遺産分割協議とは|揉めやすいケースと注意点

相続問題

遺産分割協議とは|揉めやすいケースと注意点

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕

監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士

ご家族がご逝去された場合、故人(「被相続人」といいます。)が有していた財産をどのように分割するか、相続人間で協議して決める必要があります。
しかし、現実には、相続人同士での感情のもつれや、専門的知見が多分に必要となるため、遺産分割協議が長期化したり、難航したりします。
そこで、相続問題、遺産分割協議の問題に精通した弁護士法人ALGの埼玉法律事務所の弁護士が、遺産分割協議について詳しく解説していきたいと思います。

遺産分割協議とは

遺産分割協議とは、被相続人が遺した財産について、相続人全員でその分割方法を協議する手続きをいいます。
遺産分割協議は、①相続人の範囲と②遺産の範囲を確定し、③遺産の評価(価値)を決め、④分割方法を決めるという手順を踏みます。

遺産分割協議の注意点

遺産分割協議のやり直しは原則不可

遺産分割は、相続人全員が納得したうえで成立するため、一度決まった協議の内容を覆すことは困難です。そのため、納得しない状態で遺産分割協議書に署名押印することは控えてください。

全員の合意がなければ成立しない

遺産分割協議が有効に成立するためには、相続人全員での合意が必要になります。
そのため、まずは相続人全員を特定する必要があります。自分たち以外には相続人がいないと思っていても、被相続人と前配偶者との間に子がいたり、疎遠になっている兄弟姉妹がいたりする場合もあります。
そのため、相続人を確定させるためには、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本等を取り寄せるなどの調査が必要となります。

相続人に未成年がいる場合

未成年者は、法定代理人の同意や代理がない場合には法律行為を行えません。また、遺産分割協議も例外ではありません。もっとも、未成年者(被相続人の子)の法定相続人が、被相続人の配偶者(未成年者の母)であった場合、母と子の意見が相違する(利益が相反する)可能性があるため、母が子の代理人になることはできません。
この場合、家庭裁判所に対して「特別代理人」の選任の申立て、未成年者の代理人を選任してもらう必要があります。

相続人に認知症の人がいる場合

未成年者と同様に認知症などの意思能力が不十分な場合にも、遺産分割協議に参加することができません。また、他の相続人がその方の成年後見人として遺産分割協議に参加することもできません(利益相反の可能性)。
そのため、家庭裁判所に対して「成年後見人」や「特別代理人」の選任を申立てます。

遺産分割協議でよく揉めるケース

土地や不動産がある場合

遺産分割協議は、①相続人の範囲と②遺産の範囲を確定し、③遺産の評価(価値)を決め、④分割方法を決めるという手順を踏みます。
遺産に不動産がある場合、③当該不動産の評価や④分割方法で紛争化することがあります。
例えば、現金や預金であれば、その価値について争うことはまずありません。しかし、不動産の場合、取得したい人はその価値を低く評価したいですし、代償金を取得したい人はその価値を高く評価したいはずである。
また、不動産そのものを取得したい、不動産を売却して売却益を分割したいなど、不動産の分割方法について、各相続人の意見が分かれてしまう場合、不動産に関する遺産分割協議は難航してしまいます。

家業がある場合

遺産分割協議は、①相続人の範囲と②遺産の範囲を確定し、③遺産の評価(価値)を決め、④分割方法を決めるという手順を踏みます。遺産に家業(例えば、故人が経営していた会社)がある場合、③当該会社の評価や④分割方法で紛争化することがあります。
例えば、株式を公開している(上場している)会社の場合、1株あたりの株価を争うことは多くありません。しかし、非公開会社の場合、会社の株価(価値)を幾らにするか、どのような計算方法で算出するかについて、難航します。
また、1株あたりの株価(価値)が決まったとしても、誰が家業を引継ぐか(誰が会社の株式を引継ぐか)、会社株式を取得しない相続人に対する代償金の支払をどうするかについても難航します。

相続人以外が参加した場合

遺産分割協議は、あくまでも法定相続人全員の合意で成立します。
しかし、例えば、法定相続人の配偶者も遺産分割協議に興味関心があるところです。そのため、法定相続人が納得していても、その方の配偶者が納得しないため、事実上遺産分割協議が難航するということもあります。

遺産の分割方法

遺産分割の方法は、①現物分割、②代償分割、③換価分割、④共有分割という方法があります。このうち、遺産が現金や預金等の現金化しやすい財産であれば分割方法で難航することはありませんが、不動産などの場合には分割方法で協議が難航することがあります。

現物分割

現物分割とは、遺産をあるがままに分割する方法です。この現物分割が原則的な方法です。
遺産をそのまま残すことができたり、手続きが簡便であったりしますが、遺産の価値に争いがあったり、具体的な相続分と一致させての分割が困難であったりするため、現金化しやすい遺産で採用しやすい分割方法です。

代償分割

特定の相続人が遺産を引き継ぐ代わりに、他の相続人に対し相続分に応じた代償金を支払う方法です。
例えば、1500万円の価値の不動産を3兄弟の長男が相続し、弟2人にそれぞれ代償金として、法定相続分(3分の1)にあたる500万円ずつを支払うというような場合です。

換価分割

遺産を処分して、その対価を相続人で分割する方法です。
代償金を支払う原資を捻出することができない場合や相続人のいずれも取得を希望しない不動産がある場合等に用いられます。もっとも、売却時期が不透明であったり、売却方法や売却金額等を事前に協議しておいたりする必要があるため、事前準備が必要となります。

共有分割

遺産を具体的相続分による物権法上の共有取得とする方法です。
例えば、不動産を相続人2人で半分ずつの割合で取得するといったような方法です。確かに、不動産をそのまま残すことができたり、相続人間で平等に分配できたりする等のメリットはあります。しかし、後々、その不動産を取り壊す(売却する)といった場合、共有者全員の合意が必要となったり、新たな相続が発生する度に共有者が増え、権利関係が複雑化になったりというリスクがあります。

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遺産分割協議に期限はある?

現行法上は、遺言により制限された場合(民法第908条)を除いて、遺産分割協議の制限はありません。もっとも、遺産分割協議を成立させない限り、遺産を処分することができません。また、遺産分割協議が長期化すると、相続人が亡くなり、その親族が相続人になる必要が生じ(これを「数次相続」といいます。)、相続人が増え続け、全員の合意を取り付けることが一層困難になってしまいます。

遺産分割協議をしないで放っておいたらどうなる?

遺産分割協議を放置しておいた場合、①遺産を利用・処分することができなかったり、②不動産などの税金(固定資産税等)の支払いや管理修繕の費用を捻出する必要がある場合には相続人が負担する費用が増えたりする可能性が生じます。
また、遺産分割協議が成立する前に、その相続人が亡くなった場合、最初の相続が済んでいないのに次の相続が発生してしまいます(これを「数次相続」といいます。)。その結果、相続関係が非常に複雑化してしまいます。

遺産分割協議が無効になるケース

遺産分割協議が無効となるケースとしては、①他にも相続人がいた場合や②未成年者や認知症を患っている方が遺産分割協議に参加していた場合などです。また、遺産分割の重要な事項に錯誤があった場合にも、錯誤による無効が認められる可能性もあります。しかし、後になってから気が変わった、単に不公平だからといった理由で遺産分割協議を無効にすることができません。

遺産分割協議のやり直しが必要になるケース

遺産分割協議をやり直す必要があるケースとしては、上記記載のとおり、他にも相続人がいた場合や未成年者などが遺産分割協議に参加していた場合などです。
また、遺産分割協議後に新たな遺産が見つかった場合には、従前の遺産分割協議そのものをやり直す必要まではなく、新たな遺産の分割方法のみを決めれば足ります。もっとも、従前判明していた遺産と新たな遺産との区別が不明瞭な場合や両遺産を別個に処理することが困難な場合には、遺産分割をやり直す必要があります。

遺産分割協議に応じてもらえない場合にできること

他の相続人が遺産分割協議に応じない場合、その理由を明確にする必要があります。例えば、遺産の評価を理由にしているのか、分割方法を理由にしているのかなどです。また、当事者同士で協議をしても、互いに感情的になってしまうため、建設的な協議を行うことができません。そのため、弁護士に交渉を依頼したり、遺産分割調停を申立てたりする必要があります。

そもそも遺産分割協議が必要ない場合

絶対に遺産分割協議が必要となるとは限りません。例えば、以下に掲げる場合には遺産分割協議は必要ありません。

遺言書がある場合

遺産は、被相続人が残した財産ですので、被相続人の意思を尊重する必要があります。この被相続人の意思を尊重させたものが遺言書です。遺言者は、遺言によって、遺産分割の方法を指定したり、法定相続分とは異なった相続分を指定したりすることもできます。また、特定の財産を特定の相続人に承継させたりすることもできます。
この場合には、相続人が協議することなく遺産を分割することができます。

法定相続人が一人しかいない場合

他に協議すべき相続人がいない場合にも、遺産分割協議は不要です。もっとも、他に相続人がいないことを明らかにするため、相続人の調査を行う必要があります。

遺産分割協議のお悩みは弁護士にご相談ください

遺産分割協議は、①相続人の範囲と②遺産の範囲を確定し、③遺産の評価と④分割方法を決め、後の紛争を防止するために遺産分割協議書を作成する必要があります。
このうちいずれの段階においても、専門的な知識や調査が必要となります。また、お互いが感情的になるあまり、建設的な協議ができないことも往々にしてあります。そして、上記の通り一度決めた遺産分割を無効とすることは困難です。
そのため、早期の段階から弁護士に相談・依頼し、適切な遺産分割を行う必要があります。

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕
監修:弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長
保有資格
弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)
埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。