下さい

路上痴漢をした場合、示談交渉をすることが重要であることは上記のとおりとなります。示談ができず、起訴され判決が出た場合には、前科がつくことになります。前科がつくと、現在就いている仕事を解雇されてしまったり、前科があることで就けない仕事があったりします。私生活においては、妻または夫から離婚を求められる可能性があります。

前科は、起訴された有罪判決が出た場合につくことになります。そのため、逮捕されたとしても、不起訴になった場合には、上記のデメリットを回避することができます。

したがいまして、路上痴漢をしてしまった場合には、弁護士に早期に相談し、被害者との示談交渉を進めることをお勧めします。

前科がつくデメリットについて

路上痴漢でよくある質問

路上痴漢をして逃げる際掴まれた腕を振り切るために相手を殴ってしまいました。

暴行を用いて路上痴漢をした場合には、上記のとおり、不同意わいせつ致傷罪が成立する可能性があります。ただ、わいせつ行為をした後、逃亡している最中に腕を振りほどいた場合には、別途暴行罪が成立する可能性があります。不同意わいせつ罪と暴行罪の両方が成立する場合には、不同意わいせつ罪のみの場合に比べ、量刑が重くなる可能性があります。

過去に路上痴漢をして逃げ捕まらなかったのですが、新たに別件で捕まってしまいました。

警察や検察は、あくまで犯罪の嫌疑のかかっている事件単位で捜査をすることになります。そのため、今回の逮捕された犯罪行為についての捜査されるのが中心となります。ただ、前科がある場合には、量刑に影響を及ぼすことになるため、余罪についても捜査される可能性があります。

路上痴漢をしたのですが、被害届を出される前に謝りに行きたいと思います。

被害者との示談交渉は、早期に行うべきことは上記のとおりです。ただ、痴漢を受けた被害者としては、加害者に直接会うことを躊躇う可能性が高いケースが多いです。さらに、被害届を出す前に謝罪をすることは、加害者から被害届を提出することを思いとどまるように精神的に追い詰められたと感じ、示談交渉が難航する可能性が高くなります。
そのため、弁護士のご依頼いただき、弁護人を通じて交渉することで、被害者によっても安心して示談交渉を進めることができるようになります。

路上痴漢をして逃げてしまったのですが、自首したいと考えています。

自首をするということは、犯罪の発覚前に捜査機関に自身が犯人であること及び犯罪行為について明らかにする子ことになります。
ご自身の起こしてしまった事件について、被害者から被害届が出ていないまたは、証拠不十分であるため立件できない場合である可能性があります。その場合に、自首をすると、捜査機関に犯罪行為が発覚することになり、捜査が開始されるリスクがあります。
一方で、自ら犯人として名乗り出て、犯罪行為について明らかにしたことにより、罪証隠滅の恐れがないと判断され、逮捕されず在宅での捜査となる可能性が高まります。また、起訴されたとしても、量刑の点で考慮されて、刑が軽くなる可能性があります。
これらのメリット、デメリットを踏まえて自首するかどうかを専門家に相談の上判断されることをお勧めいたします。

駅からつけて一人になったところを路上痴漢しました。痴漢行為のほかつきまとい行為でも罪になりますか?

つきまとい行為については、ストーカー規制法の対象になる可能性があります。ストーカー規制法の対象は、恋愛感情、好意の感情を抱いていた相手に対する行為が規制対象になります。
路上痴漢した相手が、以前交際している相手や好意を寄せている相手の場合に、駅から後をつけて行って、痴漢行為を働いた場合、上記の迷惑防止条例違反または不同意わいせつ罪に加え、ストーカー規制法違反を問われる可能性があります。
つきまとい行為が繰り返し行われた場合には、悪質な行為であるとして、量刑が重くなる可能性があります。

路上痴漢の相手が中学生でした。

被害者の年齢が16歳未満の場合には、被害者の同意があるか否かに関わらず、不同意わいせつ罪が成立することになります(刑法176条3項参照)また、量刑の判断の際に、被害者の年齢が考慮され、成人に対する行為の場合よりも行為の悪質性が高いと判断され、量刑が重く判断される可能性があります。

路上痴漢で逮捕されたら、すぐに弁護士へご相談下さい

路上痴漢で逮捕されてしまった場合、直ちに弁護士に相談することが極めて重要です。逮捕されると、警察や検察による厳しい取り調べが始まり、精神的に追い詰められた状況で不利な供述をしてしまうリスクがあります。弁護士は、逮捕後すぐに接見(面会)し、取り調べに関するアドバイスや黙秘権の行使など、適切な対応を指導します。

また、弁護士は被害者との示談交渉を代理で行うことで、早期の身柄解放や、不起訴処分の獲得、あるいは刑罰の軽減を目指します。前科がつくことを避けるためにも、逮捕直後からの迅速な弁護活動が不可欠です。ご自身やご家族が路上痴漢で逮捕されてしまったら、一刻も早く刑事弁護の実績豊富な弁護士にご相談ください。

相手方から離婚を切り出された場合、離婚に応じなければならないのでしょうか。そもそも離婚をする意思自体が存在しないこともありますし、提示された離婚条件に不満があって離婚に応じたくないと考えることがあると思います。

そういった事情等がある場合に、離婚を拒否できるのか、離婚を拒否するためにはどのように対応すべきかについて、以下でご説明します。

そもそも離婚を拒否することはできるのか

離婚の種類 解説 拒否の仕方
協議離婚 裁判所を利用することなく、当事者間の話し合いで離婚の合意をすること 相手方に離婚をしたくない旨の意思表示をすれば足ります。
離婚調停 裁判所の調停手続きを利用して、話し合いで離婚の合意をすること 調停委員さんを通じて、相手方に離婚に応じない旨の意思表示を伝えてもらえば足ります。
離婚裁判 裁判所の離婚訴訟を利用して、離婚判決により離婚を成立させること 民法上の離婚原因が存在しないことを主張・立証し、棄却判決を獲得する必要があります。

拒否が難しいケース

離婚に関する話合いの手続きでは、離婚に応じないことで、離婚を拒否することが簡単にできます。しかしながら、民法上の離婚原因が自己に存在する場合には、裁判で相手方の請求(離婚)が認められる可能性が高いことから、離婚を拒否することは難しいです。

離婚調停の拒否について

離婚調停を申し立てられた場合には、調停期日に出廷して、調停委員さんに対し、離婚を絶対にしたくないことを伝えることで離婚調停は不成立で終了することになりますので、離婚を拒否することができます

拒否した場合のデメリット

離婚調停を不成立にすることで、離婚を拒否することは一時的には可能です。しかし、離婚調停を申し立てた配偶者は、離婚意思が強く、何としてでも離婚をしたいと考えていることが多く、離婚調停が不成立で終了したとしても、即座に離婚訴訟を提起してくることが多いです。

欠席する場合の連絡方法

離婚調停を申し立てられると、裁判所から1回目の調停期日がいつ、どこで、何時から開かれるかといった日程が記載された呼出状がお手元に届きます。そして、この呼出状には事件番号と担当書記官の名前が記載されていますので、欠席する場合には、担当書記官に欠席する旨の連絡をします。

離婚裁判を拒否すると離婚が成立する可能性が高くなる

相手方が離婚訴訟を提起した場合、裁判所は、離婚原因が存在するかどうか、すなわち、離婚の請求が認められるかどうかを判断します。裁判所からの呼び出しに応じない(欠席する)と、相手方の主張を争わない態度として受け取られる可能性があり、離婚判決が出される可能性が高くなります。

離婚調停での財産分与の拒否はできるのか

離婚調停において、離婚に応じる意思はあるが財産分与をしたくないので、財産分与をしない上での離婚に応じると言って、調停そのものを不成立とすることは可能です。

相手方が財産分与をきちんと受けた上で離婚をしたいと考えた場合には、離婚訴訟を提起したり、離婚調停で離婚だけを成立させ、離婚後、財産分与調停を申し立てる可能性がありますので、財産分与を拒否することは難しくなります。

通帳開示を拒否する場合

相手方からの任意の通帳開示に対して、拒否することは可能です。しかし、調停手続きや訴訟手続き内で、相手方が裁判所に「調査嘱託」を申し立てることにより、裁判所から金融機関へ開示を求める手続きがありますので、いずれは、開示されてしまうことになります。

離婚調停の拒否に関する質問

離婚調停を拒否したら相手から別居したいと言われた場合はどうしたらいいですか?

夫婦には同居義務が存在することを理由に別居をやめるように説得する必要があります。これは、離婚調停を拒否し、不成立で成立した後の離婚訴訟において、民法上の離婚原因が存在しない場合には、別居期間の経過が少なければ少ないほど、離婚訴訟では、棄却判決(離婚を認めない判決)になる可能性が高くなるからです。

離婚調停の拒否(欠席)はいつまで通じますか?

2回、または、3回くらいの連続欠席により、離婚調停は不成立で終了することが多いです。しかし、その後、相手方は離婚訴訟を提起してくることが多いです。

離婚調停の拒否を検討している場合は弁護士にご相談ください

協議での離婚に応じず相手方から離婚調停を申立てられてしまった場合に、何としても離婚に応じたくないと考えている場合には、ぜひ一度、弁護士にご相談ください。

未成年者が関与する痴漢事件は、加害者であれ被害者であれ、その後の人生に大きな影響を及ぼす可能性があります。特に、少年法が適用される未成年者の場合、成人と異なる手続きや処遇がなされる点を理解しておくことが重要です。

また、被害者が未成年者の場合には、その保護にも十分な配慮が求められ、時に加害者への処分が重くなることもあります。本記事では、未成年者による痴漢、未成年者への痴漢について解説していきます。

【未成年が加害者の痴漢】生活への影響は?

未成年者が痴漢事件の加害者となった場合、その後の生活に様々な影響が生じ得ます。捜査機関から学校へ必ず連絡がいくというわけではありませんが、可能性はゼロではありません

逮捕されたことが学校に露見した場合、義務教育課程であれば退学処分となることは通常ありませんが、高校生など義務教育課程でない場合には、学校ごとの内規に基づき、停学や退学といった厳しい処分が下される可能性があります。

また、そもそも逮捕・勾留などの身体的拘束を受けることになれば、通学することが出来なくなりますので、学業への直接的な支障も避けられません。

生活へ影響が出る前にすぐ弁護士へ相談しましょう

痴漢事件を起こしてしまった場合には、早期の段階で弁護士に相談することが重要です。弁護士は、専門的知見をもとに、捜査機関への対応、被害者との示談交渉、学校への対応など、多岐にわたるサポートを行い得ます。

事態が深刻化し、生活への影響が大きくなる前に、まずは専門家である弁護士にご相談ください。

未成年が痴漢で逮捕されたら

未成年者が痴漢で逮捕された場合、成人の刑事事件とは異なり、原則として少年事件として扱われます。少年事件では、刑罰を科すことよりも、少年の健全な育成や更生を目的とした手続きが進められます。このため、逮捕後は、捜査機関による捜査・取り調べ、検察への送致、家庭裁判所への送致及び審判という流れを辿ることが一般的です。

20歳未満の場合の痴漢事件について

前述したとおり、少年事件として扱われる場合、逮捕後の流れは成人の場合とやや異なります。具体的には、捜査機関による捜査・取り調べ、検察への送致、家庭裁判所への送致・審判という流れを辿ります。

家庭裁判所では、少年審判を行う必要があるのかが判断されます。結果として、審判を行う必要がないと判断されれば、審判不開始となりますが、重大犯罪の場合には、検察へ逆送致することもあります。

20歳未満の痴漢の処分

未成年の加害者の場合には、家庭裁判所の少年審判により、不処分、保護処分、検察官送致等のいずれかの処分が下されることになります。保護処分には、保護観察、児童自立支援施設または児童養護施設送致、少年院送致などがあります。

事案が悪質でない、または深く反省し更生の見込みが高いと判断されれば、審判不開始や不処分となることもあります。他方、重大犯罪については、検察官へ逆送致がおこなわれることもあります。

未成年が前科をつけないためには?

14歳未満の場合には、刑事責任能力がないため、前科はつきません。他方で、14歳以上の未成年の場合には、家庭裁判所の処分ではなく、刑事裁判にかけられ、刑罰に課せられる可能性があります。

この場合には、前科がつくことになります。そのため、未成年に前科がつかないようにするためには、できる限り軽い処分を目指すことが重要となります。

示談を行う

少年事件においては、成人の刑事事件のような「不起訴処分」という形での終結はありません。しかし、被害者との間で示談が成立していることは、家庭裁判所が処分を決定する上で非常に重要な要素となります。

被害者の処罰感情が和らいでいること、被害回復がなされていることは、少年の更生にとって好ましい状況と判断されやすいためです。

更正の見込みを示す

少年事件では、加害少年が真摯に反省し、更生する見込みがあるかどうかが重視されます。そのため、自身の行為を深く悔い、二度と同様の過ちを繰り返さないための具体的な取り組みを示すことが求められます。

例えば、専門家のカウンセリングを受ける、贖罪寄付を行う、生活環境を改善するための具体的な計画を立てるなど、更生の意欲と具体的な行動を家庭裁判所に伝えることが重要です。

弁護士ができること

未成年者の痴漢事件においても、弁護士は様々なサポートを行い得ます。具体的には、逮捕直後から接見を行い、法的な助言だけではなく、精神的なサポートを行うことができます。

また、捜査段階では、不当な取り調べが行われないよう監視し、早期の身柄解放を目指すとともに、被害者との示談交渉を代理人として行い、円滑な解決に向けて動くことができます。

家庭裁判所の審判においては、少年の付添人として、更生の意欲や具体的な取り組みを裁判官に伝え、寛大な処分を求める弁護活動を行うことができます。

20歳未満の未成年の場合、特に示談や更正の見込みが重要視されます。

20歳未満の少年による痴漢事件では、被害者との示談の成否や、少年自身に更生の具体的な見込みがあるかどうかが、その後の処分を大きく左右します。

これらの活動を適切に進めるためには、専門的な知識と経験を持つ弁護士のサポートが不可欠です。早期にご相談いただくことで、より有利な結果を得られる可能性が高まります。

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【未成年が被害者となる痴漢】

痴漢の被害者が未成年である場合、精神的なダメージが大きいため、保護には最大限の配慮が必要になります。加害者の処罰を求めることはもちろん、被害者の心のケアも非常に重要となります。

このような事件に巻き込まれた場合、一人で悩まず、まずは信頼できる大人や専門機関に相談することが大切です

痴漢で逮捕されたら?刑罰や逮捕された場合の注意点について

相手が20歳未満の場合

痴漢の加害者が20歳未満の未成年であった場合でも、被害者としての立場に変わりはありません。加害者が少年であっても、捜査機関は事件の真相を究明し、家庭裁判所は適切な処分を下そうとします。

相手が13歳未満の場合

痴漢行為の対象が13歳未満の児童であった場合、加害者はより厳しい法的責任を問われることになります。これは、13歳未満の児童は特に手厚い保護が必要であり、そのような児童に対するわいせつ行為は極めて悪質性が高いと判断されるためです。

具体的には、同意の有無にかかわらず、刑法上の不同意わいせつ罪や強制わいせつ罪に該当することになります(2023年7月13日以前の事件であれば後者の罪名となります。)。

未成年への痴漢で逮捕されたら

成人が未成年者に対して痴漢行為を行い逮捕された場合、通常の痴漢事件と同様に、逮捕・勾留、起訴・不起訴の判断、そして刑事裁判という流れを辿ります。

なお、被害者が未成年者であるという事実は、犯情等の面で不利に働くことが多く、起訴された場合の量刑にも影響を与える可能性があります。

逮捕された時の流れを図で分かりやすく解説します

不起訴になるには

被害者が未成年者である痴漢事件で不起訴処分を獲得するためには、被害者側との間で早期に示談を成立させることが極めて重要です。真摯な謝罪と適切な示談金の支払いを通じて、被害者の処罰感情を和らげることができれば、検察官が不起訴処分とする可能性が高まります。

不起訴とは

保護者を交えての示談

被害者が未成年者の場合、示談交渉は原則としてその保護者(親権者)と行うことになります。未成年者本人の精神的負担を考慮し、また法的に有効な示談を成立させるためにも、保護者の関与は不可欠です。

しかし、加害者本人やその家族が直接示談交渉を行うことは、被害者感情を逆なでし、交渉が難航するケースも少なくありません。専門家である弁護士を介することで、冷静かつ円滑な示談交渉が期待できます。

弁護士ができること

未成年者への痴漢で逮捕された場合、弁護士はまず、逮捕直後の接見を通じて、被疑者に対して法的な助言を行い、今後の見通しを説明します。同時に、被害者の保護者との示談交渉を行い得ます。

弁護士が代理人として交渉することで、加害者側の真摯な反省の意を伝え、適切な条件での示談成立を目指します。加えて、捜査段階においては、早期の身柄解放や不起訴処分を得るための弁護活動を行います。

未成年への痴漢はより罪が重くなります。早急に弁護士へご相談下さい

被害者が未成年者である痴漢事件は、成人に対する痴漢事件と比較して、社会的非難も強く、刑事処分も重くなる傾向にあります。

逮捕されてしまった場合、あるいはそのような疑いをかけられた場合には、事態を甘く見ることなく、専門家である弁護士にご相談されることをおすすめします。早期の対応が、その後の結果を大きく左右します。

未成年の痴漢でよくある質問

18歳の高校生ですが、痴漢以外の余罪があった場合少年院へいくことになるのでしょうか。

痴漢行為に加えて、例えば盗撮などの余罪がある場合、事件の悪質性が高まります。少年審判においては、これらの行為全体が総合的に評価され、処分が決定されます。余罪の内容や回数、計画性などによっては、保護観察処分ではなく、少年院等の厚生施設への送致といった、より重い保護処分が選択される可能性が高まります。個別の事案により異なりますので、具体的な見通しについては弁護士にご相談ください。

高校生の息子が痴漢をしてしまいました。受験生なのですが、進学先から入学拒否されることはありますか。

警察が捜査情報を進学予定の学校に伝えることは、基本的にはありません。しかし、何らかの形で事件が進学先に露見した場合、入学を許可するか否かは、最終的には進学先の学校の判断に委ねられます。学校によっては、入学前に非行歴が判明した場合、入学を許可しないという内規を設けていることもあります。ご不安な場合は、弁護士に相談し、対応を協議することをおすすめします。

高校生ですが、実名報道されてしまうことはあるのでしょうか。

少年法は、本人と推知できるような記事や写真の出版物への掲載を禁止しておりますので、未成年者の実名報道は原則として行われません。これは、少年の健全な育成と更生を妨げないようにするための配慮です。ただし、SNS等で事実上特定されてしまうこともありますので、注意が必要となります。

なぜ相手が13歳未満の児童だと罪が重くなるのですか?

13歳未満の児童は、是非善悪を判断する能力や性的行為に対する同意能力が未発達であると考えられています。そのため、そのような児童に対するわいせつ行為は、児童の心身に深刻な悪影響を及ぼす可能性が極めて高く、社会的に強く非難されるべき行為とされており、刑事処分においても重く判断される傾向にあります。

13歳未満の未成年に痴漢したことを後から知りました。

痴漢行為を行った際に、相手が13歳未満であることを認識していなかったとしても、直ちに罪に問われないわけではありません。迷惑防止条例違反や不同意わいせつ罪の成立においては、13歳未満であることの認識が常に厳密に求められるわけではないためです。行為者が相手の年齢をどのように認識していたか、あるいは認識し得たかという点は、情状として考慮される可能性はありますが、具体的な状況によって法的な評価が異なるため、まずは、弁護士にご相談ください。

ご家族が痴漢で逮捕された場合すぐ弁護士へご相談下さい

ご家族が痴漢で逮捕された際には、どうすれば良いか分からず、冷静な判断が出来なくなることがあります。

逮捕後の対応は時間との戦いですので、早期に弁護士が介入することで、適切なアドバイスを受け、不利益を最小限に抑えるための行動をとることが可能になります。

特に、ご本人が未成年者の場合は、成人の事件とは異なる手続きや配慮が必要です。まずは落ち着いて、経験豊富な弁護士にご相談ください。

交通事故で人に怪我をさせてしまったなど、ふとしたきっかけで犯罪を起こしてしまう可能性は誰にでもあります。前科者になってしまった場合、生活や就職に影響が及ぶことがあります。しかし、どのような影響があるのかという疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。

ここでは、前科があることで生活にどのような影響があるか、解説します。

前科があることによる就職への影響と対処法

前科持ちであることは就職に影響するのか

職業によっては、前科があることによって就けないものもあります。具体的にどのような職業に就くことができなくなるのかについては後述の<前科持ちになると資格を剥奪される職業>をご参照ください。
また、制限のない職業であっても刑罰の内容次第では、影響を受ける可能性があります。

履歴書の賞罰欄は書かなくても問題ないか

履歴書については、賞罰欄がない場合には前科があることを記載する必要はございません。しかし、賞罰欄がある履歴書にもかかわらず前科があることを記載していない場合や、前科の有無を聞かれて告げなかった場合には経歴詐称となり得ます。

ただ、一定の期間が経過した場合には、犯罪人名簿から削除されます(刑法34条の2)。また、執行猶予に付された場合には、執行猶予が取り消されることなく執行猶予期間が経過すると、刑の言渡しの効力が失われますので、犯罪人名簿から削除されます(刑法27条)。そのため、賞罰欄への記載が必要とはなりませんが、雇用後に発覚した場合に、解雇されるリスクがあります。

空白期間が長い場合の就活方法

受刑者の就労支援を積極的に行っている団体等がありますので、検索エンジン等で受刑者向けの就労支援サービスを調べていきますと、就活支援や前科を有する方々も含めた求職を行っている企業等を紹介しています。

前科を企業が調べることはできるか

一般的な企業が公的機関に照会をしても、前科情報を得ることはできません。前科者の情報は、警察庁が前歴情報を、検察庁や市区町村が前科情報を所有していますが、そうした公的機関は捜査機関に対して捜査に必要な範囲で開示をするのみで、一般人や企業に対しては開示をすることはありません。

前科があると就職が制限される職業

前科があることによって、就職が制限される職業としては、国家資格が必要になる職業が挙げられます。資格の取得自体が、制限されることによって就労することができなくなります。

罰金以上の前科で就職が制限される職業

罰金以上の前科で就職が制限される職業の例として、医師、調理師、栄養士、看護師、鍼しなどは免許が与えられない可能性がでてきます(医師法4条3号、保健師助産師看護師法9条1号など)。また、気象予報士、卸売業者などは、各種専門業を規定する法律に違反した前科である場合には就職が制限されます(卸売市場法5条2号、気象業務法24条の21第1号)。

禁錮以上の前科で就職が制限される職業

禁錮以上の前科の場合に就職が制限される職業の例として、国家公務員、地方公務員、弁護士、教員、会社役員などが挙げられます(国家公務員法38条1号、地方公務員法16条1号、弁護士法7条1号、学校教育法9条1号)。税理士や公認会計士などは各種専門業に関わる法律に違反した前科を有する場合には、特に就職が制限されます(税理士法4条3号、公認会計士法4条2号3号など)。

自身に前科がなくてもつけない職業があるというのは真実か

具体的に親族等に前科がある場合にはその職業に就けなくなることを明記している法律等はありませんが、身辺調査を厳格に行う職場である場合には、自身に前科がなくとも、親族等に前科があることで、その職業に就くことができなくなることもあります。

前科がついてしまったことによる現在の仕事への影響

以下では、前科がついてしまった場合に現在の職業へ影響が出るのかについて解説させていただきます。国家資格などその職業を行うために資格が必要な職業の多くは、刑を科されることによって、資格を喪失することになります。

前科持ちになると資格を剥奪される職業

弁護士、弁理士などは禁錮以上の刑を受けた場合、資格はく奪の上、再度受ける権利を失います。国家公務員、地方公務員、保育士など資格が必要となる職業は、刑を科されることによって直ちに資格を喪失するものが多くあります。そのため、資格が必要となる職業は、刑が科されることによって、職務を継続することができなくなります。

なお、資格を喪失しても、刑を科されて、その執行が終わってから一定期間経過することによって、再度資格を取得することができるものもあります。その例として、宅地建物取引士は、刑の執行が終わってから5年を経過した場合には再度登録することは可能となります。もっとも、再度資格を取得できることや登録が可能になることになっても、登録ができない可能性などは残り得ます。

資格に影響されない仕事の場合

一般的な企業などでは、刑を科されたことで直ちに解雇される法律があるものではございません。しかし、就業規則などで、解雇事由に「刑罰法規に違反した場合」など刑が科されなくとも違法行為を行った場合に懲戒解雇などの処分を受ける場合があります。そのため、資格に影響されない仕事においても、刑が科されることによって、職を失う可能性が出てくることになります。

仕事への影響を最小限にするための方法

以上で見たように、在職中の人が刑を科されることによって職に与える影響は大きいと言わざるを得ません。また、刑を科されないとしても、逮捕されることで一定期間、外部と連絡を取れなくなり無断欠勤となるなどで仕事に与える影響は大きいです。

ですので、逮捕された場合などには、刑を科されることや身体拘束を受ける期間を少なくするために、弁護士に素早くご相談ください。

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前科は離婚の理由になる

民法において、直接、前科があることが離婚の理由になる旨規定されているわけではございません。しかし、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」の一つとして、婚姻期間中に刑を科されたことによって夫婦関係が破綻したと主張されるなどの可能性があります。そのため、刑罰法規に違反することが離婚の理由になることがあります。

前科があると海外旅行に影響が出る可能性がある

刑が科された場合には、パスポートの発行が制限されることがあります。また、前科の内容次第ではビザ申請の拒否、ESTA(電子渡航認証システム)の申請の拒否、入国拒否などの可能性があります。なお、ビザ申請が不要な国であっても、入国審査で詳しく質問されるなどの可能性もあります。

前科持ちが再犯すると罪が重くなる

前科を有している人が再度罪を犯した場合には、前科がない人に比べて刑が重くなってしまう可能性があります。また、前科がない人に比べて、起訴されてしまう可能性も高くなってしまいます。特に、刑の執行が終わった日などから5年以内に再度罪を犯してしまった場合には、刑法上の再犯として刑が重くなる可能性は高まります(刑法56条1項)。

前科が及ぼす影響は大きい

以上で見てきたように、前科がついてしまうと生活に及ぼす影響はとても大きいです。一度ついてしまった前科を削除することは難しいですので、前科がつかないようにしていくことが大切です。ですので、前科をつけないためにも、逮捕されるなど前科がつく恐れがある場合には、すばやく弁護士にご相談ください。

遺産分割協議がまとまらない場合、家庭裁判所で行われるのが遺産分割審判です。これは、裁判官が当事者の主張や証拠に基づいて遺産の分け方を決定する手続きです。協議とは異なり、話し合いではなく裁判官による判断が下されます。審判には強制力があり、不履行の場合には強制執行も可能です。以下では、審判の流れや効果、注意点などを簡潔に解説していきます。

遺産分割審判とは

遺産分割審判とは、共同相続人の間で遺産分割の協議ができなかった、又は、まとまらなかった場合に家庭裁判所に遺産分割を請求するという手続きです。遺産分割調停を申し立てた場合、調停が不成立となったときに、審判の申立てがあったものとみなされます。

遺産分割調停との違い

遺産分割審判 遺産分割調停
分割方法 裁判官が決定する 協議結果による
調停委員の関与 関与しない 関与する
当事者全員が同席するのか 原則、当事者の一方の出席で足りる 同席する

遺産分割調停の場合、遺産の分割方法は調停での話合いの結果次第ということになります。相続人全員が合意した方法で分割がされるため、相続人全員の出席が必要ということになります。調停手続きには、調停委員が関与し、調停委員を通して、相手方との話合いが進行していきます。

これに対し、審判は話合いではありません。書面審理を主として手続きが進められます。裁判官が、審判を行うという形で分割がなされます。また、審判は、一方当事者の出席で足りるのが原則ですが、審問の際には、全員の同席が要求される場合があります。

遺産分割審判の効果

遺産分割審判は、「執行力のある債務名義と同一の効力」(家事審判手続法75条)を持っています。そのため、他の相続人が審判の結果に従わないような場合には、強制執行をすることができます

また、遺産分割には遡及効と呼ばれる効果があるため、審判の効力は「相続開始の時」(民法909条本文)、すなわち、被相続人の死亡時に遡ります。そのため、同時点で相続人は個別の財産を取得したものと扱われます。

強制執行を行うことができる

上で述べたとおり、遺産分割審判が成立すると、強制執行をすることができます。もっとも、強制執行をするためには、別途、裁判所に対する申立てが必要になります。

不動産の名義変更などができる

審判書の謄本を持っていくことによって、金融機関において預金解約等の手続きを行うことが可能となります。また、法務局において、不動産の登記名義の変更手続きをすることが可能になります。

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遺産分割審判の流れ

まず、申立書を家庭裁判所に提出し、申立てを行います(家事審判手続法49条1項)。申立書には、①当事者及び法定代理人、②申立ての趣旨及び理由、③事件の実情を記載します(家事審判手続法49条2項、家事事件手続規則37条1項)。また、④申立ての手数料も必要となります。

遺産分割審判の1回目期日が決まる

審判を申し立てる、もしくは調停が不成立となると、審判手続が開始されます。家事審判の申立てがあった場合、裁判所で、書記官が申立書や添付された書類をチェックし、不備がある場合は、これを補正するよう当事者に求めます。不備がないということになれば、裁判長が1回目の期日を定め、両当事者を呼び出します。

また、裁判官から提出するよう求められている資料がある場合には、期日までにこれを提出しておく必要があります。

期日当日

期日当日、両当事者が出頭し、裁判官と両当事者が同じ部屋に集まります。裁判官が当事者の提出した書面や証拠を確認します。遺産分割協議が先行してなされていた場合は、その内容も考慮されます。また、裁判官が当事者に意見を求めたりすることもあります。

期日は、1、2か月に1度という頻度で、複数回行われることとなります。

審判が下される

審判分割は、相続人間の均衡を考慮し、法定相続分に従い、なされます。

審判分割の場合、現物分割が原則とされています。しかし、現物分割が適切でないような場合、現物を売却し、売却価格を分割するという方法が採られます(換価分割)。また、遺産の分割に当たって特定の相続人に相続財産を現物で取得させ、その相続人が他の共同相続人に対して債務を負担する(代償分割)という分割方法が採られることもあります。

審判が下されると、審判書が裁判所から郵送されてきます。不服申立て機関の起算点となりますので、すぐに確認することが重要です。

審判に不服がある場合

遺産分割審判の内容に不服がある場合、審判告知日の翌日から2週間以内に限り、即時抗告という不服申立ての手続きをすることができます。期間経過後の不服申立てはできませんので、注意が必要です。

遺産分割審判を有利に進めるためのポイント

遺産分割審判を有利に進めるためには、ご自身の主張を具体的かつ明確に整理し、関連する証拠を収集、整理することが重要です。また、遺産分割審判では、書面による審理がなされます。そのため、法的根拠に基づいた書面を作成し、提出していくことが、遺産分割審判を有利に進めるために必要となります。

弁護士に早期に相談することで、効果的な戦略を立て、法的観点から適切な主張を組み立て、証拠収集や書面作成をしていくことが効果的であるといえるでしょう。

遺産分割審判を欠席した場合のリスク

遺産分割審判を欠席した場合、自身の主張を裁判官に伝えられず、不利な内容で審判が確定する可能性があります。また、欠席が続くと、裁判所の心証を害し、さらに不利になることもあります。しっかりと出席し、自身の主張を示していくことが重要です。

欠席したい場合の対処法

遺産分割審判期日に欠席せざるを得ない場合、速やかに裁判所に連絡しましょう。その際、単に欠席する旨を伝えるだけでなく、具体的な理由と、可能な範囲でそれを証明する書類(診断書など)を提出することが重要です。これにより、裁判所も事情を考慮し、期日の変更や延期といった措置を検討する可能性が高まります。

次に、自身の主張を裁判所に適切に伝えるための手段を講じる必要があります。出席できない場合、書面によって意見陳述をすることができます。裁判官は期日に本人がいなくても、書面を通じてその意向を把握することができます。

欠席したい場合でも、弁護士に依頼していれば、弁護士が代理人として出席することができます。これにより、欠席のリスクを回避することが可能となります。

遺産分割審判で解決した事例・裁判例

遺産分割審判は、遺産分割協議が整わない場合に、裁判所が公平な解決を図る手続きです。

例えば、不動産の評価で対立が生じたケースでは、不動産鑑定士の評価に基づき、取得者が他の相続人に代償金を支払う代償分割が認められ、共有状態を解消しました。また、被相続人への貢献度合いに応じて遺産分割割合が調整されることもあります。

介護に尽力した相続人の寄与分が認められ、取得割合が増加した事例もあります。所在不明の相続人がいる場合には、不在者財産管理人を選任して審判手続きを進めることが可能です。

さらに、遺言の有効性が争われたケースでは、裁判所が遺言の成立過程や被相続人の意思を審理し、その有効性を判断した上で遺産分割方法を決定しました。

遺産分割審判を検討されている場合は弁護士にご相談ください

相続問題は、親族間の感情的な対立や、複雑な法的判断が絡み合い、当事者の方々にとって大きな負担となることが少なくありません。遺産分割審判という法的手段を選択せざるを得なくなった場合、その手続きは専門的な知識と経験を必要とします。

弁護士は、個別の状況を詳細に把握し、関連する法律や判例に基づき、最適な遺産分割の戦略を策定します。審判手続きにおいては、裁判所への的確な主張、証拠の収集・提出、複雑な書類作成などの全面的なサポートができます。

また、弁護士が代理人として手続きを進めることで、ご本人様は精神的な負担から解放され、冷静に事態の推移を見守ることができます。万が一、審判の結果にご納得いただけない場合でも、不服申し立ての手続きについても適切なアドバイスとサポートを提供いたします。

遺産分割でお困りの際は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

「交通事故の示談交渉や損害賠償請求をする際には、弁護士に依頼した方がよい」と言われることがあります。たしかに、代理人として示談交渉するために、被害者としては、ご自身で対応しなくてよくなります。ただ、弁護士に依頼するメリットは、それだけではありません。

具体的には、交通事故によって、あなたが被った精神的苦痛に対する損害(これを慰謝料といいます。)は、ご自身で対応されるよりも弁護士に依頼した方が増額されるケースが多いです。では、なぜ、弁護士に依頼すると、慰謝料が増額されるのでしょうか。

以下では、慰謝料が増額される理由について詳しく解説していきます。

弁護士に依頼すると交通事故の慰謝料を増額できる理由

弁護士が使う慰謝料の算定基準は一番高額

慰謝料の金額を算定するにあたって用いられる基準は3種類あります。

一つ目が、自動車損害賠償責任保険(これを自賠責保険と言います。)によって定められている自賠責基準と呼ばれるものです。これは、被害者救済のための最低限の補償基準のため、3つの基準のうち、一番低い金額になります。

二つ目が、任意保険会社が独自に定める会社内部の基準です。自賠責基準を参考に作られ、自賠責基準と同額か、多少高い金額となります。

三つ目は、裁判所基準または弁護士基準と呼ばれるものです。これは、過去の裁判例等をもとに作られたもので、交通事故訴訟や示談交渉の際に、弁護士が用いるものです。

この裁判所基準または弁護士基準が三つの基準の中で一番高い金額となります。

なぜ弁護士基準は高額になるのか

以上の三つの基準のうち、自賠責基準は、被害者の最低限の補償をするもの、任意保険会社が作る基準は、以下のとおり、営利目的の企業であることから、自賠責基準に近い基準となります。他方で、裁判基準は、実際の裁判例をもとに正当な賠償金額を算定することを目的としているため、他の二つの基準とは目的が異なります。

したがって、それぞれの基準は、目的が異なるため、算定される賠償額が異なります。結果的に正当な賠償額を計算する裁判所基準が一番高い賠償額となります。

保険会社が提示する慰謝料の基準

任意保険会社が提示する慰謝料の基準は、前述のとおり、自賠責基準と同額か、多少高い金額となります。任意保険会社が弁護士基準で慰謝料を算定することは、考えられません。では、任意保険会社がなぜ、自賠責基準と同額か、多少高い金額とするのでしょうか。

それは、任意保険会社が損害賠償金の窓口であることと営利企業であるからです。

まず、ほとんどの場合、任意保険会社が窓口となって、被害者に対して、損害賠償金を支払います。この損害賠償金の中には、自賠責保険が負担すべき部分も含まれています。そのため、任意保険会社は、被害者に支払った後で、自賠責保険に対して、自賠責が負担すべき部分について請求することになっています。

したがって、任意保険会社としては、自賠責保険から支払われる部分については、あらかじめ支払うという仕組みなっています。

次に、任意保険会社が営利企業であるという点です。前述のとおり、損害賠償金は、自賠責保険が負担する部分についても一括して支払い、任意保険会社が自賠責保険に請求する仕組みとなっています。任意保険会社は、契約者から支払われる保険料によって、賠償金の支払いを行っています。しかし、保険料を全て賠償金の支払いに充ててしまうと、任意保険会社の利益が残らなくなってしまいます。

そのため、任意保険会社としては、一人の契約者にかかるコストを抑えることを考えています。コストを抑える方法の一つとして、賠償金の額をできる限り抑えることを考えているのです。以上の二つの理由から任意保険会社は、慰謝料の算定基準を自賠責基準と同額か、多少高い金額としているのです。

弁護士基準と自賠責基準で慰謝料はどれくらい変わるのか?

以上で見てきたとおり、慰謝料の基準は、三つあります。このうち、被害者の損害を最低限補償するものである自賠責基準と、正当な賠償額の認定を目的とした弁護士基準とでは、どのくらい金額に差が出るのでしょうか。以下では、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料について、それぞれの基準で算定した場合の金額を比較してみましょう。

入通院慰謝料の比較

入通院慰謝料の金額は、以下の計算式によって計算します。

  • 自賠責基準

    自賠責基準の場合には、以下の①または②のいずれかの日数のうち少ない方に日額4300円をかけ算して求めます。

    ①治療期間:入院期間+通院期間
    ②実治療日数×2:実際に入院・通院した日数を2倍した日数
    計算する際のポイントは、①が入院及び通院についてそれぞれ期間で見ているのに対し、②がいずれも日数で計算する点です。

  • 弁護士基準

    弁護士基準の場合には、入院期間と通院期間に応じてあらかじめ定められた算定表を用いて慰謝料を算定します。算定表は2種類あります。むち打ち症などの神経症状で他覚的所見がない場合と、それ以外の場合で用いる算定表が異なります。

    入院期間と通院期間に対応する点が交差した部分の金額が入通院慰謝料の金額となります。以下で具体的な事例についてそれぞれの基準を適用した場合の違いを比較してみましょう。自賠責基準の金額と弁護士基準の金額で大きく異なることが分かると思います。

※弁護士基準の欄の()内の金額は、むち打ち症状などの神経症状で他覚的所見がない場合の金額となります。
入通院期間 自賠責基準 弁護士基準
入院:1ヶ月
通院期間:4ヶ月
(実通院日数:48日)
64万5000円 130万(95万円)
入院:なし
通院期間:5ヶ月
(実通院日数:50日)
77万4000円 116万(89万円)
入院:なし
通院期間:6ヶ月
(実通院日数:90日)
43万円 105万(79万円)

後遺障害慰謝料の比較

後遺障害慰謝料の金額は、まず、後遺障害の認定がされることが必要となります。そのうえで、認定された後遺障害の等級に応じて慰謝料の金額があらかじめ決まっています。

後遺障害とは、交通事故が原因で体に永続的に残った障害のことをいいます。後遺障害慰謝料は、医師から症状固定との診断をうけて、治療を継続しても痛みがなくならない状態に至った場合に、後遺障害等級の認定を申請し、認定が得られた場合に請求することができます。

認定される後遺障害の等級は、1級から14級まであり、症状の程度によって異なります。

後遺障害慰謝料も自賠責基準と弁護士基準で金額以下のように異なります。

介護を要する後遺障害慰謝料

等級 自賠責基準 弁護士基準
1級 1650万円
(被扶養者がいる場合:1850万円)
2800万円
2級 1203万円
(被扶養者がいる場合:1373万円)
2370万円

介護を要さない後遺障害慰謝料

等級 自賠責基準 弁護士基準
1級 1150万円
(被扶養者がいる場合:1350万円)
2800万円
2級 998万円
(被扶養者がいる場合:1168万円)
2370万円
3級 861万円
(被扶養者がいる場合:1005万円)
1990万円
4級 737万円 1670万円
5級 618万円 1400万円
6級 512万円 1180万円
7級 419万円 1000万円
8級 331万円 830万円
9級 249万円 690万円
10級 190万円 550万円
11級 136万円 420万円
12級 94万円 290万円
13級 57万円 180万円
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交通事故の慰謝料がどれくらい増額するか知りたい

交通事故の慰謝料を計算するには、上記のとおり、自賠責基準と弁護士基準で金額が大きく異なります。そのため、あらかじめ慰謝料の金額がどのくらいになるのかを目安としてわかっていると、相手方から示談交渉の際に提示された金額が妥当なものかどうかがわかります。

以下のリンクから簡単に交通事故の慰謝料を計算することができます。こちらを使用してまずは、慰謝料の金額の目安を知ることをお勧めします。

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弁護士基準で慰謝料を計算してもらうにはどうしたら良い?

弁護士基準は、他の二つの基準に比べて高額になります。その理由は、前述のとおり、正当な賠償額を請求することにあります。そのため、弁護士基準を用いる場合には、示談交渉に保険会社が応じず、示談できない場合に、訴訟提起することを念頭に置いています。

そのため、弁護士基準で慰謝料を計算してもらうためには、示談交渉に応じない場合には、訴訟を提起する予定であることを伝える必要があります。

保険会社も弁護士基準の存在は知っています。そのため、訴訟提起された場合には、弁護士基準を前提とした金額で判断されることが分かっているため、訴訟提起をすることを想定していることを伝えることで弁護士基準を前提とした対応を求めることができます。

被害者本人だけでは慰謝料を増額させるのが難しい理由

では、被害者自身で弁護士基準を用いて示談交渉することができるのでしょうか。以下で、詳しく解説していきます。

保険会社は被害者の利益を優先するとは限らない

保険会社は、前述したとおり、営利企業です。そのため、第一優先で考えるのは自社の利益です。被害者への補償をするのは、あくまで保険会社の業務として行っているに過ぎません。そのため、できる限り自社の利益を最大化させることを考え、被害者への賠償額を抑えようと考えるのは自然なことです。

したがって、被害者のために弁護士基準を用いて被害者救済を図るとは限らないことを念頭において交渉を進めなければなりません。

被害者が弁護士基準で交渉しようとしても応じてくれない

前述したとおり、弁護士基準を用いて交渉をするためには、裁判を想定した交渉を行う必要があります。保険会社は日々交通事故の示談交渉を業務として行っていますので、示談交渉についてはプロです。一方で、示談交渉を行ったことがない被害者が裁判を行うことを想定していると伝えて、弁護士基準を用いることを求めても、保険会社が応じる可能性は限りなくゼロに近いです。

実際に被害者本人で裁判を行う方が多くないことを保険会社としてはわかっているからです。そのため、弁護士に依頼して、裁判を行うことを辞さない姿勢で示談交渉に臨むことで、弁護士基準を用いて算定した慰謝料に近い金額で示談できる可能性が高くなります。

交通事故の慰謝料について弁護士に相談・依頼した場合の費用は?

弁護士に依頼することで慰謝料が増額されることはわかったが、弁護士費用の金額によっては、弁護士基準を用いて示談交渉しても利益がないのではないか心配となります。弁護士費用としては、通常以下のものがかかります。

  • 相談料
  • 着手金
  • 成功報酬
  • 実費
  • 日当 等

これらの金額は、示談交渉によって得られた金額から、依頼者様にお支払いいただくことが通常です。ですが、ご自身の加入されている任意保険会社で弁護士費用特約に入っていれば、ほとんどの場合、実質弁護士費用はかからずに弁護士に依頼することができます。

具体的には、1事故につい、相談料1名10万円、弁護士費用1名300万円を上限として、かかった費用を保険会社が負担してくれるという仕組みになっています。一度ご自身の加入されている保険に弁護士費用特約がついているか確認されることをお勧めします。

なるべく早いタイミングで弁護士に相談・依頼するほどメリットが増える

では、交通事故のどのタイミングで弁護士に依頼すればよいのでしょうか。交通事故によって怪我を負った場合、治療を終えなければ、治療費がいくらかかるか予想することができません。そのため、治療が終わった時点から弁護士に依頼し、示談交渉を行うことが考えられます。

しかし、既に治療が終了してしまっている場合、治療期間中の通院頻度等について適切な対応を助言することができなくなってしまいます。前述のとおり、後遺障害の認定がされるか否かによって慰謝料の金額も変わります。そのため、治療が終了する前に、弁護士に依頼し、治療の対応を含めて相談することをお勧めします。

交通事故の慰謝料請求は弁護士にお任せください

これまで見てきたとおり、交通事故による慰謝料は弁護士基準を用いることで、被害者ご自身で対応されるよりも増額される可能性が高くなります。そのためには、弁護士に依頼し、裁判を辞さない対応で示談交渉に臨む必要があります。

弁護士にご依頼いただければ、弁護士基準を用いるだけではなく、個別の事案に応じて、裁判例を参考にしながら、示談交渉を進めていきます。「法律の専門家」である弁護士にご依頼していただき、よりよい解決を目指していきましょう。まずは、弁護士に相談してみるところから始めてみてください。

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕
監修:弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長
保有資格
弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)
埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。