監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士
子どもがいる夫婦が離婚した場合、どちらか一方のみの配偶者が子どもの親権者となります。
他方、親権者とならなかった配偶者であっても、民法上、養育費を負担する義務を負っています。
以下では、夫婦が離婚した場合の養育費について、子どもが3人いる場合を想定して解説していきます。
目次
養育費の決め方
養育費とは、子どもの監護をしない者(以下「義務者」といいます。)から子どもの監護をする者(以下「権利者」といいます。)に対して支払う、子の監護・養育に必要な金銭のことをいいます。
例えば、夫婦の間で子どもが3人いる状態で離婚をした場合で、一方の配偶者が3人の子どもの親権者となった場合は、義務者は3人の子どもがそれぞれ生活するために必要な費用を負担する必要があります。
養育費の金額は、子どもの人数、年齢、権利者と義務者の収入、職業の種別(会社員か自営業か)等の要素が考慮され決定されます。
おおよその目安については、裁判所が向上している算定表を用いることで判明します。
養育費に含まれるもの
養育費は子の監護・養育に必要な金銭であるため、主に以下の費用が含まれることになります。
- 衣食住に必要な費用(食費、家賃、水道光熱費、日用品代等)
- 教育費(義務教育費用、公立高校の授業料等)
- 医療費(※子どもが重大な病気にかかった際の治療費・手術代等は含まれない)
- 通常想定される範囲での子どもへのお小遣いや遊興費
子供が3人いた場合の養育費の相場
養育費を支払う側の年収 | 子供3人0~14歳 | 子供2人0~14歳 子供1人15~19歳 |
子供1人0~14歳 子供2人15~19歳 |
子供3人15~19歳 |
---|---|---|---|---|
200万円 | 0~6万円 | 0~6万円 | 0~6万円 | 0~6万円 |
300万円 | 0~8万円 | 0~8万円 | 0~8万円 | 1~8万円 |
400万円 | 2~10万円 | 2~10万円 | 3~11万円 | 4~11万円 |
500万円 | 4~13万円 | 5~13万円 | 6~14万円 | 6~14万円 |
600万円 | 7~15万円 | 8~16万円 | 8~16万円 | 9~16万円 |
700万円 | 9~18万円 | 10~18万円 | 11~18万円 | 11~19万円 |
800万円 | 11~20万円 | 12~20万円 | 13~20万円 | 14~21万円 |
900万円 | 14~22万円 | 14~23万円 | 16~23万円 | 16~24万円 |
1000万円 | 16~25万円 | 17~25万円 | 18~26万円 | 19~26万円 |
以上の表は、養育費の支払義務者(会社員を想定)の収入と、子ども3人の年齢ごとに区別された養育費のおおよその目安をまとめたものです。
養育費は義務者と権利者の収入によって、金額が増減します。
例えば、権利者の収入が高く、義務者の収入が低ければ、相場の中では低い金額(0~6万円であれば0円になる場合もあります。)となり、権利者の収入が低く、義務者の収入が高ければ、相場の中では高い金額(0~6万円であれば6万円になる場合もあります。)となります。
なお、子どもが4人以上いる方の場合は、裁判所が公表している養育費の相場をまとめた養育費算定表が存在しないため、個別に計算する必要があります。
養育費の増減について
増額するケース | ・昇進、昇格により義務者の収入が上がった場合 ・失業や病気により権利者の収入が減少した場合 ・子が成長し、大学などに進学した場合 |
---|---|
減額 | ・昇進、昇格により権利者の収入が上がった場合 ・失業や病気により義務者の収入が減少した場合 ・義務者が再婚して扶養家族が増えた場合 |
一度決まった養育費を増減させるためには、増減させるに足る事情の変更が必要です。
養育費は、主に子の人数や権利者・義務者の職業・収入により算定されるものですから、これら事項に関する事情の変更が養育費額の増減にあたって考慮されることになります。
なお、養育費額の確定後算定表が新しくなったことや離婚後子どもと会わせてもらえていないことといった事項は養育費増減の理由にはなりません。
また、養育費の金額を変更するためには、改めて養育費分担調停や審判を申立てる必要があります。義務者の一方的な判断によって養育費の金額を下げないようにしましょう。
3人の養育費が支払われる期間
養育費の終期は実務上20歳までと定めることが一般的です。これは、子どもが単独で法律行為ができ、自分自身で働いて生計を立てることが可能だと考えられる成人年齢であることを考慮したものです。
なお、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられた現在においても、18歳や20歳であれば、大学等に進学するなどして就職しておらず、経済的に自立できていない方も多いため、養育費の終期に影響を与えないのではないかと考えられます。
また、現在の日本においては大学への進学率が高いため、両者の合意によって養育費の終期を一般的な大学卒業時の年齢である22歳までとするケースもあります。
養育費の対象とならない期間
養育費が支払われる期間であると思われるケースであっても、以下のような場合、支払われないこともあります。
- 子どもが高校卒業して働き始めた場合
- 子どもは成人しているが、仕事をせず自立ができていない場合
- 子どもが大学院に進学した場合
- 子どもが留学をして、大学の卒業が1年延びた場合
子供が3人いた場合の養育費に関するよくある質問
3人分の養育費を一括で受け取ることはできますか?
基本的に養育費は子どもの生活のために必要とされる費用という性質上、その支払いは月払いが原則です。もっとも、月払いはあくまでも一般論であるため、当事者間での合意によって一括払いと定めることも可能です。
もちろん、3人分の養育費となると、子どもの年齢によってはかなりの金額になりますので、そもそも支払義務者が支払えない可能性や、一括払いに合意しない場合もあります。
再婚した場合は養育費を受け取ることはできませんか?
権利者が再婚した場合であっても養育費を受け取ることはできます。
しかし、養育費の対象となっている子どもが再婚相手と養子縁組を結んだ場合には、当該子どもの第一次的な養育義務は再婚相手が負うことになります。
そのため、再婚相手の資力が不十分であるような場合を除き、権利者は義務者(元配偶者)からの養育費を受け取ることはできなくなります。
他方で、義務者が再婚した場合、義務者がその再婚相手や再婚相手との子どもを扶養する義務を負う可能性があります。その結果、権利者との間の子どもに関する養育費の金額が下がる場合があります。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
3人の子供の養育費について離婚問題に詳しい弁護士にぜひご相談ください
養育費は、子どもを監護養育するにあたって重要な金銭です。当事者間で具体的な金額や支払い方法等について不足なく合意をして、その合意どおりに養育費を払ってもらえるのであれば特段問題ありません。
しかし、適正な養育費の金額を算定するにあたっては種々の事情を考慮する必要があり、その計算方法も複雑です。
適切な養育費額を算定し、子の権利を損なわないためにも、養育費について何か疑問を持たれた際には、離婚問題に詳しい弁護士にぜひ一度ご相談ください。
-
- 保有資格
- 弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)