監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士
離婚慰謝料とは、離婚する際に、精神的苦痛を負った配偶者が他方の配偶者に対し請求する金銭のことを言います。どのような場合に、請求することができるのか、請求する前にしておくべきことあるいは請求する具体的な方法等について、以下では説明していきます。
目次
離婚慰謝料を請求できる条件
離婚慰謝料とは、離婚の原因を作った有責配偶者に対し、精神的苦痛を受けた他方の配偶者が不法行為に基づいて請求する金銭のことをいいます。そのため、相手方が不貞行為をした場合や相手方から暴力等を受けた場合に、離婚慰謝料を請求することができます。
性格の不一致でも慰謝料請求は可能?
性格の不一致のような夫婦のどちらかが悪いわけではない場合には、離婚をしても、離婚慰謝料を請求することはできません。
離婚慰謝料を請求する前にすべきこと
離婚慰謝料請求はいつでもいかなる状況であっても請求することができるというわけではありません。そこで、離婚慰謝料を請求をするにあたり、あらかじめ確認し・準備して欲しいことをご説明します。
時効が成立していないかを確認する
離婚慰謝料を請求する場合の時効の起算日は離婚をした日になります。そのため、離婚から3年を経過すると時効を迎え、請求することができなくなります。
請求に必要な証拠を集める
離婚慰謝料を請求するためには、請求に必要な証拠を集める必要がございます。不貞行為の証拠としては、不貞相手とのメールやLINEのやり取り、探偵報告書があります。モラハラ、DVの証拠としては、当事者間のやり取りを録音したもの、写真や診断書があります。悪意の遺棄の証拠としては、今まで生活費が支払われていた口座に一切入金がなされなくなったことがわかる通帳の取引履歴や一方的に相手方が出て行ったことがわかるようなメール・LINE等があります。
離婚慰謝料の相場を把握する
離婚原因 | 慰謝料の相場 |
---|---|
浮気・不貞行為 | 100万~500万円 |
悪意の遺棄 | 50万~300万円 |
DV・モラハラ | 50万~500万円 |
セックスレス | 0~100万円 |
そもそも慰謝料とは、相手方の不法行為によって精神的苦痛を受けたときに、その故意・過失の大きさに応じて支払われる損害賠償金です。金額は特に法律上規定されてはいませんが、一定の相場というものは存在します。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
離婚慰謝料を請求する方法
離婚慰謝料を請求する方法としては、当事者間での交渉がまず想定され、交渉(協議)で支払ってくれない場合には、調停の場で請求し、それでも支払ってもらえない場合には、訴訟で請求していくことになります。詳しくは、次の項目で説明します。
離婚後に請求していく場合には、交渉をして任意に支払いを求めるか裁判上の請求をすることになります。
話し合いによる協議離婚で請求
夫婦間で離婚の話し合いをする中で、離婚条件の一つとして、離婚慰謝料を請求することが考えられます。双方が納得すれば、相場以上の慰謝料を請求することも可能です。
離婚協議書の作成
離婚慰謝料を受け取って離婚する場合、「離婚慰謝料」として支払ってもらうのか、「解決金」として、財産分与等すべての金銭請求を含めた趣旨で支払ってもらうのか、性質を明らかにして協議書に記載することになります。また、性質をどのように考えるとしても、支払い金額、支払い方法、振込手数料の負担について、後々問題にならないように明らかにしておく必要がございます。
話し合いで決まらない場合は離婚調停で請求
当事者間で話し合いを続けても、協議でまとまらない場合には、家庭裁判所に離婚調停を申立てることになります。調停では、調停委員という第三者が当事者の間に入ることで、双方に譲歩を促しながら、合意に向けた前向きな話し合いができるようになります。
それでも解決しなければ離婚裁判へ
調停においても、両当事者間で合意が得られなかった場合には、離婚調停は不成立となり、離婚慰謝料を請求していくためには、離婚訴訟を提起していくことになります。裁判官が離婚慰謝料について判断することになりますので、相手方配偶者の有責原因の証拠を紛失せずに保管しておく必要がございます。
内容証明郵便での請求について
内容証明郵便を利用して、離婚慰謝料を請求していく場合のメリットは、請求したかどうか(言った・言わない)のトラブルを回避することができ、自分の本気度を相手方に知らせて、支払いのプレッシャーを与え、任意の支払いがなされる可能性が高まることです。デメリットは、内容証明郵便を受け取った人が、敵対心を増強させ、話合いがうまくいかない可能性がございます。
内容証明郵便に記載する内容
内容証明に記載すべき内容は、①配偶者が有責行為をした事実②請求金額③支払い期限④支払い方法です。
相手が離婚慰謝料を支払わないときの対処法
相手方が決まった離婚慰謝料を支払わない場合には、給与を差し押さえたり、預貯金の差し押えたりといった強制執行手続きを検討しましょう。また、一括支払いが困難な場合には、分割での支払いのあらたな合意をすることも検討しましょう。
よくある質問
子供がいた場合、離婚慰謝料の相場より多く請求することはできますか?
子供の有無は、離婚慰謝料額の算定要素の一つになり得ます。一般的には、子供がいないよりもいた方が、離婚による精神的苦痛は大きくなると言い得るので、慰謝料額は多く請求することができるでしょう。
不倫の慰謝料は離婚しないと配偶者に請求できませんか?
不倫の慰謝料請求は、離婚が条件ではないので、離婚せずに慰謝料請求が可能です。しかし、離婚をしないということになれば、慰謝料の支払いを求めても、金額が低額になりやすいのが現状です。
モラハラを理由に離婚した場合、慰謝料の相場より高く請求する方法はありますか?
モラハラの回数や内容が様々であることから、被害者の受ける精神的苦痛(損害の程度)も様々なので、事案によって認められる慰謝料額には幅があります。しかし、モラハラの内容が悪質であったり、うつ病を発症させたような場合には、高額の慰謝料が認められることもあり得ます。
離婚の慰謝料請求の時効が迫っているのですが、時効を止める方法はありますか?
時効の完成を止めるという方法があります。裁判上の請求をしたり、加害者に慰謝料の支払い義務があることを認めさせたり(債務の承認)、内容証明郵便等の確定日付のある書面で慰謝料の支払いの請求をしたり(催告)といった方法です。ただ、催告については、催告をしたその時から6か月間が経過するまでは時効の完成が猶予されるに過ぎないので、裁判上の請求をその間にする必要がございます。
離婚時の慰謝料請求についてわからないことがあれば弁護士に相談しましょう。
慰謝料がどのような場合に請求でき、いくら請求できるのか、また、そのための準備に何が必要か等ご依頼者様ごとの個別事情により変わってきます。そこで、配偶者から慰謝料をきちんと支払ってもらうためにも、ぜひ一度弁護士に相談しましょう。
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- 保有資格
- 弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)