離婚で慰謝料を請求された場合に確認すべきこと|拒否や減額はできる?

離婚問題

離婚で慰謝料を請求された場合に確認すべきこと|拒否や減額はできる?

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕

監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士

離婚に際して、配偶者やその代理人から突然慰謝料を請求されると、誰もが動揺してしまうものです。

しかし、請求を受けたからといって、必ずしも相手の言い分通りの金額を支払わなければならないわけではありません。まずは冷静になり、自分に支払う義務があるのか、請求額は妥当なのかを確認することが重要です。

本記事では、不当な不利益を避けるために、慰謝料を請求された側が確認すべき事項や適切な対処法について、法的な観点から解説します。

離婚慰謝料を請求されたら確認すべきこと

請求してきたのは誰か

まず、慰謝料を請求してきた相手が誰であるかを確認してください。
配偶者本人が請求してくる場合もありますが、弁護士が代理人として通知書を送付してくるケースも多々あります。

もし相手方に代理人弁護士がついている場合、通常は通知書に「本人への直接の連絡は控え、代理人宛に連絡されたい」旨が記載されています。

この場合、当事者同士で直接連絡を取るとトラブルの原因となるため、指定された代理人弁護士に対して連絡や回答を行うようにしてください。

回答期限があるか

請求書、特に内容証明郵便などには、回答期限が記載されていることが一般的です。
この期限は法的に強制力があるものではありませんが、期限を無視して放置することは避けるべきです。

回答がない場合、相手方は交渉の余地がないと判断し、調停や訴訟といった法的手続きに移行する可能性が高まるからです。

もし期限までに回答がまとまらない場合は、検討中である旨だけでも期限内に連絡を入れることが、紛争の激化を防ぐために重要です。

慰謝料が発生する理由

慰謝料請求が法的に認められるためには、民法第709条および第710条に基づき、故意または過失による権利侵害(不法行為)が存在し、それにより精神的苦痛を与えたという事実が必要です。

具体的には、不貞行為ドメスティック・バイオレンス(DV)などが典型的な有責行為に該当します。

単に性格が合わないといった理由だけでは不法行為は成立しないため、相手方がどのような法的根拠に基づいて請求をしてきているのか、その理由を正確に把握する必要があります。

相手の主張は真実か

相手方が主張する有責行為の事実関係が、真実と合致しているかを確認しなければなりません。

例えば、不貞行為を理由に請求されたとしても、実際には肉体関係がない場合や、単なる食事等の交流に過ぎない場合は、不法行為が成立せず慰謝料の支払い義務が生じない可能性があります。

身に覚えのない事実や誇張された主張が含まれている場合は、安易に認めず、事実ではないと明確に反論する必要があります。

請求金額は妥当か

請求されている慰謝料の金額が、法的な相場と比較して妥当であるか検討します。

裁判実務における離婚慰謝料の相場は、不貞行為の場合で概ね100万円から300万円程度、DVなどの場合でも300万円を超えるケースは多くありません。

相手方は感情的な理由や交渉の幅を持たせるために、相場よりも高額な請求をしてくることが一般的です。
相場を大きく逸脱した金額については、減額交渉の余地が十分にあると考えられます。

離婚慰謝料を請求されたときにやってはいけないこと

慰謝料請求を無視する

最も避けるべき対応は、請求を無視して放置することです。

無視を続けると、相手方は訴訟提起に踏み切る可能性が高くなります。
もし裁判所からの訴状も無視して欠席した場合、相手方の主張が全面的に認められ、給与や預金の差し押さえなどの強制執行を受けるリスクが生じます。

請求内容に納得がいかない場合であっても、無視はせず、何らかの形で回答や反論を行うことが自身の権利を守るために不可欠です。

相手の言い値で慰謝料を支払う

相手方の請求額を鵜呑みにし、言い値で支払う約束をすることは危険です。

前述の通り、請求額は相場より高めに設定されていることが多く、本来支払う必要のない金額まで負担することになりかねません。
また、一度合意してしまうと、後から「やはり高すぎる」と覆すことは法的に極めて困難です。

内容を十分に精査し、適正な金額であると確信が持てるまでは、合意書への署名や支払いの約束をしてはいけません。

相手の神経を逆撫でするような発言を行う

交渉において、相手方の感情を不用意に逆撫でするような言動は慎むべきです。
相手方は精神的苦痛を受けているとの認識から、感情的になっている場合が多々あります。

そのような状況で挑発的な態度を取ると、相手が態度を硬化させ、減額交渉に応じなくなったり、解決までの期間が長期化したりする恐れがあります。

たとえ言い分があったとしても、交渉を有利に進めるためには、冷静かつ真摯な対応を心がけることが賢明です。

離婚慰謝料の支払いを拒否できるケース

慰謝料請求を受けたとしても、法的な要件を満たしていない場合は、支払いを拒否することができます。

日本の民法における損害賠償請求は、加害行為、損害の発生、因果関係などが証明されなければ認められません。

相手方の主張が事実に基づかない場合や、権利が消滅している場合などは、法的な支払い義務が存在しないため、毅然とした態度で拒否することが可能です。

以下に代表的な拒否できるケースを解説します。

相手が主張する内容が虚偽である・証拠がない場合

民法第709条に基づく損害賠償請求訴訟において、不法行為の事実があったことを立証する責任は、原則として請求する側(原告)にあります。

したがって、相手方の主張が虚偽である場合や、事実であってもそれを裏付ける証拠が全く存在しない場合には、請求は認められず、支払いを拒否することができます。

例えば、「でっち上げDV」のように事実無根の主張をされた場合は、明確に否定し、証拠の提示を求める対応が必要です。

時効が成立している場合

不法行為による損害賠償請求権には消滅時効が存在します。
民法第724条により、被害者が損害および加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効により権利が消滅します。

離婚慰謝料の場合、基本的には離婚成立時から3年が経過すれば時効が完成します。

時効期間が経過している場合、相手方に対して時効を援用する(時効の利益を受ける意思を表示する)ことで、支払義務を免れることができます。

婚姻関係がすでに破綻していた場合

判例上、不貞行為があったとしても、その時点で既に夫婦の婚姻関係が破綻していた場合には、特段の事情がない限り不法行為責任を負わないとされています。

婚姻関係の破綻とは、長期間の別居や離婚協議が具体的に進んでいる状態などを指し、法的に保護されるべき「夫婦の平穏な共同生活」が既に失われていると判断されるからです。

この場合、権利侵害が存在しないため、慰謝料の支払いを拒否することができます。

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離婚慰謝料が減額できるケース

相手にも過失がある

民法第722条第2項の「過失相殺」の規定類推により、被害者側(請求者)にも離婚に至る原因や過失がある場合は、慰謝料額が減額される可能性があります。

例えば、請求された側に不貞行為があったとしても、請求者側もDVを行っていたり、同様に不貞を行っていたりしたケースがこれに当たります。

一方的に責められるだけでなく、相手方の有責性も主張することで、公平な分担の観点から減額が認められる場合があります。

相場以上の慰謝料を請求された

請求額が裁判実務上の相場を大きく上回っている場合、その超過部分については減額できる可能性が高いです。
前述の通り、離婚慰謝料には事案に応じた相場(例えば不貞行為なら100〜300万円程度)が存在します。

相手方が感情的になり、500万円や1000万円といった法外な金額を請求してきたとしても、裁判になれば相場まで減額される可能性が高いことを根拠に、適正額までの減額交渉を行うことが可能です。

自分の資産・収入が少ない

慰謝料の支払い義務自体は資産の有無に関わらず発生しますが、現実の交渉においては、支払い能力(資力)が考慮されることがあります。

資産や収入が乏しく、高額な慰謝料を一括で支払うことが物理的に不可能な場合、その窮状を誠実に説明し、資料を開示することで、相手方が現実的な回収を優先して減額に応じるケースがあります。

無い袖は振れないため、支払可能な範囲での和解を目指す現実的な交渉材料となります。

有責性が低い

有責行為の態様が悪質でないと判断される場合、慰謝料額は低く算定される傾向にあります。

例えば、不貞行為の回数が一度きりであったり、期間が極めて短かったりする場合、あるいは上司等の関係性を利用され受動的に関係を持ってしまった場合などが該当します。

また、不貞等の事実があっても、それによって離婚に至らなかった場合は、離婚に至った場合に比べて損害が小さいと評価され、減額要素となります。

離婚慰謝料額を減らすことに成功した事例

実際の事例として、当初900万円という法外な慰謝料を請求され、相手方の威圧的な態度により合意書を作成させられてしまった事案がありました。

しかし、弁護士が介入し、合意の成立過程に問題があることや金額の過大さを法的に主張して交渉した結果、最終的に300万円まで減額することに成功しました。

また、DVを理由に500万円請求された事案で、事実関係を争い証拠の提示を求めた結果、支払いなし(0円)で解決した例もあります。

離婚慰謝料が増額されるケースもある?

減額とは逆に、事情によっては相場よりも高額な慰謝料が認められるケースも存在します。
民法第710条は財産以外の損害(精神的苦痛)への賠償を定めていますが、苦痛の程度が大きいと判断される事情がある場合です。

具体的には、婚姻期間が長期間に及ぶ場合、未成年の子どもがいる場合、不貞行為等の有責行為が長期間・多数回にわたる場合、相手方がその行為により精神疾患を患った場合などが挙げられます。

ただし、交渉の段階で相手方が提示する初期の請求額は、これらの増額要素を含めてもなお過大であることが多いため、増額要素があるからといって直ちに相手の言い値を飲む必要はありません。

離婚慰謝料を決める流れ

離婚慰謝料を決定するプロセスは、まず当事者間(または代理人弁護士間)での協議から始まります。ここで金額、支払方法、期限などを話し合い、合意に至れば離婚協議書や示談書を作成します。

協議で話がまとまらない場合は、家庭裁判所に離婚調停(夫婦関係調整調停)を申し立て、調停委員を介して話し合いを行います。

調停も不成立となった場合には、離婚訴訟(裁判)へと移行し、最終的には裁判官が証拠に基づいて事実認定を行い、判決によって慰謝料の有無や金額を決定することになります。

離婚慰謝料が支払えない場合の対処法

合意した金額や請求額を一括で支払うことが経済的に困難な場合、放置せずに誠実に対応策を講じることが重要です。
まずは相手方に対し、経済状況を説明した上で、減額や分割払いの交渉を行います。

分割払いを提案する際は、支払いが滞った場合の期限の利益喪失条項を設けるなど、相手が安心できる条件を提示すると合意を得やすくなります。

また、脅迫を受けて無理やり合意書を書かされたような場合は、その合意自体の無効や取り消しを主張できる可能性があります。

いずれにせよ、判決等で確定した債務を無視すると強制執行のリスクがあるため、早めの対処が必要です。

離婚慰謝料の減額に関するQ&A

公正証書を作った後でも慰謝料を減額できますか?

公正証書を作成した後に、その内容を覆して減額することは原則として非常に困難です。
公正証書は公証人が関与して作成される公文書であり、高い証明力と執行力を持つため、合意の有効性自体を争うハードルが高いからです。

ただし、相手方が任意に話し合いに応じ、減額に同意してくれるのであれば変更は可能です。
相手にとって減額に応じるメリットは少ないため、交渉は難航することが予想されます。

内容証明郵便で慰謝料請求された場合、減額交渉はどのように進めたらいいですか?

内容証明郵便は、郵便局が送付内容や日付を証明するものであり、それ自体に法的な支払い強制力があるわけではありません。
しかし、相手方の本気度が高い証拠でもあるため、慎重な対応が必要です。

まずは記載内容を精査し、自身の回答を書面等で準備します。
減額を希望する場合は、単に「払えない」と言うだけでなく、相場との乖離やご自身の収入状況、相手方の過失などの根拠を明確に示して交渉を申し入れます。

回答書の内容は後の裁判で証拠となる可能性があるため、不利な事実を安易に認めないよう、弁護士に添削を依頼するのが安全です。

離婚慰謝料を請求されたら、弁護士に相談してみましょう

離婚慰謝料を請求された場合、ご自身だけで対応することは精神的にも大きな負担となり、適切な判断ができないリスクがあります。

弁護士に相談することで、請求額が妥当かどうかの正確な判断や、具体的な減額交渉の戦略についてアドバイスを受けることができます。

また、弁護士に依頼すれば、相手方との交渉を全て任せることができるため、直接やり取りをするストレスから解放され、不利な合意をしてしまうリスクも回避できます。

結果として、慰謝料の大幅な減額や支払いの免除など、より有利な解決が期待できるため、早めの相談を強くお勧めします。

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕
監修:弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長
保有資格
弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)
埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。