監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士
配偶者からDVを受けている様子は、第三者にはわかりにくく、誰にも相談できずに我慢なさっている方が多いと思います。しかし、DVはあなたや子供の命にかかわる危険があり、離婚を考えたのであれば、できるだけ早く別居に踏み切る必要があります。以下では、DVを理由に配偶者との離婚を考えている方向けに、あらかじめ知っておいて欲しいことをお伝えします。
目次
DV加害者と離婚する方法
DV加害者と離婚するためには、別居して身を守ることが一番です。可能であるならば、別居する前にDVの証拠を集めてから、スムーズに離婚に向けて動き始めましょう。
まずは身を守るために別居する
DVは、収まることなく、どんどんエスカレートしていき、しまいには生命の危険すらあります。これ以上DV被害を受けないためにも、できるだけ早く別居に踏み切ってください。
接近禁止命令の発令を検討する
DV加害者から身を守る手段の一つに、裁判所が発令する接近禁止命令があります。これは、DV防止法で定められている保護命令の一つで、配偶者の接近を禁止することのできるものです。DV被害者が裁判所に申立てを行い、裁判所が禁止命令を発令するための要件を満たしていると判断したときに発令されるものですので、発令されるためには客観的な証拠が必要となります。
DVシェルターは一時的にしか使えない
DVシェルターは、DV加害者から殴る・蹴る等の暴力を日常的に受けている方が入ることが可能な施設です。そのため、生命・身体への危険(緊急性)がないと入るための要件を満たしません。また、この施設はあくまでも一時的な施設であり、緊急避難先としては有用といえますが、DV問題を根本的に解決するためには、別居状態を継続させるためにシェルターを出た後の住居探しをする必要があります。
DVの証拠を集める
DVを理由に離婚を考えた場合、協議離婚できずに、調停や裁判で離婚することになる場合に備え、DVの証拠はきちんと集めておきましょう。具体的にどのようなものが証拠となり得るのか、以下で確認しましょう。
診断書
診断書や診療報酬明細書、レントゲン、CT、MRI画像等が証拠となります。診断書には単なる傷病名だけではなく、症状の程度、治療期間、診断時の証言など、できるだけ細かく記載してもらうようにしましょう。
怪我の写真
あざや傷などの怪我を負った場合には、その部分の写真を撮影することをお勧めします。体のどこの部分かわかるように、近くから大きく写したり、遠くから写したり、複数枚撮影しましょう。日付を入れることも忘れないようにしましょう。なお、スマートフォンなどの撮影では、加工を疑われる可能性もございますので、使い捨てカメラを利用して撮影しておく等の工夫が必要です。
音声・動画
暴力を受けている様子が録音・録画できれば強固な証拠となることは間違いありませんが、暴行を受けている際中に録音・録画を開始することは難しいので、無理に危険を冒してまでそのような証拠を集める必要はございません。
DVを受けたことが記載してある日記
日々の暴力について詳細に記録した日記があれば、証拠となり得ます。日記には、暴力を受けた日時、暴力を受けた身体の部位、どの程度の暴力であったか等具体的に記載してください。
警察や配偶者暴力相談支援センター等への相談記録
警察や配偶者暴力支援センター等の公的機関に相談した際の相談記録も、証拠となりますので、後日開示請求をして、相談記録を入手しましょう。
経済的DVを受けている場合
経済的DVを受けている方は、生活に困窮していることがわかる家計簿、生活費が振り込まれなくなったことがわかる預金通帳、配偶者の浪費がわかるクレジットカードの利用明細、配偶者の借金の内容がわかる明細書等が証拠となります。
離婚の手続きを進める
証拠が揃ったら、離婚に向けた手続きを進めましょう。
離婚の方法には、主に、協議離婚、調停離婚、裁判離婚がありますが、相手方がDV加害者の場合には、被害者から離婚を切り出すとキレて再び暴力を振るわれ、離婚に向けた話し合い自体が難しくなるので、そのような場合には、家庭裁判所に離婚調停を申立てましょう。
相手が離婚してくれない場合
話し合いができずに離婚ができない場合であれば、離婚調停を申立てることをお勧めしますという話を先の項目でさせていただきましたが、DV被害者が一人で調停を戦っていくことは難しいです。それはDV加害者が外面が良く、調停委員さんがDVを信じてくれない可能性があるからです。そこで、調停手続きでは弁護士に依頼し、弁護士と一緒に調停期日に出廷することをお勧めします。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
DVで離婚するときは慰謝請求ができる
DVを受けた証拠があり、DVの立証ができるのであれば、それについて慰謝料を請求することも可能です。一般的に慰謝料の相場は50万円~300万円といわれますが、このように幅があるのは、DVの程度や期間、後遺症の有無等被害者の受けるDVにはいろいろなものがあるからです。
親権をDV加害者にとられる可能性はある?
子供の親権(監護権)を決定するにあたって重要なことは「主たる監護者」は誰かということです。そのため、DV加害者であっても、「主たる監護者」であれば、親権者になることは可能です。しかし、DVが子供に対しても行われており、子供の成長に支障を来しているのであれば、親権をご自身が取得できる可能性があるといえるでしょう。
DVで離婚した場合でも面会交流はしなければいけない?
面会交流は、子供の福祉のために非監護親と子供の交流の機会を保障する制度です。そのため、面会交流が子供にとって悪影響となるといった事情を除き、原則として面会交流は実施しなければなりません。ただ、合意書の内容に必ず、面会交流の条項を設けなければならないわけではございません。
DV加害者と離婚したい場合は弁護士にご相談ください
DV加害者は、自らのDVを認めないことが多く、被害者からお一人で離婚や慰謝料の話を切り出すことは難しく、交渉も進まず難航するのが通常です。そこで、DV加害者と離婚を考えた場合には、弁護士に早めに相談してください。
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- 保有資格
- 弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)