
監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士
子供の「認知」とは、主に、婚姻関係にない男女の間で子供が生まれた際に問題になります。このような子供は、婚姻関係にある夫婦の間で生まれた子(いわゆる「嫡出子」)のように、当然に夫婦の子として扱われるわけではないからです。
本記事では、「認知」とはそもそも何なのか、どのような場合に「認知」が必要なのかについて解説していきます。
目次
子供の認知とは
子供の認知とは、一言でいうと、婚姻関係にない男女の間に生まれた子供について、父親が自分の子供であると認めることを言います。
認知が必要になるケース
認知が必要になるのは、婚姻関係にない男女の間で生まれた子供の場合です。よくあるのが、未だ婚姻しておらず交際中の間の男女間の子や、不貞関係にある男女間の子です。
この場合、父親との関係では、必ずしも実子であるとの推定が働きません。
子供を認知しないとどうなる?
婚姻関係のない男女間で生まれた子を認知しないと、様々な支障が生じ得ます。
具体的には、子の戸籍に父親の氏名が記載されなかったり、父親に養育費の支払義務が生じなかったり、親権者として定めることができなかったり、相続人としての要件を満たさなかったりするなどの支障が生じ得ます。
嫡出推定制度について
民法には、嫡出推定制度と呼ばれる制度が存在します。これは、婚姻成立日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定される規程です(民法772条2項)。
子供が認知されたときの効果
子供が認知された場合には、様々な法律上の効果が生じます。
戸籍に記載される
1つ目は、戸籍に認知日や認知親などの記載がされるという効果です。子供を認知すると、その子供の戸籍には、認知した親側の名前が記載されます。
養育費を請求できる/支払い義務が生じる
2つ目は、認知した親が子供に対して扶養義務を負うという効果です。認知することで、法律上の親子関係が生じることになりますので、認知された子供の養育費を請求できることになります。
認知後の養育費はいつから請求できる?過去の分は請求可能?
認知すると、その後、認知した親は扶養義務を負いますので、養育費を請求することができます。ただし、認知する以前については、そもそも法律上の親子関係にはなく、扶養義務が生じていませんので、この分の養育費を請求することはできません。
子供に相続権が発生する
3つ目は、子供に相続権が生じるという効果です。法律上の親子関係が生じると、当然、その子供には相続人となる権利が生じます。
父親を親権者に定めることができる
4つ目は、認知した親を親権者として定めることができるという効果です。法律上の親子関係が生じると、認知された子供の親は親権者となることができます。
認知後に、夫婦の間で親権に関する協議がまとまらない場合には、親権者の指定や変更に関する調停や審判を申し立てることができます。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
子供の認知の種類
子供の認知には、いくつかの種類があります。具体的には、「任意認知」、「強制認知」、「遺言による認知」が存在します。以下、個別に説明していきます。
任意認知(話し合い)
任意認知とは、夫婦の話し合いによって、子供を認知することをいいます。これは、法定の要件を備えた認知届を、認知する親の本籍地、認知する子供の本籍地、認知する親の住所地の役場に提出する方式で行うことができます。
強制認知(話し合いで拒否された場合)
強制認知とは、夫婦間での話し合いがまとまらなかった場合に、家庭裁判所に認知調停や認知の訴えを提起する形で認知するものです。なお、この手続は、調停前置主義を採用しているため、認知の訴えを提起する前に、認知調停を申し立てる必要があります。
①家庭裁判所に認知調停を申し立てる
認知調停では、家庭裁判所の調停委員を通じて、話し合いを行います。あくまでも話し合いですので、協議が不成立となれば、認知は認められないことになります。
②家庭裁判所に認知の訴え(裁判)を提起する
認知調停が整わず、協議が成立しなかった場合には、家庭裁判所に対して認知の訴えを提起する必要があります。この訴訟のなかで、認知を求める親と子供との間の血縁関係を主張・立証していくことになります。
遺言による認知
遺言による認知という方法もあります。これは、遺言書に、認知すると記載する方式で行われます。ただし、認知される子供が胎児の場合には、その親の承諾が必要になるなど、一定の制限がありますので、注意が必要です。
子供の認知はいつまでできるのか?
子供の認知それ自体に期間的な制限はありません。ただし、認知の訴えは、やむを得ない事情が無い限り、認知を求められている親(父親)が死亡してから3年以内に提起しなければならないとされています。
子供の認知を取り消すことは可能か?
一度、認知をすると、それを取り消すことはできないのが原則です(民法786条)。認知を取り消すことができるのは、血縁関係がなかったり、勝手に届出が出された場合などの例外的な場合に限られます。
このような限定的な仕組みが採られているのは、認知の容易な取消を認めると、認知される側の子供の法的地位が不安定化してしまうためです。
血縁関係のない子を認知してしまった場合は?
血縁関係のない子を認知した場合には、その認知が無効であると主張したり、あるいは取り消すべきであると主張したりすることが可能です。これらの手続は、いずれも家庭裁判所への調停・訴訟といった形式を採る必要があります。
弁護士が立証したことにより、相手方への認知請求が認められた事例
認知の訴えによる認知が認められるためには、血縁関係を主張立証する必要があります。
海外に在住する外国人の夫と婚姻関係にあった人のケースで、別の者と婚姻し出生した子供であったにもかかわらず、その外国人の夫との婚姻期間中に懐胎したために、その外国人の夫の嫡出推定が働いてしまったということがありました。
このケースにおいて、弁護士が、家庭裁判所に認知の訴えを提起し、血液型との無矛盾性、外国人の夫との接触機会の有無、容姿の類似性などを立証し、実際の後婚相手との父子関係の証明に成功しました。
子供の認知に関するQ&A
不倫相手との子供を認知したら妻にバレますか?
結論から言うと、不貞の事実がバレる可能性が高いと言えます。なぜならば、認知によって、父親の戸籍に不倫相手との子供を認知した旨の記載がなされるからです。
認知された子供はどこで確認ができますか?
子供の戸籍に記載されるため、そこで確認することができます。
認知された子供は父親の姓を名乗れますか?
認知された子供は、それだけで父親の姓を名乗ることはできません。父親の姓を名乗るためには、子供の氏の変更に関する手続を経る必要があります。
認知した子供のDNA鑑定を行った結果、親子の可能性0%でした。支払った養育費を取り返すことは可能でしょうか?
この場合、認知の無効事由になり得ますので、法律上の父子関係を否定することができます。法律上の父子関係が否定された場合には、そもそも、扶養義務自体が存在しなかったということになりますので、支払った養育費について、不当利得返還請求を行い得る可能性があります。
子供の認知で不安なことがあれば、お気軽に弁護士にご相談下さい。
子供の認知をめぐる問題を適切に解決するためには、専門的な知見が必要になります。ご自身で悩まれるのではなく、まずは、専門家である弁護士にご相談されることをお勧めします。
-
- 保有資格
- 弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)