監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士
親族が亡くなったとき、「兄弟でいくらずつ分ければいいのか」「再婚相手の連れ子は相続できるのか」など、遺産の分け方をめぐってトラブルが生じるご家庭は少なくありません。
そのような場面で基準となるのが「法定相続分」です。
本記事では、法定相続分の概要・ケース別の計算方法・遺留分との違いなどを弁護士がわかりやすく解説します。
目次
法定相続分とは
法定相続分とは、民法900条に定められた「各相続人が相続できる割合」のことです。
遺言書がない場合や、遺産分割協議で合意が得られない場合に、最終的な判断基準として用いられます。
法定相続分は遺産分割協議で使用される
相続が開始すると、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの財産をどれだけ取得するかを話し合うのが原則です(民法907条)。
この際の目安となるのが法定相続分です。ただし、相続人全員が合意している限り、法定相続分と異なる割合で遺産を分けることも可能です。
また、協議が調わない場合は、家庭裁判所への遺産分割調停・審判に移行し、審判では法定相続分に従って分割が命じられるのが一般的です。
法定相続人の範囲と相続順位
民法は相続人の範囲と順位を定めています。
配偶者は常に相続人となり、それ以外の相続人には以下の表のとおり順位があります。
前の順位の相続人が一人もいない場合に限り、次の順位の者が相続人となります。
この組み合わせによって法定相続分の割合が変わります。
| 順位 | 法定相続人 |
|---|---|
| 常に相続人 | 配偶者 |
| 第1順位 | 被相続人の子など直系卑属 (親子関係でつながった親族のうち下の世代) |
| 第2順位 | 被相続人の父母など直系尊属 (親子関係でつながった親族のうち上の世代) |
| 第3順位 | 被相続人の兄弟姉妹 |
【ケース別】法定相続分の割合と計算方法
配偶者+子供の場合
配偶者と子がいる場合の法定相続分は、民法900条1号により「配偶者2分の1・子(全員合計)2分の1」です。
子が複数いるときは2分の1を頭数で均等に分けます(民法900条4号)。
なお、配偶者がいない場合は子が全財産を相続します。
例えば、配偶者、子2人の場合には、それぞれの法定相続分は、配偶者が2分の1、子が各自4分の1となります。
配偶者+父母の場合
子がおらず、配偶者と父母などの直系尊属が相続人となる場合は、民法900条2号により「配偶者3分の2・直系尊属全体3分の1」となります。
父母が2人とも健在であれば、3分の1を2人で等分します(民法900条4号)。
配偶者+兄弟姉妹の場合
子も父母もいない場合に、配偶者と兄弟姉妹が相続人となるときは、民法900条3号により「配偶者4分の3・兄弟姉妹全体4分の1」です。
兄弟姉妹が複数いる場合は4分の1を頭数で均等割りします(民法900条4号)。
なお、異母または異父の兄弟姉妹の相続分は全血兄弟姉妹の2分の1となります。
配偶者のみ・子供のみ・親のみ・兄弟姉妹のみの場合
配偶者だけが相続人の場合は民法890条により全財産を相続します。
子のみ・父母のみ・兄弟姉妹のみが相続人の場合は、民法900条4号に基づき、同順位の相続人が人数に応じて均等に分割します。
配偶者+孫の場合(代襲相続)
本来相続人となるべき子が、被相続人の死亡前に死亡・欠格・廃除などにより相続権を失っている場合、その子(被相続人の孫)が民法887条2項に基づき「代襲相続人」として相続人になります。
孫の法定相続分は、亡くなった子が受け取るはずであった割合をそのまま引き継ぎます。
配偶者と孫が相続人の場合、基本的な割合は配偶者2分の1・孫(全員合計)2分の1です。
なお、甥や姪も兄弟姉妹が相続権を失った場合に代襲相続人となりますが、再代襲(甥姪の子)は認められません。
養子がいる場合
養子縁組をして法律上の「子」となった養子は、実子と同じ第1順位の法定相続人となり(民法809条、887条1項)、法定相続分も実子と同等です。
配偶者と子(実子・養子)が相続人となる場合、民法900条1号に従い、配偶者2分の1・残り2分の1を実子と養子を含む全ての子で等分します。
非嫡出子がいる場合
婚姻外で生まれた子(非嫡出子)であっても、被相続人から認知を受けて法律上の親子関係が認められている場合には、「子」として第1順位の相続人となります(民法779条、887条1項)。
現行の民法900条4号は嫡出子と非嫡出子の相続分を同等と定めており、配偶者と子がいる場合には、嫡出子・非嫡出子を問わず全ての子が2分の1を均等に分け合います。
法定相続分が認められない人
離婚した元配偶者
配偶者として相続権を有するのは、相続開始時点で法律上の婚姻関係にある者に限られます(民法890条)。
離婚が成立した元配偶者には、法定相続分も遺留分も一切認められません。
内縁関係や事実婚の状態にある人
婚姻届を出していない内縁関係や事実婚の相手方は、民法上の「配偶者」に当たりません。
そのため、民法890条に基づく法定相続人にはならず、長年同居していても自動的に相続権が認められることはありません。
養子縁組をしていない再婚相手の連れ子
再婚相手の連れ子は、そのままでは被相続人との法的な親子関係がなく、民法887条1項の「子」に当たりません。
養子縁組をしていない連れ子には法定相続分は認められず、相続人にもなりません。
連れ子に遺産を残したい場合は、養子縁組または遺言による遺贈(民法964条)等を検討する必要があります。
代襲相続人でない孫や甥姪
孫は通常、相続人にはなりません。
孫が相続人となるのは、子が死亡・欠格・廃除により相続権を失い、民法887条2項に基づき代襲相続人となる場合に限られます。
同様に、甥や姪も、民法889条2項に定めるとおり、被相続人の兄弟姉妹が相続権を失った場合に限り代襲相続人として相続権を持ちます。
それ以外の場合には孫や甥姪に法定相続分はありません。
相続放棄した人
相続人であっても、家庭裁判所に相続放棄の申述を行い受理されると、民法939条により「初めから相続人でなかったもの」とみなされます。
この場合、その人には法定相続分も遺留分も一切認められません。
また、相続放棄をした者の子には代襲相続も発生しない点に注意が必要です。
なお、相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから原則3か月以内に行わなければなりません(民法915条)。
相続廃除や相続欠格に該当する人
被相続人を殺害した場合など民法891条に定める重大な非行がある場合、本人は相続欠格となり相続権を失います。
また、被相続人への虐待や重大な侮辱がある場合には、被相続人の請求により家庭裁判所が相続人の地位を奪う「相続廃除」(民法892条)が認められることがあります。
いずれの場合も法定相続分は認められません。
ただし、欠格・廃除された者の子は民法887条2項により代襲相続人として相続できます。
相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
法定相続分と遺留分の違い
法定相続分とは、民法900条に定められた相続人ごとの原則的な取り分の割合です。
一方、遺留分とは、被相続人が遺言や生前贈与で財産を処分しても、配偶者・子・直系尊属など一定の相続人に最低限保証された取り分であり、民法1042条以下に定められています。
兄弟姉妹には遺留分が認められていない点も大きな違いです。
法定相続分は当事者の合意や遺言によって増減が可能ですが、遺留分を侵害した場合には、侵害された相続人が遺留分侵害額請求(民法1046条)を行使して金銭による調整を求めることができます。
これに対し法定相続分は権利ではないため、遺言で法定相続分を下回る取り分を指定されても、遺留分が確保されている限り相続分の増額請求はできません。
遺産分割が法定相続分どおりにならないケース
遺言書がある場合
被相続人が有効な遺言書を残している場合、原則として遺言による指定が法定相続分に優先します(民法902条)。
特定の相続人に全財産を相続させる、相続人以外の第三者に財産を遺贈するといった内容も可能です。
ただし、遺留分を侵害する内容の遺言については、遺留分侵害額請求(民法1046条)によって金銭的な調整が求められる場合があります。
また、相続人全員が合意すれば、遺言の内容と異なる分割を行うことも可能です。
生前贈与があった場合
ある相続人が被相続人から多額の贈与を受けている場合、その贈与が「特別受益」と評価され(民法903条)、他の相続人との不公平を是正するための調整が行われることがあります。
具体的には、特別受益の額をいったん遺産に持ち戻して「みなし相続財産」を計算し、その上で各相続人の相続分を算出したうえで、特別受益を受けた相続人の取り分からその分を控除します。
また、生前贈与によって遺留分が侵害される場合は、遺留分侵害額請求の対象にもなります。
寄与分が認められる場合
他の相続人に比べて、被相続人の事業を長年支えたり、療養看護を行うなどして遺産の維持・増加に特別の貢献をした相続人には「寄与分」が認められることがあります(民法904条の2)。
この場合、相続財産から寄与分相当額を差し引いた残額を基に法定相続分に従って各人の取り分を計算し、その結果に寄与分を有する相続人の寄与分額を加算して具体的な相続分を算出します。
なお、相続人以外の親族(たとえば被相続人の子の配偶者など)が療養看護等に貢献した場合、「特別寄与料」として相続人に対し金銭請求ができます(民法1050条)。
法定相続分に関するよくある質問
法定相続分を超える相続にはどんなものがありますか?
法定相続分を超えて遺産を取得できる主なケースとして、①被相続人が遺言で特定の相続人に多く相続させると指定した場合(民法902条)、②遺産分割協議で他の相続人の同意を得て取り分を増やした場合(民法907条)、③寄与分が認められて法定相続分に上乗せされた場合(民法904条の2)、などがあります。
いずれも法律上適法な方法ですが、遺留分を侵害する場合は遺留分侵害額請求の対象となるため注意が必要です。
法定相続分がない人に遺産を取得させる方法はありますか?
内縁の配偶者や養子縁組をしていない連れ子、長年お世話になった第三者など、法定相続人でない方に財産を残したい場合には、①遺言による遺贈(民法964条)、②死因贈与契約(民法554条)、③生前贈与の活用などが考えられます。
また、連れ子については養子縁組を行い法定相続人にする方法や、生命保険の受取人に指定する方法も有効な手段の一つです。
事情に応じた最適な対応策については、弁護士にご相談ください。
法定相続分についてのお悩みは遺産分割問題に強い弁護士にご相談ください
法定相続分は一見シンプルなルールに見えますが、実際には代襲相続・特別受益・寄与分・遺留分侵害額請求・遺言の有無など、複数の要素が絡み合って非常に複雑になることがあります。
また、感情的な対立が深まると、法的には正しい主張であっても話し合い自体が進まなくなることも少なくありません。
相続が発生した後はもちろん、生前の相続対策の段階からでも、遺産分割問題に精通した弁護士に相談することで、紛争を未然に防ぎ、円満かつ適正な解決を図ることができます。
お悩みがあれば、まずはお気軽にご相談ください。

-
- 保有資格
- 弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)
