交通事故の休業損害とは | 請求条件や計算方法

交通事故の休業損害とは | 請求条件や計算方法

交通事故に遭われた方が、仕事を休まざるを得ず、給料を受け取ることができなくなることがあります。そのような不利益が休業損害です。以下では、そもそも休業損害とは何なのか、休業損害を請求できる人の範囲や計算方法、具体的な受取り方などを解説します。

休業損害とは

休業損害とは、交通事故によって受けた傷害の症状が固定するまでの間、仕事を休んだために被った損害をいいます。例えば、交通事故にあった会社員が、症状が固定するまでの間、治療のために会社を休んで病院に行くことになり、その分の給料がもらえない場合があります。このような場合に、給料がもらえないという不利益を休業損害といいます。

休業補償との違い

これに対して、休業補償とは、労働者が通勤や勤務中に怪我や病気をしたこと、すなわち労働災害が発生した場合に、労働者の生活を保護するために支払われるものをいいます。休業補償は、労働基準法76条に定められています。

休業補償と休業損害は、労働者が働けない場合に、給料に代わるものとしてお金を受け取ることができる点で共通であるといえます。

もっとも、上述のとおり、休業損害は、加害者が被害者の受けた損害の賠償として支払うものであり、労働者の生活を保護するために、使用者が補償する休業補償とは、その性質が全く異なるものなのです。

労働者が、休業補償給付を受けた場合には、その分を休業損害から減額されますので、休業損害と休業補償の二重取りをすることはできません。

休業損害の請求条件

休業損害を請求できる人とは、どのような条件を満たした人を
休業損害は、働いている人が仕事を休んだことによって生じた損害であるため、働いて収入を得ていない人は、休業損害の請求をすることができる。

したがって、働いていない無職者や幼児、学生は、休業損害の請求をすることはできません。
一方、主婦(夫)については、現実に収入を得ているわけではありませんが、家事従事者として休業損害を請求することができます。

休業損害の計算方法と算定に必要な要素

稼働日数とは

休業損害は、1日当たりの基礎収入に休業した日数を掛け合わせることで算出されます(1日当たりの基礎収入×休業日数)。

休業損害の請求をするにあたり、一日あたりの所得金額をいかに計算するかについては、休日を含んだ一定期間の平均賃金とする方法や、稼働日数として休日を含まない実労働日1日辺りの平均額とする方法が考えられます。休日を含んで計算すると、分母が増えるため、一日あたりの所得金額が下がります。したがって、休日を含まない後者の計算の方が、有利であることが多く、自身の休業損害がどのように計算されているかを確認する必要があります。

なお、治療で休んだ日に有休休暇を取得した場合、給料の支払いを受けますが、治療以外で使用しようとした有給休暇が自由に利用できなかったという損害があります。したがって、有休休暇を取得したか否かにかかわらず同様に計算されます。

基礎収入とは

休業損害で計算される基礎収入は、交通事故に遭う前に得ていた所得をもとに算出されます。これによって、経済的には事故前と同様の収入がある生活ができるように計算されます。これらを証明するためには、給与所得者であれば給与明細書や源泉徴収票、事業所得者であれば事故前年の確定申告書などが必要となります。主婦(夫)については、後ほど説明する賃金センサスを用いて基礎収入を算定します。

職業によって休業損害の算定に違いが出る

主婦の場合

主婦(夫)の場合、現実の収入がないため、性別や年齢、学歴等を様々な観点から国土交通省が分析した「賃料構造基本統計調査」(いわゆる賃金センサス)を使用することによって休業損害が算定されます。
パート収入があるなど、主婦(夫)業と兼業している場合は、実際に受け取っている収入額と賃金センサスのいずれか高い方を使用して算定されることになります。

自営業の場合

自営業者の場合は、事故前の申告所得額を基礎収入として計算されます。自営業者は、これ以外にも、事業継続ための家賃の支払いや従業員の給与の支払いといった固定費についても、休業損害として認められることがあります。

アルバイトの場合

アルバイトによって収入を得ていた場合は、給与所得者と同様、得ていた収入を基礎として算定し、休業損害の発生が認められます。これは、学生がアルバイトをしていた場合でも、同じです。

無職の場合

無職者の場合は、交通事故による治療のために、仕事を休むことになったとはいえないため、休業損害の発生は認められません。
もっとも、失業中であり、療養中に再就職する蓋然性が認められる場合や、就職が内定していた場合には、就職したであろう時期以降の休業損害が認められる可能性があります。この場合の基礎収入は、失業前の収入や賃金センサスを参照して基礎収入の金額が算定されることになります。

公務員の場合

公務員も、交通事故によって収入が減少することによって、休業損害が認められます。
もっとも、公務員には、病気休暇制度や休職制度があり、収入が減少しないように補填される福利厚生の制度があります。
このような補填がなされた場合には、前述した休業補償と同様、その分を休業損害から減額されることになります。

会社役員の場合

会社役員の場合は、得ている収入の性質によって休業損害の算定方法が異なります。すなわち、役員の収入には、労務対価部分と利益配当の実質をもつ部分があり、休業損害の対象となるのは、労務対価部分となります。労務対価部分か否かは、会社の規模や営業状態、役員の報酬額などが勘案されて判断されます。

会社員の各種手当は含めて算定可能か

休業損害で計算される基礎収入は、交通事故に遭う前に得ていた所得をもとに計算されます。したがって、残業代については、交通事故に遭う前に得ていた所得の中に含まれており、一日あたりの基礎収入の算定に含まれています。

賞与は、勤務評定や景気動向、業績など様々な要因によって算定され支給されます。したがって、賞与の減額があった場合、交通事故による休業によって賞与が減額されたかを証明する必要があります。具体的には、就業規則や賞与減額規則等を資料として賞与減額証明書を作成して提出し、交通事故による賞与の減額を立証する必要があります。

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休業損害証明書の書き方

基礎収入を算定するための資料として、休業損害証明書があります。休業損害証明書は、被害者本人ではなく、勤務している会社等に作成してもらう必要があります。休業損害証明書自体は、加害者の保険会社の担当者から送られてくることがありますので、受け取り次第、会社等の担当部署を調べ、作成を依頼します。

内容としては、事故により仕事を休んだ期間、その間の有給休暇の取得の有無や遅刻・早退の有無、休んだ日に給与の支払いを受けたか否か、自動車事故による休業がない直近3か月の月例給与、社会保険から休業補償給付や傷病手当金の給付を受けたか否かなどを記載してもらいます。また、前年度の源泉徴収票など所得を証明できる資料を添付する必要があります。

受け取れるのはいつから?

被害者が、源泉徴収票等の資料を添付した休業損害証明書を保険会社に提出し、保険会社がこれを確認したうえで、問題がなければ月末に支払われることが多いです。実際の給与の支払い日と異なることがありますので注意が必要です。

休業損害の請求時効

休業損害は、交通事故という不法行為(民法709条)によって生じた損害ですので、交通事故発生時又は症状固定日から5年で消滅時効が成立し、請求できなくなります。2020年4月1日に民法が改正され、この時点で時効が成立していない場合は、旧民法が適用され、3年で時効が成立し、請求できなくなりますので注意が必要です。

先払いはしてもらえる?

休業損害は、保険会社に休業損害証明書を提出して、保険会社が問題ないと判断した場合には、先払いしてもらうことができます。ただし、示談が成立していない段階では賠償金額が確定していないため、請求した金額全額が認められるとは限りません。また、保険会社が、休業損害について認めないと判断する場合もあります。

休業損害はいつまで貰える?打ち切られることはある?

休業損害の支給期間は症状が固定するまでとなります。また、症状によって休業日数の算定が異なります。保険会社は、医師に対して治療の必要性を確認し、医師から休業の必要性がないとの回答が得られた場合には、症状固定前でも治療を打ち切ることがあります。

交通事故がきっかけで退職することになった場合の休業損害

交通事故が原因で解雇や退職した場合には、これによって減収した分が休業損害として認められます。また、再就職までの期間についても、前職での収入を基礎として算出した基礎収入が、休業損害として認められます。

休業損害について不安なことがあれば弁護士にご相談ください

休業損害は、交通事故による症状や被害者の方の立場や職業等によって認められる損害額や期間が異なります。
交通事故で仕事を休むことになり、収入が減ってお金が必要だと悩んだら、すぐに弁護士にご相談ください。
また、休業損害を請求するにあたって、不安なことや不明なことがありましたら、弁護士に気軽にご相談ください。

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この記事の監修

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕
弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長弁護士 辻 正裕
埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
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