監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士
交通事故の被害に遭われた際、最も気になることの一つが「いくら示談金をもらえるのか」という点ではないでしょうか。
本記事では、弁護士の視点から交通事故の示談金相場や、受け取れる金額を増額させるための重要なポイントを詳しく解説します。
適切な補償を受け、適正な再出発を図るための参考にしてください。
目次
交通事故の示談金とは
交通事故における「示談金」とは、加害者側と被害者側が話し合い(示談)によって合意した賠償金の総額を指します。
交通事故が発生すると、被害者は加害者に対して損害賠償を請求する権利を得ますが、裁判をせずに当事者間の合意で解決する際に支払われるのが示談金です。
一度示談書を交わすと、原則として後から追加請求することはできないため、慎重な判断が求められます。
示談金と慰謝料の違い
「示談金」と「慰謝料」を混同される方が多いですが、これらは別物です。
示談金とは、治療費、休業損害、慰謝料など、事故によって生じたあらゆる損害を合計した解決金全体を指します。
一方、慰謝料は示談金を構成する要素の一つであり、事故によって受けた精神的苦痛に対する賠償金のことです。
つまり、示談金という大きな枠組みの中に、慰謝料という項目が含まれているという関係性になります。
示談金はいつ支払われる?
示談金が支払われるのは、原則として「示談が成立した後」です。
怪我をした場合、治療が終わって(または症状固定となって)から損害額が確定するため、示談交渉はその後に始まります。
示談成立後、示談書(免責証書)を保険会社に送付してから、通常1週間~2週間程度で指定の口座に振り込まれるのが一般的です。
ただし、過失割合や損害額で争いがある場合は、解決まで数年を要することもあります。
示談金には請求期限(時効)がある
交通事故の損害賠償請求権には消滅時効があります。
民法第724条および第724条の2に基づき、以下の期限を過ぎると請求できなくなるため注意が必要です。
| 事故の種類 | 起算日 | 時効 |
|---|---|---|
| 物損事故 | 事故日 | 3年 |
| 人身事故(後遺障害なし) | 事故日 | 5年 |
| 人身事故(後遺障害あり) | 症状固定日 | 5年 |
| 死亡事故 | 死亡日 | 5年 |
| 加害者不明の事故 | 加害者が判明した時 | 3年または5年 |
(参考)
民法第724条(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。
民法第724条の2(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。
交通事故の示談金に含まれるもの
| 入通院慰謝料 | 入院や通院を余儀なくされたことによる精神的苦痛に対する賠償金です。通院期間や実際の通院日数に基づいて計算されます。 |
|---|---|
| 後遺障害慰謝料 | 治療を尽くしても完治せず、後遺障害が残った場合に認められる慰謝料です。認定された等級(1級~14級)に応じて金額が決まります。 |
| 死亡慰謝料 | 被害者が亡くなったことに対する慰謝料です。 亡くなった本人への慰謝料と、遺族(配偶者、子、父母など)への慰謝料を合算して請求します。 |
| 治療関係費 | 診察料、手術費、投薬代、リハビリ費などの実費です。 原則として保険会社から直接病院へ支払われますが、立替えた場合は示談金に含まれます。 |
| 後遺障害逸失利益 | 後遺障害によって将来の労働能力が低下し、本来得られたはずの収入が減少することに対する補償です。 年収や労働能力喪失率を用いて算出します。 |
| 死亡逸失利益 | 被害者が死亡しなければ将来得られたはずの利益です。 年収から生活費を控除し、就労可能年数などを考慮して計算されます。 |
| 休業損害 | 怪我の治療のために仕事を休んだことで失った収入の補償です。 会社員だけでなく、主婦(家事従事者)や自営業者も請求可能です。 |
| その他 | 通院のための交通費、入院雑費、診断書作成費用、付き添い看護費、また物損がある場合は車両の修理費などが含まれます。 |
まずは交通事故事件専属のスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
交通事故の示談金の相場
| 状況 | 示談金相場 |
|---|---|
| 死傷者のいない物損事故 | 数万~30万円程度 |
| 他覚所見のないむちうちなど、軽症の人身事故 | 数十万~100万円程度 |
| 完治する人身事故 | 数十万~200万円程度 |
| 後遺障害が残る人身事故 | 数百万~数千万円程度 |
| 死亡事故 | 数千万~1億円程度 |
入通院慰謝料
入通院慰謝料の計算には「自賠責基準」と「弁護士基準」の2つがあり、どちらを適用するかで金額に大きな差が出ます。
自賠責基準は最低限の補償であり、弁護士基準は過去の裁判例に基づいた正当な相場です。
| 通院期間 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
|---|---|---|
| 1ヶ月 | 8万6000円 | 軽傷19万円/重傷28万円 |
| 2ヶ月 | 17万2000円 | 軽傷36万円/重傷52万円 |
| 3ヶ月 | 25万8000円 | 軽傷53万円/重傷73万円 |
| 4ヶ月 | 34万4000円 | 軽傷67万円/重傷90万円 |
| 5ヶ月 | 43万円 | 軽傷79万円/重傷105万円 |
| 6ヶ月 | 51万6000円 | 軽傷89万円/重傷116万円 |
軽い接触事故だった場合の示談金相場は?
「軽い接触だから大したことはない」と加害者側から言われることもありますが、たとえ低速の衝突でも首や腰に衝撃が残り、むちうち症になるケースは多々あります。
軽い事故でも人身事故として処理し、通院が発生すれば、上記の表の通り数十万円単位の示談金が発生するのが一般的です。
物損のみであれば修理代の実費程度ですが、体に違和感があるなら必ず医師の診察を受け、人身事故として対応しましょう。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、自賠責保険で認められた等級に応じて決まります。
| 後遺障害等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
|---|---|---|
| 1級 | 1650万円(1600万円) | 2800万円 |
| 2級 | 1203万円(1163万円) | 2370万円 |
| 後遺障害等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
|---|---|---|
| 1級 | 1150万円(1100万円) | 2800万円 |
| 2級 | 998万円(958万円) | 2370万円 |
| 3級 | 861万円(829万円) | 1990万円 |
| 4級 | 737万円(712万円) | 1670万円 |
| 5級 | 618万円(599万円) | 1400万円 |
| 6級 | 512万円(498万円) | 1180万円 |
| 7級 | 419万円(409万円) | 1000万円 |
| 8級 | 331万円(324万円) | 830万円 |
| 9級 | 249万円(245万円) | 690万円 |
| 10級 | 190万円(187万円) | 550万円 |
| 11級 | 136万円(135万円) | 420万円 |
| 12級 | 94万円(93万円) | 290万円 |
| 13級 | 57万円 | 180万円 |
| 14級 | 32万円 | 110万円 |
死亡慰謝料
死亡慰謝料は、亡くなった方の家族構成や家庭内での役割によって金額が左右されます。
【自賠責基準】
自賠責基準では、被害者本人への慰謝料(一律400万円)と、遺族への慰謝料を合算します。
| 請求権者1人 | 550万円 |
|---|---|
| 請求権者2人 | 650万円 |
| 請求権者3人以上 | 750万円 |
| 被扶養者がいる場合 | 200万円 |
【弁護士基準】
弁護士基準では、亡くなった方の立場によって基準額が明確に定められています。
| 一家の支柱 | 2800万円 |
|---|---|
| 母親、配偶者 | 2500万円 |
| その他 | 2000万~2500万円 |
積極損害
積極損害とは、事故に遭ったために実際に支払いを余儀なくされた費用のことです。
代表的なものに治療費(手術費、投薬費、リハビリ費など)、入院雑費(日額1,100円~1,500円程度)、通院交通費(電車・バスの実費やガソリン代)、介護費用、葬儀関係費などが含まれます。
これらの損害は、領収書や診断書などの客観的な証拠に基づいて実費が補償されます。
自己判断で購入したサプリメントや、必要性の低いタクシー代などは認められない場合があるため、医師の指示に基づいた支出であることが重要です。
消極損害
消極損害とは、事故がなければ将来得られたはずなのに、事故によって得られなくなった利益のことです。
これは目に見えない損失であるため、保険会社との交渉で争点になりやすい項目です。
主に「休業損害」と「逸失利益」の2種類に分けられます。
休業損害
休業損害は、怪我の治療のために仕事を休み、収入が減ったことに対する補償です。
計算式は、原則として「1日あたりの基礎収入 × 休業日数」となります。
サラリーマンだけでなく、有給休暇を使用した場合や、家事に従事している主婦(主夫)の方も家事労働という価値があると考えられ、請求が可能です。
逸失利益
逸失利益は、後遺障害が残ったり亡くなったりしたことで、将来の労働能力が失われ、将来の年収が減る損害を指します。
計算式は「基礎収入 × 労働能力喪失率 × ライプニッツ係数(中間利息を控除する係数)」です。若年者ほど就労可能期間が長くなるため、金額が数千万円から1億円を超えることもあります。
交通事故の示談金シミュレーションツール
自分のケースでいくらもらえるのか、具体的な目安を知りたい方は、弊所のシミュレーションツールを活用してください。
入通院期間や後遺障害等級を入力するだけで、弁護士基準での概算がすぐに分かります。
保険会社からの提示額が適正かどうかを確認する第一歩としてご利用ください。
まずは交通事故事件専属のスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
交通事故の示談金を増額させる4つのポイント
保険会社の提示額をそのまま受け入れると、本来受け取れるはずの金額よりも大幅に低くなる可能性があります。以下の4点に注意しましょう。
完治または症状固定まで治療を受け続ける
示談金の中で大きな割合を占める入通院慰謝料は、通院期間や日数に比例します。
痛みを我慢して通院をやめてしまったり、仕事が忙しいからと通院頻度を下げたりすると、「その程度の痛みだった」と判断され、慰謝料が減額されます。
医師が完治または症状固定(これ以上治療しても良くならない状態)と判断するまで、定期的に通院を継続することが不可欠です。
適切な後遺障害等級を認定してもらう
後遺障害が残った場合、その等級が1つ違うだけで示談金が数百万円から数千万円変わります。
保険会社任せにする「事前認定」ではなく、被害者側で資料を準備する「被害者請求」を行うことで、より詳細な医学的証拠を提出でき、適切な等級認定を受けられる可能性が高まります。認定には、後遺障害診断書の記載内容が極めて重要になります。
弁護士基準で請求する
これが最も直接的に金額を増やす方法です。
保険会社は自社の利益を守るため、低い「任意保険基準」や「自賠責基準」で提示してきます。しかし、弁護士が介入すると、裁判でも認められる最も高い「弁護士基準」での交渉が可能になります。
慰謝料の項目だけで、保険会社の提示額の2倍~3倍に増額することも珍しくありません。
適切な過失割合で交渉する
過失割合とは、事故に対する責任の割合のことです。
例えば、本来「加害者10:被害者0」の事故なのに、「加害者9:被害者1」とされると、受け取れる示談金が1割減らされてしまいます(過失相殺)。
保険会社が提示する過失割合は必ずしも正しいとは限りません。
事故状況を精査し、ドライブレコーダーや目撃証言をもとに適切な割合を主張することが重要です。
弁護士介入の結果、示談金が増額した事例
【事例:会社員男性・むちうち症】
状況:後方からの追突事故で、頸椎捻挫(むちうち)と診断。6ヶ月通院。
当初の提示額:約80万円(保険会社基準)
弁護士介入後:約180万円(弁護士基準+後遺障害14級認定)
ポイント:
保険会社は通院3ヶ月で治療費の打ち切りを打診してきましたが、弁護士の助言により適切な頻度で6ヶ月通院を継続。
さらに、適切な検査結果をもとに後遺障害14級の認定を受けたことで、慰謝料と逸失利益が大幅に増額されました。
示談金を適切な額で受け取るためにも、示談交渉は弁護士にお任せください
交通事故の被害者は、身体的な痛みだけでなく、保険会社とのやり取りによる精神的ストレスも抱えることになります。
保険会社は交渉のプロであり、被害者個人が対等に渡り合うのは容易ではありません。
弁護士にご依頼いただくことで、煩わしい交渉をすべて代行し、裁判基準に基づいた正当な賠償金を追求します。
多くの保険には弁護士費用特約が付帯されており、これを利用すれば弁護士費用を自己負担なしで依頼できるケースがほとんどです。
「今の提示額は妥当なのか?」「後遺障害が認められるか不安」という方は、まずはご相談ください。あなたが本来受け取るべき権利を、最大限に守ります。

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- 保有資格
- 弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)
